コンピュータ教育の進展

 

1)はじめに

多摩美術大学とコンピュータの関係は、パーソナルコンピュータの発達普及ととも歩んできた。

1960年代に当時学生であった幸村真佐男は東京大学の学生などとCTGグループを結成し、1968年にロンドンで開催された”サイバネティクス、セレンディピティ展”などに作品を発表して話題となった。当時、美術大学の学生が利用できるコンピュータは、東京大学の大型計算機センターで、古くなったメインフレームを全国の学生の利用に供していたのが唯一であった。言語は、科学計算用のフォートランか事務処理用のコボル、入力装置はカード読取り機、出力装置はXYプリンターかラインプリンターのみであった。このような貧弱な出力表現媒体に挑戦して、実験的な美術創作が試みられた。データは、ジャガード織機の型紙の様なパンチカードを環ゴムで束ねて持ち歩き、プロッターで出力した図形は、シルクスクリーン製版された。 当時のコンピュータアートやエコロジー運動は、ヒッピーなどに代表される反体制文化であった。

その頃、上野毛校舎の近くの製品科学研究所にサザーランドのピクチャー・システム2が導入され、幾人かの学生が見学にいっが、高価な貴重品で、真っ黒な画面にオシロスコープのようなランダムスキャンの線画を画いてみる機会はめったになかった。

1973年に端山貢明、幸村真佐男、高橋士郎らが中心となって第一回国際コンピュータアート展がソニービルで開催され。会場には富士通のミニコンが運び込まれ、毎朝、16個のトグルスイッチを操作して、穿孔テープをテープリーダーにローディングし、女子美大の田中四郎の学生作品が実演された。この展覧会には、ナムコの前身である中村製作所がゲーム機を展示し、高校生の西和彦が神戸から通って来た。

1970年代には、石田晴久の著書などによりマイクロコンピュータが広く普及するようになり、美術作家などが個人的動機と目的でコンピュータを組み立てて使用できるようになった。

1980年代になると、マイコンを組み込んだパソコンとラスタースキャンのモニターのセットが各社から市販されるようになった。1983年から3年間に、ナムコの中村雅哉社長から頂いた寄付金は、多摩美術大学の情報化の切っ掛けとなった。この寄付金でNEC9800シリーズとその周辺機器やワープロを多数購入して、学校の中に実験的に配布することが出来た。 マックスベンゼンの情報美学の翻訳に挑戦していたグラフィックデザイン科の草深幸司はさっそくBASICによる作画の授業をカリキュラムに取り入れた。

1989年、美術学部が八王子へ移転した跡の上野毛校舎に、美術学部二部が新設されるのを契機に、コンピュータの授業が企画され、当時はまだワークステーションの時代に、多摩美術大学は、アップルジャパン社の武内重親社長と4年間の産学共同契約を締結してMAC2を30台を購入した。米国で活躍していた卒業生の五十嵐威がデザイン学科長に就任、猪股裕一を中心としてパソコンによる美術教育のカリキュラム開発が始まった。また、須永剛司を中心としてヒューマンインタフェースの授業が、アンドレアス・シュナイダーを中心としてインターネットの授業が開始された。現在では、日本のデザイン界の大半はMAC党となっている。

また、1997年には、卒業生でありゲームメーカー光栄の現社長である襟川恵子の援助を受け、シリコングラフィックス社の最新機O2が多数導入され、ハイエンドなCG教育が可能となっている。

1998年4月に新設された情報デザイン学科は、上野毛校舎での教育研究の成果を発展させ、美術学部での本格的な情報教育を開始した。上野毛校舎と八王子校舎には、インターネット、イントラネットの技術を利用した全学的なキャンパスネットワークが構築され、グラフイックデザイン学科、環境デザイン学科、生産デザイン学科においても新しいカリキュラムが研究されている。

さらに、2000年10月には、メディアセンター棟が完成し、活動を開始する予定である。

(高橋士郎教授)

 

