あかてん(明転)
舞台が明るいまま舞台転換をすることをいいます。「いどころ換わり」や「回り舞台」、「スライディング・ステージ」、「迫り」などによる転換で使われることが多く、舞台裏の「見切れ」などをぼかすために多少光量
を落とす場合もあります。「暗転」の対語で、「めいてん」ともいいます。
あしびょうし(足拍子)
神楽・能楽・歌舞伎で足の裏全体で床を踏むことです。
アドリブ ad-lib
ラテン語の「好きなように、気ままに」という意味の言葉が英語化したものです。即興演奏の事や演劇などの台本に書かれていない即興的なせりふや動作のことをいいます。
ありもの(有り物)
劇場や劇団などがすでに所有していて新たに注文して作らなくてすむ物をいい、主に小道具・衣装などに用いる用語です。
アンコール encore
「再び」という意味の仏語が元の言葉です。バレエ・音楽会などで出演者の出来栄えをたたえて、拍手掛け声などを送って再度の演技(演唱・演奏)を求めることをいいます。また、好評であった演じ物を再演する場合に「アンコール公演」という呼び方をしています。
あんてん(暗転)
舞台転換を照明を消した暗い中で行う事をいいます。幕を開けたまま、舞台・客席とも照明なしで行う場合と、舞台は「暗転幕」を降ろして、幕の中に照明をつけた状態で行う場合とがあります。転換のない真っ暗な状態を、誤って「暗転」という人が多くなっています。
いかす(生かす)
一度中止したものを再び上演することをいいますが、かなり広い範囲に使われる言葉です。削った台詞を生かしたり、裏の仕事の手順や段取りを復活させたりする場合にも使います。
いしょうしらべ(衣装調べ)
衣装の「付け帳」によって整えられた衣装を、上演前に俳優各自が実際に着てみて、形・寸法・色彩
・模様などが役柄にあっているかどうか、あるいは演技に支障をきたさないかなどの出来具合をしらべることをいいます。俳優・演出家・製作者・作者・舞台監督・衣装デザイナー・舞台美術関係スタッフなどが立ち会います。
いたつき(板付)
「板」とは舞台のことで、幕が開いたとき、あるいは廻り舞台が回ってきたとき、出演者がすでに舞台にいることをいいます。またその役のこともいいます。
いちのき(一の柝)
歌舞伎では舞台進行の合図として「拍子木(柝)」を用います。道具の転換をする場合、「転換用意」の合図に一度「チョーン」と打ち、次に「転換開始」の合図としてもう一度「チョーン」と打ちますが、この場合に最初に打つ柝を「一の柝」、次の柝を「二の柝」といいます。
いち(一)ベル 劇場で開演を予告するために鳴らすベル、ブザーまたはチャイムのことをいいます。ロビー、廊下などに居る観客に着席をうながす為に、観客席と、廊下の両方で通
常開演5分前に鳴らす「予鈴(よれい)」の事です。小さい劇場などでは3分前に知らせるもあります。尚、「二ベル」は開演ベルま又は本ベルといい開幕寸前に観客席で鳴らします。
いっちょうぎ(一丁柝)
歌舞伎において開幕中に使用される「柝」の用法の一つですが、「迫り」の上げ下げや「振り落とし」「振り被せ」などのきっかけの合図として打たれる単発の「柝」のことをいいます。「一丁の柝」あるいは「一丁」ともいいます。同じ一丁の柝でも、「幕開き」や「幕切れ」の「柝の頭」や「止め柝」と区別
した言い方です。
いってこい
舞台装置や照明の転換で、A場面の次にB場面になり、それが終わって、また元のA場面
に戻ることをいいます。
いっぱいかざり(一杯飾り)
@舞台全体に飾り込んだ舞台装置のことをいい、一つの演目の全幕を一つのセットで上演する場合にこういいます。
A「回り舞台」上に一杯の大道具を飾る事もこういいます。回り舞台上に二場面
あるいは三場面を飾った時、それぞれを「二杯(二面)飾り」「三杯(三面
)飾り」といいます。
いどころ(居所)
登場人物の舞台上の定位置を指します。歌舞伎では役によって位置する場所が大体定められています。主役は舞台中央か上手、脇役は下手に位
置するのがふつうで、女房役は亭主役より後ろに下がり身分の高い役は中央か、上手に座ることが多いようです。
いどころがわり(居所換わり)
回り舞台を使用せず、役者が居所のまま道具を転換させることをいい、種々の仕掛などを用いて観客席の目の前で舞台道具を変化させることです。「あおり返し」・「迫出し」・「がんどう返し」・「田楽(でんがく)返し」「引き道具」などがあります。
いれこみ(入れ込み)
劇場の入口の扉を開いて観客を入場させることをいいます。現在では開演30分前に始めるのが一般
的です。“開場”ともいいます。
いろもの(色物)
寄席演芸の総括的名称です。かつては寄席そのものを色物席と総称していました。東京の寄席が落語を中心に演じ物を組むようになってからは、漫才・奇術・太神楽・音曲・声色・紙切りといった落語以外の演芸を指す言葉となりました。中心となっている演芸に色どりを添えることからこの名があります。
インターバル interval
「幕間(まくあい)」、休憩時間のことです。
うける(受ける)
観客に喜ばれることをいいます。「受け」をねらう、などのように用いられます。
うちあげ(打ち上げ)
「千穐楽(せんしゅうらく)打ち納め」の意味で、興行の最後の日のことをいいます。現在では興行最終日に行う興行の無事終了を祝う祝宴のことをいいます。
うちだし(打ち出し)
一日の芝居の終わることをいいます。歌舞伎劇場で芝居が終わった時の合図として下座で「打ち出し」の太鼓を打つことから起こったと思われる劇場用語です。
うら/うらかた(裏/裏方)
「裏」は劇場の緞帳を仕切りとして、舞台側と客席側に分けた場合の舞台側を総称していいます。
「裏方」は出演者を除く舞台裏で働く全ての人を指す言葉です。舞台監督・大道具係・小道具係・衣装係・床山・照明係・効果
係・楽屋係などの総称です。
エピローグ epilogue〈仏〉
ある物語が終わった後に、より効果を上げるために付けられる短い場面の事をいいます。
えんしゅつ(演出) direction
「戯曲」や「脚本」の再生的イメージを立体的、時間的な具体的イメージに転換する仕事のことをいう言葉です。上演台本の決定から上演までの創造過程で、作品としてそのような形で観客に提示するかに主眼をおき、配役・俳優の演技・装置・照明・衣装・音響・効果
・小道具などを統一して、芸術的に融合調和させる作業をいいます。公演態勢になってからは、「舞台監督」がこの役割を引き継ぎます。
えんしゅつか(演出家) director
「演出」の過程を具体的に実践する専門家のことです。「戯曲」を解釈し、その解釈に従い、俳優の稽古を行い舞台装置・照明・音楽などに指示を与え、芸術的・技術的な統一を図る人をいいます。
エンターテイナー entertainer
観客を楽しませる娯楽的要素を主とした演技を行う芸人のことをいいます。
エンディング ending 演劇や楽曲の終わりの部分のことをいいます。一つの公演の終わりの部分をどのように構成するかは、演出家や出演者の力点を置く部分です。
おおぎり(大切り)
歌舞伎狂言の並べ方の内、その日の最終の演目のことをいいます。「大喜利」とも書きます。
おおづめ(大詰め) 二幕以上の劇の最終幕のことをいいます。
オーディション audition
演出家・プロデューサー等のスタッフがイメージにあった演出を行うための出演者を選出するために、出演希望者の演技・歌・舞踊などについてテストを行うことをいいます。
おおべや(大部屋)
大勢の出演者が入れる楽屋のことをいいます。歌舞伎では端役の入る楽屋または端役のことを「大部屋」と呼んでいます。
おきどうぐ(置き道具)
机・椅子・戸棚などの家具類で舞台装置の一部として、幕が開いた時にすでに舞台上に置いてある小道具のことをいい、「出道具」ともいいます。「持道具」に対する言葉です。
おはやし(お囃子)
歌舞伎劇の伴奏音楽である「下座音楽」とその演奏者のことを指します。歌舞伎の囃子は、笛(能管)と小鼓・大鼓・太鼓(締太鼓)などで演奏しますが、この四つの楽器は舞台上に出て演奏することもある基本の楽器で、「四拍子(しびょうし)」といいます。その他三味線・大太鼓・篠笛などが主な楽器ですが、各種の管弦打楽器が含まれます。唄方と三味線方を除く「お囃子」の演奏者は「鳴物師」とも呼ばれます。現在では、鳴物や唄・三味線も含めて、「下座音楽」を演奏する人すべてを「お囃子」ということが多いようです。
おもてかた(表方)
劇場の緞帳を境にして、その表(観客席)側で働く人々のことをいいます。プロデューサー・入場券売り場の係・もぎり(入場受付係)・営業・経理・宣伝係などの劇場の興行経営面
にたずさわる関係者を総称していいます。
オン・ステージ on stage 舞台に出演者が上がることをいいます。
か(科)
「科」は「仕種(しぐさ)」を意味する言葉で、俳優の身体の動き全体を指す言葉です。身振り・動き・仕方・こなしなどともいわれます。
カーテン・コール curtain call
幕が降りた後に観客の賞賛の拍手に応えて再び幕を開けて喝采に応えること、または出演者が幕の前に出て喝采を受けることをいいます。最近はプログラムの中にあらかじめ「カーテンコール」が組み込まれていることもあります。
かいえん(開演)
興行(公演)などが開始されることをいいます。
かいしゃく(介錯)
扉や障子の開閉など演技者の動作・行動の介助をすることをいいます。そのほかにも舞台での作業全般
にわたって介助・補助することを「介錯する」といい、舞台では日常的に使われる言葉です。
かえし(返し) 演劇などの稽古の途中で具合の悪いところを、その小部分だけ繰り返して稽古する「小返し」のことですが、単に「返し」という場合も多いようです。
かおあわせ(顔合わせ)
公演の稽古始めに出演者スタッフ全員が集まって、文字通り顔を合わせることをいいます。また、所属劇団、プロダクションや分野などが違う出演者が同じ舞台に出演する場合に「異色の顔合わせ」といったりします。
かおよせ(顔寄せ)
歌舞伎興行の稽古に入る前に、上演関係者全員が集合して、作者が狂言名題を読み上げ、手を打って散会する儀式のことをいいます。これは明治時代に起こり、現在も続いていますが、歌舞伎以外でも、公演一座の臨時結成式として行われる場合があります。
かきぬき(書抜き)
本来は歌舞伎劇で、「脚本(台帳)」の中から一つの役の台詞(せりふ)だけを書抜きした物をいい、これを役者が受け取るとその役を引き受けたことを意味しました。今では広く各分野において、必要な部分を抜き書きすることなどに用いられます。例えば、道具帳の「書抜き」などといいます。
がくや(楽屋)
出演者が化粧したり衣装を着るなど、上演に必要な準備・待機をする部屋のことをいいます。現在では、舞台裏で働く人々の準備・待機をする場所の総称ともなっています。
かげいた(陰板) 舞台の陰の「板付き」の事です。公演の幕開きのときにすでに舞台の陰で待機している出演者のことをいいます。「板付き」に対する言葉で、「陰の板付き」の意味です。
かげうち(陰打ち)
歌舞伎舞台で俳優の動作に伴う音を誇張するために、大道具方が上手袖の床に「付板」を置き、拍子木で打つ「つけ音」のことで、それを「陰打ち」といいますが、単に「つけ」ともいいます。高揚する場面
を印象づける効果を出します。
かげまわし(陰回し)
舞台の幕を降ろし、観客の目を遮って回り舞台の転換をすることをいいます。
かざる(飾る)
大道具・出道具を舞台に組み立てる事をいいます。また「飾り込み」、「建て込み」、「組み込み」などともいいます。
かたりもの(語り物)
邦楽の歌と語りからなる物語音楽の中で、語り聞かせる叙情詩的な筋のあるもののことをいいます。「言葉」の内容表現やアクセントなどが重視される声楽曲のことで、代表的なものとして、平曲・浄瑠璃・講談・浪花節などがあります。
かはく(科白)
舞台俳優の「身体の動き(しぐさ)」と「言葉(せりふ)」全般を表す言葉で、科は「しぐさ」、白は「せりふ」を意味します。
かぶせる(被せる)
すでに飾ってある舞台装置の前面を、別のドロップまたは張物で覆い、それまでとは別
の場面にすることをいいます。
かぶりもの
俳優が扮装するための、かつら以外に頭にかぶる物の総称をいいます。
かみだし(上出し)
「回り舞台」を時計回りに上手側を舞台前方に回転させる事で、「逆回し」ともいいます。
かみて/かみ(上手/上) stage left /略記号L
観客席から舞台に向かって右側のことをいいます。日本独特の客観的言い方です。西洋では俳優の側からの見方で舞台から客席に向かって左(left)といいます。
からぶたい(空舞台)
舞台装置などが全く飾られていない空っぽの舞台のことを、また舞台上に出演者がいない状態のことをいいます。
き(柝)
人形浄瑠璃・歌舞伎などで使用する拍子木のことをいいます。柾目(まさめ)の通
った樫の木で造ったものを用い、劇の進行のいっさいの合図は、すべてこの拍子木の音で行います。
きえもの(消え物)
舞台の進行中に出演者が使用する飲食物・タバコなどをはじめとして、舞台で使うローソクなどや、破るもの・壊すものなどの消耗品を指し、主に小道具扱いの品物のことをいいます。今では意味が拡がり、効果
用の氷・ドライアイス・灯油など舞台裏の仕事での消耗品も「消え物」といっています。
ぎじゅつかんとく(技術監督)
プロダクション(一つの公演形態をとったある集団)における、技術的側面
のすべての統括責任者のことをいいます。現状の日本では、舞台監督がその任務を代行あるいは背負っているのが普通
ですが、本来的には舞台監督と技術監督とが別個に居て、公演の準備や遂行をすることが望ましいです。外国での技術監督の業務の実例を挙げると、劇場建物の管理、作業安全対策とそのための設備管理、劇場実務担当者の人事管理と福利厚生対策、年間の公演計画に従ってのデザイン締切日の設定や制作部門などの具体的スケジュールの決定、デザイナーとの打ち合わせ連絡などの窓口、各パートの責任者と協力して製作図面
の作成と必要経費の算出、などなどから始まって、公演終了後の舞台美術・衣装関係の品物の倉庫収納の手筈の調整から搬出・搬入の運搬の手配に至るまで、と実に広範囲にわたっています。我が国では、これから確立される仕事の分野です。
きっかけ cue
行動を起こす良いタイミングを表す言葉です。またはそれを知らせる合図のことをいいます。舞台の進行に必要ないろいろな合図全般
のこともこう呼んでいます。テレビ・放送などで使われてる、キュー(cue)の同意語です。
きっかけあわせ(合わせ)
稽古の中で、俳優の登退場のタイミングや裏の各パートのそれぞれの分野でのタイミング、・・・例えば照明の変化のスタートのタイミング、音響効果
の入るタイミングなど・・・を合わせる為に行う、きっかけだけを主眼とした稽古のことを「きっかけ合わせ」といいます。
きのかしら(柝の頭) 歌舞伎において、幕切れのせりふや動きあるいは下座またはちょぼの程よきところを「きっかけ」にして大きく打つ「一丁の柝の音」のことをいいます。世話狂言のときは、そのあとに段々小さく刻んでゆく「拍子幕の柝」を続け、幕が閉まるのに合わせてひときは強く「止め柝」をいれます。
きまる(決まる)
歌舞伎において、演技の振りが、高潮に達するか一区切りついた時、一瞬静止して形をつけることをいいます。かりに演技に句読点をつけるとすれば、「見得」は句点「。」であり、「きまる」は読点「、」と言えるでしょう。
きゃくしょく(脚色)
小説・随筆・詩などの演劇のための作品でないものを、演劇上演のために脚本に書き直すことをいいます。
きゃくほん(脚本)
俳優によって舞台で演じられる事柄を、「せりふ」を主体に、「ト書き(演出・演技・装置・照明・音響効果
などに関する作者の指定)」をいれて文字で表現したものをいいます。脚本は戯曲とほぼ同義語ですが、脚本はあくまでも演劇上演を目的とした作品です。
きゃくまわし(逆回し)
「盆(回り舞台)」を時計回りに上手から下手の方向に回すことをいい、「本回し」の逆なのでこう呼びます。一般
的に「上(かみ)出し」と呼んでいます。
くろご(黒衣)
歌舞伎において、登場人物や、舞台の進行について介添えをする人(後見=こうけん)のことをいいます。黒木綿の衣服に黒い頭巾を被り、舞台上で合引(あいびき=舞台に控えている役者の形を整えるために使われる黒い腰掛けの一種)を出したり、品物を渡したり、俳優の衣装を変化させる手伝いをしたり、不要になった小道具を片づけたりする役です。歌舞伎をはじめ舞台の世界では「黒」は「無」を意味するので「黒衣」は居ないものとみなす約束事となっています。ときに「黒子=くろこ」と誤記、誤読されることがありますが、「黒子」は「ほくろ」と読みます。背景が海や雪の場面
の場合に、水色や白の衣装を着ることもあります。
けい(景)
演劇の脚本の中の場面割りのうち、一つの幕を小さく分割したものの呼び方です。第一幕・第一景のように使います。
げざおんがく(下座音楽)
歌舞伎劇の伴奏音楽のことをいいます。三味線・鳴物・唄のうちの一つだけの伴奏によるものと、それぞれが組合わさったものがあり、琴や胡弓が加わることもあります。長唄囃子連中が担当します。歌舞伎の中で舞踊劇と写
実的要素の多いしぐさとせりふを主とする科白劇とが区別されるようになり、舞踊劇では「出語り」や「出囃子」といって舞台に並んで演奏しますが、科白劇の伴奏音楽は観客から見えないところで演奏をするようになりました。舞台下手大臣柱の外の黒板塀で囲まれ、黒御簾(みす)を掛けた中で演奏します。「黒御簾音楽(くろみすおんがく)」ともいわれています。
けす(消す)
舞台上に飾り込んだ大道具、小道具などが演出上の変更などで不要になった時に取り除くことをいう言葉です。
ゲネプロ Generalprobe<独>/略記号G.P
独語Generalprobe(一般試演の意)の略された言葉で、舞台稽古のことを指します。本番と全く同じ条件で舞台で行う稽古のことで、オペラの分野でよく使われる言葉です。
こうけん(後見) 歌舞伎において演技中の俳優の後に控えていて、衣装を直したり、着替えを手伝ったり、小道具の受け渡しや片づけなどをしたりする人のことをいいます。歌舞伎では多くの場合、黒い衣装に黒頭巾の「黒衣(くろご)」がこれに当たりますが、舞踊や特定の演じ物では紋付き袴や、裃(かみしも)姿で介添えをします。さらにかつらを付けて務める演目もあります。
こうばん(香盤)
出演者名とその役と出演場面を書いた一覧表のことをいいます。後に、切符売り場で使う観客席の座席を描いた図表で、前売りで売れた席を消してゆく物のことも「香盤」というようになりました。
こがえし(小返し)
演劇などの稽古の途中で具合の悪いところを、その小部分だけを繰り返して稽古することをいいます。
こぎれ(小切れ・小裂)
衣装に付属する小さな布類、またはそれを扱う人を指す言葉です。手拭い・足袋・シャツ類と暖簾など大道具に付ける物も取り扱いますが、衣装・小道具とも分類は難しく、主に実用的な布製品を指します。
こけらおとし(柿落とし)
新築または改装した劇場での初めての興行のことをいいます。
こどうぐ(小道具)
舞台で使う家具什器、室内の装飾品、俳優が携帯する品物などの総称です。またその担当者のことは「小道具方」といいます。舞台で使用される、装身具・鞄・刀・傘など手に持つ物(「持道具」)、家具などの舞台に置く物(「置道具」)、ローソク・食品など舞台上で無くなる物(「消え物」)馬・篭などの乗り物などの諸道具のことをいい、大道具・衣装などと区別
は複雑で、例えば、家の雨戸は大道具ですが、それに人を乗せたり、立ち回りに使ったりすると小道具の担当になります。
さんきょく(三曲)
地唄や琴の合奏形式の名称です。現在では箏(そう)、三絃、尺八の三種類の楽器で合奏することをいいます。江戸時代には、尺八が一般
人には禁止されていましたので、主に箏、三絃と胡弓で三曲合奏が行われていました。
シーン scene
場面または情景を意味する言葉で、多様な使い方をします。
じうた(地唄)
邦楽の一種目である上方唄の別名で、江戸時代初期から京阪地方で行われ、盲人音楽家によって大成されました。主に家庭音楽として発達し、唄いながら三味線を弾く、弾き唄いを原則としています。三味線の技巧は最も繊細で、左指の使い方が複雑です。やや太く大きい三味線、中桿を用います。
しかけ(仕掛け)
演出上の要求から、大道具・小道具、衣装などに変化する仕掛けをすることをいいます。
じかた(地方)
歌舞伎舞踊(日本舞踊)等で、踊り手に対して唄や三味線等の音楽演奏する人(お囃子連中を除く)の事をいいます。これに対して踊り手を「立ち方(たちかた)」といいます。
しこみ(仕込み)
上演にさきだって劇場で各分野の裏方が必要な準備をしてセッティングをする事をいいます。
して(仕手) 能における主役を演じる役柄のことをいいます。
しびょうし(四拍子)
能の囃子に使われる小鼓・大鼓(おおつづみまたはおおかわ)・太鼓・能管(笛)のことをいいます。またそれらの演奏者をも指します。この四種の楽器は下座音楽などの邦楽でも使われています。
じまえ(自前)
俳優が演技に必要な衣装や小道具を、自分の持ち物を使う時に「自前」で、といいます。いわゆる専門業者から借りないで調達をすませることです。
しもだし(下出し)
回り舞台の回し方で下手側を舞台前方から上手側の方向に回していくことをいいます。古くは「本回し」というのが正しい言い方だったようです。
しもて/しも(下手/下) stage right/略記号R
観客席から舞台に向かって左側のことをいいます。日本独特の客観的言い方です。西洋では舞台から客席に向かって右(right)といいます。舞台の下手と上手の両方を指すときに、よく「しもかみ」という言い方をします。
じょうしき(定式)
舞台で使用される大道具・小道具・衣装などで一定の約束事で決められた物をいいます。
じょうしきもの(定式物)
歌舞伎の伝統の中で作られた劇場に常備されている、基本的な大道具や道具類で、絵柄や寸法が定(き)まっていて演目によって使う種類がきまっている大道具のことをいいます。組み合わせや応用がきく寸法に出来ています。同じように演目によって決まっている小道具・衣装・かつらなどの事もこう呼んで居ます。
せりあげ(迫り上げ) 「迫り」で舞台に登場することをいいます。
せりさげ(迫り下げ)
「迫り」で舞台面より下げて退場することをいいます。
せんしゅうらく(千穐楽・千秋楽)the last night of“○○○”
興行の終了のこと、またはその日を指す言葉です。昔は秋興行の末日と、顔見せ芝居の末日のことで、このとき俳優一同が舞台に並び、口上(こうじょう)を述べて、座元が立って千穐楽の舞を舞ったことから起こった名称です。転じて、今ではすべての興行に使われる様になりました。略して「楽(らく)」といいます。劇場の火災を恐れたために、秋の字を使わずに穐の字を使いました。
そで(袖)
wings 舞台の下手側と上手側の観客席から見えない部分を指す言葉です。舞台の「ふところ」というところもあります。
だいほん(台本)
上演に必要な条件・指示などが記入してある脚本。劇の仕組み・舞台装置、せりふ、ト書き。昔は「台帳」といいました。「上演台本」の略語。
だしもの(出し物/演じ物)
興行の演目つまりレパートリーのことをいいます。
だめ(駄目)
一般的に俳優の演技や舞台美術(道具・衣装)、照明などで、演出方針やデザインにそぐわない部分や寸法違いをいいます。
だめだし(駄目出し)
演出家、担当スタッフが上演に関するすべての事柄の良くない部分を修正して行くために、具合の悪い部分を指摘し、こうして欲しいと要請を出すことをいいます。公演態勢に入ってからは、主に舞台監督が「だめ」を統括し、各担当者に訂正を指示します。囲碁の駄
目から転じた演出用語です。 ちょぼ 歌舞伎劇に出演する竹本(義太夫節)連中の事をいう俗称です。観客席から見て舞台右手の大臣柱の外側の二階の位
置で演奏するので、この場所を「ちょぼ床」といいます。人形浄瑠璃(文楽)の義太夫より軽視された意味が込められている呼び方です。
ちょん・ぱぁ 日本舞踊などで、華やかな場面の幕開きを一層派手に見せる演出上の手法で、暗い中で幕が開き切って入る「一丁柝(いっちょうぎ)」でスイッチ・インする操作や、大詰めのキマリの「一丁柝」で、半明かりの客席照明を一瞬に明るくすることなどの操作をいう俗称です。
つかいまわし(使い回し)
本来は一つの芝居で使った出道具を、同じ興行の別の芝居で、もう一度使う事をこのように呼びました。今では、同じもの(大道具・小道具・効果
音など)を他の演目や場面に利用することもいいます。
つけ〔うち〕(付け〔打ち〕)
歌舞伎においては緊迫した演技動作や「見得(みえ)」の決まりなどをより効果
的にするために、舞台の上手の端の床上に置いた「付板(つけいた)」を拍子木で打って音を出して誇張します。これを「つけ」といい、これを打つ人を「つけ打ち」といいますが、大道具方の受け持ちです。
つけいた(付け板) 「つけ」を打つとき、拍子木で叩く板のことです。
つけちょう(付け帳)
ある演目の、一人一人の役(俳優)について、場面ごとに持道具・衣装・かつら・小切れ・履物などの必要なすべての物を詳細に調べ、演出家と打ち合わせて、それぞれを一冊の帳面
にした物のことをいいます。この「付け帳」によって各担当者が制作または調達をして、立ち稽古や舞台稽古に間に合わせます。「付け」という場合もあります。
で(出)
舞台に登場することまたは登場していること全般をいう言葉です。「出待ち」・「出語り」・「出打ち」などと使われます。
でいり(出入り) 舞台への登場、退場のことをいいます。
てうち(手打ち)
祝い事や取り決めの後に、関係者一同揃って「手打ち」をするのが習わしで、打ち方は三・三・三・一の数に打ち、これを「一本締め(いっぽんじめ)」といいます。また二度繰り返す、三度繰り返すこともあり、それぞれ二本締め、三本締めといいます。「手締め」ともいいます。
ではやし(出囃子)
@歌舞伎音楽の演奏形式で、舞台の正面奥や下手または上手に浄瑠璃台(現在ではこれを一般
に『山台』と呼んでいることが多いようです)を組んで、その上に、地方・お囃子連中が出て演奏をする場合をいいます。
A寄席などで落語家や漫才などの登場に使われる音楽(三味線・太鼓など)のことをこういいますがコントなどの登場のためのテープなどによる音楽をいうこともあります。
どうぐしらべ(道具調べ)
歌舞伎では舞台稽古を順調に進行させるために、舞台稽古に先立って、大道具・出道具を飾って手落ちがないかを点検することをいいます。近年では照明などを含めた技術リハーサルにまで範囲を拡げてこの言葉が使われます。
どうぐちょう(道具帳)
舞台装置のデザイン・プランのことをいいます。各幕各場ごとの舞台面透視図(色彩
立面図)が基本ですが、各場面平面図・各部分詳細図など、大道具製作やセッティングの上で必要なものすべてを総称していいます。
とがき(ト書き)
脚本の中で、登場人物の特徴(表情や動作など)や出入りや場面の状況・照明・音楽・効果
などの指定を、セリフとセリフの間に書いたものをいいます。せりふの後に「ト門口へ行こうとする‥‥」などのように、はじめに「ト」と付けて書いたことからでた言葉です。
とくしゅこうか(特殊効果)
一般の舞台美術・照明の分野に含まれないものによる視覚効果のことをいいます。舞台ではスモーク・マシン、ドライアイス、炭酸ガスなど、煙効果
が主ですが、テレビ・映画ロケでは火薬や爆薬、火焔などの効果も扱われます。
とこやま(床山)
歌舞伎用語で、演技者の使用する「かつら」の装着、手入れ、保管などを担当する係のことで、それらを行う部屋を床山部屋といいます。
とちる
本来は俳優が舞台上の動きにきっかけをはずしたり、登場のタイミングをはずしたりすることを表す言葉です。現在では意味が広がって、せりふを間違えたり、演技をやりそこなったり、まごついたりすることにも使います。さらに、俳優だけでなく裏方が転換のきっかけを間違ったり、舞台上でへまをすること全般
をも「とちる」といいます。
とっこう(特効) 「特殊効果」の略語です。現場ではよく使われる言葉です。
とばす(飛ばす) 幕類・大道具などの吊物を「フライズ空間」に吊り上げることをいいます。舞台準備中に照明器具を吊り上げる時などにも使われます。
ドライ・リハーサル dry rehearsal
テレビ用語で、カメラを通さずに行われる稽古のことをいいます。本番前のカメラ・リハーサルに備えて行います。
とる(取る)
舞台関係者は、「終わる」「終わり」などのことばを嫌います。終わる・終わりの同義語として「取る」「取り」を使います。また、「上がる」という使い方をする時もあり、たとえば、「これで稽古を取って上がりましょう。」という用に使います。
とれる 終演となること、または稽古が終わることをいいます。
とんぼ(筋斗)
歌舞伎の代表的タテの一つで、主役に投げられたり切られたりした役者が、舞台上でもんどりを打って宙返りすることをいいます。「とんぼを切る」という言い方が普通
に使われます。
なかび(中日)
芝居興行のちょうど半ばの日のことで、この日に幹部俳優が楽屋の者、その他に祝儀を出す習慣があり、その祝儀の名称にもなっています。今でも一般
の興行のはぼ中間に当たる日をこういいます。
なかまく(中幕)
歌舞伎狂言の並べ方を表す言葉で、一番目の次に上演する一幕物の演目のことをいいます。
なりもの(鳴り物) @下座音楽に使われる三味線以外の楽器の総称です。太鼓・大鼓(おおかわ)・小鼓・笛・大太鼓を中心とした、使われるすべての楽器のことをいいます。
A三味線と唄以外の器楽の合奏のことをいい、その合奏団のこともいいます。また、洋楽などの打楽器奏者が用いる種々の小物をいうこともあります。
にはいかざり(二杯飾り)
回り舞台での舞台装置の飾り方の一つで、背中合わせに異なった二場面を組み立てることをいいます。
に(二)ベル
「本鈴」のことをいいます。開演を知らせる合図ですが、ベルに限らず、チャイム・ブザー・合成音やS・E(効果
音)・音楽などを使用することもあります。
ぬきげいこ(抜き稽古)
演出家の要望によって、重点的に稽古をする必要のある部分を抜き出して行う稽古のことをいいます。また、出演者の不在などの都合によって、出来る部分のみを稽古する場合にもいいます。
ば(場) scene
演劇の脚本の中の場面割りのうち「幕」に次ぐ区切りである「場」を表す言葉で、第二幕第三場のように使います。
はく(白)
「白」は「台詞(せりふ)」を意味する言葉で、舞台で俳優が話す言葉をいいます。その言葉には「対話(dialogue)」、「独白(monologue)」、「傍白(aside)」などがあります。
