ビクトル・ダミコの美術教育装置の復元 English

ビクトル・ダミコ(1904-1987)は、生活を豊かに彩る要素として、美術教育をどのように実践すべきかを探りつづけました。人間的な思索は、 色や形、光や反射という感覚的な体験に連鎖して始まる。触覚的、視覚的、身体運動的な経験からくる驚きと喜びは、生きる興味に転換し、子供達にとって、わくわくする心のうごめきは、人間や物にたいする確かな愛着の始まりとなる。

諸認識能力の戯れによって生ずる快の感情

共同研究:学校法人多摩美術大学+財団法人日本児童手当協会
企画:前田ちま子(名古屋芸術大学美術文化学科)
設計:高橋士郎(多摩美術大学情報デザイン学科)
製作:駒形克明(多摩美術大学工作センタ)
カタログ発行「ビクトル・ダミコ 人間性の美術」こどもの城
1995.10.28-12.03 「ダミコ展」こどもの城10周年記念
2016.08.11-12.03 「ダミコルーム」愛知芸術文化センタ
●光の噴水 図面 台の四方向に鍵盤が取り付けられている。一組の鍵盤の一つのキーを押すと、光の噴水を回転するスクリーンに連続的に投影し、他の三つのキーを押すと3種類の異なった光を発する。同心の二つの回転台は違いに逆方向に回転する。

●自然の感触 図面 子供に自然の豊かな触感を発見させるために、 猫の毛並み、蛇の皮、鳥の羽、木の肌などが、箱に開けた窓の中に次々にあらわれる。 それぞれの素材の現物があらわれると同時に、別の窓には、それに対応する動物の写真があらわれる。

●感触の物差 図面 柔らかい素材、固めの素材、滑らかな素材、 ざらざらした素材の四種の帯を、横一列にならべ回転させる。 子供は、それぞれの違った素材が指の下を通過するのを感じ、日頃から親しんだ素材に対して、敏感な関心を抱く。 また、回転を止めた時の触覚を体験する。

●視覚と感触  図面 箱の中には、木肌や砂肌、宇宙の写真、 月の表面、織物、印刷物などの素材が装置されていて、拡大レンズの板を移動させることにより、 その細部を観察することができる。表面の質感や物の深みを発見し、鋭い観察眼を養うことができる。

●色の混合 図面 子供たちは、調光機のダイアルを回して、 色々な色を薄暗くしたり明るくしたりして、明度の効果を発見し、比較することができる。 また、色付きの透明板二枚をスライドさせて重ねることで、色相や彩度の変化を体験することができる。

●光・音・色 図面 図面 子供がマイクロホンに声を入れたり歌ったり すると、その音がスクリーンに色のパターンとして写しだされる。 子供の声の音色や高低や音量などによってパターンは変化する。 箱に取り付けたキーボードによってもオルガンを弾くように、光を操作することができる。

●環境の装置 図面 箱の前面にはハイフミラーが張られているので、 通常は自分の正常な姿が写っている。近付くと、内部のネオン管が点灯して、箱の中に装置した鏡の断片に錯綜した 自分の姿の断片が写しだされる。

●糸絵 図面 図面 図面 沢山の穴があいた板に、ピンを任意に差し込み、 糸をそのピンに引っ掛けることで、直線と張力のデザインをすることができる。単純な装置で直線が引け、 簡単にデザインを修正することができる。二色のスポットライトが糸を照らし、背景に色のハーモニーが写しだされる。
●影絵の演奏 図面 二組の木の枝に、様々な幾何学的な形を ぶらさげてから、前面のスクリーンを下げて閉じ、ピアノの様なキーボーボで色の光を操作すると、 スクリーンに映像が投影される。足下のペダルを踏むと、二組の木が別々に回り、いくつもの映像が合成されて動き出す。
●回転万華鏡 図面 箱の中に、いろいろな形や物を吊すことで、 子供は即座に好きなデザインを構成することができる。アレンジが終わったら、 光を当てながらターンテーブルをまわすと、箱の内側には鏡が張られているので、 無数の反射された映像が無限に変化して楽しむことができる。
●影法師  図面 ターンテーブルを回して、 人体模型を様々な角度から観察することができる。不思議な雰囲気のストロボライトや様々な色の ライトを自由にスイッチで操作でき、人体に当たる光と壁面の影の両方を見ることができ、物そのものの形と、 光の演出によって歪められた形を観察できる。
●舞台装置 図面 箱の中には建物を連想させる抽象的形が 配置してあり、様々な色のついたライトを操作しながら、その前面や後面を見ることができる。 具体的な演劇の舞台装置の設計に利用することもできる。美的な要素として、スケールの概念に着目するのがねらい である。
●鏡箱 図面 中央の木の幹にあけた穴に、 金属製のピカピカ光る装飾や、羽などを差し込み、スイッチボタンをおすと、 幹に差し込まれた飾りは回りながら、上下左右の鏡にいくつもの反射を投げかける。 6枚の鏡の角度は互いに平行ではないので、錯乱した空間となる。
 

●ブラックライト 図面
●ベルクロ 図面
●回転テーブル 図面
●イーゼル平 図面
●イーゼル縦 図面

 


1962 Art Carnival in India photo [The Art Barge]
 

1818 小説「フランケンシュタイン」

概念は知覚の視覚的成分・触覚的成分・音響的成分により学習される。

自分の生涯の初期のころを思い出すのは、かなり骨の折れることだ。あのころの出来事はみな入りみだれ、ぼやけて見える。数知れぬ不思議な感覚が自分をとらえた。自分はいっぺんに見、触れ、聞き、嗅いだ。そしておのおのの感覚の働きを識別できるようになるまでには、じつに長い時間がいったのだ。

だんだんと強い光が神経を圧迫しだしたので、目をつぶらずにはおれなかったのを覚えている。そうすると暗闇がせまってきて、自分は不安になった。だがそう感じるまもなく、今思えば目をひらいたのだったろうが、またもや光がどっと射してきた。自分は歩いた。それからおりたように思う。