2)グラフィックデザイン教育のデジタル化

A)グラフィックデザイン研究室のコンピュータルーム

(1)映像デザイン デジタル処理システム-1
・ハードウェア(本体 AVID (Power Mac 9600/300) (内蔵 Yano MO640i)、モニタ 三菱 20inch×2、DVD-RAM、ビデオデッキ ベータカム PVW2800. Hi-8 EVO9650. SVO-5800 S-VHS. DVCAM DSR-80、カメラ DCR-VX1000. TVR-900. TVR-10. TVR-7. GR-DVL)
・ソフトウエア(Media Composer 4000)

(2)インターネット アクセス システム
・ハードウェア(本体 iMac DV sp)
・ソフトウエア(Explorer. Netscape)

(3)3D及びデジタル デザイン処理システム
・ハードウェア(本体 Intergraph TDZ-2000UT. Pentium II/300MHz. (外付 Yano MO640i) . Silicon Graphics O2. R10000/150MHz . NEC PC-98 NX。モニタ EIZO57T. 純正 17inch)
・ソフトウエア(3Dグラフィクス系ソフト Soft image. N-world. Alias Power Animator. Alias MAYA。プログラミング系ソフト Microsoft Visual Bsic。ペイント・映像系ソフト Adobe Photoshop. Adobe AfterEffects)

A-1)コンピュータ・オペレーション学習システム

(1)映像デザイン デジタル処理システム-2
・ハードウェア(本体 Power MacintoshG3. DT233 (内蔵 Yano MO640i)Power Macintosh 9600/233。モニタ EIZO57T。CinemaGear(アナログ) Hi-8 Video Deck。FireMax(デジタルDV) DV+S-VHS Video Deck)
・ソフトウエア(映像系ソフト Adobe Premiere. Adobe After Effect Pro)

(2)画像デザイン処理デジタルシステム
・ハードウェア(本体 Power MacintoshG3. DT233 (内蔵 Yano MO640i)。モニタ EIZO57T)
・ソフトウエア(ペイント系ソフト Adobe Photoshop。ドロー系ソフト  Adobe Illustrator。DTP系ソフト Adobe Page Maker。ペイント系ソフト Adobe Photoshop。ドロー系ソフト  Adobe Illustrator。DTP系ソフト Quark Xpress)

(3)画像デザイン デジタル処理システム
・ハードウェア(本体 Power MacintoshG3. DT233 (内蔵 Yano MO640i)。モニタ EIZO57T)
・ソフトウエア(ペイント系ソフト Adobe Photoshop. Live Picture。ドロー系ソフト  Adobe Illustrator. Painter)

(4)画像デザイン デジタル処理システム
・ハードウェア(本体 Power MacintoshG3. DT233 (内蔵 Yano MO640i)。モニタ EIZO57T。wacom Tablet)
・ソフトウエア(ペイント系ソフト Adobe Photoshop. Live Picture。ドロー系ソフト  Adobe Illustrator. Painter)

(5)アニメーション デジタル処理システム
・ハードウェア(本体 Power MacintoshG3. DT233 (内蔵 Yano MO640i)。モニタ EIZO57T。wacom Tablet)
・ソフトウエア(ペイント系ソフト Adobe Photoshop. Live Picture。ドロー系ソフト  Adobe Illustrator。オーサリング系 Director。映像系ソフト Adobe After Effect Pro)

(6)コンテンツ デジタル処理システム
・ハードウェア(本体 Power MacintoshG3. DT233 (内蔵 Yano MO640i)。モニタ EIZO57T)
・ソフトウエア(ペイント系ソフト Adobe Photoshop. Live Picture。ドロー系ソフト  Adobe Illustrator。オーサリング系 Director。映像系ソフト Adobe After Effect Pro。ホームページ作成ソフト Adobe Page Mill2.0J)

A-2)デジタル入力出力システム
フラットベットスキャナ EPSON ES-8000。フィルムスキャナ CanoScan 2700F. Nikon LS-1000,Nikon SF-1000。インクジェットプリンタ. EPSON PM-5000. EPSONプリンタ, PSサーバ, ネットワークサーバ。レーザープリンタ Oki 803PS II+F. Oki 903PS II+F

A-3)プレゼンテーション デジタル システム
PowerMacG3 233+3Videocard. SONY VPL-X1000. SONY VPL-X500. スクリーン固定式100インチ. スクリーン可動式100インチ。