はねる その日の上演が終了したことを指す言葉です。
ばびる/ばみる
舞台稽古の際に、舞台上で出演者や大道具・小道具などの位置を決めて、決めた位
置の床等に粘着テープなどで目印を付ける事をいいます。「ばみる」ともいいます。
はやがわり(早替わり) quick change
本来は歌舞伎の演出の一つで、同じ俳優が素早く変身することをいいます。衣装はもちろんメーキャップ・結髪(かつら)まで替えることが多く、大道具なども含めて場面
を全く異なったイメージに転換させる場合に用いることもあります。
ばらす
設置してある道具・機器などを撤収することをいいます。また、不要になった大道具などを解体・処分することもいいます。
パロディー parody
良く知られた作品等の一部を模しながら、内容を変えて滑稽化したり、風刺したりすることをいいます。
はんだち(半立ち)
読み合わせと立ち稽古の中間的段階の稽古で、俳優がせりふを覚えきれずにいる段階で、台本を手にして大体の動きを追いながら、読み合わせを行なう稽古のことをいいます。
はんまわし(半回し)
回り舞台を四分の一(90°)だけ回すことをいいます。今までのセットの側面
や、塀の外等別のシーンへ移行する演出を行なう場合に効果的な、回り舞台の使用技法です。
ひきぬき(引抜き)
歌舞伎における衣装の早替わりの手法です。数枚の衣装を前もって着込んでおいた俳優が、舞台上で演技しながらきっかけで上の衣装を素早くはぎとり、一瞬のうちに別
の衣装に替える事をいいます。引抜きは「後見(こうけん)」が手伝うことになっています。
ひのきぶたい(檜舞台)
一流舞台を意味する言葉です。昔、歌舞伎劇場のうち大劇場の舞台が檜の板で張られていたことから起こりました。
フィナーレ finale
本来は音楽用語です。一演目のうちの終幕部分、大詰めのことをいいます。
ぶたいかんとく(舞台監督)
演出家を助けて、上演のための実務的な調整や進行の全責任を負うと共に、初日が開いてからは、演出家の意図に沿って舞台の進行を統括する専門家のことをいいます。
ぶたいげいこ(舞台稽古)
観客を前にする初日前の最終稽古として、公演する舞台での一切の条件を本番どおりにして行なう稽古のことをいいます。この間に演出家を中心に、すべてが確認・点検・修正・決定されます。
ぶたいてんかん(舞台転換)
一つの公演の中で、次の「演目」や「幕」、「場」の為に場面(舞台装置)などを換えることをいいます。
ぶたいびじゅつ(舞台美術)
舞台における、演出に必要な視覚的要素を総称する言葉です。舞台装置(大道具・小道具)のほか、演技者の衣装・かつら・メークアップ・舞台照明まで含まれる表現です。
ふところ wings
観客席からは見えない舞台の下手・上手の空間のことをいいます。「舞台袖」または略して「袖」と言うこともあります。
ふりおとし(振り落とし)
歌舞伎における場面転換の一つの手法です。舞台上部から吊ってある「浅葱幕(あさぎまく)」、「黒幕」「道具幕」などの幕をきっかけで一瞬に落とす技法ですが、次の場面
が一瞬に現れる効果のため観客に強い印象を与えることができます。「切って落とす」ともいいます。「振り竹」という仕掛けのあるバトンによって操作します。
ふりかぶせ(振り被せ)
歌舞伎における場面転換技法の一つです。場面が終わった所で、舞台上部に仕込んでおいた「浅葱幕」や「黒幕」などを一瞬のうちに降ろして広げ、その場面
を覆い隠す事をいいます。振り被せた幕の前で演技をしている間に後で転換を終え、被せた幕を再び振り落として一瞬のうちに次の場面
に移行する「振り被せ・振り落とし」の転換も可能です。いずれの場合もきっかけの合図としては一つ打つだけの「一丁柝」で行ないます。
ふりつけ(振付) choreography
舞台の身振り・手振り・舞などの順序や段取りを考案することをいいます。また、その振付をする人を振付師と呼びます。また音楽などによって肉体の動きを考え、演出者に動きを付けることもいいます。
プロローグ prologue
序詞・序幕のことで、ドラマの導入部で主題や人物の紹介などを簡単に行なう部分のことをいいます。「エピローグ」に対する言葉です。
プロンプター prompter
プロンプター・ボックス(歌劇場の舞台前端の中央に観客から見えないように作られた囲い)か、または、観客から見えない場所から台本を見ながら、舞台上の俳優や歌手に小声でせりふやきっかけを教える役の人のことをいいます。歌舞伎では狂言方や後見がこの役割を務めます。かつてイギリスでは、舞台の上手側にプロンプターが居る決まりが有り、現在でも上手をプロンプト・サイド(P.S)、下手をオポジット・プロンプト・サイド(O.P)と表す場合があります。ただし、アメリカでは下手、上手が入れ換わって、下手をプロンプト・サイド、上手をオポジット・プロンプト・サイドといいます。
プロンプト・サイド prompt side/略記号P.S
イギリスの比較的古くからある専門劇場で使われていた」用語で、プロンプターがいつも座っていた方向から生まれた、舞台の「上手」を指す言葉です。アメリカでは普通
、「緞帳」の操作を行なう場所が下手側にあり、プロンプターもその近くに」いるため、この言葉は「下手」を意味しますので注意が必要です。
ほんあめ(本雨)
通常、降雨のシーンは音響や照明の効果によって行ないますが、必要によっては本物の水を降らせる事があります。それを「本雨」といいます。
ほんばん(本番)
映画界からの言葉で、テレビ・ラジオでよく使われている用語です。生放送の場合は本放送のことを、録画・録音などの場合は最終録画(音)のことを指します。今では、広く観客の前で興行として上演することもいいます。
ほんまわし(本回し)
盆(廻り舞台)の回し方で、下手から上手の方向に回すこと、つまり反時計回しのことで、一般
的には「下(しも)出し」と呼んでいます。
ほんみず(本水)
舞台上で本物の水を使って演出効果を高めることをいいます。大きな水槽などによる大掛かりな場合もあります。
ほんよみ(本読み)
上演戯曲が決まって、稽古の入る前に、スタッフ・キャストを集めて、作曲または演出家が脚本を読んで聞かせることをいいます。これによって登場人物の役柄や演出法を理解させ、作品の情緒を知らせることが容易になります。
ほんれい(本鈴)
開演を予告する「予鈴(よれい=通常5分前)」に対して、開演を知らせる合図のことです。普通
はブザーですが近年はチャイムや音楽などテープ録音によるものもあります。
ま(間)
俳優の科(しぐさ)、白(せりふ)などの行動と次の行動との間の「間合い(まあい)」の事をいいます。その「間合い」の取り方で緊張感に起伏が生まれます。「間に合う」「間が抜ける」などは、これから出た言葉です。
まき(捲き) 舞台などの進行を早くすることをいいます。
まく(幕) act
一つの作品の中の大きなシチュエーションの区切りを「幕」、その幕の中に含まれる場面
や時間経過などの小さな区切りを「場」といいます。
まく(幕) curtain
舞台で使用されるいろいろな用途の布製の幕類の総称です。舞台機構・設備の一部で、吊り物として使われる「緞帳」「中割幕」「袖幕」や、舞台装置の一部として使われる「背景幕」「段幕」などがあります。
まくあい(幕間)
一つの公演で演目と演目の間や一演目の場面と場面の区切りに幕を閉めます。この幕の閉まっている間のことをいいます。この「幕間」は観客にとっては休憩時間ですが、出演者と裏方にとっては次の場面
の準備の為の時間です。幕間は「まくま」ではありません。「まくあい」と読んで下さい。
まくあき(幕開き)
一つの劇の一つの場面の幕が開き始める数瞬のことをいい、それは舞台の第一印象と言えるもので、重要な瞬間です。最近では物事の始まることをの何々の「幕開け」とよく表現しますが、演劇の用語としては「幕開き」が正しいのです。また開幕直後の一つの場面
、つまり序幕を指すこともあります。
まくうち(幕内)
いわゆる舞台裏全般の総称で、そこに働く人をいう事もあります。楽屋を表す「幕の内(まくのうち)」という本来の言葉から来ています。
まくぎれ(幕切れ) 一つの場面が終わって幕が降りる直前の数瞬間のことをいいます。最後の印象を残す瞬間なので「幕を切る」といって舞台芸術では最も重要視されています。また、閉幕直前の一場面
、つまり終幕を指すこともあります。
まくそと(幕外)
歌舞伎の幕切れに、幕を引いた外側、主に花道で演技が続く状態をいう演出用語です。この時は、演技を続けている俳優を印象づけるために、「定式幕(じょうしきまく)」は全部閉めずに下手黒御簾前だけ開けておきます。演技スペースを拡げるために、幕を奥へ引き寄せるのが普通
です。
まつばめもの(松羽目物)
題材を能あるいは狂言から取った歌舞伎舞踊のことをいいます。背景には能舞台と同じように正面
に根付きの老松を描いた「松羽目」、左右の袖には竹を描いた「竹板目」、下手に「揚幕」、上手に「切戸口(臆病口)」を使うのが普通
です。
まわる(回る)
回り舞台(盆)を回して舞台転換をすることをいいます。歌舞伎の「脚本(台帳)」で「回る」と書いてある場合は「明転」を指す場合が普通
です。
みえ(見得)
歌舞伎独特の演技形象のひとつで、芝居が最高潮に達した場面で、演技の高揚を誇張した表情や形でストップモーションにして見せる事をいいます。「見得を切る」演技の基本は「にらみ」で、怒り・悲しみなどを首を振ったりしてにらみをきかせて表現します。通
常、「見得」の印象を強めるために「つけ」を打ちます。
みきれる(見切れる)
大道具を飾り付けたとき、観客席から舞台裏が見えてしまうのを「見切れる」といいます。これは「見切り」の位
置が悪いか、その寸法の見込み違いが原因です。
もぎり
劇場・ホールなどの入口でチケットをチェックして、半券をちぎること、またその係のことをいいます。
もちどうぐ(持道具)
出演者が持って舞台に登場する小道具のことをいいます。装身具・ステッキ・刀剣などは持道具として公演期間中はふつう出演者が保管します。持道具・陰道具などの区分は複雑で明確な物もありますが、長い間の伝統的習慣で分けられています。
やたいくずし(屋台崩し)
舞台転換法の一つで、演技の進行中に仕掛けによって舞台装置の一部または大部分を崩すことにより次の場面
に移行する、また天変地異や戦乱のような災害場面を、観客の眼の前で展開して見せる技法のことをいいます。
やまば(山場)
演劇・舞踊・音楽などの全体的流れの中で、最も大切なあるいは高揚する部分をいいます。
よみあわせ(読み合わせ)
俳優が演出家を中心にして、各自の持ち役を声にして読んで、その駄目出しを受けながら、各人物の性格や行動などを研究しあう稽古の一段階のことをいいます。
よれい(予鈴)
開演を予告する合図で、通常5分前に客席・ロビーに鳴らします。「一ベル」ともいい、「本ベル(ニベル)」に対する言葉です。
ラン・スルー run-through
テレビ業界用語で、場面ごとに区切りながら(ブロッキング)でなく、全体を通
して行なう稽古のことをいいます。
リサイタル recital
独唱会・独奏会・独演会の事ですが、二人以上のソリストの合同演奏会の場合は、ジョイントリサイタルといいます。
リハーサル rehearsal(RH)
演劇や音楽の練習のことをいいます。舞台ではドレス・リハーサル(衣装・持道具などを付けた総稽古)、テレビ関係ではカメラ・リハーサル、ドライ・リハーサルなどがあります。
レビュー revue<仏>
パリやロンドンで始まった歌や踊り、寸劇などを入れたバラエティー・ショウのことで、次第に映画・オペラ・バレエなどの要素も取り入れられ、大がかりな音楽と踊り(ときにはスぺクタクルな)の加わったショウの形式のものになりました。
わき(脇)
能において主役の「シテ」に対して相手役を演ずる役柄をいいます。
わらう
片付けることを表す言葉で、舞台上の人物や道具類などが不必要になったときに退けることをいいます。
あいがけ(合い掛け)
「平台」を一台の「足」や「箱足(箱馬)」に半分ずつ乗せて「二重」を組む技法のことをいいます。
あおりかえし(煽りかえし)
二つに分割された張物の表と裏に別々の背景画を描き、蝶番(ちょうつがい)などの軸を中心に回転させる事で舞台の転換を行う方法のことをいいます。その軸に取り付ける張物の数で、「二枚あおり」、
「三枚あおり」などと呼びます。
あおる
舞台で「張物」などを立てるときに垂直にしないで、正面から見て少し仰向けに立てることがしばしばあります。そのような時に「あおる」といいます。
アクティング・エリア acting area
舞台面積のうち、大道具背景に囲まれ、出演者が演技を行うスペースのことを大づかみに、このようにいいます。
あげまく(揚幕)
@歌舞伎舞台の「鳥屋」から「花道」へ出るところで開閉される幕のことをいいます。
A歌舞伎舞台の上手ちょぼ床の下に吊られる幕をいいます。 B能舞台の鏡の間から橋懸りに出るところに吊り下げられた幕も「揚幕」ですが、この場合には特に「御幕(おまく)」と呼ばれています。
あさぎまく(浅葱幕)
浅葱色(水色)の木綿幕で、歌舞伎では日中の屋外を表します。また振り落とし、振りかぶせ、空バックなどにも使います。現在では「浅葱幕」を浅黄幕と表記することがありますが誤りです。
あし(足) 「二重」を組むために「平台」を乗せる台のことで、「箱足」、「箱馬」、「馬」など
のことを総称する言い方です。
あてもの(当て物)
歌舞伎用語です。大臣柱の外側、つまり上手のちょぼ床と下手の下座を囲う「張物」の事で、黒の場合と、舞台を広く見せたい情景の時には絵が描かれる場合とがあります。「囲い(かこい)」または「打物(うちもの)」ということもあります。
あぶらげ 直角三角形の「平台」を指す俗称です。
アリーナ・ステージ arena stage
オープンステージの一種で、中央の舞台を取り囲んで周囲に客席のある舞台をいいます。「センター・ステージ」ともいいます。
あんぜんネット(安全ネット)
@「綱元」の「カウンターウェイト」が万一落下した時に、飛散を防ぐために綱元を「簀の子(すのこ)」まで覆う金網のガードフェンスのことをいいます。
A「迫り」などの舞台床の開口部からの人や品物の落下を防止するために、開口部を覆う金網の棚状の覆いのことをいいます。
あんてんまく(暗転幕)
舞台転換用に使われる黒い幕で、緞帳のすぐ後に設備されているのが一般的です。幕の素材としては帆布が一般
的ですが、別珍やメルトンの幕もあります。舞台を真っ暗にして転換する代わりに、いったん暗くしておいて、この幕を降ろしてから、幕の中を明るくして速やかに転換を行い、再び舞台を暗くしてから、この幕をあけます。
いちもんじ〔まく〕(一文字〔幕〕) teaser
舞台間口一杯の幅で舞台上部に緞帳と平行に吊られた細長い黒幕で、吊り上げられている大道具や照明器具を、観客の視線から遮るための物をいいます。舞台にはふつう複数の一文字幕が吊られていますが、緞帳に近い方から順に、第1一文字、第2一文字というように呼んでいます。地方によって、「かすみ」、「べか」ともいいます。正確には「一文字幕」ですが、現場では単に「一文字」と呼ぶことが多いです。
いってんづり(一点吊り)
シャンデリアや柱などを「簀の子(すのこ)」から1本のワイヤーで吊り下げる装置の事をいいます。複数の「一点吊り」を使用して立体の大道具を吊り下げることも出来ます。
インターカム intercom
各パートへの指令や、舞台進行の連絡を行なう為の通信装置のことで、一般
に「インカム」とよんでいます。
イントレ intolerance
本来の用途は、建築現場用の鉄パイプ製の仮設組立足場ですが、強度に優れ簡単に組み立てられ、高さを得やすいために、仮設ステージや舞台でも使われるようになりました。「イントレ」の語源は、D・W・グリフィス監督の映画「イントレランス」(1916年)撮影の時に、スポットライトなどを設置する目的で多用されたので、この仮設用組立パイプ足場のことをイントレランス、略して「イントレ」といい、映画・テレビ・舞台の世界のみで通
用する俗称になりました。
ウィング wing 舞台袖または袖幕のことを指す言葉です。
ウェイト weight
カウンター・ウェイト・システムで使う錘(おもり)である「鎮子(しず)」のことをいいます。バトンに吊り下げられた大道具や照明器具などの重さに合わせて「綱元」の枠に乗せてバランスを取り、昇降操作を容易にするための錘です。また、「張物」などを立てるための「人形立て」などに使用する錘もあります。
うしろぶたい(後舞台)
主舞台の奥にある、主舞台と同じ広さを持った舞台のことをいいます。
うすべり(薄縁) 畳を表すために舞台に敷く畳表のことをいいます。
うちもの(打物)
@平面(平目(ひらめ))の大道具に柱・巾木(はばき)・飾りなどを立体的に打ちつけた物のことをいいます。
A歌舞伎用語です。大臣柱の外側、つまり上手のちょぼ床と下手の下座を囲う「張物」のことで、黒の場合と、舞台を広く見せたい情景のときには絵が描かれる場合とがあります。「当て物(あてもの)」または「囲い(かこい)」ということもあります。
うま(馬) 「二重」を組む時「平台」の下に置く台のことを指す言葉です。
うまたて(馬立)
舞台の下手、上手などの舞台袖に建てられた枠組で、劇場備え付けの大道具の張物や切出しなどを、立てて格納するための場所をいいます。
エプロン・ステージ apron stage
緞帳(どんちょう)より前の舞台のことで、緞帳が開いた時は本舞台の延長となり、緞帳が閉まっている時は独立した舞台として使うことが出来ます。
エレベーション elevation
舞台装置を正面から描いた絵図のことで、この絵は彩色されていて、舞台装置のための原画となります。
えんけいげきじょう(円形劇場)
舞台や客席が円形で構成された劇場で、ギリシャ劇場はこの形式の代表的劇場です。
エントランス・ホール entrance hall
劇場の入口(もぎり)の前にあり、観客が開場を待つための空間をいいます。
おおぐろ〔まく〕(大黒〔幕〕) 舞台奥に吊られる黒い幕で、通常別珍(ピロード)の二倍ひだの黒幕です。黒ホリゾント幕とは異なる物です。歌舞伎においては「夜・暗闇」を表現します。
オーケストラせり(迫り)
「オーケストラ・ボックス」の床を「迫り」にして、舞台面まで迫りを上げて張り出し、「前舞台」として使用し、また客席床面
と同じ高さにして客席として使用する場合があります。「オーケストラ迫り」を縮めて、単に「オケ迫り」と呼ぶ事も多いです。
オーケストラ・ピット orchestra pit
舞台と観客席の間にある、オーケストラを演奏するための場所で、通常オペラやバレエのオーケストラはこの場所で演奏されます。固定設備の「オーケストラ・ボックス」として設置する場合と、「オーケストラ・ピット迫り」の床機構として設備される場合とがあります。オーケストラ・ピット迫りは、舞台面
と同じ高さまで上げて「張り出し舞台(エプロンステージ)」にしたり客席床面
と同じ高さにして客席の一部にしたり、多目的に使用されます。
オーケストラ・ボックス orchestra box
オペラ・バレエなどを上演する場合、舞台の前面でオーケストラ楽員が演奏する場所のことです。客席床面
より1mほど低い位置で、客席側は手摺りが設けられています。
おおすのこ(大簀の子)
舞台の上部にあり吊り物用の機械、滑車などが取り付けられている、昔は木製の、今では鉄製の簀の子状の作業床をいいます。関西では昔、竹を組み合わせて造られたため現在でも「ぶどう棚」と呼んでいます。
おおぜり(大迫り) elevator
主に大道具を乗せて舞台転換に使用する、舞台正面中央にある大型の迫りのことをいいます。
おおどうぐ(大道具)
舞台上に組み立てられた飾りのことで、書き割り、建物、樹木、岩石など出演者が手に持つことのない物で、演出上必要とする場面
を表す道具の総称です。セットや大道具の担当者(大道具方)のことを「大道具さん」などと呼んでいます。家具や装飾品など持ち運びが出来て、出演者が手にするものは「小道具」と呼ばれます。
おおひらぶたい(大平舞台)
歌舞伎舞台で、平舞台の舞台間口一杯に飾られた屋体のことをいいます。
オープン・ステージ open stage
客席と舞台とが「プロセニアムアーチ」によって仕切られることなくギリシャ劇場のように客席と舞台が同じ空間の中にある劇場の形式をいいます。
おおらんま(大欄間)
歌舞伎舞台の「下手大臣柱」と「上手大臣柱」の上部をつなぐ黒塗りの欄間のことをいいます。
おがむ 「張物(はりもの)」などを立てるときに、垂直に立てないで、正面
から見て少し前かがみに立てることがしばしばあります。そのようなときには「おがむ」といいます。
おくぶたい(奥舞台) backstage
@「主舞台」の奥にある、主舞台と同じくらいの広さを持った舞台のことをいいます。
A「主舞台」の後方の空間をいいます。 おはやしべや(御囃子部屋) 歌舞伎舞台の下手の大臣柱の外側で囃子を受け持つ鳴物連中が演奏する場所のことです。「黒御簾(くろみす)」ともいいます。
オフ・ステージ off stage
客席から見えない部分全体を指す言葉で、つまり舞台裏のことをいいます。
オペラ・カーテン opera curtain
引割り幕の一種で、斜め左右上方に絞り上げる開閉機構を持つ幕(緞帳)のことで、オペラの上演でよく用いられます。「オペラ・カーテン」は和製英語で、欧米では「タブ・カーテン(tab
curtain)」といいます。我が国で使われている「オペラ・カーテン」では、引割り幕や絞り揚げ幕の様な使い方が出来るように作られている場合が多いようです。
おまく(御幕)
能舞台で「鏡の間」と「橋懸り」の間に掛ける幕のことで、ふつう唐草地の5色(白青赤黄黒)の緞子(どんす)を縦に縫った物が用いられています。
おんきょうはんしゃばん(音響反射板)
「プロセニアム」形式の舞台でオーケストラの演奏を行なう時、音響効果を良くするために使用する構造物です。使用しない時は、舞台上部にいくつかのセクションに分けて別
々に解体格納するか、または舞台後方に移動して格納するのが普通です。最近では舞台床下に格納するシステムもあります。また簡単に組み立てることの出来る小規模なものもあります。
オン・ステージ on stage
「オフ・ステージ」に対し、舞台の観客に見える部分のことをいいます。
カーテン curtain
いろいろな幕類のことをいいます。
カーテン・ライン curtain line
劇場の「緞帳」の降りる場所を一種の仕切り線と考えてこのようにいいます。
かいしゃくぼう(介錯棒)
長さ4m程度の竹竿で、「一文字」が「張物」の上に乗ったり、「吊物」が引っ掛かったりした時などに使用します。
かいちょうば(開帳場)
舞台装置で作られる傾斜した床のことをいいます。山や坂道などに使用される傾斜した台のこともいいます。また舞台全体を後が高い傾斜面
に作られた台を「八百屋飾り」と呼んでいます。
ガ イド・レール guide rail
吊り物機構の「カウンターウェイト枠」や、「迫り」などをスムーズにするために設置した案内レールのことをいいます。
カウンターウェイト counter weight
吊り物昇降機構において、吊物バトンの荷重と平衡錘(へいこうすい)とで重量
バランスをとる事をこのようにいいます。また、そのバランスをとるための錘(おもり)のこともいい、「鎮子(しず)」とか単に「ウェイト」と呼んでいます。
かえし(返し) 大道具用語では「あおり返し」の意味で用います。
かがみ(鏡)
@床の間の正面の壁のことをいいます。 A窓付きのセットや装置の襖、障子、扉等が開かれたとき、舞台奥が見切れないように 「開口部の後方をふさぐ張物」の総称です。
かがみいた(鏡板)
能舞台の正面の松の描かれた羽目板のことをいいます。能舞台では、松羽目とはいいません。能の題材を歌舞伎舞踊に移入した作品では、能の鏡板と同じような松の描かれた背景を使いますが、それを「松羽目(まつばめ)」といいます。
かがみのま(鏡のま)
能舞台の橋懸りのつきあたりにある鏡の板敷の部屋で、着付けを調べ、面(おもて)をつけ、出を待つ部屋のことです。
かきぬき(書抜き)
舞台装置のデザイン・プランを描いた図面のうちの大道具の部分詳細図をこのようにいう事があります。
かきわり(書割り)
背景や張物に、風景や家具や建物などを描き込んだものをいいます。また書き込むことを「書き割る」といいます。縦横の直線で構成される日本の家屋の背景をキッチリと定規で線を引いたように描くことから出た言葉です。
かげだん(陰段)
観客から見えない所に置いた二重舞台への昇降のための箱段または階段、梯子(はしご)などをいいます。
かげどうぐ(陰道具)
舞台の陰に置いておき、出演者が登場するときに持って出る小道具の事で、例えば食膳、たばこ盆などで小道具係が担当します。陰道具、持道具などの区分は複雑で不明確な物もありますが、長い間の伝統的習慣で分けられています。出演者が持っている持道具は陰道具とはいいません。
かこい(囲い)
歌舞伎用語です。大臣柱の外側つまり上手のちょぼ床と下手の下座を囲う「張物」のことで、黒の場合と、舞台を広く見せたい情景の時には絵が描かれることもあります。「当て物(当て物)」または「打物(うちもの)」ということもあります。
かすがい
大道具を組み立てるときに使用する金具で、俗称では「がち」といいます。金槌を打ち込む時に音がするので最近は使わなくなりました。
かすみ(霞) 「一文字幕」のことです。関西でよく使われる。言い方です。
かすみまく(霞幕)
歌舞伎の舞台で、白布に霞を描いた幕で、必要でないときに「出語り」の人々を隠すために、浄瑠璃台の前に張られる幕のことです。
がち
大道具を飾るときに打ち止める金具で、建築用の鎹(かすがい)と同じ形ですが、舞台では繰り返し使うので丈夫に造られています。関西地方では「がい」と呼んでいます。
カット・クロス cut cloth/foliage border
森やアーチなどの形に切り抜いた布製の「吊物」のことをいいます。
かつまべい
部屋と部屋の間や、部屋と廊下の間などの境の壁を、舞台では観客の視界を妨げないような低い象徴的な境でその区分を形の上で表現しますが、それを「かつまべい」といいます。「かつまかべ」「けいかい」と呼ぶこともあります。
かなしぎ(金支木)
鉄で出来ている支木のことです。立木・柱などを立てる時に使用する支木で、普通
の支木とは違い目立たないのが特徴ですが、使用するときに金槌を使うので音がすることと床を傷付けることから現在はあまり使用されなくなりました。
かね
直角・90度のことをいう俗称です。また直角に曲げることもいいます。大工さんが使う「曲尺(かねじゃく)」からきたことばです。
かぶりつき
舞台に一番近い観客席最前列の座席を指す俗称です。
かへん(可変)
プロセニアム・アーチ プロセニアム・アーチの開口幅、高さを演目の内容・規模や演出上の要請に合わせて変える機構のことをいいます。「ポータル」とは異なるいみの言葉です。
かみて/かみ(上手/上) stage left/略記号 L
観客席から舞台に向かって右側のことをいいます。日本独特の客観的言い方です。西洋では俳優の側からの見方で舞台から客席に向かって左(left)といいます。
カラビナ Karabiner<独>
登山用に用いられる軽金属の輪で、舞台では取り外しが簡単に行なえるのでロープやワイヤーロープに取り付けて使用します。
からわく(空枠)
@枠だけの張物のことで、必要に応じて黒幕や布等を張って使っています。その布張り
の張物のこともいいます。 A「引枠」を組むときに土台にする、キャスターの付いた枠組のことをいいます。
かりはなみち(仮花道)
@歌舞伎舞台で本来は下手にある本花道に対して、上手側に設置する花道のことをいい、演出上必要なときに設置するものです。
A多目的ホールにおいて歌舞伎・日本舞踊などの公演で必要な時に、舞台下手から客席の後部または側壁に沿って、本来の花道の代用として仮設される花道をいいます。
がわぶたい(側舞台)
「主舞台」の下手・上手にある、主舞台と同じまたは同程度の広さを持った舞台のことをいいます。袖舞台ということもあります。
キャットウォーク catwalk
舞台・客席の上部及び天井裏に設置された作業用の通路のことをいいます。
ギャラリー gallery
舞台脇の上部壁面や、あるいは舞台後部壁面にそって設けられた作業用の廊下状のスペースのことで、下段から第一ギャラリー。第二ギャラリーと呼ばれます。また、客席内壁を取り巻く二階以上の棚状の客席部分のこともいいます。
きょうげんまく(狂言幕)
黒、柿色、萌葱(もえぎ)色の三色の木綿布の、約1尺幅縦縞仕立ての引き幕のことをいいます。通
常は下手から上手に開け、上手から下手に閉じますが、演目によっては逆に開閉する場合があります。現在では歌舞伎のシンボルとなり、歌舞伎には不可欠の幕となっています。「歌舞伎幕」、「定式幕」とも呼ばれます。
きりだし(切り出し)
種々の形に切り抜いた小さな「張物」で、立木、植え込み、遠くの山、灯籠など床に立てるものと、雲、樹の枝などのように吊る物とがあります。欧米では、高さの低い背景の切り出しのことを「グランドロウ(groundrow)」といいます。
グラス・マット grass mat
草を表現するために舞台に敷く布の敷物のことで、関西地方では「ハイカラ草」といわれています。
グリッド grid/gridiron
欧米では「簀の子」の事をいいます。我が国では、鉄骨を格子状に組み、「グレーチング(grating)を乗せた簀の子」をいいます。また、キャットウォークを格子状に組んだ天井のこともいいます。最近の比較的小さいスペースの劇場では、客席や舞台の上部が格子状のパイプで構成され、簀の子とバトンを兼用している物などもこう呼んでいます。
くろまく(黒幕)
歌舞伎では背景幕として使用した場合には、屋内あるいは夜を表現します。また存在しないこと(無)を表現するために使用する場合もあります。
くろみす(黒御簾) 歌舞伎の下座音楽を演奏する場所のことで、舞台下手の大臣柱の外側に外囲いを黒い板で作り、すだれを掛けることにしていたのでこの名が付いたといわれています。また、すだれの裏が黒く塗ってあったからともいわれています。「下座」ともいいます。
けあがり/けあげ(蹴上がり/蹴上げ)
階段一段の高さのことをいいます。日本の伝統的な大道具では、「蹴上がり」7寸(21cm)を基本とし、「二重」などの高さもすべて7寸の倍数になっています。また、階段の「踏み面
」は、奥行き8寸が定式となっています。
けいしゃぶたい(傾斜舞台)
