計算機に使われた最初の数値を記憶する装置は,歯車であった。 その後,電子回路を応用した計算機が出現すると, 記憶装置の必要性は増大したが,価格と信頼性が問題となった。
 最初の電子計算機である ABC に使われた記憶装置は,ライデン瓶であった。 最初にコンピューターのメモリーは EDVAC の水銀遅延管である。
水銀遅延管
 基本的な原理は,ピエール・キュリーとジャック・キュリー, 及びウィリアム・ショックリーにより発見されている。 水銀遅延管自体は John P. Eckert が MIT の放射線研究所に在職中に考案。 水銀を満たした管の両端に石英の結晶を取り付け,一端の結晶に電流を流して振動させると, この音波が水銀管を伝わりもう一端の結晶が振動すると電気信号が発生する。 この両方の結晶を増幅回路で接続すると,信号を保持することができる。 最初の,EDVAC に使われた水銀遅延管の容量は 1000 Bit/ 本であった。
磁歪遅延線(じわいちえんせん)メモリー,ディレイライン
 1960年代のメモリー。 ETL-Mark IV,沖電気のラインプリンター,SONY の電卓などに使われた。 現在はセンサーに応用されている。
電磁遅延線シリアルレジスター
 HITAC 5020 に使われた。
磁気コアメモリー
 磁気コアと配線で,コアの磁化の方向を変えることで0と1を記憶させるメモリー。 小さなフェライトのリング(コア)を,書き込み線とそれに直角に交わる読みだし線で編み上げてある。 コアは書き込み線と読みだし線の交点上に配置される。 最後には 256 ×1 bit のIC の形状の製品があった。
 読み出しは書き込み用の導線にコアが0の状態なるように電流を流した場合, コアが1だった場合は,磁束の変化が起こるので,読み出し線に感応電流が流れる。 コアが0だった場合は磁束の変化が起こらないので,読み出し線に感応電流は流れない。 このように,読み出し線の電流でメモリーを読み出す。 読み出しをかけると,磁気コアの内容が破壊される(破壊読み出し)ので, 読み出した後,再度同じ内容を書き込む必要があり, この両者(読み出しと再書き込み)の時間を合わせてサイクル・タイムと呼び, 磁気コアメモリーではアクセスタイムよりサイクル・タイムのほうが重要視される。 コアメモリーのサイクル・タイムは 0.1〜1μsec だった。
ワイヤーメモリー
 磁性体のワイヤーを編んで作られた主記憶装置。 コアメモリーと同様の原理で動作する。 コアメモリーより小型・軽量で,1970年代の国産の小型ミニコンに使われた。