B)マルチメディアルーム
マルチメディア プレゼンテーション システムA/B
Power MacintoshG3/DT300 DV+S-VHS VTR,Hi-8 VTR,HR VX-8、液晶モニタ, スイッチャー, 実物投影機, 信号変換器, RGBスイッチャ, RGB分配器 , 操作卓, 操作パネル, 接続盤 , ミキサ, アンプ, 主電源ユニット, フロントスピーカー, マイク, ビデオビュア,D-ILAプロジェクター, 150/100インチスクリーン, デジタルビデオカメラ, アクセサリーキット,外部入力接続プレート

グラフィックデザイン学科では、学生の希望・社会の要望・制作方式や媒体の変化などに対応して、積極的にデジタル化教育を推進しているが、その特徴は、あくまでグラフィックデザインが中心であり、その視点からデジタル化を進めていることである。そのためのデジタル教育は、以下のようである。

(1)デジタルオペレーション教育
1・2年生の基礎課程では、アナロググラフィックデザインの基礎的原理と技術を、徹底して教育することが中心であるために、デジタル教育は、デジタルオペレーションの原則と基礎技術などのデジタルリタラシィを必修で学習させるに止める。そのための教育システムは、以下のとおりである。
A:基礎課程における、コンピュータ・オペレーションの必修学習システム

(2)デザインのデジタル化教育
3・4年生の専門課程に於けるデジタル教育の一つで、DTPおよびDTVなどが学習技術の中心であるが、それだけでなく、教育技術の充実を図るほか、制作時における、発想と表現技術の領域拡大、品質と精度の向上、制作過程の経費削減と効率化、印刷工程・媒体化工程や媒体のデジタル化への対応などを、十分に学習させる。そのための教育システムは以下のとおりである。
A:専門課程における、画像デザインのデジタル処理システム
B:専門課程における、映像デザインのデジタル処理システム-1
C:専門課程における、映像デザインのデジタル処理システム-2
D:専門課程における、3D画像デザインのデジタル処理システム
E:専門課程における、アニメーション映像のデジタル処理システム
F:基礎・専門課程における、デジタル入力・出力システム
G:拡大映像プレゼンテーション・デジタルシステム
H:マルチメディア教室における多目的プレゼンテーション・デジタルシステム-1
I:マルチメディア教室における多目的プレゼンテーション・デジタルシステム-2

(3)デジタルのデザイン化教育
3・4年生の専門課程におけるデジタル教育のもう一つは、デジタル機器が生み出す機能を表現化することによって、全く新しい視覚伝達デザインを創造することを学習することである。現在は、インターネットなどのWebデザインと、C言語を使うコンピュータグラフィックデザインが中心であるが、デジタルインフラの発展にしたがって、教育内容も拡大・強化することを予定している。そのための教育システムは現状では、以下の通りである。
A:専門課程における、デジタル機能のデザイン化システム
B:専門課程における、デジタル媒体コンテンツデザインのデジタル処理システム
C:専門課程における、インターネット・アクセスシステム
D:専門課程における、デジタル入力・出力システム
E:拡大映像プレゼンテーション・デジタルシステム
F:マルチメディア教室における多目的プレゼンテーション・デジタルシステム-1
G:マルチメディア教室における多目的プレゼンテーション・デジタルシステム-2
以上であるが、最重要視しているのは、如何にデジタル化されようとも、人間が人間に情報を伝達する限りは、色と形による視覚伝達デザインがもたらす、感動と共感は不変であるということである。だから、当学科における学習・作品評価は、あくまで人間の感性によるものが第一であることを特記しておきたい。

いま情報伝達の世界は、情報革命の真っ最中です。21世紀に向かって、目的も環境も条件も内容も、大きく急激に変化しています。グラフィックデザインの機能も拡大し、その領域も印刷メディアは当然のこと、アナログ、デジタルを問わず、映像メディア、マルチメディアなど、すべての情報伝達メディアに及んでます。このような社会の変化や要請に応えるために、当学科は、40年に及ぶ長い伝統と輝かしい業績を踏まえて、デジタル化、映像化、マルチ化、ネット化しました。校舎が新築拡張され、カリキュラムを改善し、専門課程にコース制を採用しました。さらに、高性能デジタル機器が約150台も設置されました。人の気持ちが解る人間大好き人間で、豊かな人間力(感性力・創造力・計画力・発見力)を基礎体力とし、高度で優れた基礎技術(基礎描写技術・基礎構成技術)と専門技術(情報伝達アナログ技術・情報伝達デジタル技術)という強い武器を駆使して、情報伝達のあらゆる分野の最先端で活躍し、伝えたい情報を、解りやすく、美しく、正確に伝えることで、問題を解決する必要があります。