ヨーロッパの劇場ではルネサンス期に遠近法が舞台に取り入れられて、前舞台から舞台奥に向かって高くなる傾斜した床が造られました。現在の水平な床の舞台でも遠近法を使った舞台、又は出演者を立体的に見せたい演出の場合には舞台奥を高くした床を作って使用されます。
けいしゃゆか(傾斜床)
傾斜舞台の床のことをいいます。
けこみ(蹴込み)
@階段の正面側つまり階段の高さとなる部分のことです。 A組み立てた二重の床より下の部分の正面
と側面を覆う張物のことをいいます。情景に合わせた絵が描かれている物もあります。
げざ(下座) 歌舞伎舞台で、下手大臣柱の外側の下の部屋で、下座音楽を演奏する場所、また、その場所で演奏される音楽の総称です。外側は連子(れんじ)窓になっていて、その内側にすだれが掛けてあります。「黒御簾(くろみす)」ともいいます。
けしまく(消し幕)
歌舞伎劇で、舞台で死んだ役の人物の前に後見が幕を広げて立ち、その姿を観客席から遮って立ち去らせるために使う幕のことをいいます。暗転中に退場する白い衣装の俳優に黒の消し幕を使うなど、現代の演劇でも応用されている技法です。
けたずり(桁吊り)
吊物バトンの下にもう一本バトンなどを設けて、スポットライトや道具などを吊り込む方法のことをいいます。
げんじまく(源氏幕)
緞帳(どんちょう)の前の下手・上手に吊り下げられる幅の狭い縦長の飾り幕のことですが、現在はあまり使用されていません。学校の講堂・体育館等によく使われています。
こうけんざ(後見座)
能舞台奥の「後座」の正面左寄りの鏡板の前をいいます。いわゆる後見が控える所です。
こうけんばしら(後見柱)
能舞台後見座の左、鏡板の左端の柱をいいます。
こうはくまく(紅白幕)
紅白の縦縞の幕で、「段幕」ともいいます。大道具の一部または振り落とし幕として使用します。
こうらん(高欄・勾欄)
神社・寺・宮殿などの縁先に取り付ける端に反(そ)りのある手摺り(欄干(らんかん))のことで、飾り金物や擬宝珠が付いている物もあります。能舞台の橋懸りなどの欄干も「こうらん」と呼ばれています。
こうりょう(虹梁) 歌舞伎舞台の「下手大臣柱」と「上手大臣柱」の上部をつなぐ黒塗りの欄間ことをいいます。「こうりゅう」ということもあります。また「大欄間」ともいいます。
こぜり(小迫り)
大道具を乗せて舞台転換に用いる大型の「大迫り」に対して、主に俳優を乗せて昇降する面
積の小さな迫りのことをこう呼んでいます。普通は幅6尺〜9尺、奥行き3尺〜4尺程のもので、三人の出演者が乗れる位
の大きさです。
ころす(殺す) 吊物昇降装置の綱元をロックすることをいいます。また、紐・ロープ等を縛って固定する場合にも使います。機能の停止や固定を意味する多義用語です。
こわれもの(こわれ物) 舞台で、仕掛けとして作られた物でなく、それ自体を演出上の要請で壊してしまう場合の「物」を「こわれもの」といいます。たとえば、ビール瓶は松脂(まつやに)や飴(あめ)を素材にした物を使っています。
コンサート・ホール concert hall
オーケストラの演奏を専門とするホールで、演奏する場(舞台)と聴く場(客席)が同じ空間にあるオーディトリアムのことをいいます。コンサート専用のため、ホールの残響時間等について配慮されています。
コンセプト・マシーン concept machine
霧・煙を出す効果器具の呼び名の一つです。 サイド・ステージ 袖舞台、脇舞台を意味する言葉で、いわゆる「袖舞台」全体をいいます。
さぎょうとう(作業灯) 舞台で作業するための照明をいいます。通常、ボーダーライトを点灯しますが、「作業地明かり」または単に「地明かり」ということもあります。外国では終演後、舞台中央にガードのついた裸電球のスタンドを立てて常夜灯にしますが、それをワークランプと言っています。
さしがね(差金)
@蝶・鳥・ねずみなどの小動物を黒塗りの細い竹竿の先に付け、竹の弾力で動いているように見せる小道具で、後見(こうけん)が操作します。差金と書きますが、本来は金属ではなく竹の棒を使いました。今では針金を使用したものが多いようです。
A直角に曲がった金属製の物差しで、「曲尺(かねじゃく)」のことをいい、大道具製作などで使います。
さじき(桟敷)
歌舞伎劇場などで、観客席の両側の壁に沿って一段高くなっている特別席で、四角に仕切られた座席をいいます。大衆席である「平土間」に対する言葉です。
さぶろく
二重の「平台」の定式物の、3尺×6尺(約91cm×182cm)の物のことをいいます。
さんだん(三段)
高さ2尺1寸(7寸×3段)の定式の箱段で高足の二重舞台の昇降などに使用します。また、歌舞伎で立役が幕切れに見得を切る時に乗る台も「三段」といいます。
じうたいざ(地謡座)
能舞台右側、脇柱外側勾欄に囲まれた部分で、「地謡方」の座る場所の事をいいます。
じがすり(地絣)
舞台床に敷き詰める布のことです。演目によって色は選択されますが、ネズミ色・茶褐色・黒などがよく使われます。最近では絵を描いたものも使われています。ただし、地面
に積もった雪を表す白い「雪布」、小川・河・湖を表す「水布」、海を表す「波布」は「じがすり」とはいいません。
しぎ(支木/心木)
大道具の張物や切り出しを立てるときに使う、木の棒の両端に「かすがい」の付いたものをいいます。舞台転換で金槌を使うと音が出ることと床などを傷つけることから使われなくなりました。
じじゅう(自重)
迫り・ブリッジ・フライダクト・吊物バトンなどの舞台機構の、機構本体の重量
のことをいいます。 しず(鎮/鎮子) 吊物昇降バトンの重量バランスをとるための「平衡錘(へいこうすい)」の事です。「カウンターウェイト」が本来の呼び名です。
しちさん(七三)
歌舞伎舞台の本花道の鳥屋(とや)の揚幕から七分、舞台から三分の所をいいます。ここは花道での主な演技を行なう場所です。またこの位
置に「すっぽん」が設置されます。
しもて/しも(下手/下)
観客席から舞台に向かって左側のことをいいます。日本独特の客観的言い方です。西洋では舞台から客席に向かって右(right)といいます。舞台の下手と上手の両方を指すときに、良く「しもかみ」という言い方をします。
しゃくだか(尺高)
「二重」を高さ1尺(30cm)に組む場合の名称です。
しゃくぼう(尺棒)
大道具を組んだりして舞台を飾るときなどに使う、尺寸が刻まれた物差しの代用をする小割りの棒のことをいいます。
じゃのめまわし(蛇の目回し)
回り舞台の一種で、同心円で二分割または三分割以上に分割し、それぞれを別
の方向に動かすことが出来る回り舞台のことをいいます。蛇の目傘に似ていることからこの名がでました。
しゃまく(紗幕)
織目が粗く透ける布地で作られた幕の名称です。舞台前面に吊り込んで、照明の効果
で舞台を透かして見せる効果を出します。また、舞台の中間に絵を描いた紗幕を吊り込み、前からの照明によりその絵を見せておいて、途中で幕の裏側に光を入れて裏の人物や奥の背景ドロップの絵を見せたりします。布地の目の粗いものから詰んだものまでの材質の差や、色も多く、沢山の種類があります。
しゅぶたい(主舞台)
舞台の主要部分で、舞台の観客席から見える舞台全体の総称です。
しょうこうぶたい(昇降舞台)
舞台床面の大部分が昇降できるような機構を備えた舞台のことをいいます。
じょうしき(上敷)
「二重」の上などに敷いて畳賭して使用する、「うすべり」のことを言いますが、畳表を表す場合には舞台の前縁に平行に敷きます。「ござ」のことです。
じょうしきおおどうぐ(定式大道具)
歌舞伎の伝統によって決められた大道具で絵柄や寸法が決まっていて、組み合わせて使用できるように作られた物をいいます。平台・足・襖・障子などすべて応用のきく寸法になっています。また武家屋敷・町屋・農家・塀などにも飾り方には決まりがあります。
じょうしきせん(定式線)
歌舞伎舞台で下手・上手の大臣柱を見通す線のことをいいます。歌舞伎では「屋体」などの舞台装置はこの線より奥に飾るのが決まりです。「大臣通
り」ともいいます。
じょうしきまく(定式幕)
黒・柿色・萌葱(もえぎ)色の三色の木綿布の約1尺幅縦縞仕立ての引き幕の事をいいます。通
常は下手から上手に開け、上手から下手に閉じますが、演目によって逆に開閉する場合があります。現在では歌舞伎のシンボルとなり、歌舞伎には不可欠な幕となっています。「歌舞伎幕」「狂言幕」とも呼ばれています。
しょうめん(正面) 舞台の大道具の観客席に正対する面の張物をいいます。「妻」の対語です。
じょうるりだい(浄瑠璃台)
歌舞伎舞踊において義太夫・常磐津・清元・長唄などの出語り・出囃子が舞台の上で演奏する為の台のことをいいます。また、長唄で「お囃子」が「唄方・三味線」の前(下)に並ぶ形の場合には「雛壇(ひなだん)」といいます。両方を「山台」ともいいます。
しょさだい(所作台)
歌舞伎の所作事(しょさごと)や日本舞踊を演じるために舞台と花道に一面
に敷き詰める檜の板で作られた台のことです。高さ(厚さ)4寸、幅3尺、長さ10尺または12尺が標準で、表面
は4枚の板が継ぎ合わせてあり、足の運びが良いように滑らかに仕上げられており、それと同時に足拍子が効果
的に響くような工夫がされています。また、これを敷いた舞台を「所作舞台」と呼びます。出演者を除き、足袋以外の素足・靴下や履物で上がることは厳禁されています。
しん(心/芯)
舞台間口の中心を舞台前から舞台奥へ引いた中軸線を「芯」といいます。センターラインなので図面
などではCLと添え書きすることがあります。
すっぽん
花道の「七三(鳥屋の揚幕から七分、舞台から三分のところ)」にある小さな迫りを特に「すっぽん」と呼んでいます。
すのこ(簀の子) grid/gridiron/Rollenboden
舞台の天井のことで、簀の子張り(関西地方では昔は竹の格子組)になっているところから来た名称です。舞台床からの高さは、基本的にはプロセニアムの高さの二倍以上が必要です。簀の子には吊物昇降装置の一部が設置されています。簀の子の下に仮設の吊物などを設置する作業床を持つ形式の簀の子も有り、それを「二重簀の子」をいいます。
すぶたい(素舞台)
舞台装置などが全く飾られていない空の舞台のことを、また舞台上に出演者がいない状態のことをいいます。
スプリンクラー sprinkler
消火設備の一種の名称で、舞台上部・楽屋・ロビーなどに設置されていて、火災時に散水して消化するものです。手動バルブで散水するものと温度上昇を感知して自動的に散水するものとがあります。
すべり(滑り)
張物または切り出しの下部両端に付ける小さな台形の木片をいいます。これを付けると立てたときに安定し、また滑らせての出し入れが楽になります。「ねこ」ともいいます。
スライディング・ステージ sliding stage 舞台床の一部を走行させ舞台転換を行なう舞台機構で、迫りが上下の動きと転換機能を持つのに対して、スライディング・ステージは左右の動きと転換機能を持つものです。ほとんどの場合スライディング・ステージだけが設備されることは少なく、多くの場合、迫りとの組み合わせで設備されます。スライディング・ステージ上に飾ったセットが横に移動することによって開いたスペースに、迫りが上がってきて転換するという操作が出来るわけです。
せきさいかじゅう(積載荷重)
迫り・ブリッジ・吊物鉄管など舞台機構に吊り下げるか、乗せることが可能な重量
のことをいいます。
せまり(迫り) elevator stage/stage lift
舞台床下から俳優や大道具などを乗せて迫り上げ、またはその逆の操作をする舞台機構のことをいいます。舞台床の一部を長方形に切り、切った床が昇降します。大きさによって、小迫り・中迫り・大迫りなどと区別
して呼んでいます。大規模なものでは、大道具をそれぞれ別々に飾ることが出来るほどの大きさの二層構造になっている「二階迫り」あるいは二階迫りの上段の床も昇降する「二重迫り」、また「回り舞台」がそっくり昇降するものなどもあります。
センター・ステージ center stage
「オープン・ステージ」の一種で、客席の中央に舞台があり、ぐるりと周囲を囲んで観客席がある舞台のことをいいます。「アリーナ・ステージ」ともいいます。
センター・ライン center line
「心」、つまり舞台の中心線のことをいいます。
そうさばん(操作盤)
舞台袖の下手または上手の、舞台が良く見通せる場所に設置した、舞台機構を操作するためのスイッチ盤のことをいいます。吊物機構(緞帳・フライブリッジ・吊物バトン・幕類・ボーダーライト・アッパーホリゾントライト・反響板・映写
スクリーンなど)の操作盤と、床機構(回り舞台・迫り・オーケストラ・ピット迫りなど)の操作盤が別
々に設置してある場合と、1ケ所にまとめてある場合があります。いずれもインターカムなどの連絡設備が組み込まれています。
そでぶたい(袖舞台) side stage
主舞台の下手・上手にある、主舞台と同じ、または同程度の広さを持った舞台のことをいいます。「側舞台(がわぶたい)」ということもあります。
そでまく(袖幕) leg wings
舞台<ふところ>で出を待つ俳優や舞台裏が観客から見えないように遮蔽する黒幕のことで、緞帳と平行に舞台前から舞台奥に吊り下げられた幅の狭い黒い幕をいいます。古くは黒帆布のひだ無しが多く使われていましたが、今は、黒別
珍のひだ付きの幕が良く使われています。舞台の奥行きに応じて数が増減しますが、下手・上手で対になっていて、普通
は舞台前から第一袖幕、第二袖幕というように順に呼ばれます。現場では、略してこれを単に「袖」ということがあります。
だいじんばしら(大臣柱)
歌舞伎舞台では下手の下座(お囃子部屋)と舞台を仕切る柱を「下手(西)大臣柱」といい、これに対して上手のちょぼ床と舞台を仕切る柱を「上手(東)大臣柱」といいます。
ダウンステージ downstage
古くからあるヨーロッパの劇場の舞台の床は奥に行くに従って高くなっているのが一般
的です。そのために、舞台奥方向を「アップステージ」、舞台前方向を「ダウンステージ」といいます。
たかあし(高足) 定式二重舞台の高さを表す言葉で、2尺8寸(約85cm)の高さの二重舞台のことを指します。ちなみに、1尺4寸の高さの二重舞台を「常足(つねあし)」、2尺1寸の高さの二重舞台を「中足(ちゅうあし)」といいます。二重は「平台」と「馬(足)」の組み合わせで高さが決まり、巧妙にシステム化されています。
たけばめ(竹羽目)
能舞台の鏡板上手側の壁面で、竹を描いた羽目板のことをいいます。歌舞伎舞踊の場合は下手・上手の袖の妻に、この「竹羽目」を使います。
たし(足し)
定式の寸法の張物に付け足す小さな張物のことをいいます。 たしづま(足妻)
舞台装置の定式線と平行の張物(正面)に、定式線に対して直角に接続させる張物を「妻(つま)」といいますが、その定式の「妻」に屋体の奥行を深くするために付け足す物のことをいいます。
たっぱ(建端/立端)
建築用語で、「高さ」と同じ意味の言葉です。「大道具のたっぱ」、「舞台のたっぱ」などと高さを表す言い方です。
だめぐろ(駄目黒) 袖幕の奥が見切れるときに、見切れを防ぐために、袖幕の外側に袖幕と直角に張る仮設の黒幕のことをいいます。「駄
目幕(だめまく)」ということもあります。
だんまく(段幕)
歌舞伎舞台で用いられる幕の一種で、紅白の布を横縞に継ぎ合わせた物です。
ちゅうあし(中足)
定式二重舞台の高さを表す言葉で、2尺1寸(約64?)の高さの二重舞台のことを言います。ちなみに1尺4寸高のものを「常足(つねあし)」、2尺8寸高のものを「高足(たかあし)」といいます。
ちょぼゆか(ちょぼ床)
歌舞伎舞台で、上手の大臣柱の外側の二階床に当たる場所で、義太夫狂言の義太夫節を語るところをいいます。出語りの演奏の時以外は御簾(みす)が垂らしてあります。
つかみ(掴み)
平台を二つ以上並べて飾るとき、平台同士をつなぎ、固定させるためのコの字形の金具のことをいいます。
つくりもの(作り物)
@能で使う大道具に当たるもので、屋体・柴折戸・車・舟などを象徴的な省略法によって簡単に出し入れ出来る作りになっている道具のことをいいます。演能のたびに臨時に作り、終演後解体するのでこう呼びます。
A主に小道具で、本物に見せかけて作った物の事をいいます。
つなぎ
張物と張物などを繋ぐ材料の事をいいます。
つなもと/つなば(綱元/綱場)
舞台下手袖または上手袖の壁面に設置された、いろいろな吊物昇降用の「引き綱」の設備がまとめられている所のことをいいます。この吊物昇降機構には、「美術バトン」や「暗転幕」、「中割幕」、「一文字幕」などの幕類と、「照明バトン」が含まれていて、手動で操作するものと動力で操作するものがあります。手動操作の場合は、吊物の重量
と錘のバランスを取ることが大切です。また引き綱をしっかり固定する必要があります。また、電動のものでも錘でバランスをとる必要のあるタイプの物があります。
この綱元の上部の簀の子近くに、吊物機構の重量バランスを取るための錘(おもり)を掛け外しするための作業スペース(ローディング・ギャラリー)がある場合があります。
つねあし(常足)
定式二重舞台の高さを表す言葉で、1尺4寸(約42?)の高さの二重舞台のことです。ちなみに、2尺1寸の高さのものを「中足(ちゅうあし)」、2尺8寸の高さのものを「高足(たかあし)」といいます。
つま(妻)
舞台装置の張物のうち、定式線と平行な物つまり「正面」に対して、直角に(または斜めに)飾られる張物をいいます。襖や障子が取り付けられる場合もあります。
つりえだ(吊り枝)
季節感を表すために、「一文字」を付けたバトンに桜や松、藤の花、柳、紅葉などを吊ったものをいいます。
つりもの(吊物) 吊物バトンに吊り込んだ大道具の総称です。また、照明・音響器具などを含んで用いられることもあります。
つりものきこう(吊物機構)
吊物を観客の視界外に吊り上げて、「フライズ(舞台上部空間)」に収納するための機構をいいます。一般
的な吊物機構のシステムは、吊物の重量を滑車を通る複数のワイヤーによって「カウンター・ウェイト」でバランスを取り、それを「引綱」による手動または動力によって昇降の操作を行なうものです。カウンター・ウェイトの昇降する場所を「綱元」または「綱場」といいます。またウィンチで巻き上げる方式の物もあります。
つりもの(吊物)バトン
舞台上部から緞帳に平行に、舞台上部の各部に昇降可能なように設備された、舞台間口一杯のパイプのことをいいます。用途により、美術(大道具)バトン、照明バトンなどと区別
した呼び方をします。
てっかん(鉄管) pipe batten
舞台の吊物昇降装置のうち、主に大道具用吊物パイプのことをいいます。「バトン」ともいいます。
でどうぐ(出道具)
幕が開く前にすでに舞台に飾ってある小道具のことをいいます。芝居の進行中に出演者が持ち去るものも出道具といいます。「持道具」に対していう言葉です。
でべそ(出臍)
@本来の舞台端の前方に付け足して拡大されたスペースのことをいいます。
A歌舞伎の二重屋体飾りで用いられる手法で、通常は欄間と床の前端を揃えますが、下手・上手側の客席にも演技が良く見えるように、床の部分だけ前方に張り出すことをいいます。
でんがく(田楽)
張物の一部を方形に切り抜いて、その縦または横の中心線を軸として裏返す事によって道具を換えることをいいます。「田楽返し」ということもあります。
でえんがくがえし(田楽返し)
舞台場面転換の一手法で、張物の一部を方形に切り抜いてその中心に軸を設けてその軸を芯にして裏返し、舞台情景を一変させることをいいます。
てんち(天地)
物の上下のことで、「天地が逆」などと用います。
てんづり(点吊り) spot line
吊もの装置の一種で、バトン方式に対して、一本のロープやワイヤー・ロープで吊る方式のことをいいます。単純なものはシャンデリア一個を吊るような物から、縦横、斜めなど複数の点吊りをシンクロ駆動させて舞台転換を図るものまであります。定置型と可動型、またその併用の方式があります。
どうぐまく(道具幕)
歌舞伎舞台用語です・浪幕、山幕、雲幕などその場面を象徴するデザインの描かれた幕と、黒、浅葱(あさぎ)、段幕なども含めた背景幕の総称で、一般
の背景幕まで範囲を拡げて用いられることもあります。
とうざいまく(東西幕)
本来は歌舞伎舞台の「定式幕(じょうしきまく)」の古いいいかたです。初期の歌舞伎は小屋掛けで仮設舞台で上演しましたが、日中の興行なので役者の顔に陽が当たるように、舞台を北側に、客席を南側に設置したために、幕は東(上手)から西(下手)に閉めたので東西幕という言葉が生まれました。現在では舞台の下手・上手のギャラリーに沿うように舞台の側面
に吊り下げる黒幕のことをいい、袖幕の見切れを無くすために使用します。「駄
目黒」、「駄目幕」ともいいます。
とおみ(遠見)
背景と同じ意味で、遠方の景色を書いた物をいいす。野遠見、山遠見、町屋遠見、波遠見、庭遠見などがあります。また中景を書いたものは「中遠見」、舞台の下手か上手の一方が屋体になっていて、残り半分が遠見になっているのを「片遠見」といいます。定規で線を引いたようにキッチリ描く「書き割り」に対して、絵はふつう写
実風に自由に描かれます。
トーメンター tormentor
本来はプロセニアム一杯に飾り込んだ室内の装置などで、装置の前端(縁)とプロセニアムの間の隙間を隠すための、左右一対の細長い幕や張物の事を言います。現在では、プロセニアム開口幅を調節するための構造物を指すこともあります。
とばす(飛ばす)
吊物昇降バトンなどを上昇させることをこのようにいいます。
どぶ 歌舞伎劇場の花道の裏側で桟敷との間の客席のことをいいます。
どま(土間)
日本古来の劇場構造では、一階の客席中央部分の事をこういい、周辺部の桟敷に対する言葉です。特に両花道の間を平土間といい、外側を高土間といいました。
とや(鳥屋)
歌舞伎劇場用語で、花道の突当りの揚幕の内部の部屋のことをいいます。本来は関西で用いられていた用語で、東京では「揚幕の内」といってました。
トラス truss
トラス橋の工法から来たもので、桁(けた)構えで支えることの意味です。またその形状によって、平トラス・三角トラス・ボックストラスなどがあります。仮設舞台などでバトンが無い場合使用されることが多く、その組み方によって一文字トラス、口(くち)の字トラス、日の字トラス、あるいは目の字トラスといった呼び方をします。
とりい(鳥居)
二重舞台を組立てる技法の一つです。「いなずま」を用いて平台をつるして、脚部を節約する方法をいいます。
ドロップ backdrop/drop curtain
演劇、舞踊などのそれぞれの場面に必要な背景が描かれている背景幕のことをいいます。
どんちょう(緞帳) house curtain/house draw curtain 舞台と観客席を区切るために、プロセニアム舞台上部から降ろす幕のことをいいます。緞帳は、舞台の一区切り、時間の経過などを示し、また大道具の飾り換えを観客の目から遮るために使います。種類は昇降・斜め絞り・絞り上げなどがあります。原則として、上下に開閉する幕を緞帳といい、左右に、または中央から左右(引き割り)に開閉する幕を引き幕といいます。
なかわりまく(中割幕)
中央から左右に開閉する黒別珍のひだ取りの幕で、左右開閉、上下昇降両用のものが一般
的に使用されています。奥行のある舞台には数列(2〜3)の中割り幕が設けられていることがあります。
なぐり 道具方の使用する金槌の俗称です。
なみいた(波板) 歌舞伎大道具用語で、低い切り出しで波形に形作られている物をいいます。
なみぬの(波布)
歌舞伎大道具用語で、波の絵が描かれた布で、舞台上に敷きつめて海上や河、湖水を表現する時に使います。
ならく(奈落) under stage/trap room
舞台床下の総称で、回り舞台、迫りなどの機構が設置してあり、また、大道具・小道具の置き場だったり、花道の鳥屋と楽屋との通
路にもなります。古い劇場ではやっと腰をかがめて通れるほどの物から、現代の大規模な劇場では大きな迫りやスライディング・ステージなどの巨大な床機構のマシン・ピットを含めた10m以上の深さを持つ規模の物まであります。
にし(西)
初期の歌舞伎芝居は小屋掛けで、仮設の舞台で上演しましたが、舞台を北側に、客席を南に設置したため、客席から舞台に向かって左手(下手)が西になります。そのことから伝統的に下手を西といっています。
にじゅうぶたい(二重舞台) platform
舞台床面より高い床が必要なときに必要な高さの「足」の上に「平台」を置いて、二重の床という意味の「二重」を組み上げます。このような舞台飾りを「二重(舞台)」といいます。二重舞台の高さは定式としては「尺高(しゃくだか:高さ1尺)」、「常足(つねあし:高さ1尺4寸)」、「中足(ちゅうあし:高さ2尺1寸)」、「高足(たかあし:高さ2尺8寸)」が使われます。「足」のことを「うま」または「はかま」と呼んでいます。基本となる大きさの異なる平台と、高さの異なる足の組み合わせで組立てるシステムになっています。語源は歌舞伎舞台から来ています。
にだん(二段)
歌舞伎大道具用語で、文字通り二段で作られたステップのことをいいます。一段の高さ7寸(21?)、踏面
8寸(24?)が定式で中足の二重に昇るための物をいいます。
にんぎょうたて(人形立)
張物、切出しなどを立てるために用いられる木製の直角三角形の支持物です。釘を打ったり、ウェイトを乗せて固定します。床に釘や支木などが打ち込めない公共ホールやスタジオなどで用いられますが、大型の大道具の固定には不十分です。
ぬきちょうばん(抜蝶番)
関節(接合)部のピンの抜き差し出来る構造の蝶番のことをいいます。「つぼ吊り」ともいいます。
ねこ
張物の下側、両端に打ち付ける小木片の事です。張物を舞台上で滑らせて移動するための物で、同時に張物の損傷を防ぐ役目も兼ねています。「すべり」ともいいます。
のれんぐち(暖簾口)
@舞台装置で暖簾の掛けてある出入口のことをいいます。 A歌舞伎世話物大道具の定式物で、民家の屋体の正面
の、押入れとねずみ壁の間にある木綿の布暖簾の下がった出入口のことをいいます。
は(刃)
大道具の張物同士を繋いで飾る時、繋ぎ目を目立たない様にする為に、一方の張物の端に取り付ける薄い板状の物の事で、背後からの明かり漏れを防ぐ機能も持っています。
はいえんこう(排煙口)
劇場には客席・舞台のほか、各室や通路に法規上の排煙設備が必要です。ここでは、舞台最上部にある排煙するための設備をいいます。舞台上で発生した火災や煙を客席などに波及させないための役割を持つ設備のことをいいます。
はいけい(背景) scenery
広い意味では舞台装置を指す言葉ですが、一般には、舞台最後方に飾られる風景などが描かれた張物、幕などのことをいいます。
はいけいまく(背景幕) drop curtain/backdrop
舞台の最後部に飾られる風景などが描かれた幕のことをいいます。
はかま(袴)
歌舞伎大道具の二重構成システムの部材の一つで、「平台」と組み合わせて各種の高さを構成する物です。「袴」を縦あるいは横向きに置いたり、また「差足」を差し込んでその上に平台を乗せて「尺高」、「常足」、「中足」、「高足」などの定式高の二重を構成することが出来ます。
はこあし(箱足)/はこうま(箱馬)
わが国独自の、多く用いられているシステム化された二重構成の部材の一つで、「二重(舞台)」を組むときに「平台」の役目をする箱形の台のことをいいます。平台の高さ(4寸)と組み合わせるのに便利な、6寸×1尺×1尺7寸の大きさのものが主に使われています。箱の三方向の寸法をユニットにして平台と合わせて三種類の高さを構成することが出来るようになっています。
はしがかり(橋懸り)
能舞台の一部の名称で、能の舞台と斜め左奥の鏡の間とをつなぐ廊下状の部分で、演者の登退場に用いられると同時に、本舞台と同じ舞台空間として演技の場所としても使われる、演出上に重要な用途を持つ場所です。
はしりこみ(走り込み)
俳優の出入りがしやすいように、二重の襖や障子などの出入口や、下手・上手の「見切り」な裏などの観客から見えない所に「二重」と同じ高さの二重を延長して組みます。これを「走り込み」といいます。
バックステージ backstage
文字通り舞台の後方を指す場合と、いわゆる舞台裏、客席から見えない部分全般
をいう場合とがあります。 バトン batten 舞台の吊物昇降装置のうち主に大道具用吊物パイプのことをいいます。「鉄管(てっかん)」とも呼んでいます。
はなみち(花道)
歌舞伎芝居から生まれた舞台機構で、下手側観客席後方から観客席を貫通して、舞台へ通
じる舞台の延長として、主要俳優の舞台への登退場に重要な役割を持つ設備で、「本花道」ともいいます。歌舞伎劇、歌舞伎舞踊(日本舞踊)に不可欠なもので、俳優と観客との交流その他いろいろな演出効果
があります。
パネル scenery panel
大道具の張物の事をいう言葉で、わが国では単に、「パネル」といっていますが、シーナリー・パネルのことです。
はめころし/はめごろし
本来あけたて(開閉)の出来るべき舞台装置の扉や窓の部分が、演出上その機能の必要が無い場合に、書割りや見せかけだけで済ませてしまうことをいいます。また、窓などの動く必要の無い側を固定することもいいます。
はりだしぶたい(張出し舞台) thrust stage
「オープン・ステージ」の一種で、舞台の一部が客席の中に突き出している形になっていて、三方向を観客に囲まれているものをいいます。また、奥行が狭い舞台などで、仮設で継ぎ足した舞台も「張出し舞台」といいます。
はりぼて(張りぼて)
不定形の物(岩石・土手など)を立体的に作った物をいいます。従来は小割、竹、金網等で骨組を作り、紙や布を貼って彩
色しましたが、近ごろは発泡スチロールやウレタンなどを切削、着色する方法がそれらに取って代わって来ています。木型に和紙を貼った張子(はりこ)から来た言葉です。
はりもの(張物) flat/scenery panel
大道具の基本になるもので、木材で作った枠組に紙を貼った物が伝統的ですが、現在では布またはベニア板張りで作り、所用の書割りを施したものをいいます。これを組み合わせてセットを形成します。最近では、「パネル」とも呼ばれています。歌舞伎大道具の定式では三六(さぶろく)、三九(さんきゅう)、四六(しろく)など尺で横縦を表すユニットが用いられています。
バルコニー balcony
本来は客席一階部分に対して二階以上の客席全体を指す言葉ですが、劇場技術的にはふつう二階席などの客席前縁からの照明器具を据える場所のことをいいます。
はんきょうばん(反響板)
