谷川俊太郎「二冊の本」

歴史の本は重いな
こわばった体の中の
まだ熱い鉛の弾丸
崩れた石の廃墟の下の
無数のうそ
たくましい男たちの肩にかかる
ひとつの国の重力

歌の本は軽いな
苦しみのはてにはじける
心の風船
空に消えることを願う
祈りの叫びー

国際宇宙ステーションの体重計
縮めたバネで押し返される時の勢いで体重を量る

 

 重量単価