教育科目には、1・2年生に対する基礎課程のものと、3・4年生に対する専門課程のものがあります。基礎課程では、高度で豊かな問題把握力・表現力・発想力・構成力などを学ぶと同時に、重要な表現要素である写真技術と、コンピュータによる情報のデジタル処理技術を必修で習得します。専門課程では、社会の要求に応えた実践的な理論と実技の習得のために構成された、4のコースから1コース自由に選択します。広告メディアにる表現の発想と技術を学ぶ広告デザイン・コース、CMやマルチメディアなどの映像表現の発想と技術を学ぶ広告映像デザイン・コース、広告以外の広い分野のメディアの創造的表現の発想と技術を学ぶ伝達デザイン・コース、イラストレーション・アニメーションや写真による表現の発想と技術を学ぶ表現デザイン・コースの4コースです。担当する教員には、業界の最前線で活躍する現役クリエイターも含まれ、期待に応えています。

当学科のデザイン棟は、平成10年に完成、同時に旧校舎から移転しました。5階建のビルで本学一の偉容を誇っていますが、そのうち3・4階を占有しています。設備とスペースは、従来の経験を生かしながら拡充・充実し、のびのびと余裕ある実習ができるようになりました。写真についての設備は、平成12年に完成するメディアセンターに大規模なものが新設されます。デジタル関係は、時代の厳しい要求に十分応えられるよう、最新鋭のハイエンド・コンピュータなどの機器が、約150台設置されました。DTP他の2Dデザイン、ゲームソフトなどの3Dデザイン、アニメーションやウエブデザインなどのモーションデザイン、映像のデジタル編集・インターネットなどのための機器は、授業時間だけでなく、自主制作や卒業制作などに、どんどん使用できます。

40数年間に当学科を卒業した学生は約5600名に及びます。その創造活動が高く評価され、情報伝達のあらゆる分野で活躍中で、それぞれの業界の主流の位置を占めています。この先輩たちの情報伝達界への貢献や後輩に対する友情に加えて、社会の要求に対応して、デジタル化・映像化・マルチ化しましたので、さらに就職に有利な学科になりました。就職先は広範囲ですが、一流広告会社・一般企業・印刷会社・新聞社・出版社・放送会社・デザイン制作会社・映像制作会社・CM制作会社・コンテンツ制作会社・アニメ制作会社・パッケージ制作会社・キャラクター制作会社・音楽制作会社・芸能プロダクション・ゲームソフト会社・CG制作会社・作家個人事務所など。

(田保橋淳教授)

 

3)テキスタイルデザイン教育のデジタル化

CPUコンピュータドビー機、ジャガード機、プロッターを導入して:新テキスタイル棟竣工及び改組に伴い、今期よりテキスタイルデザインコース及びサーフェイスデザイン3,4年生のカリキュラムにコンピュータ使用による授業を設け、コンピュータドビー手織機(4台)、TC-1ジャガード機(1台)、プロッター(1台)を導入した。またそれらのコンピュータ使用に伴い、コンピュータ室も合わせて開設した。
コンピュータ関連の諸施設や設備を完備した第一の目的は、学生がコンピュータを使いデザインからプリントや製織までの工程を際限なく体験することが出来、より自由に創造性の拡大がはかれ、将来的にテキスタイルデザイナーとしての活躍の場を広げられることである。
コンピュータドビー機は24枚綜絖までのドビー柄を作ることが出来る。コンピュータで織物組織設計をした後、連動したコンピュータドビー手織機で織作業をする。綜絖の開口の順番はコンピュータが管理する。
また、TC-1ジャガード織機(スレッドコントローラー手織機)は、PhotoshopやIllustrator等のコンピュータソフトでデザインしたものと連動させることにより、織物のシミュレーションが瞬時にでき、織のプロットタイプが手織でできることが大きな特徴である。
綜絖の開口や経糸の繰り出しはエアーコンプレッサで行い、ペダルスイッチやボタンスイッチで自動作動でき、経糸1本づつを自在に操作でき自由なパターンが、多少量に関わらず製織可能である。1ユニットの装置で220本の経糸操作で、4ユニットまで組み変え操作ができる。