舞台で音楽を演奏する時に、特に拡声しないで、その音の響き、広がりバランスなどを良くするために設置する「音響反射板」のことをいいます。一般
的に吊物機構の一部として設備される物が多く、正面・天井・側壁の三つに区分されている物が一般
的ですが、限られた舞台上部の空間を大きく占有するために、最近では吊物機構にしないで、舞台奥に格納する方法や、舞台床下に沈下させる方法を採っている劇場・ホールがあります。日本の多目的ホールでは、不可欠の設備です。
はんまる(半丸)
後が平面で、観客に見える方の面だけ立体的に見えるように作った大道具や小道具のことをいいます。
ひいれどおみ(火入れ遠見)
背景と同じ意味で、遠方の景色を描いたものを「遠見」といいます。野遠見、町家遠見、波遠見、庭遠見などがあります。この遠見のうち、夜のシーンで窓や灯籠に明りが点灯するように照明を仕込んだ遠見のことを「火入れ遠見」といいます。
ひがし(東)
初期の歌舞伎芝居は小屋掛けで仮設の舞台で上演しましたが、舞台を北側に、客席を南に設置したため、客席から舞台に向かって右手(上手)が東になります。そのことから伝統的に上手を東と言っています。
ひきずな(引綱)
吊物機構を手動で操作する場合の、昇降させる為の太めのロープのことで、カウンター・ウェイトの受け枠を介して、簀の子の元滑車と下滑車(底車)の間でループ(円環)状になっていて、ロープは前後2本の組になっています。手前のロープを引くと吊物は降りてきます。反対に奥のロープを引くと吊物は上がります。
ひきどうぐ(引道具)
舞台転換の技法の一つで、観客の目の前で大道具を前後・左右に引いて場面
を換えるときに使用する物をこのようにいいます。
ひきまく(引幕)
左右に開閉する幕のことで、歌舞伎の定式幕が代表的です。下手から上手へ、または上手から下手へ引いて開閉する幕のことをいいます。
ひきわく(引枠) stage wagon
その上に大道具を飾り、舞台に引き出して場面を換えるために、平台にキャスターなどを付けた物のことで、舞台転換を容易にする最も単純で、最も応用範囲の広い大道具技法の一つです。舞台上で舞台面
より高い別な床(台)を必要とする時に使う組み立てた台に車を付けたものを言うこともあり、その場合は最近では「ワゴン」と呼ばれる事もあります。引道具と同じ意味に用いられますが、ユニットとしての一単位
で、3尺×6尺や4尺×8尺ごとに4個のキャスターを付けた平台のこともいいます。これらを必要な面
積分接合した道具を飾り、移動して舞台を構成します。
ひきわり(引割) @大道具を中央から左右に引き開ける場面転換の手法のことをいいます。
A「引割幕」または「中割幕」のことを略したいいかたです。
ひきわりまく(引割幕)
舞台中央から左右に引き開ける幕のことで、緞帳の代わりとして使用することが多いのですが、大きい舞台の中間に設置される中幕や、大黒幕にも用いられることがあります。
びじゅつ(美術)
バトン 吊物バトンのうち、大道具類を吊り込むためのバトンのことをいいます。
ひなだん(雛段)
長唄の演奏にお囃子(おはやし)が共演する場合、浄瑠璃台を高さ違いの二段に飾り、前方にお囃子、後方に長唄連中が居並ぶ方式をいいます。また、現代ではコーラスや楽団等が乗る数段の階段状の台をいうこともあります。
びゃくろく(白緑)
高さ7寸(21cm)、奥行8寸(24 cm)、長さ2〜6尺(60〜182 cm)の箱段で、白緑色に塗られています。常足(高さ1尺4寸)の二重舞台への昇り段として屋内、屋外に共用されます。「一段(一段)」ともいいます。
ひらきあし(開き足)
歌舞伎大道具の台構成システムの部分品の一つで、「平台」を支えて定式の高さにする足の事をいいます。収納の便のため蝶番(ちょうつがい)で畳める様に作られています。
ひらだい(平台) platform
歌舞伎大道具の台構成システムの基本ユニットの一つで、二重(舞台)を組むのに使用する定式の台のことをいいます。通
常は縦横3尺×6尺(さぶろく)で、高さが4寸(12cm)の物を使います。ほかに4尺×8尺、6尺×6尺、3尺×3尺、6尺×9尺などがあります。もう一つの基本ユニットである「馬(足)」と組み合わせて、「常足」「中足」「高足」などの定式二重を組むことができます。
ひらどま(平土間) stalls<英>/orchestra
昔の歌舞伎劇場の両花道の間の客席部分を言いましたが、今では広義に一階客席の桟敷部分を除くスペースのことを指す言葉です。
ひらぶたい(平舞台)
「二重舞台」の対語で、二重を飾らない舞台を言い、「地舞台」ということもあります。また、地舞台上に組まれた舞台装置のことをいうこともあります。
ぶたい(舞台) stage
演技の行われる場所を言います。舞台には「額縁(プロセニアム)」を持たない観客席に突き出したエプロン式のものと、額縁によって観客席と舞台とを隔離した形式のもの、そしてこれらの混合形式のものがあります。形式的に分類すると@オープン・ステージ、Aプロセニアム・ステージ、Bアダプタブル・ステージに分けることができます。
ぶたいうら(舞台裏) backstage
ロビー、客席などに対して、客席から目の届かない舞台の裏の舞台袖や楽屋、倉庫などを含めた部分の総称です。また客席内にある技術スペース(音響操作室、調光室など)をも含めていう言葉です。
ぶたいおく(舞台奥) upstage
舞台後方のことで、舞台前方(downstage)に対応する呼び名です。ヨーロッパの古くからある劇場では舞台の床は後方が高く僅かに傾斜しているためにup、downと表現されています。
また後舞台と同義に使われることもあり、その部分を使って主舞台の奥行を深くして「奥舞台より登場」などということもあります。
ぶたいきこう(舞台機構) stage craft
舞台空間の床やフライズ(舞台上部空間、簀の子)などに設置された恒久的な構造物のことで、迫り、回り舞台、移動装置、吊物機構を指します。それらの動きを演出効果
を上げるために利用する場合と、舞台装置を支え、その転換を迅速に、省力化させる目的に使う場合があります。
ぶたいそうさしつ[ばん](舞台操作室[盤])
舞台機構を機械的に、また電気的に操作、運転するための制御ボタンやスイッチが集中しているスペースまたはパネルのことで、通
常は舞台下手にあり、舞台の見通しを良くするために一段高くする場合が有ります。
ぶたいそうち(舞台装置) stage scenery
上演される演目の脚本や演出方針に沿って、その演目にふさわしくデザイン、制作された大道具や小道具などの全体のことをいいます。
ぶたいそで(舞台袖) wings
観客席からは見えない舞台の下手、上手の空間のことをいいます。「ふところ」とも呼ばれています。
ぶたいはな/ぶたいばな(舞台端)
舞台最前端部分のことで、舞台と観客席の境界をいいます。框(かまち)または雨落ち(あまおち)と呼ぶこともあります。
ぶたいびひん(舞台備品) stage equipment
舞台機構と舞台装置の中間に位置する備品をいいます。代表的な物は、幕類、照明器具類や平台・箱足などの台構成システム、支木や陰段などのほか、広義にはピアノや大太鼓などの劇場保有の楽器類なども含めていう言葉です。
ぶたいまえ(舞台前) forestage
舞台の前部分のことをいいます。「エプロン・ステージ」または「前舞台」と同じ意味に使われることもあります。一般
には舞台の緞帳より前方の部分のことを指す言葉です。
ぶどうだな(葡萄棚) gridiron/grid
「簀の子」のことをいいます。以前、関西地方では竹を格子状に組んだ物を使用していたために、その姿から葡萄棚というようになりました。略して「ぶどう」ということもあります。
ふみずら(踏み面)
階段の段の上の面や、台などの上部の水平面のことをいいます。蹴込み(けこみ)に対する言葉で「踏み込み」ということもあります。
フライ・ギャラリー fly gallery
舞台の側方と後方の壁の上部に設置されている作業用通路の事です。「キャットウォーク(catwalk)」とも呼ばれています。各種作業の足場、ギャラリー・スポットの設置場所、カウンター・ウェイトの掛けはずし作業の場所、フライ・ブリッジへの昇降連絡通
路などとして使われます。舞台の規模によっては数段設けられることもあります。カウンター・ウェイトの積み下ろし作業をする場所を特にローディング・プラットフォームといっています。単に「ギャラリー」ともいいます。
フライズ flies
舞台上部空間のことで、通常は客席からは見えないプロセニアム開口部より上部の、さまざまな吊物、照明器具などが吊り込まれている部分を指す言葉です。ある場面
で舞台一杯に飾ってあった背景が、次の場面で不要になって上に吊り上げられた時に、客席から完全に隠れるだけの充分な高さが必要な空間です。
フライ・ブリッジ fly bridge
大劇場の舞台設備で、人が乗って作業ができる橋形の吊物設備です。長さは舞台間口とほぼ同じ、幅は80cm前後で、ボーダーライトや多数のスポットライトが取り付けられています。演出上では雪や花びら、落ち葉などを散らしたりする場所でもあります。略して単に「ブリッジ」ということが多いです。
フラット flat
舞台装置のうち、立体的でない物のことで、平面の張物、切出しのことをいいます。ふつう「平目(ひらめ)」といいます。
プラットフォーム platform
舞台装置のうち、台(二重)で構成された部分をいいます。 ふりだけ(振り竹)
振り落とし、振りかぶせをするための仕掛けをした専用のバトンのことで、以前は竹を用いていたので振り竹と呼んでいます。
ブリッジ bridge
大劇場の舞台設備で、人が乗って作業ができる橋形の吊物設備です。長さは舞台間口とほぼ同じ、幅は80cm前後で、ボーダーライトや多数のスポットライトが取り付けられています。演出上では雪や花びら、落ち葉などを散らしたりする場所でもあります。「フライ・ブリッジ」というのが正しい言い方です。
プロセニアム[・アーチ] proscenium[arch]
舞台の「額縁」のことで、プロセニアム・ステージの形式の劇場では、これで舞台と観客席とを区分しています。このプロセニアムの向こう側にイリュージョン空間を創り出すのです。
プロセニアム・ステージ proscenium stage
舞台形式の一つで、「オープン・ステージ」に対する言葉です。客席と舞台の間に「プロセニアム・アーチ」という額縁を持った劇場のことをいいます。
フロント・ステージ front stage
舞台前部のことをいいます。一般には舞台の緞帳より前の部分のことを指す言葉です。
プロンプター・ボックス prompt box/prompter's box
主にオペラ劇場で、舞台上の俳優や歌手に小声でせりふや歌詞、きっかけなどを教える役の人(プロンプター)が隠れる場所で、ふつうは舞台最前部中央の床に小さな切り穴を設けて、客席からの視線の邪魔にならないように、またプロンプターの声が客席に洩れないように小さな覆いをつけた場所のことをいいます。
ぼうえんかこう(防炎加工)
劇場火災を防ぐための措置の一つで、主に幕・地絣り(じがすり)などの布類と、張物などに使用する着火しやすい木材類(薄手の合板など)に薬品で加工して不燃または難燃性の処理をすることをいいます。舞台で使う大道具の幕や装置の材料には、この加工を施した物を使用しなければなりません。
ぼうかくかく(防火区画) 火災発生時に被害を局部にとどめるために、建物を部分的に耐火性の壁面
で区切ることをいいます。一般には法令で1500?ごとに定められていますが、劇場の客席部分については緩和されています。またスプリンクラーの設置によっても緩和措置がとられています。
ぼうか(防火)シャッター
火災発生時、舞台と客席を仕切るために設置された、耐火性の防火戸のことです。プロセニアム開口部を完全に遮断する寸法が必要で、フライズに十分の高さがあれば一枚物で吊り込むことが出来ますが、場合によっては二分割したり、奈落とフライズの両側に仕込んだりする場合もあります。
ぼうかとびら(防火扉) iron curtain/fire curtain
防火区画の開口部を遮る耐火構造の扉や、シャッターなどをいいますが、劇場特有の客席と舞台を遮断する防火シャッターを指すこともあります。
ボーダー border
本来的には「一文字」、「水引幕」、あるいはそれに類する「カットクロス」などの舞台上部を観客の視線から遮る物を指します。わが国では一文字幕と組み(ペア)になったボーダーライトの普及以後、ボーダー・ライトを単にボーダーと呼ぶことが多いです。
ポータル portal
プロセニアム開口部の高さと間口を調節出来る機能を持つ建築的構造で、舞台のプロセニアム開口部分を、上下に動くポータルブリッジと、左右に動くポータルタワーによって調節する機構です。大規模なポータルにはブリッジ、タワー共にスポットライト等の照明器具が取り付けられています。上演される作品に適切な大きさの開口部を作ります。「インナー・プロセニアム・アーチ」とも呼ばれています。
ぼさ
畝(うね)板(土を表した物)などの小さな切出しに造花などで作られた草を打ち付けた物で、簡単に舞台の上に置いて野原を表す場面
に使用します。
ほね(骨) flat
本来は張物の芯や枠(骨組)のことを言いますが、一般的には、張物その物もこういいます。
ホリゾント/ホリツォント Horizont/cyclorama
舞台の最後部の天空を表す幕または壁のことをいいます。客席から見える舞台奥の壁面
を一様の円筒状に幕(または壁)で覆うものをルントホリゾントといいます。構造物の一部としてのドーム状の壁面
のものはクッペルホリゾントといいます。 現在の劇場では舞台開口部と平行で平らな幕、又は壁が多くなっています。照明によって青空、夕焼け、夜空など無限の奥行を感じさせる効果
が得られます。ホリゾント幕の不要時の収納にはフライズに吊り上げる方法と、縦に巻き取る方法とがあります。
ホリゾントまく(幕) horizont curtain
舞台の後方を遮蔽して、観客の視界を制限するために、一様の丸みを持った曲面
のパノラマ式の大幕で、主として大空の効果を与えるために工夫されたものです。わが国で一般
的に使用されているタイプは舞台最後部に開口部と平行か、または左右両端のみを多少湾曲させたホリゾント幕です。ふつうは淡いグレーのキャンパス地の布を使用しています。幕でも壁でも、ホリゾントに物を立て掛けたり手で触れるなどして、汚したり傷つけたりすることは禁物です。「ホリゾント・カーテン」ともいいますが、独語と英語を混合した日本製の言葉です。
ホワイエ foyer/lobby
ロビーと同義語に扱われる言葉で、劇場入口から客席に至る広間、廊下部分を総称していいます。
ぼん(盆) turntable 回り舞台の円形の回る床部分のことをいいます。ただし、回り舞台その物を単に「盆」と言うことも多いです。
ほんはなみち(本花道)
舞台上手側に仮設される「仮花道(かりはなみち)」に対する呼び名で、舞台下手側の本来の「花道」のことをいいます。
ほんぶたい(本舞台)
本来は、歌舞伎舞台で下手の大臣柱と上手の大臣柱の間の部分を指すことばです。現在では花道に対して正面
の舞台を指します。また、プロセニアム劇場ではプロセニアムの内側を本舞台といいます。
まえぶたい(前舞台) forestage
舞台の緞帳あるいはプロセニアムより前方の部分のことをいいます。
まく(幕) curtain
舞台で使用されるいろいろな用途の布製の幕類の総称です。舞台機構・設備の一部で、吊物として使われる「緞帳」「中割幕」「袖幕」などや、舞台装置の一部として使われる「背景幕」「段幕」などがあります。
まぐち(間口) width
「奥行」に対して横幅を表す言葉で、劇場用語では主に舞台の開口幅を表すのに用いられます。
まくまえ(幕前)
一般には緞帳の前の部分をいいます。「幕前芝居」などといって、幕奥の舞台転換の時間をつなぐための小場面
のシーンなどに使われたりします。
マスキング masking
客席の観客の視線から舞台が「見切れ」ないように処理すること、またはそのための物をいいます。例えば「一文字幕」、「袖幕」、「袖パネル」、「かがみ」などのことです。
まつばめ(松羽目)
歌舞伎や日本舞踊(歌舞伎舞踊)で使用する、能舞台の鏡板を模倣して、七五三の松を描いた羽目板の書割り背景のことを言います。現在は舞台が大きくなったため七五三の松では小さすぎるので形はいろいろに変わっています。
まわりぶたい(廻り【回り】舞台) revolving stage
舞台機構の一つで、舞台床を円形に切り抜き、それを回転して場面転換に用いたり、象徴的な演出効果
を得たりするためのものです。同心円の二重のもの(蛇の目)や並列に二つに並べたもの(双子)などのバリエーションがあり、組み立て仮設のものもあります。18世紀中頃大阪角座の歌舞伎芝居で初めて用いられたと言われる舞台機構で、この床の上に二場面
または三場面の舞台装置を飾り、これを手動で回転させて素速く場面を転換しました。現在は電動によるものがほとんどですが、古い歌舞伎舞台で手動の機構が残されている所もあります。「盆」と呼ぶこともあります。
みきり(見切り) wing flat
下手、上手の舞台裏を隠すために舞台袖から出す張物または切出しのことをいいます。吊った張物や幕の場合もあります。「突き出し」ともいいます。
みこみ(見込み) thickness
出入口、窓などの張物に写実的に壁などの構造体の厚みを付けることを言います。またはこの厚みのことをいいます。
みずぬの(水布)
主に歌舞伎舞台で、川・池などの水面を表す場合に敷かれる水色の地がすり状の布のことをいいます。
みずひき(まく)
水引(幕) 緞帳の直前にある一文字幕のことをこのように呼びます。簡便に舞台開口高を調節する役目もあります。
みせかけ(見せかけ)
「所作舞台」において所作台の客席側の面の木口を隠すための化粧框(かまち)のことをいいます。檜材で作られ、正面
は体裁を整えるため斜めに作られています。
めいた(目板)
大道具の張物同士をつないで飾るとき、つなぎ目を目立たないようにするために、一方の張物の端に取り付ける薄い板状の物のことをいいます。これは背後からの明りの漏れるのを防ぐ機能を持っています。「刃」ともいいます。
めくりだい(めくり台)
式典・寄席などで進行に従って題名(演目)・演者などを書き込んだ細長い紙片を綴った物、またそれを立てる台のことをいいます。
もじまく(綟幕) gauze
目の粗い布で作られた幕の事で、前後の照明の加減によって、夢幻的な効果
を出すことが出来ます。また、屋体の場面で座敷と座敷の境目をはっきりさせるためや演技上必要な時に襖や障子などを立てると観客の邪魔になる場合に、紙の代わりに「もじまく」を張ることがあります。それを「もじばり」といいます。
もとかっしゃ(元滑車)
バトンを吊っている何本かのワイヤーの真上の簀の子に取り付けられた、それぞれの枝滑車を経たワイヤーを束ねて、吊物機構にガイドする滑車のことをいいます。
やおや[かざり]八百屋[飾り] ramp
舞台奥を高くして客席に向かって斜面になった床のことを「八百屋」といい、遠近法を強調するために八百屋の床に大道具を飾ることを「八百屋飾り」といいます。
やたい(屋体[台])
舞台上に飾られた家屋の舞台装置のことで、民家、商家、農家、御殿、神社、仏閣などがあり、舞台上に直接飾る「平屋体(ひらやたい)」と二重の上に組立てられる「二重屋体とがあります。
やまだい(山台)
主に歌舞伎舞踊で、常磐津・清元・長唄などの出語り・出囃子が乗る台を「浄瑠璃台」あるいは「雛段」といいますが、これを「山台」ともいいます。山の絵を描いた「蹴込み(けこみ)」を使うことがあるので、こう呼ばれています。本来は、俳優が舞台で腰掛けるための高さ一尺四寸位
で、上部が四寸(約12cm)角、下部が七寸角位の梯形の台のことをいいます。この台を上級の歌舞伎俳優は各自に持っていましたが、歌舞伎の芝居小屋にも定式として別
に常備されていました。現在は、「山台」ということばが、この腰掛け台を呼ぶためには、あまり使われなくなっていて、「浄瑠璃台」のことを指すことが多くなっています。腰掛けのことは「合引(あいびき)」とよんでいます。
ゆきかご(雪篭) 三角形に小さく切った白い紙片を中に入れた目の粗い竹篭を、中吊り簀の子や時にはバトンに吊るして、細紐(ジャリ糸)で揺り動かして紙片を落とし、雪の感じをだします。その篭を雪篭といい、最近では金網の篭も使われるようになりました。
ゆきぬの(雪布) 地がすりの一種で、積雪した地面を表現するために舞台床に敷く白布のことをいいます。
らっかぼうしネット(落下防止ネット) 迫り床が下がり、舞台上に穴が開いた状態になった時、転落しても奈落の底まで落ちない様に自動的に張り出す金網の事です。床面
に近い低さに設定するのが普通です。
リア・スクリーン rear screen
舞台やテレビの背景に張られる半透明のスクリーンで、スクリーンの裏側から投写
される映像を映すことが出来る物のことをいいます。舞台では、ホリゾント幕を兼ねる物が多いようです。
ロールバック・スタンド rollback stand
仮設段床の一つの形式で、壁面の中・あるいは壁に沿わせて収納されている、奥行80cm〜100
cmの段床を連節して、引き出しに様に前へ引き出す方式のものを言います。フリースペースの劇空間やテレビスタジオの客席などに用いられています。
ロビー lobby/foyer
劇場入口から客席に至る広間、廊下部分の総称で、「ホワイエ」と同じ意味の言葉です
ワゴン wagon
広い意味に使われている言葉ですが、舞台用語としては舞台の転換を速めるために使用される「引枠(舞台面
より高く別に組み立てた台に車を付けた物)」を指すのがふつうです。
ワゴン・ステージ wagon stage
舞台機構の一種で、副舞台から主舞台へ、またその逆に移動させる機能を持つもののことです。そのため少なくとも副舞台の一つは主舞台+αの間口が必要です。主舞台内に連接されて設けられた迫り群と対応するユニットサイズで、必要に応じてその一部または全部を移動させます。従って隣接するワゴン同士をロックさせるグルーピング・システムや動力装置、ガイド装置などが必要です。また主舞台上の迫り機構と連動して昇降させる機能を持つものもあります。
わたり(渡り)
「中吊り簀の子」の別称です。歌舞伎舞台の大臣通り前後の舞台上部に設けられた、舞台間口一杯の長さで幅2尺前後の橋のような構造物のことをいいます。今の劇場の「ブリッジ」に相当します。
わりだい(割り台)
二重や傾斜舞台を組むときに使用する変形の台のことをいいますが、通常は新規に作られます。
わりどうぐ(割道具)
大道具を中央から左右に引き開けて場面転換をする際に使用する大道具のことをいい、あらかじめ左右に引き開けられるように制作されています。
わりどん(割緞) house draw curtain
中央で割られている緞帳幕をいいます。中央から左右に開閉するものと、左右斜め上に絞り上げて開閉するものがあります。
※ ポケット版裏方用語辞典 (発行 金羊社・発売 星雲社) より抜粋・編集させていただきました。
アース the earth.<英>/ground
地球・地面の意味の言葉です。電気関係では地面を基準電位とみなして、電気回路の基準電位
部を地面に接続して地表の電位と等しくすることを、「アースをとる」といいます。
アールエフ RF/radio frequency
無線周波数のことで20kHz以上の高周波をさします。
あいかた(合方)
@歌舞伎の「下座音楽」の三味線の奏者のことをいいます。 A邦楽の声楽曲(長唄など)の間奏のことをいいますが、「合の手」よりは長いものです。地唄では、「手事(てごと)」といいます。
あいのて(合の手)
@民謡などの唄や漫才のしゃベくり(しゃべり)の合間に入れる、掛け声や短い言葉をいいます。
A邦楽(長唄・清元など)で、唄と唄との間に演奏される器楽による短い間奏部のことをいいます。
アウトプット output
出力のことです。回路・機器などから送りだされる信号のことです。またその信号の出る出力端子を意味する場合もあります。
あおる 音響操作用語で音量を瞬間的に上げて、すぐ元の音量に戻す操作のことをいいます。
ア・カペラ a cappella
「聖堂のために」、「礼拝堂または聖堂ふうに」という意味で、合唱曲や歌曲を無伴奏で歌うことをいいます。
アクセント accent
ある部分を強調することですが、演奏方法や効果音などで音楽や演劇のある一部分を印象付けるための操作を「アクセントをつける」という言い方をします。
アクティブ・イコライザー active equalizer
アクティブとは能動という意味で、ICやトランジスタなどの増幅機能のある素子のことを指します。従って、アクティブ・イコライザーとは、これらの能動部品を使った回路による音質補正機器のことをいいます。
アコースティック acoustic
「耳の」「聴覚の」「音響上の」という意味で、一般的には電気信号に変換される前の音全般
を指します。また電気を使用せず、音を出す楽器のこともいいます。
アジマス azimuth
テープレコーダーの磁気ヘッドのギャップとテープとの垂直角度のことをいいます。
アタック・タイム attack time
リミッター、コンプレッサーなどの回路に、動作させる信号が入ってから、これらの回路が動作を開始するまでの時間のことです。「立ち上がり時間」ともいいます。
アタッチメント attachment
付属品、取り付け部品を意味することばです。楽器に取り付けて音色を変えるための器具のことです。
アダプター adapter
規格の違う器具や機器を接続するために使用する部品のことです。
あたまだし(頭出し)
録音された録音テープの内で、必要とする最初の部分(音の頭)をテープレコーダーにセットして、再生の準備をすることをいいます。
あたまづけ(頭付け)
テープに録音された複数の音の、それぞれの最初の部分にデルマ(ダーマトグラフ)などの色鉛筆で印をつける作業をいいます。
あたまわけ(頭分け)
コンサートなどで、SR(増幅補強)・放送・録音などの複数の媒体で収音を行なう場合に、マイクロフォン(以下単にマイクと略記することがあります)の出力を直接それぞれの媒体に分岐することです。
アッテネーター attenuator
減衰器といい、電気信号のレベルを低下させる部品のことです。
あて(当て)レコ
外国映画などで俳優の口の動きに合わせて、日本語で声優がセリフを言い、それを録音することをいいます。
アドリブ ad-lib
ラテン語の「好きなように、気ままに」という意味の言葉が英語化したもので、即興演奏のことをいいます。演劇などでは、台本に書かれていない即興的なせりふや動作のことを指します。
アドレス address
コンピューターのメモリーに記憶された情報を出し入れする際に手掛かりとなるように付けられた番号を「アドレス」といいます。
アナウンス・ブース announce booth
アナウンス・コメントやナレーションなどを収音出来るようにした小型のスタジオで、ふつうは響きを少なくするために、吸音材などで内部を処理してあります。
アナライザー analyzer
分析器のことです。また「スペクトラム・アナライザー」は、周波数成分の分布を知るために使われる装置のことです。
アフター・ビート after beat
洋楽の一つの小節内で偶数拍または弱拍にアクセントを置くビートのことをいいます。
あらへんしゅう(荒編集)
オリジナル・テープのNG部分や不要な部分を取り除く作業のことをさします。
アルペッジョ arpeggio
ハープのように弾くという意味で、一つの和音の音を同時に弾かずに低い音から高い音へと連続的に上がっていくように弾く奏法です。
アレンジ arrange
音楽の場合は編曲することをいい、演劇の場合には脚色することをいいます。音響の場合はマイクやスピーカー、機材などの機種選定や配置のプランを作成することをいいます。
アンコール encore
「再び」という仏語が元の言葉です。音楽会などで、予定のプログラムが終わった後に、出演者の出来栄えをたたえ、拍手・掛け声などを送って、再び演奏を求めることをいいます。
アンサンブル ensemble
音楽で、少人数の重唱・重奏のこと、また、そのグループのことをいいます。意味を拡げて、演奏のバランスがとれている場合などに「アンサンブルが良い」と言ったりします。
あんそうおん(暗騒音)
ホールやスタジオの中に、人が誰もいない状態の時の騒音を暗騒音といいます。外部から侵入する騒音や換気の騒音などがこれに相当します。これは、低音ほど遮断することが難しく、周波数分布は低音域レベルはど大きくなっています。
アンバランス unbalance
不平衡型回路の意味で、信号回路のマイナス側(コールド)をアース(シールド)と共通
にして用いる回路方式です。外部の誘導雑音やハムなどの影響を受けやすいのですが、一般
用機器や楽器などでは、コストが低いことなどからアンバランス型を使用することが多くなっています。
アンビエンス ambience
包囲された状態という意味の言葉です。音響上は、聴く人が音で取り囲まれているような臨場感のことをいいます。
いかす(生かす)
音響機器を作動させることをいいます。
いけごろし(活け殺し)
演劇のセリフ、または、動きに合わせて音を上げたり、下げたりすることをいいます。
イコライザー equalizer
等しくするという意味のことばです。周波数特性を変化させる事によって音色を調整する回路のことです。
いっかん(一管) 邦楽演奏の形で、一人で能管(笛)を吹奏することです。
いっちょう(一調)
能の特殊な演奏形式の一つで、小鼓(または大鼓か太鼓)一人を主として、一人の謡(まれに一、二名の助吟者がいることもある)で能曲の中の要所を演奏する形式の事をいいます。打楽器が一つになるため、ふつうの演能の時よりも複雑で派手な手を打ちます。即興的に修飾を加えたりして、細かい技巧を発揮することが多く見られます。
いと(糸)
三味線・琴・琵琶・胡弓などの楽器に張る絃(弦)の別名です。また、三味線演奏者を通
称でこう呼びます。
イメージおんげん(音源)
スピーカーなどの音源を、音が良く反射するような平らな壁の近くに置くと、その壁を反射鏡に見立てて音源が映った場所に、まるでもう一つの同じ音源が存在するような効果
が生じます。この新しい音源を「イメージ音源」といいます。
インストゥルメンタル instrumental
