空気は世界を擁(とりまわ)して
海の如く
万物の内外気の満たざる処なし
[訓蒙 窮理図解 福澤諭吉著]

1868年『訓蒙 窮理圖解』(きんもう きゅうりずかい)第二章「木挽町(こびきちよう)汐留(しおどめ)の三河屋綱吉(つなきち)という小間物屋 夏の衣服に霧吹く道具」「都(すべ)て世の中の物事は、大小に拘(かかわ)らず、道理を考えずしてその儘(まま)に捨(すて)置けば、その儘のことにて、面白くもなく珍しくもあらざれども、よく心を留(とめ)てこれを吟味するときは、塵芥一片(ちりひとは)、木葉一枚のことにてもその理あらざるはなし。故に人たるものは幼きときより心を静(しずか)にして、何事にも疑(うたがい)を起し、博(ひろ)く物を知り、遠く理を窮(きわめ)て、知識を開かんことを勉(つと)むべし。徳誼(とくぎ)を修め知恵を研(みが)くは人間の職分なり」