「器楽の」または「楽器の」という意味です。一般的には「楽器だけの演奏」の意味で使われます。
インストゥルメント instrument
精密な器械、器具を意味する言葉ですが、楽器を意味する言葉としても用いられます。
インターカム intercom
舞台進行上、各パートへの指令や相互連絡のために用いる通話装置のことで「インカム」ともいいます。
インターフェイス interface
信号のレベルやタイミング、形式などが異なる回路や装置をつなぎ合わせるとき、その中間に介在させて、通
訳のような仕事をする回路のことです。
インターフォン inter phone
交換機なしで互いに通話できるようになっている電話装置で、内線電話として各室相互間の連絡に使用されます。
インダクションノイズ induction noise
電気(磁気)誘導雑音のことです。モーターやAC電源、SCR調光器などからの磁気誘導によって生じる雑音が主なものです。
イン・テンポ in tempo
「正しい拍子で」という意味の言葉です。実際にはそのままのテンポを持続することをいいます。
イントロダクション introduction
曲の冒頭の部分のことで、導入部あるいは前奏といいます。略して「イントロ」といいます。声楽曲では歌が入る前、器楽曲では主題に入る前の部分を指します。
インパルス・ノイズ impulse noise
雷や蛍光灯の点滅、エンジンのスパークプラグ、モーターの始動などによって発生する瞬間的な雑音をいいます。
インピーダンス impedance
電気回路に交流を流した時の抵抗値のことで、ふつうの抵抗と同じオーム(Ω)という単位
を使用します。抵抗器は直流、交流の違いなく一定の抵抗値を示します。それに対して、コイルは直流は通
しますが、交流に対しては周波数が高くなるほど抵抗値が大きくなります。また、コンデンサーは直流は全く通
さず、交流に対しては周波数が低いほど抵抗値が大きいのです。インピーダンスは、これらの抵抗分を合わせたもので、周波数によって値が変化します。記号はZで表します。
インプット input
入力の意味です。アンプなどを駆動させるための電気信号を送り込むことをいいます。また入力信号を受けるために設けられた端子をさすこともあります。
インプロビゼーション improvisation
即興演奏のことです。ジャズなどで、ソロの演奏者がオリジナリティあふれるアイデアとテクニックを用いて、即興で演奏する場合をこう呼びます。
ウインド・スクリーン wind screen
マイクロフォンを使用して野外収音の時、風によって起こる雑音や、声の収音時の息による吹かれ雑音を防止するために、マイクロフォンに取り付ける物の事です。スポンジ製の物や金属の網状の物などがあります。
ウーファー woofer
低音再生用スピーカーのことで、一般的にはコーン型の物が用いられます。
ウェイト・タイム wait time
Qがスタートしてから、次のQがスタートするまでの時間のことです。
ウォール・スピーカー wall speaker
壁に取り付けられたスピーカーのことをいいます。劇場などでは客席の側壁、後壁に取り付けられます。演劇の効果
音の再生に用います。また「SR(増幅補強)」の場合などに、時間を遅らせて側方や後方から反射音を付けたり、残響を付けたりするのに用いられます。
うける(受ける)
回線で送られてきた信号を、受け入れ側の機器の入力端子に接続することです。
うちあげる(打ち上げる)
邦楽で、鳴物の曲を終わらせることです。「あげ」と略すことがあります。
うちおろし(打ち下し)
邦楽で、始めは大まかで、段々細かく打っていく大太鼓の打法のことをいいます。鼓では、決まった打ち方の名称の一つです。
うわぢょうし(上調子)
三味線の奏法です。二人以上の人数で演奏するときに、主旋律を弾く「本手(ほんて)」の調弦より高い調子に調弦した三味線を用いて同じ旋律で合奏する演奏法をいいます。新内(しんない)節に限っては「高音(たかね)」という場合があります。
エア・モニター air monitor
劇場などにおいて客席空間の音響状態をチェックするためのシステムです。通
常、客席の天井からマイクロフォンを吊り下げるなどして収音します。
エー A
アンペアの略称です。電流の強さの実用単位「アンぺア」を表す記号です。
エーエヌ AN
アナウンスの略称です。
エーシー AC
交流のことです。一定時間ごとに、大きさが変化して行って、逆方向に流れる電流が交流です。また、1秒間に流れの方向を変える回数を周波数(ヘルツ)といいます。
エーディー A/D
アナログ信号をデジタル信号に変換することを表す記号です。A-Dとも書きます。
エーティーアール ATR
オーディオ・テープレコーダーの略称です。VTR(ビデオ・テープレコーダー)に対する呼び方として使われています。
エーディーシー ADC
アナログ・デジタル変換器のことで、アナログ信号をデジタル信号に変換する回路を指します。
エーティーティー ATT
「アッテネーター」の略称です。減衰器のこと、音響調整器として用います。
エキサイター exciter
電気楽器などに埋もれがちなボーカルや生楽器の明瞭度を上げる為の装置です。フィルターや歪発生回路などを組み合わせて作られている装置のことをいいます。
エキスパンダー expander
信号のダイナミック・レンジ(信号中の小さい音と大きい音の比)を拡大する回路を伸張回路といい、その装置を「エキスパンダー」といいます。使用目的から二種類に分類出来ます。一つは圧縮された信号を元に戻す役割をする伸張回路で、ドルビーやdbxといった「ノイズ・リダクション・システム」などに使われています。もう一つはバックグランドのノイズの低減、例えば録音テープのヒス・ノイズやマイクロフォンのかぶり音を改善するために、低レベルの音を一層小さくするための伸張回路で、「ノイズ・ゲート」に使われています。
エコー echo
山びこはエコーの代表的な例です。音を反射する壁の多い部屋で音を出すと、音がダブって聞こえます。50ミリ秒以上遅れて、壁などで反射してくる反射音は、音源から直接届く直接音と分離して聞こえ、これをエコーと呼びます。一般
的にはリバーブ(残響)とエコー(山びこ)を混同していますが、音響学上は区別
して用います。
エコータイム・パターン echotime pattern
単音減衰波形のことです。1000Hz程度の純音で10ミリ秒程度の単音を、ホールなどの場内で無指向性スピーカーから放射し、これを任意の客席で無指向性マイクロフォンにより収音し、その時間経過によるレベルの変化を「オシロスコープ」などで表示すると、エコータイム・パターンと呼ばれる波形が得られます。このパターンから直接音、初期反射音、拡散音の関係を把握する事が出来るとともに、音響障害となる反射音も発見出来ます。
エコーマシン echo machine
残響付加装置のことをいいます。「リバーブ・マシン」を含めてエコー・マシンといっています。ホールなどの響き(残響)を疑似的に作りだす装置で、テープ式、スプリング式、デジタル式、鉄板式などの方式があります。
エコールーム echoroom
ホールの音などの響きを疑似的に作るために乱反射を多くした、コンクリートの壁に囲まれた部屋のことをいいます。この部屋の中で、スピーカーから音を再生し、それをマイクロフォンで収音して、エコーを作ります。
エスアール SR
「サウンド・リインフォースメント」の略称です。劇場やホールにおけるコンサートや演劇の音の補強や補正をすることを意味します。楽器音や声をマイクロフォンなどで収音し、それを増幅しスピーカーから送出して、音を補強したり音質を補正することにより、音楽的(演劇的)にバランスをとることをいいます。
エスイー SE
サウンド・エフェクト(Sound Effect)の略称で、効果音のことをいいます。
エスエヌ SN
SN比の略称です。信号対雑音比のことをいいます。必要な信号と不必要な雑音との比率のことで、一般
には、この比の対数の20倍をとり、デシベルの単位で表されます。この数値が大きいほど雑音が少ないことになります。
エスエムピーティーイー SMPTE
アメリカの映画技術協会の略称で、映画・テレビ技術の国際的な研究機関の一つです。映画・テレビに関する各種の推奨基準がここで検討・発表され、各国の業界で使用されています。
エスピーエル SPL
音圧レベルを表す言葉です。音圧レベルをデシベルで表示する場合に、dBの後にSPLを付けて「dbx
SPL」と表示します。
エッジ edge
スピーカーの振動板(コーン紙)を支持する周辺部のことをいいます。コーン紙の前後運動を助け、上下左右方向の有害な動作を抑える働きを持っているので、動きやすい材質、形状が要求されます。コーン紙と同じ材料で一体形成してあるエッジを「フィクス・エッジ」といい、ウレタン・ゴムなどで別
に形成してコーン紙に接着してあるエッジを「フリー・エッジ」といいます。
エッチエフ HF
周波数が3MHz〜30MHzの電波の帯域をいう略称です。
エヌアール NR
ノイズ・リダクション・システムの略称です。磁気テープによる録音・再生の際に伴う雑音を低下させる装置です。ドルビー・システムやdBXシステムがあります。
エヌエービー NAB
アメリカ放送連盟の略称です。放送業者の団体で、放送機器関係の規格などを決めています。テープやテープレコーダーの互換性を持たせるため、リール・サイズ、トラック・パターン、再生イコライザーなどの諸特性の規格があります。
エヌエフビー NFB
「負帰還」と訳される言葉の略称です。アンプの出力の一部を入力側に戻して再入力することを「帰還」といい、入力信号を打ち消すかたちで逆位
相の信号にして入力側に戻すことを「負帰還」といいます。信号がトランジスタなどの増幅素子を通
ると歪みが生じたり、周波数特性が平坦でなくなったりします。そこでアンプに適度の負帰還をかけ、入力信号と出力信号との比較を行ない、両方が相似形になるよう自動的に、増幅素子に加えられる入力信号波形を調整します。この結果
、増幅度は減少しますが、同時に歪みも減少します。
エヌジー NG/no-good
「だめ」という意味の言葉の略称です。もとは映画用語です。舞台や放送などで演技・演出・技術等の失敗、意に満たないことをすべて「NG」といっています。
エフェクター
電気信号になった声や楽器の音をさまざまに変化させ、いろいろな音の効果
を生みだす装置の総称です。音響技術者がミキシングの中で扱う装置と、演奏家が電気楽器とアンプの間に挿入する小型の物とがあります。
エフビー FB/fold back
出演者や演奏者が、各自のテンポや音量を確認しやすいように、セリフや音楽を送り返すスピーカー、あるいはその装置のことをいいます。一般
に「はね返り」「返し」と呼んでいます。
エフユー FU
アナウンサーが自分でマイクロフォンを生かしたり切ったりするための、連続可変の音量
調節器のことです。咳、くしゃみ、原稿をめくる時などに絞って、不要な雑音を吸収しないようにするための装置で、「カフ」ということもあります。
エムイー ME
音楽効果のことで、効果音として用いられる音楽をいいます。
エムエー MA
スタジオや野外ロケでのVTR収録の時に、全ての音を同時に作成することは非常に少なく、音楽やナレーション、効果
音は、画像の編集が完了した後にダビング処理をし加工されて作品となります。これらの音響処理の作業をMAといいます。和製英語でマルチ・トラック・オーディオ・テープレコーダーとVTRを使用するのでMA(マルチ・オーディオ)と呼ばれるようになりました。アメリカではオーディオ・ダビングあるいはサウンド・スイートニングといっています。
エムエス(MS)
ステレオ・マイクロフォン 単一指向性のMと両指向性のSのユニットを同軸上に置き、時間差と位
相差をなくして、二つのマイクロフォンの指向性の差から生ずるレベル差によって、ステレオ信号を取り出す方式をいいます。
エムエフ MF
周波数が300kHz〜3MHzの電波の帯域のことをいう略称です。
エムシー MC
マスター・オブ・セレモニーズ(master of ceremonies)の略称で、司会者のことをいいます。コンサートでは、司会者がいない場合でも、曲間の演奏(演唱)者の話のことをMCと呼んでいます。
エムディー MD
コンパクト・ディスクの約半分6.4?のMOディスクの事で、ミニディスクの略称です。容量
はコンパクト・ディスクの1/5ですが、音声信号を圧縮することにより74分の録音・再生が出来ます。録音された信号の編集は、60ミリ秒が最小単位
のために微妙なことは出来ません。
エムティーアール MTR
マルチ・トラック・テープレコーダーの略称です。
エルイーディー LED
発光ダイオードの略称です。半導体の発光素子で、パイロット・ランプ、レベル・メーター、電子卓上計算機などへの利用が行われています。発光色は赤。緑、橙が一般
的ですが、先頃青も作られるようになりました。
エルシー(LC)
ネットワーク 「ディバイディング・ネットワーク」のことで、コイル(L)とコンデンサー(C)を用いているものを、このように呼んでいます。
エレクトレット・コンデンサー・マイクロフォン electret condenser
microphone
コンデンサー・マイクと同じ構造ですが、エレクトレット効果を応用して電極に電圧を加える必要のないマイクロフォンのことです。「エレクトレット効果
」とは、合成繊維やフィルム、プラスチックなどの高分子物質に、高い電界をかけた時、電界を取り去っても物質にプラスまたはマイナスの電荷が残るという効果
をいいます。この半永久的な電荷を利用したのが「エレクトレット・コンデンサー・マイクロフォン」です。
エレベーター・マイクロフォンそうち(装置)
垂直形のマイクロフォン・スタンドを舞台などの床に埋め込み、油圧や電動により上下に動かす物で、音響調整室や舞台袖から遠隔操作により任意の高さにして、適正な収音をするための装置を言います。
エンクロージャー enclosure
スピーカー・ボックスのことで、そのスピーカーの音質特性を決定する大きな要素となります。
エンディング ending
楽曲や演劇の終わりの部分のことです。
おうてき(横笛)
雅楽で使う横笛(よこぶえ)のことです。竜笛(りゅうてき)ともいいます。
おおかわ(大鼓) 和楽器の一つである大鼓(おおつづみ)の別称で大皮、大革とも書きます。左手で持ち左膝に乗せ、右手で打つ打楽器です。
おおだいこ(大太鼓)
劇場に常備されている和楽器の一つです。大きさは直径で示し、皮面の直径2尺5寸から3尺5寸ぐらいの物が一般
的で、劇場の大きさに比例して決められます。胴は楠、檜、樫などの堅い材料で作られ、皮は羊の皮を最良とし、馬や牛の皮も用いられます。表皮は裏皮より厚いものを用います。ふつう四本足の台に据えられ滑車がついていて移動出来るようになっています。歌舞伎では、雨や風、雪音などの天候の音、川音や波音などの自然音、幽霊の出現などの怪奇音などに用いられます。
オーディション audition
検聴または試聴のことで、調整卓などの入力信号をチェックすること、またはチェックするためのモニター回路のことをいいます。
オートロケーター テープレコーダー機能の一つで、録音された音の所定の箇所を、自動的に呼び出す機能のことをいいます。同じ部分を何度も繰り返したり、音の最初の部分を探しだしたりするのに用いられます。
オーバー・ダビング over dubbing
マルチトラックに録音された物を聴きながら、それに合わせて歌ったり、他の楽器を演奏したりして、同じテープの空いているトラックに更に録音することをいいます。
オーバーラップ overlap
音楽や音響効果音のテープによる再生の際に、すでに出ている一つの音にかぶせるように次の音を重ねていって、二種類の音の音量
を交差して入れ換える方法をいいます。
オープンエア・ヘッドホーン
振動板の背面が密閉された構造のヘッドホーンに対し、背面が開放された構造のヘッドホーンの事です。密閉型に比べて、圧迫感が少なく、低音共振周波数の低いユニットを使用することで、低音感の優れたヘッドホーンになります。
オープン・リール・テープレコーダー open reel tape recorder
取り外しの可能な録音テープを巻き取るための、金属やプラスチックのリール(枠)を、送り出し側と巻き取り側の一対で使用する形式のオーディオテープレコーダーのことをいいます。基本の量
のテープを片側のリールにすべて巻き取れるようになっています。リールのサイズは5、7.5、10インチなどで、テープの幅は1/4、1/2、1、2インチなどです。
おき 歌舞伎や日本舞踊で、幕が開いて人物が登場するまでの間に演奏される前奏部分のことをいいます。
オグジュアリー AUX/auxiliary
「補助の」「追加の」という意味です。主入力や主出力以外の予備端子、予備回路のことを指します。「AUX
IN」、「AUX OUT」と表示されます。
オクターブ octave
音楽的には完全8度音程のことです。周波数の比が1対2になる音程を指します。例えばAから次のAまでの音程で、Aが440Hzだとオクターブ上のAは880Hz、オクターブ下は220Hzとなります。
おこす(起こす)
音楽のマザー・テープや効果音の素材テープに収録されている音をコピーし、本番用テープに作り換えることをいいます。コピーする段階で、音質の補正をしたり不要の部分を抜き取ったりします。レコードからテープにダビングすることを、「レコードからテープに起こす」といいます。
オシレーター oscillator
発振器のことで、「OSC」と略して書きます。連続的に電気信号を発生する装置で、測定用としては発振する周波数の範囲によって、「オーディオ・オシレーター(低周波発振器)」、「RFオシレーター(高周波発振器)」などの種類があります。測定用のオシレーターは「テスト・オシレーター」と呼ばれ、出力波形として、正弦波、矩形波などを選択することが出来るものが多いです。
オシロスコープ oscilloscope
いろいろな電気信号をブラウン管で観測するための測定器のことです。時間的な変化に対する信号の変化を映し出すほかに、基準信号を用いて校正することにより電圧値、電流値、周波数などを読み取ることも出来ます。ステレオのミキシングをするときにL・R(左・右)の位
相を監視するために用いることもあります。
おとあわせ(音合わせ)
舞台稽古または本番前に、実際の舞台で音のレベル、音質、バランス、きっかけなど、音の総合的な調整・点検を行なうことです。
おとじり(音尻)
音楽や効果音などの最後の音が消える所、その音の余韻がなくなる所を指します。
おとだし(音出し)
@設置を完了した音響システムから音を出すこと、また、音を出して回路をチェックすることをいいます。
A演奏を始めることをこのようにいいます。 B稽古などを開始することです。「音出し12時」とは、12時に稽古を開始するということです。
オフ off
@音源がマイクの位置から外れていることをいいます。 A音が遠くから発しているように聞こえるような表現の仕方をいいます
B機器のスイッチを切ることをいいます。 C舞台上で進行中の場面から離れた所(舞台袖や舞台奥など)での背景音としてのセリフやガヤのことをいいます。
オフ・マイク off mic
音源がマイクロフォンから離れていること、またはその状態を指します。また、マイクロフォンから遠ざかることも言います。
オブリガート obbligato
メロディー・ラインを引き立てるために、メロディーと同時に演奏されるパートのことで、「助奏」といわれます。
オペアンプ operational amplifier
もともと、アナログ・コンピューターに用いられていた演算増幅器のことですが、無限大に近い増幅度、極めて高い入力インピーダンスと低い出力インピーダンスを特長としています。IC化されて安価になったことから、ミキシング・コンソールのヘッドアンプやサミングアンプなど、音響機器の機能部品として多く使用されています。「OPアンプ」とも表記します。
オペレーター operator
音響機器を操作する人のことをいいます。
オリジナル・テープ original tape
録音テープで、収録したままで編集されていない素材テープのことをいいます。台本の順に沿って収録されていない場合や、譜面
どおりの順に演奏していない場合も多く、またNGの部分も収録されています。これらは編集の段階で整理され、順序もタイミングも修正されてマスターテープが作られるのです。
オン on
@音源がマイクに近いことをいいます。 A音が近い所から発しているように表現することをいいます。
B機器のスイッチを入れることをいいます。
おんあつ(音圧)
音波の振動は、空気を圧縮したり膨張させたりしながら、水面と同じように四方へ拡がります。大気圧は平均、約1000ヘクトパスカルです。例えば音波によって0.001ヘクトパスカルだけ大気圧が変動したとすると、その変動分の幅が音圧になります。この音圧の変動分の幅が大きいほど、音は大きくなります。
おんあつ(音圧)
レベル 音圧の大きさをデシベル(dB)単位で表したものをいます。正常な聴力を持った人が、音として感じる最小の音圧を基準として、これを0dBと規定したものです。「dB
SPL」で表示され、数値が大きいほど大きな音になります。
おんきょうこうか(音響効果)
@演劇・映画・テレビドラマなどで、効果音や音楽などを使用して、劇の演出効果
を高めることをいいます。花びらや枯葉を散らしたり、煙を出したりする視覚効果
に対する言葉です。 A劇場やホールの建築的性能が、演奏者やSR(増幅補強)された音に及ぼす効果
のことをいいます。演奏に良い影響を及ぼす場合、このホールは「音響効果
が良い」といいます。
おんきょうしゅつりょく(音響出力)
音源から1秒間に発生する音波のエネルギーを音響出力といい、単位はワット(W)で表します。スピーカーの音響出力は[入力レベル]×[スピーカーの能率]で算出出来ます。
おんきょうしょうがい(音響障害)
直接音と反射音が分離して別々に聞こえる現象をエコーまたは反響と言い、会話などを聴く場合は、明瞭度が低下します。これを「音響障害」といいます。
おんきょうちょうせいたく(音響調整卓)
マイクロフォンや、テープレコーダーなどからの信号を集合させて、レベルや音質などを総合的に調整して混合(ミックス)する装置のことです。ミキシング・コンソールやミキサーともいいます。
おんきょう(音響)レンズ 音を屈折させて、拡散又は集束させる装置の事です。光学レンズと全く同じ原理でスピーカーの指向性の改善等の目的でスピーカーの前面
に取り付けて使用されています。
おんさ(音叉) 音の標準周波数の確認に用いられる物で、440Hz、442Hzなどいろいろな種類があります。細長い均質な鋼の棒をU字形に曲げ、その中央に柄が付けてあり、軽く叩くと、周波数の安定した純音を発生します。
おんじょう(音場)
空気のある所で音を出すと、音は空気を圧縮したり膨張させたりしながら、疎密波として四方に拡がって行きます。これは大きなホールでも狭い部屋でも同じことで、このように屋内外を問わずに音の存在する所を音場といいます。
おんせつめいりょうど(音節明瞭度)
劇場などでは、せりふや講演の言葉が明瞭に聴き取れなければなりません。そこで舞台上で基準となる言葉を発音して、それを客席で聞こえた通
りに書き取ったとき、正しく聴き取れた割合を音節明瞭度といいます。日本語の場合、明瞭度が85%ならば文章了解度が95%以上となり聴取条件は優良となります。また明瞭度が70%以下となると、聴き取りにくくなり、聴取条件は不良となります。
おんせん(音線)
音の波動性(波のように広がりながら伝わっていく性質)を無視して、音の伝わり方を直線として取り扱う場合の音の伝搬経路のことをいいます。
おんぞう(音像)
光学には実像に対して虚像という言葉がありますが、音に関してもこれに相当するものがあり、これを音像といいます。人はある音を聴いただけで、音源の位
置・大きさ・形などを感じ取ることが出来ます。この感覚的にとらえた音を音像といいます。
おんぞういどう(音像移動)
音源が連続的に移動しているかのように聞かせる方法のことをいいます。これには、スピーカーを実際に移動させる方法と、2台以上のスピーカーを配置して、パンポットなどの装置で、その音量
を操作することにより音像を移動させる方法とがあります。
おんそく(音速)
音波が空気などの媒質の中を伝わる速度のことです。空気中の音速は、気圧や温度によって影響を受けますが、1気圧・気温15℃では約340m/sとなります。
オン・マイク on mic
音源にマイクロフォンを近づけること、または近づいている状態をいいます。
カーディオイド cardioid
カーディオイドとは心臓の形という意味です。マイクロフォンの指向性でハート形をした単一指向性のことを指し、指向性の基本的な形をいいます。
かえし(返し)
ステージ上の演奏(演唱)者に演奏音や再生音を送り返す事、あるいはそのシステム(ヘッドフォン、スピーカー)をいいます。演奏者同士の音量
のバランスやテンポを取り易くするためのものです。「はね返り」、「FB(フォルド・バック)」ともいいます。
かえで(替手)
邦楽の合奏用の曲で、原旋律(これを「本手(ほんて)」という)に対して、それと合奏出来るように作られた別
の旋律のことを言います。ふつう替手は、本手と同じ調子で書かれますが、まれには調子替りの替手もあります。三味線で本手と違う調弦のものを使う場合は、「上調子(うわぢょうし)」と呼んでいます。
かかり(掛かり)
@唄や三味線の唄い出し、弾き出し、鳴物の演奏のきっかけまたはタイミングのことをいう言葉です。
A音を再生するきっかけ、音の出し方のことをいいます。
かかる(掛かる) 音を出すことや演奏を始めることをいいます。
かくさんおんじょう(拡散音場)
室内の、どの場所においても、音があらゆる方向から一様に聞こえてきて、音圧がほぼ均等になっているような空間のことを拡散音場といいます。
かくせい(拡声)
声や音を拡大するという意味です。音響装置を用いて、情報などを一斉に多くの人々に伝える手段のことで、呼び出しのアナウンスや選挙演説などからロックコンサートまで、広範囲に使用される言葉です。通
常は「パブリック・アドレス(PA)」といわれていますが、これは広義の拡声を指しています。しかし、劇場・ホールの音響技術では、かなり高度な手段が用いられて、情報伝達の域を越えており、これに関しては音響増幅補正という意味の「サウンド・リインフォースメント(SR)」という言葉が使われています。
カクテル・パーティーこうか(効果)
人間の耳は脳の特殊な働きで、聴きたい音だけを選択して聴ける能力を持っています。例えば、騒がしいパーティーの席上でも重要な会話は意外に通
じるものです。このように多くの音源の中から、ある種の音だけを聴き分ける耳の能力を「カクテル・パーティー効果
」と呼んでいます。
かすめる
@下座音楽の演奏用語で、音を薄く(小さく)、弱くすることをいいます。
A効果音などで音量を小さくすることをいいます。
カセット・テープ cassette tape
録音テープの取り扱いを簡単にするため、小型容器の中にテープとリールなどを収めて、テープレコーダーにワンタッチで装着出来るようにした物です。
かたり(語り)
物語を語ることをいいます。また、ナレーションや解説(その場面の状況・雰囲気などを解らせ、印象づけるための言葉による説明)のこともいいます。
かたりもの(語り物)
邦楽の声楽曲の中で、歌と語りとから成っていて、言葉が主体となる筋のある物語をいいます。代表的なものとして、平曲・浄瑠璃・浪花節などがあります。
かちょうしゅうはすうたいいき(可聴周波数帯域)
人間の耳に聞こえる周波数の区域を可聴周波数帯域といいます。一般には20Hzから20,000Hzの範囲とされています。また人間の耳が音として感じる範囲を調べるとき、音の周波数を上げて聞こえなくなっても、音の強さを増すとまた聞こえるようになります。音の周波数を下げていった場合も同様です。従って、聞こえる限度は音の強さによって変化します。
がっそう(合奏)
アンサンブルともいいます。二つ以上の楽器を一緒に演奏することです。
カット・アウト cut out
音響の操作用語で、消す、あるいは削除の意味です。音を瞬時に絞り切ること、音が急に無くなることなどをいいます。「C.O」の略記号で表します。
カット・イン cut in
音響の操作用語で「カット・アウト」の反対語です。音を瞬時に所定のレベルまで上げること、音を最初から所定の音量
で出すこと、音を最初から所定の音量で出すこと、音が急に入って来ることなどをいいます。「C.I」の略記号で表示します。
カット・オフしゅうはすう(周波数)
周波数特性の限界を表す言葉で、出力が平坦な周波数帯域から3dB減衰する点の周波数のことをいい、「遮断周波数」とも呼ばれます。「fc」の略記号で表示します。
カデンツァ cadenza
イタリア語で終止装飾句のことです。つまり、協奏曲などで曲や楽章の終わる直前に、独奏者または独唱者の技巧を示すために挿入される華やかで即興的な部分のことをいいます。
かととくせい(過渡特性)
信号の急激な変化に対して、どのくらい忠実に応答・追従出来るかという性能を表したもので、「トランジェント特性」ともいいます。
かぶせる(被せる)
@二つ以上の音をダブらせることをいいます。たとえば、ナレーションに音楽や効果
音を重ねることをいいます。 A所定のきっかけよりほんの少し早めに音を出すことをいいます。たとえば、せりふの終わりの部分に重ねて音を出すことなどです。
カフ・ボックス cough box
アナウンサーが咳払いをしたり、原稿をめくったり、打ち合わせをするときに一時的にマイクロフォンをオフにする為の操作ボックスです。スイッチによる断続ではバック・ノイズが急に無くなって不自然になるので、フェード・イン、フェード・アウトする方法をとります。なおカフは咳のことです。
かぶりこみ(被り込み)
各音源にそれぞれにマイクをセットする(マルチ・マイク)方式の場合に、収音しようとする音以外の音がマイクに混入してしまう現象をこのようにいいます。
かぶる(被る)
マイクロフォンに不必要な音が混入することをいいます。収音しようとする楽器音以外の、他の楽器の音などが入る場合にもいいます。
カラオケ 特定の要素(ボーカルやソロ楽器)だけを抜いて録音された伴奏音楽のことです。
カラム・スピーカー column speaker
劇場などの客席の側方や、バルコニー席の下部の音圧が不足する場合に設置されるスピーカーのことです。舞台のプロセニアムの両サイドの柱に設置されることから、この名前があります。
ガリ ボリューム・コントロール・ユニットにほこりが入ったり、接点の欠損があったりすることによって生じる電気的雑音の一種で、発生音が断続的でガリガリと音がするので、このようにいいます。
かんせつおん(間接音)
「反射音」ともいい、音源から発せられた音が壁・天井などで反射して聴取者の耳に到達する音をいいます。音源から直接耳に入る「直接音」に対して、必ず時間的な遅れを生じます。
かん(完)パケ
編集作業が終了し、いつでも本番に使用できる状態まで完全に仕上がったテープを指します。
ガンマイク
「超指向性マイクロフォン」のことで、形状が銃に似ているので、このように呼ばれています。
き(柝)
人形浄瑠璃・歌舞伎劇などで使用する拍子木のことです。柾目の通った樫の木で作られています。げきの進行のいっさいの合図は、すべてこの音で行ないます。
キー key
@ピアノやオルガンなどの鍵盤楽器の指で押さえる部分、あるいは木管楽器の指穴部分を差します。
A歌曲を歌う場合の音域帯で、基音となる音をいいます。
ぎおん(擬音)
実際の音に似せて、笛や道具、声などによって作りだす模擬音をいいます。
きっかけ cue 音を出す機会(チャンス)のことです。また、その約束された箇所、あるいは機会を知らせる合図のことをいいます。
きっかけあわせ(きっかけ合わせ)
本番や通常の稽古では、音の出し方・きっかけ・音量・音質・寸法などを考え合わせて操作しますが、きっかけだけを主眼とした稽古のことを「きっかけ合わせ」といいます。
きっかけもの 音を出すものはすべてきっかけを伴いますが、その音が出ないと舞台の進行に重大な影響を及ぼし、時にはそのために進行が中断する場合も有ります。そのような種類の音を「きっかけもの」、または「役もの」といいます。
きほんは(基本波)
複合音のなかで最も低い周波数を「基本波」、あるいは「基本周波数」といいます。この基本波の整数倍の周波数成分を「高調波」といい、基本波の2倍の周波数のものを第2高調波、3倍のものを第3高調波といいます。
きめる(決める)
ある音を上げたり、下げたり操作する際に規定のレベルに達することをいいます。また、音楽や効果
音などを、途中でフェードアウトせずに音の終わりの部分まで聴かせて(印象的・効果
的に)、終了する場合もこのようにいいます。
キヤノン・コネクター cannon connector
アメリカのメーカー(CANNON ELECTORIC COMPANY)が開発したコネクターの総称です。音響用としては、XLRシリーズが用いられます。この製品に互換性を持たせたものに、スイッチクラフト社やノイトリック社の物があります。
キャラクター character
音質のこと、またマイクロフォンの音質切替のことを指します。低音域の調整をするもので、M2・M1・V1・V2などと表示してあります。
キュー Q/cue
@音楽、音響などのきっかけを指示するために決めてある合図のことです。インカムなどの通
話装置や身振りで指示するハンド・サインにより合図をします。 Aテープレコーダーのキュー・スイッチは、早送りや巻き戻し中にテープを再生ヘッドに接触させて、音を確認するための装置ですが、その場合にも「キュー」という言葉が用いられているのです。
B音響調整卓の「キュー回路」のことをいいます。モニター回路に信号を送り込む機能のことです。
きゅうおん(吸音) 音が壁などで反射されるとき、100%の音が反射されずに、エネルギーのうちの何%かは、壁の材料抵抗により熱エネルギーに変換され、見掛け上、吸収されてしまいます。一般
にこれを「吸音」といいます。
きゅうめんは(球面波)
小さなスピーカーから音を出すと、それを中心に四方八方へ音が拡がって行きます。このように球がどんどん大きくなるような形で音波が拡がっていく時、これを「球面
波」といいます。球面波は音源からの距離が2倍になれば音圧は半分になり、音圧レベルで表せば、6dB低下したことになります。
きょうしん(共振)
ある物体に力を加えた場合に、その周期がちょうど物体の動きやすい周期に一致していると、力はごくわずかでも物体は大きく揺れだします。このような現象を共振といい、振動の周波数を共振周波数といいます。
きょおんげん(虚音源)
スピーカーなどの音源を、音が良く反射するような平らな壁の近くにおくと、その壁を反射鏡に見立てて音源が映った場所に、まるでもう一つの同じ音源が存在するような効果
が生じます。その新しい音源を「虚音源」といいます。
きょくせい(極性)
+側のことをいいます。例えば、スピーカーでは入力端子に直流を加え、振動板が前に動いたときに接続している+側の端子を正極(プラス)他の端子を負極(マイナス)といいます。スピーカーやマイクを多数同時に用いるときは、必ず極性を合わせて使用する必要が有ります。
きょりげんすい(距離減衰)
音波は球面状に伝わっていくため、音源から距離が遠くなるほど音圧が減衰することを距離減衰といいます。音源が「点音源」ならば、音源からの距離が2倍になるごとに音圧レベルは1/2、つまり6dBずつ減衰することになります。
きんかんがっき(金管楽器)
金属を材料として製作された管楽器の総称です。金管楽器はリードが無く、代わりに唇の振動を用い、その振動を館内の空気に与えて発音します。発音源は上下の唇です。材料は一般
には真鍮か又はその合金で作られ、型は緩徐な円錐型の開管になっています。従来木管楽器に属する物で、近代になって材料の入手や加工の容易さなどのため、金属を使うようになった楽器は含まれません。例えばフルートやピッコロなどです。
きんせつこうか(近接効果)
無指向性マイクロフォンならば、音源にかなり接近して使っても特性はあまり変わりませんが、単一指向性や両指向性マイクロフォンを音源に近づけて使用すると、低音が強調されて、明瞭度が下がってしまいます。これはマイクロフォンの振動板に加わる音圧の大きさが異なるからで、音源に近づけば近づくほど、その影響力は大きくなります。この現象をマイクロフォンの「近接効果
」といいます。ボーカル用マイクロフォンでは、この近接効果を見込んで、あらかじめ低音域を抑えて設計したものが多用されています。
クオリティー quality 音質、性能、特性という意味を表す言葉です。
グラフィック・イコライザー graphic equalizer
音質調整器の一種で、可聴周波数帯域をいくつかに分割し、各帯域ごとに独立してレベルを調整出来るものをいいます。GEQという略記号で表示します。通
常、スライド形のボリュームを使い、調整後のツマミの並び方により、グラフを見るように補正カーブが一目でわかるようにしてあります。
クリック・ノイズ click noise
クリックとは「舌打ちの音」のことです。アンプ系でスイッチを切り換えたり、あるいは電源を入れたり切ったりする時に生じる瞬間的な雑音の事をいいます。瞬間的ですが、かなり大きな電圧が発生します。
グリッサンド glissando
音階を、非常に速く連続的に演奏することをいいます。
クリッピング clipping
入力信号が規定の入力レベルを超えると、出力信号が歪んでその波形の頭部(許容入力を越えた部分)が削り取られた状態になります。これをクリップまたはクリッピングといいます。この波形には無数の高周波が含まれているので、音がつまって、音色としては濁った感じになります。
クロスオーバーしゅうはすう(周波数)
マルチ・チャンネル・アンプ・システムやマルチウェイ・スピーカー・システムでは、再生周波数をいくつかの帯域に分割し、帯域ごとに専用のアンプやスピーカーを使います。例えば3ウェイであれば、低音域、中音域、高音域に分割します。各帯域(音域)相互の境界の周波数を「クロスオーバー周波数」といいます。
クロストーク cross talk
混話、漏話のことです。使用中の回路・回線に目的以外の信号が混ざり込む現象で、この度合いは通
常デシベル(dB)で表示され、値が大きいほどクロストークが少なく性能が良いといえます。
クロス・フェード cross fade
音楽や音響効果音のテープによる再生の際に、すでに出ている一つの音にかぶせるように次の音を重ねていって、二種類の音の音量
を交差して入れ換えることをいいます。
ケーブル cable
一本または絶縁体で被覆された数本の導線をまとめ、その外周を保護してある伝送線の総称です。用途により、電力伝送のための「電力ケーブル」、音声信号・映像信号・パルス信号を伝送する「通
信用ケーブル」などがあります。
げざおんがく(下座音楽)
歌舞伎劇の伴奏音楽のことをいいます。舞台下手大臣柱の外の黒板塀で囲まれ、黒い御簾(みす)を掛けた中で演奏します。
けす(消す)
@録音されている音を消去することをいいます。 A今、出されている音楽や効果
音をなくすことをいいます。
げんがっき(弦楽器/絃楽器)
張られた弦の振動を発音源とする楽器の総称です。しかし、弦の振動のみでは楽音として使えないので、共鳴胴や共鳴板を必要とします。バイオリンのように弓で弦をこする擦弦楽器、ハーブのように指で弦をはじく撥弦楽器、ピアノのように弦を叩く打弦楽器などがあります。
げんすいき(減衰器)
電気信号を歪無く減衰させるための機器のことです。音響では、周波数の影響を受けずに減衰させられる抵抗減衰器が使われます。減衰量
が固定のものを「パッド」、可変出来るものを「アッテネーター」と区別して呼んでいます。
コアキシャル・スピーカー coaxial speaker
コアキシャルとは同軸という意味で、「ウーファー」の前面の同軸上に「ツィーター」が配置されているスピーカーのことをいいます。音源位
置が同じになるので、再生音の定位感が良いのです。
こうかおん(効果音)
広義には、音響家が担当する、演劇の演出意図を表現するために用いられる全ての音を指します。SEと略して表記します。音楽の場合、MまたはMEと記すことがあります。狭義には、演劇などに用いられる音楽以外の効果
音をいいます。
こうちょうはひずみ(高調波歪み) トランスやアンプなどの装置の非直線性によって、入力信号の周波数以外に整数倍の信号が装置の中で発生してしまうことを「高周波歪み」といいます。
ゴースト ghost
録音テープで、本来の音が鳴り出す前に、ごく小さい音量で本来の音と同じ音が聴こえる現象を指します。録音テープの磁性体の重ね巻きによって起こる転写
によるもので、録音された音のレベルが高いほど起こり易く、デジタル録音ではこのゴースト現象は起こりません。
コード chord
@和音の事です。高さの異なる二つ以上の音を同時に鳴らした時に合成される音をいい、その合成音は調和の度合に応じて、「協和音」と「不協和音」とに分けられます。
A楽器の弦(絃)のことを指します。
コード cord
一般的に、屈曲性に富む小規模な導線のことをコードといっています。電源コード、パッチング・コード、マイク・コードなどがあります。
コーラス chorus
@合唱のことです。多くの人が声をそろえて歌うことで、またそれを歌う人を指します。
A効果音のコオロギや小鳥の声などで、数匹または数羽がダブって啼いているものを指します。
コーラス・マシン chorus machine
「エフェクター」の一つです。フランジャーと似た原理で、時間を遅らせて、それを少しだけ変動させた音を合成すると、一つの音源でコーラスの効果
が得られ、ステレオの場合には拡がりのある音が得られます。
コーンがた(型)スピーカー
振動板が円錐形をしたスピーカーをコーン型スピーカーと呼びます。コーンはボイスコイルに直結していて、ボイスコイルの動きに従って振動し、音波として放射されます。コーンの材料には紙、プラスティック、金属、カーボンなどがありますが、紙を用いることが多いです。
コネクター connector
独立した機器や装置を相互に接続するための部品をいいます。音響用としてはキヤノンや丿イトリックが有名で、種類も多いです。
こま(駒)
弦楽器の部分品で、弦を乗せるという意味から、この名が付きました。弦を乗せて張り、弦の振動を胴に伝える役割があります。「駒」とは位
置が固定している物を呼び、弦の中間で移動する物は「柱(「じ」または「じゅう」)」といいます。
ごみしずめ(ごみ鎮め)
開演時の客席のざわめきを鎮めるために用いられる音楽や効果音を指します。関西では「ほこり鎮め」といいます。
こやおくり(小屋送り)
劇場やホールに音響機器を持ち込んだ時、ミキシングした信号を劇場・ホールの既設の装置に送り込むことをいいます。既設のスピーカーと持ち込みスピーカーを併用するする場合と、楽屋や関係スタッフのためのモニター用とする場合があります。「ハウス送り」ともいいます。
コラム・スピーカー column speaker system
コラムとは柱という意味で、柱状の箱に収めたスピーカ・システムのことをコラム・スピーカーと呼びます。数個のスピーカー・ユニットを縦に並べて組み合わせて一体にした物で、このタイプの利点は床面
積をとらないこと、横に広く、縦に鋭い指向性になることです。「トーンゾレイ型スピーカー」と同形式のものです。
ころがし(転がし)
スピーカーやマイクロフォンをスタンドなどで固定せずに、舞台の床にそのまま設置することをいいます。また、このような仕込み方法を指します。
ごん
歌舞伎の下座音楽で胴鑼を打って、時の鐘を表現する場合、「ごん」と呼びます。時の鐘ばかりではなく、見得などのきっかけにも打ちます。本釣鐘と同じ用途ですが、「銅鑼」の方が時代的で、「本釣鐘」はやや実写
的な場合に用います。
コンサート・グランド concert grand
コンサート・ホールにあるような、演奏会用の大型グランド・ピアノのことです。
コンサート・ピッチ concert pitch
全ての楽曲や演奏の音の高さを統一するために、国際的に決められた標準音をいいます。Aの音を440Hzと決めていますが、高めにした方が華やかな音色になるので、実際には442Hzなどに上げている場合が多いです。
コンデンサー・マイクロフォン condenser microphone
静電容量の変化を利用して、音圧を電気信号に変換するマイクロフォンのことです。固定電極と導電性の振動板との間に、外部からの直流電源によって静電気を蓄え、コンデンサーを形成させます。そして音圧によって振動板が振動すると固定電極との距離が変わり、静電容量
が変化することを利用して、その変化を電気信号に変換する構造のマイクロフォンです。
コンパクト・ディスク compact disc
「CD」と略して呼ばれています。レーザー方式による小型のデジタル式オーディオ・レコードのことをいいます。
コンパンダー compander
「コンプレッサー」と「エキスパンダー」を結合した語で、圧縮伸長装置のことをいいます。録音する時には音声信号の強弱の幅を圧縮し、再生する時には同じ割合で伸張して復元する機能を持つ装置です。磁気テープなどの記憶媒体はダイナミック・レンジが狭く、レベルの上限は歪みにより、下限は雑音によってそれぞれ制限されます。コンパンダーは、この点を改善し、ダイナミック・レンジを拡大するために考案された物です。
コンプレッサー compressor
一般的に、信号のレベルがある値を越えたときに、その信号レベルの上昇を抑える動作をするものを「リミッター」といい、比較的に低い値のレベルから徐々に圧縮する特性を持ったものを「コンプレッサー」といっています。従って、リミッターの方が動作上の圧縮比が高く、コンプレッサーの方が圧縮比が低くなります。厳密に決められてはいませんが、圧縮比が4:1程度までをコンプレッサーと呼ぶことが多いです。
こんへんちょうひずみ(混変調歪み)
入力信号に対して出力が正しく比例していない特性のアンプやスピーカーに、二つの信号を同時に加えた場合、それぞれの信号が歪むだけでなく互いに影響しあってさらに別
の歪みが発生します。これを「混変調歪み」といい、IMDと略して表示されます。
サーキット・ブレーカー circuit breaker
機器が異常動作を起こした場合、速やかに回路を遮断して機器の保護をする機能を持つ過電流遮断器のことで、一般
にバイメタル式、電磁式、トランジスタ式などが使用され、自動復帰作用を持つ物もあります。
さいせい(再生) play back/replay
録音した音を再現することをいいます。スタジオで録音した内容をスタジオ内の演奏者にその場で送り返し、試聴することをプレイバックといい、一般
的に繰り返し何回も再生されることは、リプレイといいます。
サイド・スピーカー side speaker system
劇場などのプロセニアム開口部の左右の側壁に設置したスピーカーのことをいいます。プロセニアム・スピーカーではカバーすることが出来ないバルコニー席の下部への補助として使われます。
サウンド・オン・サウンド sound on sound
複数のトラックが、それぞれ独立して録音・再生出来るテープレコーダーを用いて、すでに録音されている音を再生して、別
の音と重ねて、空いている別のトラックに再び録音する技巧を指していいます。
サウンド・チェック sound check 音響システムを確認・調整することです。
サウンド・トラック sound truck
映画のフィルムやビデオ・テープで、音を記録する部分のことをいいます。略して「サントラ」ともいい、用途により複数本のトラックが使われます。フィルムでは光学録音方式と磁気録音方式とがあります。
サウンド・リインフォースメント sound reinforcement
コンサートや演劇などで、電気音響装置を用いて、音声や楽器の音量を補強したり、音質を補正して音を送り出したりすることをいいます。この音響装置をサウンド・リインフォースメント・システムといい、「SR」と略して表記します。
さきばら(先バラ) コードやケーブルの先端の被覆をはがし、芯線をバラバラにして露出させた状態のことをいいます。また、コネクターなどを付けずに、芯線を結び合わせたりして、端子に直接つないで使えるようにしたコードやケーブルに対しても使います。
サステイン sustain
接続するという意味の言葉です。楽器においては音が出ていることや減衰音が残っている状態を指します。シンセサイザーでは鍵盤を押している間に出ている音量
レベルのことをいいます。
サラウンドほうしき(方式) surround system
サラウンドとは「包囲する」「囲む」という意味です。映画の音響方式で、観客席を取り囲むように設置した壁スピーカーから効果
音などを再生する形式、またはそのための装置をいいます。
ざんきょう(残響)
部屋の中で手を叩いたり、音楽やスピーカーの音を急に止めたりすると、しばらくの間はその音の響きが残っています。これをその部屋の残響といいます。これは音波が部屋の壁、天井、床などで反射を何回も繰り返し、音を止めても音のエネルギーが残っているために生じるものです。
さんげん(三絃)
中国、日本の楽器名ですが、日本では三味線と呼ぶのがふつうです。 さんしん(三線)
奄美・沖縄地域の蛇皮線(じゃびせん)のことで、沖縄三味線ともいわれています。
さんてんづり(三点吊り)マイク
3本のワイヤーでマイクロフォンを吊り下げる装置のことです。通常、ホールの客席前部の天井に設置されており、手動または電動で3本のワイヤーの長さを調節してマイクロフォンの昇降を行ないます。クラシック音楽の録音のメイン・マイクやノイズ収音用のマイク、エアモニター・マイクなどに使われます。
シーディー CD
コンパクト・ディスクの略称です。レーザー方式による小型のデジタル式オーディオ・レコードのことをいいます。
シーディーホーン constant directivity horn
ホーンの側壁の形状を工夫して、再生周波数帯域にかかわらず指向性が一定になるようにした物を「定指向性ホーン」といいますが、シーディーホーンとはその一種です。その形状種類によって、CDホーン、バイラジアルホーン、マンタレイホーンなど各種の名称がつけられています。
シェルビング・タイプ・イコライザー shelving type equalizer
イコライザーのレベルを変化させる方法で、フィルターの特性の一つをいいます。ある周波数を境に、それ以上または以下の帯域を調整する形のものです。これに対して、ある周波数帯域だけを調整する特性を「ピーキング・タイプ」といいます。
しこみ(仕込み)
アンプやスピーカーなどの配置や配線などを、仕込み図に従って準備する作業のことをいいます。
しこみず(仕込み図)
スピーカー、アンプ、調整卓など、上演に必要な音響機器すべての配置・配線を記入した図面
をいいます。
ジス JIS
日本工業規格(Japanese Industrial Standard)の略称で、一般に「ジス」と呼んでいます。
しぼる(絞る) 音響の分野では、音量調節のボリュームまたはアッテネーターを絞る、つまり音量
を小さくしたり消してしまうことを意味します。
しゃおんまく(遮音幕)
オペラなどの上演の場合、舞台転換の音が客席に聞こえないようにするために、舞台前に吊り込まれる遮音性を考慮した特種な幕のことをいいます。
ジャスラック JASRAC
日本音楽著作権協会(JAPANESE SOCIETY OF RIGHT OF AUTHORS AND COMPOSERS)の略称です。所属する協会員の作詞・作曲など音楽作品の演奏権・録音頒布権の行使を代行したり、管理する組織です。
しょきはんしゃおん(初期反射音)
音源からの「直接音」に遅れて、天井や側壁から到達する「一次反射音」ことです。この一次反射音は残響の印象や音質に大きな影響を与えるものです。
スタンド stand
舞台床の任意の高さにマイクロフォンやスピーカーを設置するための器具で卓上用の低い物から、ブームの付いた物まで多くの種類があります。
スニーク・アウト sneak out
非常にゆっくりと音量を下げて音を消していくことです。英語の「こっそり出入りする」から来ています。
スニーク・イン sneak in
非常にゆっくりと音量を上げて行って決めたレベルにするというような、音の入れ方をいいます。
スピーカー・クラスター speaker cluster
スピーカー群というような意味で、数多くのスピーカー・システムを一つの固まりとして組み合わせたスピーカー・システムを指し、「トーン・クラスター」ともいいます。舞台の中央に吊った物を「センター・クラスター」と呼んでいます。
スピーカー・システム loud speaker system
スピーカー・ユニットとその他の部品をキャビネットに組み込み、パワー・アンプに接続しさえすれば、そのまま使用できる装置として完成されたものをいいます。現場でスピーカーといえば、スピーカー・システムのことを指します。
スプライシング・テープ splicing tape
録音テープ編集用の接着テープのことです。接着剤に特殊なものが使われていて、時間が経ってもノリがはみ出して来ることが無く、ヘッドに張り付いたり、テープ同士がくっつきあったりすることが無いように作られています。
スペース・ダイバシティ space diversity
ワイヤレス・マイクロフォン装置の受信機に2系統のアンテナと音声復調回路を持たせ、電界強度の強い方の系統の出力を自動的に選択する方式のことをいいます。
スペクトラム spectrum
スペクトルともいいます。音の信号に含まれている周波数の成分と量は、音色を決定する要素の一つです。スペクトラムは、周波数の成分と量
をグラフに表したもので、横軸に周波数、縦軸に音のレベルをとり、各周波数に対する音のレベルを示したものです。
スライド・ボリューム slide volume
直線型の可変抵抗器のことをいいます。ツマミの位置によってレベルが視覚的に解るので、調整卓の音量
調整器やグラフィック・イコライザーなどに使用されています。
スリー・ヘッド・スリー・モーター three head three motor
3個のヘッドと3個のモーターとを備えたテープレコーダーのことをいいます。消去ヘッド、録音ヘッド、再生ヘッドがそれぞれ独立して付いていて、録音中でもテープに録音された内容を再生ヘッドで直ぐ再生して、録音状態を確認することが出来ます。3モーターとは、キャプスタン用、テイクアップ(巻き取り)リール用、サプライ(送り出し)リール用にそれぞれ独立したモーターを使っているのでこのようにいいます。サプライ側に一定の逆回転の力を加えることで、テープのヘッドへの密着度を良くしています。
スレーブきき(機器) slave
スレーブとは「奴隷」という意味の言葉です。マスター機器のタイム・コードを基準として、いくつかの機器がコントロールされるシステムで、コントロールされる側の機器のことをいいます。
スレッショルド threshold
「出発点、発端」という意味の言葉です。コンプレッサーやリミッター、ノイズゲートなどの機器の入力信号があるレベルに達して目的の動作を開始するレベルを「スレッショルド・レベル」といい、その開始点を「スレッショルド・ポイント」といいます。
スロート throat
スピーカー・システムのドライバー・ユニットとホーンを結合するための物で、ホーンとのマッチング調整をする部分のことです。これはスピーカーの能率と音圧周波数特性に影響を与えます。
セクトラル・ホーン sectoral horn
ホーン型スピーカーで、ホーンの構造が、水平方向の断面を見ると扇型をしているものをいいます。分割用の板(フィン)を付けて、特性の安定を図っています。扇状に指向性が拡がるように造られています。
セパレーション separation
「分離度」のことを指します。ステレオの左右のチャンネルの音が混じり合わないで、分離していることをいいます。セパレーションが良いと音像の位
置が明確になります。
そうきょく(箏曲)
箏の器楽曲と箏の伴奏による声楽曲の両方をいいます。生田流と山田流の二流派に大別
されています。多くは声楽の伴奏に箏を使います。器楽曲も多く、箏のほかに三味線、尺八、胡弓、またはバイオリン、フルートなどの洋楽器が入る場合でも箏曲と呼ぶことがあります。
そうじこうか(双耳効果) binaural effect
片方の耳で聴くよりも両耳で聴くほうが、音の方向性、遠近感、拡がり、臨場感、選択能力(聴きたい音を選ぶ)などについて有効であることをいいます。「両耳効果
」ともいいます。
そうしこうせい(双指向性)
マイクロフォンの指向性の一つで、マイクロフォンの正面と背面の音を平等に収音し、側面
の感度を低くしてあるような指向性のことをいいます。「両指向性」ともいいます。
ソース source
@アンプなどへの入力音源(プログラム・ソース)のことをいいます。テープレコーダーやマイクなどから供給される音のことです。
A合成された音の素材となっている音のことです。 B素材のことをいいます。
そざい(素材)
@もとになる材料のことですが、芸術作品の表現の「たね」となるものを指します。たとえば効果
音を作る時の元になる音のことをいいます。 A録音した、おおもとのテープ、つまりオリジナル・テープのことで、素材テープともいいます。
ソロ solo
「単独に」という意味です。音楽の形態の一つで、独奏や独唱のことをいいます。
ソロかいろ(回路) 音響調整卓の回路で、本線(放送信号、SR信号)の出力には関係なく、はね返り回路やエフェクターなどに信号を送るための単独に操作できる回路の事を指します。またスタジオ関係の音響調整卓では、入力ファーダーに関係なく、音を検聴するための回路のことをいいます。「AUD(オーディション)回路」や「CUE(キュー)回路」と同じ意味です。
ダーマトグラフ dermatograph
柔らかい芯を紙で巻いた筆記具のことで、録音テープの音の頭や終わりに印をつける際に使用します。通
常、デルマと呼び、白・黄・赤・黒・紺などの色があります。
たいいほう(対位法) counterpoint
楽曲において二つ以上の異なった旋律を、同時に組み合わせる作曲技法のことです。和音のつながりである和声と対照するもので、主に音の流れを「よこ」に扱う手法で、フーガ(遁走曲)などの基盤になるものです。
たいこ(太鼓)
木や瓢箪などの中をくりぬいて両面あるいは片面に皮を張った物の総称で、叩いたり擦ったりして発音させます。歌舞伎や能で太鼓という場合は「締太鼓(しめだいこ=胴を紐で締める物)」のことをいいます。
だいしょう(大小)
大鼓(おおつづみ/おおかわ)と小鼓(こつづみ)のことを略した呼び方です。
ダイナミックがた(型)スピーカー
構造は永久磁石、ボイス・コイルおよび振動板などから成っています。永久磁石のS極を包むようにボイス・コイルがあり、これに音声電流を流すと、磁界と電流の間に電磁力を生じ、ボイス・コイルにこの力が加わります。音声電流の変化に応じて電磁力も変化しボイス・コイルに振動を与え、振動板もボイス・コイルと連動して振動し、まわりの空気を振動させて音を出します。
ダイナミック・マイクロフォン dynamic microphone
磁界の中に置いた導体が音波によって振動すると、電磁誘導作用によって導体の両端子間に振動速度に比例して電圧を生じます。これを利用した物をダイナミック・マイクロフォンと呼び、導体として銅線やアルミニウム線をコイル状に巻いた物は「可動コイル(ムービング・コイル)型」、薄いアルミ箔を用いた物は「リボン型」といいます。一般
的にはムービング型をダイナミック・マイクロフォン、リボン型をリボン・マイクロフォンと区別
しています。
ダイナミック・レンジ dynamic range
最も強い音と最も弱い音とも大きさの比のことで通常は音圧比をデシベル(dB)で表現し、アンプでは最大出力レベルと雑音レベルとの比、あるいは最大許容入力と換算雑音レベルとの比をいいます。
ダイバシティー diversity
ワイヤレス・マイクロフォン装置の受信機に2系統のアンテナと音声復調回路をもたせ、電界強度の強い方の系統の出力を自動的に選択する方式を意味する「スペース・ダイバシティ方式」を単にこのように呼びます。
タイピン・マイク ネクタイピン状の金具に取り付けた超小型のマイクロフォンのことで、「ピンマイク」ともいいます。
ダイポール・アンテナ dipole antenna
短波に用いられる代表的アンテナで、導線の長さを波長によって決め、接地せずに地表に対して垂直あるいは水平に設置される物です。1波長、半波長、折り返しなどの種類がありますが、導線が1本の場合、入射角が直角方向の広い範囲に対応し、同じ平面
に、ある間隔で並べると指向性が現れます。これを「指向性アンテナ」、「ビーム・アンテナ」といいます。テレビ用のアンテナとして使われている八木アンテナなどはこの代表的な物です。
タイミング・テープ timing tape
録音テープに録音された音と音の間にはさみこんで「間」を調整したり、文字や番号を書き入れて次の音の内容を確認したりするためのテープのことです。磁性体の塗られていないテープが再生ヘッドを通
過するときは無音になり、聴感上違和感が生じる場合には「録音されていないテープ」を代わりに使用します。
タイム・コード time code
ビデオ・テープの編集のために規格化されたタイミング信号のことで、ビデオ画面
の各フレーム(1/30sec間隔)ごとに付けられています。
ダイヤフラム
マイクロフォンやスピーカーの振動板のことをいいますが、スピーカーの場合、コーン状の振動板に対してドーム状のものを特に「ダイヤフラム」と呼びます。
ダイレクト・インジェクション・ボックス direct injection box
ベース・ギター・キーボードなどの電気楽器の出力を直接、電気回路から取り出す(ダイレクト・ピックアップ)ためのアダプターのことをいいます。トランス方式と半導体を用いた方式とがあります。「D・I」と略称で呼びます。
だがっき(打楽器)
叩いたり振ったりして音を出す楽器の総称で、種類も非常に多く音色も多様で、一般
的に音の立ち上がりが鋭いのが特徴です。体鳴楽器(木や金属によるもの)・膜鳴楽器(主に太鼓)と分けることもあります。パーカッションという場合は、ドラム・セット以外の打楽器を呼ぶことも多いようです。
たけぶえ(竹笛)
邦楽に用いられる七穴の横笛で篠竹で作られており、「篠笛」「篠」ともいい、調子の高低によって十二種類あり、長唄の笛方はその他に能管を携行します。
たちあがり(立ち上がり)
@テープレコーダーやレコード・プレーヤーをスタートして正常なスピードになるまでの時間をいいます。
A音が出始めて、一定の音量に達するまでの速さのことをいいます。この時間を立ち上がり時間といい、短いほど「立ち上がりが良い」と表現します。
たちあげ(立ち上げ)
コード マルチ・コネクター・ボックスなどから、マイクやライン回線をミキシング卓などに接続するための短めのケーブルのことです。
たちあげる(立ち上げる)
マイク回線(マルチ・ケーブル)などの末端を、パッチ盤やミキシング卓などに結線することをいいます。そのための短いコードを「パッチ・コード」といいます。
タッチ 情景やせりふなどを印象付けたり、強調するために用いられる短めの音や音楽のこと、あるいはその手法をいいます。また楽器の弾き方や響かせ方にも用います。アクセントという場合もあります。
タッチ・ノイズ touch noise
マイクロフォンを手に持って使用する際などに、不必要な雑音や振動が信号として入ることがあり、このような「接触雑音」のことをいいます。
ダット DAT
デジタル・オーディオ・テープレコーダーの略称で「ディー・エー・ティー」ともいいます。
ダビング dubbing
映画の音作りから来た言葉で、コピーの意味で使用され、録音テープやCD、レコードなどの音をコピーすることをいいます。なお、映画では編集済のフィルムに、せりふ・音楽・効果
音などを入れる作業をいいます。
ダミー・ヘッド dummy head
人間の頭部の模型のことです。その耳の部分に小型の無指向性マイクロフォンを取り付けて収音した物をヘッドフォンで聴くと、音源の方向や距離感がリアルに再現され、スピーカーによるステレオ再生とは異なる立体感が得られます。
ダミー・ロード dummy load
実際に接続される負荷の代わりに用いられる疑似的な負荷のことをいいます。アンプなどの測定にはスピーカーではなく負荷インピーダンスと同じ容量
の抵抗を接続します。また、無負荷の状態を避けるために回路に接続したりする場合に用いられます。
たんいつしこうせい(単一指向性)マイクロフォン uni・directional microphone
側面と背面方向からの音に対して感度が低い性質のマイクロフォン事をいいます。「カーディオイド」、「スーパー・カーディオイド」、「ハイパー・カーディオイド」、「超指向性」の四つの型があります。残響音や騒音など回りの音を拾いにくくするのが特徴で、他の音源からのかぶり込みも少ないのですが、反面
、風や振動などによる雑音に弱いという特徴があります。音源に近づけると低音が強調される近接効果
も顕著に現れます。
ダンピング・ファクター damping factor
アンプの出力信号がスピーカーに伝えられた時、スピーカーはこれに忠実に反応して動作することが理想的なわけですが、スピーカーのコーン紙やボイス・コイルは重さを持っており、出力信号の変化に完全に追従することは出来ません。この追従性を示すのがダンピングで、その度合をファクターといいます。
ちえんそうち(遅延装置) time delay system
「ディレイ・マシン」、「ディレイ・ユニット」ともいいます。音の信号の時間を遅らせる装置で、テープ式、アナログ式、デジタル式があります。デジタル式は、アナログ信号をいったんデジタル信号に変換して、その信号をメモリーし、所定の時間後に取り出して再びアナログ信号に変換することで、遅延した信号を得ます。大きな劇場や野外コンサートなどでスピーカーからの音に時間差が生じる際にその修正を行なったり、または残響を付加するためにも用いられます。遅延回路はエコー、フランジャー、コーラス、フェイズ・シフターなどの各種のエフェクターに応用されています。
ちゃくとう(着到)
歌舞伎劇場で俳優が楽屋に入り終わると演奏される鳴物のことをいいます。その終わりに柝を二つ打つものを「着到止め」といいます。それを聴いて序幕に出演する俳優は化粧を始めます。
チャンネル・ディバイダー channel divider
高・中・低音用などいくつかのスピーカーをそれぞれ別々のアンプで駆動するために、それぞれのパワーアンプに供給するいくつかの音声信号の周波数帯域を分割するための装置のことで、「チャンネル・フィルター」ともいいます。それぞれの帯域が交差する周波数の選択・変更・遮断特性の選択・分割されたそれぞれの帯域のレベル調整などの機能を持っています。
チャンネル・バランス channel balance
マルチ・アンプ・システムでそれぞれのチャンネルのレベルを調整して、全体的なバランスを決めることを「チャンネル・バランスをとる」といいます。パブリック・アドレスやSR(増幅補強)では特に大事な調整です。
チューナー tuner
電波を受信する装置全般をいいます。アンテナで受ける電波は微弱なので増幅する回路も含まれます。
ちょうかんほせい(聴感補正) level weighting
人間の耳の感度は、音圧レベルが低いと低音域や高音域が低下する性質がありますので、騒音やワウ・フラッターなどを測定する時に人間の耳に感じにくい周波数の成分を低下させ、人間の耳の感覚に合う測定値を得られるようにすることをいいます。そのための周波数特性曲線を「聴感補正曲線」といいます。
ちょくせつおん(直接音) direct sound
音源から発せられた音のうちで壁や天井、床などで反射された間接音でなく、直接聴く者の耳に到達する音のことをいいます。
ちょくせんせい(直線性)
アンプなどで入力と出力が比例関係にあることを「リニアリティ」といいます。これをグラフにした時、入力と出力の関係が正比例の時は直線になるので、「直線性」といいます。その比例関係が乱れると出力の波形が歪むことになります。
ツィーター tweeter
高音域用のスピーカーのことをいいます。マルチウェイ・スピーカー・システムで高音域用として用いられます。振動板の形状などによってコーン型、ドーム型、ホーン型などに分けられます。
つまびき(爪弾き)
三味線などの弦楽器を、撥(ばち)を使わずに右手の人差し指の爪で弾くことをいいます。「つめびき」ということもあります。
つり(吊り)
マイク 劇場やホールの天井から吊り下げたマイク、またはその機構をいいます。クラシック音楽の録音や演劇のせりふ、ミュージカルの歌などの収音のために用いられます。3点吊り、2点吊り、1点吊りなどがあります。
ていい(定位)
音場の中で、映像、音源の方向が定まることをいいます。
ディーアイ DI
ダイレクト・インジェクション・ボックス(direct injection box)の略称です。ギター・ベース・キーボードなどの電気楽器の出力を直接、電気回路から取り出すためのアダプターをいいます。
ディーアイエヌ DIN
「ドイツ工業品標準規格」のことをいいます。日本におけるJISに相当し、その規格はドイツの工業発展の支えになっていると同時に、ヨーロッパ全域へ大きな影響力を持っています。
ディーエー D/A デジタル信号をアナログ信号に変換することを表す記号です。
ディーエーシー DAC
デジタル信号をアナログ信号に変換するための装置の略称です。 ティーシー TC
@トーン・コントロールの略称です。簡易な音質調整器で高音域と低音域の周波数特性を変化させ音質を調整する機能を持つ物です。
Aタイム・コードの略称です。
ディーシー DC
直流のことです。一定方向に、一定の大きさで流れる電流をいいます。
ティービー TB
トーク・バックの略称です。ホールの音響調整室やスタジオのミキシング・ルームなどから、ステージやスタジオ内の出演者や演奏者またはスタッフに指示を与えるための拡声装置のことです。
ディービーエックス dbx
アメリカのディービーエックス(dbx)社が開発した、録音時の雑音を低減させる装置をいいます。テープ・レコーダーの入力信号のダイナミック・レンジを1/2に圧縮して録音し、再生するときには2倍に伸張することによって、信号のダイナミック・レンジを元に戻すとともに録音の段階で生じた雑音のレベルを下げてしまうものです。
ていかくにゅうりょく(定格入力)
スピーカーに加えられる入力を規定したもので、連続して加えても異常音や破損の生じない入力のことをいいます。JISの規定により、信号にホワイト・ノイズを使い、指定されたフィルターを通
してからスピーカーに加え、96時間以上、異常が生じない時の最大入力レベルを表示します。許容入力と表示することもあります。
ていしこうせい(定指向性)
ホーン 一般のスピーカーのホーンは、高音域になるにつれて、指向角度が狭くなります。これはビーミングと呼ばれ、ホーンの正面
から外れた場所では均一な指向特性が得られません。そのため、ホーンの側壁の形状を工夫して、周波数帯域による影響を受けずに指向性が一定になるようにしたものを定指向性ホーンといいます。形状機能により、CDホーン、バイラジアル・ホーン、マンタレー・ホーンなど、各種の名称が付けられています。
ディスク disk/disc
録音盤、レコード盤、コンパクト・ディスク、フロッピー・ディスク、MOディスクなど円盤状のものをいいます。
ディバイディング・ネットワーク dividing network
2ウェイ、3ウェイなどのマルチウェイ・スピーカー・システムで、パワー・アンプの出力信号を各スピーカー・ユニットが受け持つ周波数帯域に分割する回路のことで、コイルとコンデンサーを使っているので「LCネットワーク」とも呼びます。
ディレイ delay
音声信号をある時間遅らせることを意味する言葉です。音声信号の原音から、原音よりも遅れた信号を取り出して「ディレー・タワー」の拡声に用いたり、「こだま」の効果
を得るために用いたりします。また、遅延信号をフィードバックすることによって、残響やフランジャー、コーラスなどの効果
を得られます。
ディレイ・タワー delay tower
規模の大きなSR(増幅補強)が必要な時などに、メインスピーカーから60〜70m離れた位
置数ヶ所に、遅延信号で駆動されるスピーカーを地上3〜5mの台上に設置した物をいいます。
テープ・ヒス tape hiss noise
録音テープ特有のノイズの一つで、可聴帯域全体に発生し、特に高音域で耳につくノイズをいいます。磁性体のヒステリシス(磁化)特性に起因することから、略して「ヒス」と呼びます。
テープ・レコーダー tape recorder
音声や映像などの電気信号を磁気テープに記録しておいて、記録した電気信号を再び取り出す装置のことをいいます。録画装置はVTR(ビデオ・テープレコーダー)と呼ばれることが多く、一般
的にテープレコーダーといえば音声の録音装置を指します。
デジタル・オーディオ・テープ・レコーダー digital audio tape recorder
音声信号をデジタル化し(電流が流れる「0」、流れない「1」の2進級に対応させ、磁気変化の有り・無し、として)直径3cmのドラムに取り付けた2個のヘッドが毎分2000回転しながら、3.81?幅のメタル・テープに片道録音する物を、R-DAT(rotary
head digital audio taperecorder)といいます。標本化周波数としては、32kHz、44.1kHz,48kHzの3種類があります。
固定ヘッド式の物は、S-DAT(stationary head digital audio taperecorder)といい、主にマルチ・チャンネル用として用いられていますが、フォーマットにDASHとPRODIGIの2種類があって、メーカーによって異なっています。
デッド dead 室内の音響状態を表す言葉で、音の残響が少ない場合を「デッド」といいます。残響時間が短い場合の表現として使われます。デッドな場合は、音が明瞭に聴き取れますが、音の豊かさに欠けます。
デッド・ポイント dead point
@ワイヤレス・マイクロフォン使用時に、送信された電波の直接波と反射波が干渉することによって電波が減衰し、受信不能になる場所が生じることがあります。その場所を指す言葉です。
Aホールなどの音場で、他の場所より音が聞こえにくい場所のことをいいます。
デルマ
ダーマトグラフの略称です。柔らかい芯を紙で巻いた筆記具のことで、録音テープの音の頭や終りに印をつける際に使用します。白・黄・赤・黒・紺などの色があります。
テレコ オーディオ・テープレコーダーの略称です。音声信号を磁気テープに記録しておいて、記録した信号を再び音の信号に戻す装置のことをいいます。
てんおんげん(点音源)
スピーカーなどで、音を出す部分の面積が可聴帯域の音の波長に対して充分に小さい場合を「点音源」といいます。
でんしへんしゅう(電子編集)
ビデオ・テープや録音テープのオリジナル・テープを切断せずに、必要な部分を別
のテープにコピーしながら編集する技法のことです。タイム・コードなどのタイミング信号を基に、編集箇所を設定して、必要な部分をコピーする形で順番に並べて行く方法をとります。
てんしゃ(転写)
録音したテープをリールに巻いて、長時間保存して置くと、テープの重なり合った部分で、記録されている音が互いに写
ってしまうことを転写と呼んでいます。「ゴースト」の原因になります。
でんそうしゅうはすうとくせい(伝送周波数特性)
劇場やホールなどの音場における音の伝搬状態を、それぞれの周波数に対する音圧レベルの変化で測定し、グラフに表した物です。
どうき(同期)
タイミングを合わせることをいいます。複数の機能の動作の周期やテンポがずれないようにすることで、「シンクロ」ともいいます。また、「同期信号」のことを「同期」ということもあります。
どうきしんごう(同期信号) 単に「同期」ともいい、複数の機能を同じように動作進行させるための「タイミング信号」のことをいいます。
トーク・バック talk back
ホールの音響調整室や録音スタジオのミキシング・ルーム、あるいは放送局の副調整室から、ステージやスタジオ内にいる演奏者やスタッフに対する指示の伝達装置をいいます。
トーン・コントロール tone control
音質調整器のことをいいます。音色の調整を行なう回路で、高音部と低音部を別
々に変化させる物、高音域部・中音域部・低音域部と三つに分けて調整する物などがあります。
トーンゾレイがた(型)スピーカー Tonesaulen
柱状のエンクロージャー(スピーカー・ボックス)に、数個のスピーカーを縦に並べて取り付けたスピーカー・システムのことをいいます。「コラム・スピーカー」ともいいます。
なま(生)
@一度も録音(使用)されていないテープやディスクなどの状態をいいます。
A電気を使用しない楽器演奏や、「SR(増幅補強)」・「PA(パブリック・アドレス)」をしない演奏形態をいいます。
なまおと(生音)
録音されたテープなどによる再生音ではなく、実際に効果音用の道具を用いて効果
音を出すことをいいます。また俳優のせりふや歌い手の歌を拡声したり、エフェクト処理をしたりしない場合にもこのようにいいます。
なま(生)テープ
未使用のテープのことで、バージンともいいます。
なみかご(波篭)
波音を出すための効果音用の道具で、大きめの篭に渋を塗った和紙を貼り付けた物に砂、小豆などを入れてゆっくり傾けて使用します。
ナレーション narration
映画・演劇・放送・レコードなどの「説明の語り」の部分のことで、作品や人物の置かれた状況や背景、心情などを説明するものです。
ナレーター narrator 語り手・解説者のことをいいます。
にあがり(二上がり)
三味線の調絃法の一種で、2の糸を1の糸より完全5度高く、3の糸を2の糸より完全4度高くします。2の糸を弾くと1の糸がよく共鳴し、音が良く響きます。2の糸の絶対音高は楽曲、流儀などによって多少異なることがあります。
ニアフィールド near field
ミキシング・コンソール上に置いた小型スピーカーによって音質・音量などの調整・監視する作業をいいます。「近接モニタリング」ともいいます。
にゅうりょく(入力) input
電気回路などに与えられる力・エネルギーのことをいいます。
にゅうりょく(入力)インピーダンス input impedance
入力端子からアンプ側を見た場合のインピーダンスのことですが、各機器を接続する場合に出力インピーダンスと整合(マッチング)させることが必要です。インピーダンスがマッチしない場合は「ロー出し・ハイ受け」などの対応策をとります。
にゅうりょくかんど(入力感度) input sensitivity
アンプが定格出力を得るために必要な入力レベルのことで、電圧値やdBm(電力の絶対値を伝送単位
デシベルで表したもの、0dBm(デシベルミリ)=0.775V)で表示されます。その数値が低いほど感度が良いことになります。
ねいろ(音色)
音の「大きさ」、音の「高さ」とともに音の三要素を構成するものです。音の大きさ、高さが同一でも音が異なって聞こえる時にその違いの要因となる性質を「音色」といいます。シンセサイザーなどにプリセットされた楽器音の種類などをいう時には、「おんしょく」と呼ばれます。
ねた 複合した効果音などを作る場合の加工前の音の素材のことで、「音ねた」ともいいます。
ネットワーク network
コイルとコンデンサーの組み合わせにより、周波数帯を分割するためのフィルター回路のことです。コンデンサーを直列にコイルを並列につなぐと低域が減衰し、その逆の接続では高域が減衰しますので、これに高音用・低音用スピーカーを接続して使用します。
ノイズ noise
一般的に雑音の総称としてこの言葉を用いますが、バックグラウンドノイズ(暗騒音)、街ノイズなど空間全体の雑音をいうこともあります。
ノイズ・ゲート noise gat
e 入力信号のうちのあるレベル以上のものだけを通過させる装置のことで、信号レベルが低い時はフェーダーを下げているのと同じ状態になり、雑音や他の楽器からの「かぶり」などを除去する事が出来ます。この効果
を応用してドラムなどの余韻を、カットして音の切れを良くしたり、付加したエコーを途中でカットする「ゲート・エコー」などにも用いられます。
ノイズ・リダクション noise reduction
記録系や伝達系などに発生する雑音を軽減するための方式全般をいう言葉ですが、一般
的に記号を圧縮・伸長する方法を採用しています。圧縮器(compressor)と伸長器(expander)を組み合わせた物を圧伸器(compander)といいます。
丿イトリック Neutrik
connector スイスのメーカーによるコネクターの一種で、NCシリーズはキヤノンコネクターと互換性がありますが、スピーカー用のNLシリーズには互換性がありません。
のうかん(能管)
能楽用の横笛で単に「管」あるいは「笛」ともいいます。特長は音の立ち上がりの鋭いことです。短い管を継いで作られ、外側を樺や籐(とう)で巻き、漆を塗ってあります。能楽ばかりではなく歌舞伎の下座音楽などでも使われます。
のうりつ(能率) efficiency
機器に加えられる入力信号と取り出せる出力信号の比をいいます。同じ出力を得るのに少ない入力で済む物を能率が良いといいます。スピーカーの電気入力と音響出力の比は非常に小さくて数パーセント程度です。たとえば95dB/W/mと表示されるもので2%、102dB/W/mは10%です。
ノッチ・フィルター notch filter
イコライザーの一種として用いられ、周波数の選択だけでなく、そのノッチ(V字形の谷)の深さも可変出来るようにしたもので、ノッチ減衰量
が50dBに達する物もあります。
ハースこうか(効果) Hass effect
複数の音源から同じ音が送りだされた時、耳に最初に到達した音の方向に音像が定位
する現象のことをいいます。耳に到達する音の時間差は1〜30ミリセカンドです。またこの効果
は遅れてくる音が最初の音より10dB位大きくても成立するため、いろいろな使われ方があります。
ハーモナイザー harmonizer
「ハーモナイザー」というのはレキシンコン社の商品名で、一般名称としては「ピッチ・トランスポーザー」といいます。声や楽器音をテンポを変えずに音程だけ変化させる装置のことで、ピッチの異なる楽器のピッチを合わせたり、逆に少しずらしたりすることによって演奏者が増えたような効果
を得ることが出来ます。
ハーモニー harmony
二声以上の和音(chord)のつながりのことですが、旋律はハーモニーの制約を受け、調性は和音の結び付き方で決まります。また調和がとれている状態を指すこともあります。
ハイうけ(受け)
信号ラインの接続方法で信号源のインピーダンスを低くし、負荷側のインピーダンスを高くして接続する方法で「ロー・インピーダンス送り、ハイ・インピーダンス受け」といいますが、省略して「ロー出し・ハイ受け」または「ハイ受け」といいます。電圧損失が少ないことや、負荷の並列(パラ)接続がし易くなる利点がありますが、磁気誘導を受け易くノイズが加入し易い欠点があります。
ばいおん(倍音) harmonise tone
ある周波数の音のn倍の周波数を持つ音をいいますが、主として可聴域の音に使用される言葉です。倍音が多い音ほど「豊かな」音になると言われています。
ハイ・カット・フィルター high cut filter
高音域を減衰させ、中低音域を通過させる回路のことです。
バイノーラルしゅうおん(収音)
ヘッドフォンによる立体再生音を目的に始められたもので、2本のマイクを人間の両耳の間隔程度に離して設置するステレオ収音の方法です。人間の聴覚に出来るだけ近づけて収音しよとする考え方からの方式です。
ハイパー・カーディオイド hyper cardioid
単一指向性マイクロフォンの一種で、スーパー・カーディオイドよりもさらに側面
の感度を下げた物のことです。正面と背面の感度差は少なく、従って背面からのかぶり音が多くなります。
ハイ・パス・フィルター high pass filter
低音域を減衰させ中高音域を通過させる回路のことです。一般的には20〜240Hz位
の音域を減衰させるように設計されています。
ハウスおくり(送り)
劇場やホールに音響機材を持ち込んでPA(パブリック・アドレス)を行なったりSR(増幅補強)をする場合に、持ち込み卓でミキシングした音を劇場設備(プロセニアム・スピーカーや調光室・楽屋などの運営系モニター)に送ることで、小屋送りともいいます。
ハウリング howling
マイクで拾った音を増幅してスピーカーから出した時に、スピーカーから出た音が再びマイクに収音され増幅されてスピーカーから出される、このループがあるレベルに達すると生じる発振現象のことをいいます。
バウンダリー・レイヤー・マイクロフォン boundary layer microphone
ジュラルミンなどの反射板にマイクロフォン・ユニットを埋め込んだ物で、構造的には「プレッシャー・ゾーン・マイクロフォン(PZM)」に近い物ですが、マイクロフォンのすぐ近くの反射音を収音しないように設計してあります。
バス bass
男声の一番低い声域、あるいは楽曲の中の一番低いパート(声部)を指します。楽器の場合は同種の楽器の中で一番低い音域を持つものをいい、バス・クラリネットなどと用います。4ウェイのスピーカー・システムではローとミッドの間をミッド・バスといいます。
バス・レフレックスがた(型) bass reflex
スピーカー・ユニットの背面から出る音は前面から出ている音の逆位相となります。そこで共振ダクト(ポート)を設けて背面
からの低音を共振させ、位相を反転して、つまりスピーカー前面からの音と同位
相にしてポートから出す方式です。「位相反転型」、または略して「バスレフ型」といいます。
はちょう(波長) wavelength
音波が一回の振動(1周期)の間に進む距離のことで、音波は秒速340mですので、100Hzの波長は3.4m、10kHzでは3.4cmとなります。
バック・ローデッド・ホーン back loaded horn
スピーカー・ユニットの背面にホーンを取り付けた物をいいます。背面に出された音のうち低音域がホーンによって前面
に出てくるようになっているために、低音域が補強されます。
パッシブ・イコライザー passive equalizer
増幅度のある部品(トランジスタやオペアンプ)を用いない音質調整器のことです。使用には電源を必要としませんが、これを挿入すると何dBかの損失が生じ、出力レベルが下がります。
パッシブ・ラジエーター passive radiator
バスレフ型のポートに相当する作用を行なわせるためのコーン型スピーカーの振動板だけの物のことで、「ドロン・コーン」ともいいます。低音域で共鳴し低音を前面
に出すので、小型システムの低音補強用として用いられます。
パッチ・コード patch cord
端子同士を接続するための両端にプラグやコネクターを取り付けたコードのことです。一般
的に2m以下位の物をいい、パッチ・ベイに使用します。
パッチ・ベイ patch bay
機器や装置の入出力端子回路を集めたパネルのことで、目的に合わせて機器のつなぎ換えや分岐を簡単に出来るようにした物です。パッチ盤ともいいます。
パッチング patching
端子間を接続することで「パッチする」ともいいます。
パッド pad
回路の途中に挿入して信号を減衰させるための物で、一般的に減衰量を可変できない固定型の抵抗減衰器を指し、可変型は「アッテネーター」と呼んでいます。
バッファー・アンプ buffer amplifier
二つの回路を結合する場合に回路間の悪影響を取り除くために緩衝の目的で挿入接続するアンプのことです。
はねかえり(返り)スピーカー fold back speaker
演奏している楽器の音や声を、ステージ上の演奏者や歌手に送り返して、演奏し易く・歌い易くするためのモニター用スピーカーのことで、「ステージモニター」、「返し」ともいいます。ステージ両サイドにたてる物を「サイド・フィル」、演奏者などの足下に置く物を「フット・モニター(転がし)」ともいいます。
パブリック・アドレス public address
拡声装置によって情報を大衆に伝達することを意味する言葉で、「PA」と略していいます。商店などの案内放送からコンサートの
拡声なで、広い意味で用いられます。
ハミング humming 歌詞を歌わずに唇を閉じて口の中で共鳴させて歌うことです。
ハム・ノイズ hum noise
交流電源の周波数(50Hz、60Hz)とその高周波成分が信号に混入して発生する「ブーン」、「ジー」というような連続音
のことです。電源回路からの漏れやトランスからの誘導などに起因します。
パラ parallel パラレルの略で、並列に結線することをいいます。
ばらす
仕込んである音響機器などを撤収することをいいます。
パラだし(出し)
同一のプログラム・ソースを二つ以上の回線に分けて出力することです。
パラどり(録り)
同一のプログラム・ソースを二台以上のテープレコーダーなどで同時に録音することです。
パラフレーズ paraphrase
ある曲に新しい技巧を加えたり、他の曲に移して改編すること、またはその曲のことをいいます。
パラメトリック・イコライザー parametric equalizer
音質調整器の一種で、中心周波数帯域幅(Q)および各帯域ごとの出力レベルを可変できる、周波数特性の補正装置です。
バランスがたかいろ(型回路) balanced circuit
信号線としての2本の芯線を外部雑音から遮蔽するためにシールド線で覆っている回路のことで、2本の芯線は逆相の電流を伝送し、伝送途中で誘導されるノイズは2本の芯線に同相で入るため、入力トランスで打ち消されます。このためアンバランス型よりもケーブルを長く延長することが可能になります。
バリトン bariton テノール(テナー)とバスの間の男声音域、またはそのパートのことです。また歌手や楽器のこともいいます。
パルス pulse 本来は「脈拍」を意味する言葉ですが、直流でも正弦波の交流でもない、断続された電圧・電流のことを指します。通
信信号・デジタル機器に多く用いられています。
バロック baroque<仏>
17〜18世紀中期にヨーロッパで盛んだった芸術上の様式です。ルネサンス期の古典主義の対して、流動感が強く表現されます。
パロディー parody
良く知られた作品などを模しながら、内容を変えて滑稽化したり、風刺したりすることを、またそのような作品をいいます。
パワー power パワー・アンプからスピーカーに供給出来る電力のことで、ワット(W)で表します。
パワー・アンプ power amp.
「プリアンプ」からの出力をさらに電力増幅する装置のことで、スピーカーを駆動させるための物です。「電力増幅器」、「メイン・アンプ」ともいいます。
はんしゃおん(反射音) reflect sound 天井や壁などで反射された音のことで「間接音」ともいいます。
パンチ・イン/パンチ・アウト punch in/punch out
マルチトラック録音に用いる操作方法で、再生中の指定したトラックに瞬時にバイアスをかけ録音状態に切り換えることを「パンチ・イン」といい、この状態から瞬時に再生状態に戻すことを「パンチ・アウト」といいます。誤った演奏の部分的な再録音やかぶせ録音などに用います。
ハンド・マイク hand microphone
マイクロフォンのうちボーカルやインタビュー用として手に持って使用する物のことで、タッチ・ノイズやふかれ雑音(ポップ雑音)への対策がなされています。「ハンドヘルドマイク」と書かれることもあります。
ピアニッシモ pianissimo 非常に弱く演奏することで、ppと表記されます。
ピアノ piano
@打弦の鍵盤楽器で音域は7オクターブ以上にもなり、88鍵が標準です。正式には「ピアノフォルテ」といい弱音(piano)から強音(forte)まで自由に出せるようになったことから名付けられたものです。弦が水平に張られた「グランド・ピアノ」と垂直に張られた「アップライト・ピアノ」の2種類があります。グランド・ピアノは大小さまざまあり、最も大きいものはフル・コンサート・タイプ(通
常フルコンと略して呼ばれます)で音量も大きく響きも豊かになります。Pfと表記されます。
A弱く演奏することをいい、pと表記されます。
ピーエー P.A/public address
拡声装置によって情報を大衆に伝達することを意味する言葉で、普通「PA」と略していいます。商店などの案内放送からコンサートの拡声まで、広い意味で用いられます。
ピーエーデー PAD/pad
減衰量を可変出来ない固定型の抵抗減衰器のことで、パッドといいます。
ピーエフ PF
プリフェーダーを略した言い方で、操作卓のフェーダーの位置(本線の送出レベル)に関係なく、ソロ回路、AUX回路、FB等に音声信号を送り出せるようにフェーダーの前で分岐することをいいます。また、その時点での信号をヘッドフォンなどでチェックするための機能に、PFL(プリフェーダーリッスン)があります。
ピーエルエル PLL/phase locked loop
ワイヤレス・マイクの受信機のチューニングのために使用される回路です。位
相や周波数が基準信号と同期した出力を得られる電子回路で、位相検出器・ローパスフィルター・電圧制御発振器で構成されています。
ピーク peak 音の波形、音量、音圧などの最も高い位置を指す言葉で、「波形値」ともいいます。
ピーク・レベル・インジケーター peak level indicator
ピーク・レベルを表示するために、あるレベル以上の信号が入ると電子回路で検出し、発光ダイオードなどを点灯させるものです。
ピーク・レベル・メーター peak level meter
入力信号の波高値を指示するメーターです。パルス成分の多いおとのピークはVUメーターでは監視できないため、録音やSRには欠かせない物です。
ピーシーエム PCM/pulse code moduration
音をデジタル化するために、おとを短冊状に切り取り、その一つ一つについて、その
レベルに応じた「符号(コード)」に変換する方式のことをいいます。短冊状に切り取
ることを「標本化(サンプリング)」、その標本化する回数を「標本化周波数」といい、
たとえば32KHなどとなどと表記します。符号に変換することを「量子化(コード化)」
と言い「ビット(bit)」で表します。
ピーゼットエム PZM/pressure zone
microphone 音を反射させる板の上に単一指向性のマイクロフォン・ユニットを下向きに垂直に装着させたものです。一般
的なマイクは音源からの直接音と壁や天井などからの反射音が時間的にずれて入り、位
相差が生じます。この位相のずれによる干渉を抑えるために反射音だけを収音しようとする物です。アメリカ・クラウン社の製品名です。
ビーティーエル BTL/balanced transformerless
比較的に低い電源電圧で高い出力を得るために用いられる回路方式のことで、2組の回路を互いに逆相で駆動し、それぞれの出力を合成して一つのスピーカーを接続する方法です。ステレオアンプを高出力モノラルアンプとして使用する際にBTL接続をします。
ビート beats
いわうる「うなり」のことで、周波数のわずかに異なる二つの音が重なり合う時に生じる合成波の振幅が周期的に変化することで生じる音をいいます。
ピチカート pizzicato
バイオリンやチェロなどの弦楽器を弓を使わずに指で弾いて演奏する奏法のことをいいます。
ピッチ pitch 音程、音の高さ(周波数)のことです。テープレコーダーなどでは音の高さはテープの走行スピードと関係があり、回転速度を調節して録音されている音の高さを変えることを「ピッチコントロール」といいます。テンポを変えずに音程を移動できる装置のことは「ピッチシフター」、「ピッチチェンジャー」などといいます。
ビット bit
デジタル信号を表すときの最小単位です。1ビットは「0と1」の二つの値を持ち、1ビット増えるごとに表現できる数は2の「ビット数」乗になっていきます。CDなどに採用されている16ビットの機器では2の16乗、65536個のデジタル信号が伝送出来ることになります。
ビブラート vibrato
声楽や楽器の演奏で普通に用いられる技巧の一つです。「震える」という意味で「音の高さの微妙な揺れ」をいい、同じ音の反復である「トレモロ」とは区別
します。
びわ(琵琶)
洋梨型の幅広の胴を持つリュート系の楽器で棹の上方部分(糸倉)がほぼ垂直に曲がっている4弦の撥弦楽器です。楽琵琶・平家琵琶・薩摩琵琶・筑前琵琶などの種類があります。
ピンク・ノイズ pink noise
あらゆる周波数の音を均等に含み、なおかつ1オクターブの範囲に含まれる信号のエネルギーが一定の雑音のことです。ホワイト・ノイズをローパスフィルターに通
して聴感上平坦にしたものが「ピンク・ノイズ」で、測定用信号として用いられます。
ピン・マイク pin microphone
「タイピン・マイク」のことで「ラベル・マイク」ともいいます。
ファンタムでんげん(電源) phantom power supply
コンデンサー・マイクロフォンを作動させるための48ボルトの直流電源のことをいいます。
ブイエッチエフ VHF
30〜300MHzの電波の帯域のことで超短波と呼びます。テレビやFM放送に使用されている帯域です。
ブイユーメーター VU meter
音声信号を、人間が感じる音量感で表すためのメーターで、0.3秒間の平均値を継続的に表示します。
フェイズ phase
交流波形の位置関係を表す「位相」のことをいいます。周期360度として表した時、基準点からの位
置を角度で表し位相角が180度で「逆相」となります。逆相波形を合成すると合成波は0(信号が存在しない)となります。スピーカーの位
相がずれていたりすると、再生音の定位感が無くなり、安定感の無い音になります。また、シンセサイザーなどでは、位
相を微妙にずらして重ね合わせることにより全く別の波形を持つ音、つまり音色の異なる音を作りだします。
フェーダー
音量を連続的に増減させるための装置で、一般的には調整卓の音量
調節器(ボリューム)のことをいいます。
フェード・アウト fade out/略記号F.O
徐々に音量を下げて行って音を消すことをいいます。
フェード・イン fade
in/略記号F.I
徐々に音量を上げて行って決めたレベルにする、音の入れ方をいいます。
ふとざお(太棹)
長唄などの三味線(細棹)に対して、義太夫や地唄の演奏に使う棹の太い三味線のことをいいます。
プラグ plug
コードに取り付けてある、機器の回線同士を接続する部品のことで、フォーンプラグ、標準プラグ、ピンプラグのほか、キヤノン、丿イトリックなどのコネクターのこともいいます。
プロセニアム・スピーカー proscenium speaker
劇場のプロセニアム・アーチ(額縁)の上部に客席に向けて設置されているスピーカーシステムのことをいいます。
フロント・スピーカー stage front speaker
舞台前面の舞台の框(かまち)の下部の内側に設置されているスピーカーシステムのことをいいますが、最近ではあまり使用されていません。
フロント・ローディッド・ホーン front loaded horn
コーン型スピーカーの前面
に、低音域の放射効率を高めるためにホーンを取り付けたものをいいます。
ボーカル vocal
歌手の「声」、楽曲の「声楽部」などの総称で、ボーカリスト、リードボーカル、ボーカルスコア、などと使用します。またバンドの歌手を指すこともあります。
ホーンがた(型)スピーカー
振動板を持ったドライバー・ユニットとラッパの形をしたホーンで構成される物で、このホーンを通して音が放射されます。中・高音域用に多く用いられ、ホーンの形状によって「エキスポーネンシャル・ホーン(拡がりが素直)」、「コニカル・ホーン(拡がりが緩やか)」、「ハイボリック・ホーン(拡がりが鋭い)」の3種類があります。一般
的に再生帯域は狭いのですが、指向性が鋭く能率が高いことや、特性をフラットにし易く過渡特性が良いのが特徴です。
マルチ・アンプ・システム multi-amplifier system
出力信号の周波数帯域を二つ以上に分割し、それぞれの帯域用のアンプを使用して、その帯域専用のスピーカーを駆動する方式をいいます。分割する数によって2ウェイ、3ウェイ、4ウェイなどがあります。
マルチウェイ・スピーカー・システム multiway loudspeaker system
アンプ出力を二つ以上の周波数帯域に分割し、それぞれの専用のスピーカーで再生する方式のことです。2ウェイ、3ウェイなどがあります。
マルチ・トラック・テープレコーダー multi-track taperecorder
4〜24の多数のトラックを持ち、それぞれ単独に録音・再生出来る機能を持ったテープレコーダーのことです。マルチ収音や各パートごとの録音を行なった後で音質調整をして、2チャンネル・ステレオなどに「ミックス・ダウン」します。
ミディ MIDI
複数の鍵盤楽器または非鍵盤楽器および他の電子楽器との間で音楽情報を伝達するために定められた国際規格のことを表します。MIDIを装備した楽器を相互に結合してその規格を利用することにより、数台のシンセサイザーを1台のキーボードで演奏できます。また、各シンセサイザーの音色やエフェクターの設定を一斉に変化させたり、コンピューターによるシンセサイザーの自動演奏などが可能になります。
モニタリング monitoring
音響調整室などで、スピーカーやヘッドフォンあるいはメーター(ピーク・VU)などによって、音質・音量
などを調整・監視する作業をいいます。また、ミキシング・コンソール上に置いた小型スピーカーによる場合には「近接モニタリング(near
field monitoring)」といいます。
モノラル monaural
本来、一系統で送られてきた信号(音)を片耳のイヤフォンまたはヘッドフォンで聴くことを指します。スピーカーを用いて音を空間に放射して聴くことはモノフォニックといいますが、現在では同じように使われます。モノラル信号(音)は複数のスピーカーを使用しても原則的には立体感を得ることは出来ません。
やぎ(八木)アンテナ
半波長ダイポールアンテナを中心としてその前後に「導波器」、「反射器」と呼ぶ導体を取り付けた物です。テレビのアンテナとしてよく使われています。
やりくり
工夫して、都合をつけることを意味する言葉です。完成品(マスター)を作り易くするために「素材」のSE(効果
音)などをある程度ミックスしておいたり、順番を入れ換えておいたりなどした物を「やりくりテープ(ディスク)」などといい、消去後再び別
の録音などに繰り返し使用されます。
ユーエッチエフ UHF
300〜3000MHzの電波の周波数帯を指し、極超短波と呼びます。テレビ放送、マイクロ波通
信、ワイヤレス・マイクロフォンの送信などに使用されます。
ユニゾン unison
いくつかの声や楽器あるいはオーケストラ全体などが同じ旋律や音程を演奏することで、オクターブの場合も含めて言います。舞踊でも同じ振りで複数が踊るときに用います。
ユニット unit
機器類の組み合わせから成る装置の構成単位で、一般的に分離できるものをいいます。電源ユニット、ディレイ・ユニット、スピーカー・ユニット等という言い方をします。
よくよう(抑揚) 声の調子や音量などを抑えたり上げたりすることをいいます。
ライブ live
@室内の音響状態で残響が多い場合に用いる言葉です。反対に残響の少ない状態を「デッド」といいます。
A生(なま)という意味で、劇場やホール、ライブ・ハウスでの生演奏のことをいいます。
ライブ・ハウス live house
飲み物等を出しながら、生の音楽を演奏して聴かせる店のことです。
ライブろくおん(録音) live recording
劇場やホールなどのコンサートを観客の入った状態で録音することをいいます。雰囲気を盛り上げるために観客をスタジオに集めて行われるものは「スタジオ・ライブ」といわれます。
ライン line 電流や情報などの回線、径路、系列、系統、テレビの走査線などをいいます。
ラインしゅつりょく(出力) line out
マイク以外の出力で、通常20dB+40dBのレベル出力するもののことです。
ラインにゅうりょく(入力) line input
音響調整卓に入る入力のうちマイク以外のものを「ライン入力」と呼び、通
常レベルが高いので調整卓のヘッドアンプを通す必要の無いものをいいます。このレベルを「ラインレベル」といいます。
ラウドスピーカー loudspeaker
拡声器と訳されますが、文字通り大きく強い音を出すスピーカーのことです。特に注意が必要なとき以外は単に「スピーカー」といわれています。
ラウドネス loudness
同じ音源の音を聴いても、周波数が異なると耳には同じ大きさには聞こえません。音量
が小さくなるにつれて、低音と高音が聞こえにくくなることをいいます。
ラジアル・ホーン radial
horn エクスポーネンシャル・ホーンの左右の面を直線にしたホーンのことで、開口部が見掛け上では角型になっています。周波数によって指向性が変化することが欠点といえます。
ラペル・マイクロフォン lapel microphone
衣服の襟やネクタイまたはかつらなどに仕込んで用いる超小型マイクロフォンのことで、「ピン・マイク」ともいいます。マイクを目立たせたくない時や両手を自由に使いたいときに用います。
リーダー・テープ leader tape
録音テープの巻き始めの部分につながれている、磁性体の塗られていないテープのことをいいます。また巻き終わりの部分にも使われることがあります。テープをテープレコーダーに装着する際に録音部分が損なわれないようにする物で、リーダーテープがヘッド・クリーニングを行なう物などもあります。
リード lead
@何人かのボーカルや同じ楽器の演奏者がいるコーラスやグループなどで主旋律を歌う(演奏する)人をいいます。「メイン」という言い方もあります。
A電気の導線・アンテナ
などの引き込み線を指しますが、この場合は一般的に「リード線」と呼ばれます。
リード reed 管楽器の震動源となる部分のことで、空気を吹き付けることによって発音します。アシ・竹・木・金属などで作られた弾力のある薄片で、クラリネットなどのシングルリード(1枚)、オーボエなどのダブルリード(2枚重ね)があります。
リール reel
テープやフィルムを巻き付ける物でインチで表示されます。5、7.5、10インチなどのサイズがあり、日本では、5号、7号、10号と呼びます。オープン・リール・テープレコーダーの代わりに「リール・トゥ・リール」と書く国もありまあす。
リカバリー・タイム recovery time
コンプレッサー、リミッター、ノイズゲートなどで制御動作が解除されてから正常な状態に戻るまでの時間をいいます。「リリース・タイム」ともいいます。
リズム・セクション rhythm section
いわゆる音楽の三要素である「メロディー」・「ハーモニー」とともに音楽を構成する「リズム」ですが、バンドのリズムを主に担当する楽器群のことを指します。ふつうはキーボード・ギター・ベース・ドラムスから成り、パーカッションが加わることもあります。
リニアリティー linearity
アンプなどで入力に対して出力が比例関係にあれば「リニアリティ(直線性)」が良いといいます。可能な限り熱やレベルなどに注意を払ってリニアリティの良い作動条件で使うのが原則です。
リハーサル・オーケストラ rehearsal orchestra
固定したメンバーを持たずに、必要に応じて各ジャンルから演奏者を選び、臨時に編成されるオーケストラをいいます。
リバーブ reverberation
部屋の中で手を叩いたり、楽器やスピーカーの音を急に止めたりすると、しばらくの間はその音の響きが残っています。これをその部屋の「残響」といいます。これは音波が部屋の壁、天井や床などで反射を何回も繰り返し、音を止めても音のエネルギーが残っているため生じる物です。この残響を「リバーブ」といいます。
リバーブ・ユニット(マシン) reverberation unit (machine)
残響付加装置といい、収音した音にいろいろな響きを付け加えるための装置。機器をいいます。鉄板・スプリング・テープ・電子式などの方法があります。
リフ refrain
楽曲の繰り返し何回も演奏される短いフレーズやテーマのことで、ロックやジャズでは大事な要素となっています。
リボンかた(型)マイクロフォン 別名を「ベロシティマイクロフォン」と呼びます。振動導体にアルミ箔のリボンを使用していることからリボンマイクと呼ばれ、音色の素直さと機械的弱さが特徴です。最近ではプラスティック膜に金属蒸着したコイルをリボンのかわりにした「フラットコイルベロシティマイク」もあります。
リミッター limitter
過大信号を一定のレベル以下に抑え込む物のことで、メインアンプの入力回路などに挿入して使用します。過大入力によるスピーカーなどの破損や歪みの抑制、機器の保護のために用いますが、音の立ち上がり部分を抑え、余韻が強調されることになるのでエフェクターとしても使用されます。コンプレッサーの機能を合わせ持つ物をコンプ・リミッターといいます。
リム・ショット rim shot
ドラムの奏法の一つで、主にスネアのヘッド(皮)とリム(枠)を同時に叩き、強いアタック音を出すことを言います。スティックを皮に当てたままリムだけを叩く奏法もボサノバなどで使用されます。
りょうじこうか(両耳効果) binaural effect
片方の耳で聴くよりも両耳で聴く方が、音の方向性、遠近感、拡がり、臨場感、選択能力(聴きたい音を選ぶ)などについて有効であることをいいます。「双耳効果
」ともいいます。 りょうしこうせい(両指向性) マイクロフォンの指向性の一つで、マイクロフォンの正面
と背面の音を均等に収音し、側面の感度を低
くしてある物です。「双指向性」ともいいます。
リリース・タイム release time コンプレッサー、リミッター、ノイズゲートなどで制御動作が解除されてから正常な状態に戻るまでの時間をいいます。「リカバリー・タイム」ともいいます。
リ・レコーディング re-recording
録音されている音をそのまま別のテープなどに複写
することで、「コピー」、「デュープ(duplicateの略)」ともいいます。
りんじょうかん(臨場感)
スピーカーなどで再生された音が、あたかも録音された現場にいるように生々しく感じられることを指す言葉です。
ルーム・イコライゼーション room equalization
音響調整室などのモニターはフラットな特性が必要ですが、良好な特性のスピーカーを導入したとしても、反射音などによってエンジニアの聴取位
置で最適になるとは限らないので、1/3オクターブのイコライザーなどを用いて音質を調整することをいいます。一般
的にスピーカーの音響特性を表示したものは無響室のデータによっているのがふつうです。
レーザー・ディスク laser disk
ビデオ・ディスクの一種で再生にレーザー光を使用する物のことで、ディスクに直接接触する針を使用しないため、繰り返しの使用にも音質や画質に影響がなく、また再生箇所を瞬時に選べます。
レガート legato
音と音の間に切れ目を感じさせないで、滑らかに音をつなげて演奏する方法を言い、反対語として「スタッカート」があります。
レシーバー receiver
受話器、受信機、受像機など受信側の物を総称していいます。またチューナー、プリアンプ、パワーアンプを一体にした物を「総合アンプ」あるいは「レシーバー」と呼ぶこともあります。
レベル level
ある「基準」を指す言葉です。種類は色々ありますが音圧レベル、音響パワーレベルなどと、量
を表す用語と組み合わせて用います。通常、ベルの1/10を単位としたdB(デシベル)という単位
を使います。
ロー・インピーダンス low impedance
信号を送る側のインピーダンスを低く設定することをいいます。またこれに負荷側のインピーダンスを高くして機器の接続をする方法を「ロー・インピーダンス送り、ハイ・インピーダンス受け」といい、「ロー出し、ハイ受け」または単に「ハイ受け」とも略します。電圧損失が少ないこと、負荷の並列接続が容易であることが利点ですが、長い距離を引き回す時などに磁気誘導を受け易い欠点があります。
ロー・カット・フィルター low cut filter
低音域を取り除く回路で、音響用語としては「ハイ・パス・フィルター(HPF)」といいます。
ローだし(出し) 信号ラインの接続方法で信号源のインピーダンスを低くし、負荷側を高くして接続する方法で、「ロー・インピーダンス送り、ハイ・インピーダンス受け」といいますが、それを略して「ロー出し、ハイ受け」または単に「ハイ受け」といいます。電圧損失が少ないことや、負荷の並列(パラ)接続が容易である利点がありますが、磁気誘導の影響を受け易くノイズが加入し易い欠点があります。
ロンド
@ronde<仏>/Arondo<仏憩英> @円い輪になって踊りながら歌う、その踊りまたは歌のことです。特に定まった形式は無く、短い音楽・歌詞が繰り返されます。「輪舞」と書きます。
A音楽形式としての「ロンド」は反復される主題部(ルフラン/リフレイン)と、その間に現れる挿入部(クープレ)からなる並列形式をいいます。
ワイヤレス・マイクロフォン wireless microphone
コード付き(wired)とは異なり、音声信号を変調して電波で送信する物で、マイクロフォンの中に送信器を組み入れた物(hand
heldハンドタイプ)とマイクロフォンと送信器をコードで接続して使用する物(セパレート・タイプ、タイピン型あるいは仕込み型)とがあります。発信された電波は受信機(チューナー、レシーバー)で受信されて音声信号に変換されます。コードが無いため俳優や演奏者の動きに制約がなく、非常に多く用いられるようになっています。現在製造できる帯域は、A型(797.125〜805.875MHz)、B型(806.750〜809.750MHz)、C型(322.050〜322.350MHz)があります。A型は陸上移動局の免許と特定ラジオマイク利用者連盟への加入が必要ですが10波、B型は6波、C型は一般
拡声用として4波使用できます。ただし、プロ用のA型・B型を併用した場合でも16波使用できる訳ではありません。(1996、5、26以降は以前から使用されていた40、200、400MHz帯のワイヤレス・マイクロフォンは使用禁止になります。)
ワウ・フラッター wow flutter
テープレコーダーの速度やレコード・プレーヤーの回転数が、ある周期で変動する回転ムラのことをいいます。4〜6Hzより長い周期のものをワウ、短いものをフラッターと呼びます。しかし両者に明確な区別
があるわけではありません。
わおん(和音)
高さの異なる二つ以上の音が同時に響く場合に合成される音のことで、協和音と不協和音とに分かれます。3度音程の積み重ねによる三和音が典型的・基礎的なものとなります。
わすれる(忘れる)
出していた効果音などをいつの間にか、知られずに消すことをこのようにいいます。
ワルツ waltz
中くらいの速さ3/4拍子の舞曲で、男女が抱き合って円を描きながら踊る、その舞曲と踊りのことをいいます。18世紀末にオーストリア・バイエルン地方で生まれ、1814〜15年のウィーン会議以後ヨーロッパ中に広まり、今では社交ダンスやバレエの標準的な音楽と踊りになっています。
ワンポイントしゅうおん(収音) one point microphone pickup
一本のマイクロフォン、またはステレオ録音の際は一対のマイクロフォンで収音する方法でオーケストラ演奏の録音などで音の小さい楽器には補助マイクロフォンを別
に設置することもあります。この収音方法は直接音だけでなく、反射音・間接音も同時に収音出来るので、全体の雰囲気や臨場感が得られます。