(橋本京子教授)

 

4)情報デザイン学科のアンケート調査

1998.06.08 アンケート調査「情報デザイン学科1回生入学時」有効64名(対象新入生125名)

設問1.「情報デザイン学科をどのようにして知りましたか」予備校36名。新聞広告7名。友人6名。高校5名。進学相談会5名。ポスター1名。雑誌1名。その他12名。

設問2.「大学の専攻は他に何を考えましたか」美術系63名。工科系1名。その他3名。
美術系:多摩美術大学グラフィックデザイン学科、生産デザイン学科、環境デザイン学科。東京芸術大学デザイン科学科。東京造形大学視覚伝達学科、メディア伝達学科。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科、映像デザイン学科、空間演出デザイン学科、基礎デザイン、工芸工業学科。女子美大学造形計画学科、女子美術大学短期大学情報デザイン学科。愛知県立芸術大学デザイン学科。京都精華大学VCD科。東海大学教養学部芸術学科。京都造形芸術大学情報デザイン学科。日本大学コミュニケーションデザイン学科
人間社会系:慶應大学環境情報学部、総合政策学部。早稲田大学人間科学部

設問3.「予備校に通いましたか」通った59名。通わない4名。代々木ゼミナール、河合塾、駿台予備校、オルト美術学院、菊名アトリエ、美術研究所画塾、お茶の水美術学院、すいらんアートゼミナール、新宿美術学院、成城美術研究所、立川美術学院、埼玉美術学院、横浜アートスクール、A1アートスクール、松江アトリエ、高原洋一デッサン教室、彩光舎、すいどーばた美術学院、松戸美術研究所、横浜アカデミー美術研究所、福岡美術研究所、東進ハイスクール、横浜美術学院、鎌倉美術研究所、鶴見アトリエ、東芸美術研究所、武蔵野美術学院、仲美術研究所、高崎美術学院、アトリエざくろ、富士美術研究所

設問4.「情報デザイン学科の入学前のイメージを教えてください」コンピュータグラフィックスの技能を学べる、受験科目に数学があったことから、授業にも数学があるものだと思った、アナログのデザインではなく、デジタル化されたデザインを学べる科、Mac使い放題、美大的ではない、一人一台にコンピュータが割り当てられる、自由で何でもできる、最先端の学科、理工系の授業が中心のカリキュラム、グラフィクデザイン科と似た授業内容、・コンピュータの設備が充実している、3DCGを中心とした授業が行われる  

設問5.「現在、設備等を増設中ですが、情報デザイン学科にこれから望むことがあれば教えてください」休日や早朝もスタジオでの製作を可能にしてほしい、自由に設備を使用できるようにしてほしい24時間キャンパス 、個人で使用できる空間アトリエが欲しい、コンピュータグラフィックの技術をもっと学びたい、一人一台のコンピュータが欲しい、個人のロッカーが欲しい、コンピュータは眼が疲れるので仮眠室や眼の洗浄器が欲しい、ソフトウェアの資料を閲覧したい、情報デザイン学科の目的や主旨をもっと明確にしてほしい、絵が描きたい、スキャナーを自由に使用したい、コンピュータ関連の授業を増やしてほしい、ソフトを増やしてほしい/学ばせてほしい、機材の貸し出しをしてほしい、音に関する機材を増やしてほしい、先生方ともっとコミュニケーションをとりたい、冷房を設置してほしい

設問6.「卒業後のあなたの進路のイメージを教えてください」教員、映像関係の仕事に就きたい、コンピュタグラフィックスデザイナ、ゲームデザイナ、アーティスト、ミュージシャン、映画関係の仕事に就きたい、絵本作家、ハイエンドユーザ、広告関係の仕事に就きたい、出版業界に携りたい、空間プロデューサ、照明デザイナ、漫画家、建築インテリア関係の仕事に就きたい、アニメーション製作 

 

1999.06.08 アンケート調査「情報デザイン学科2回生入学時」有効92名(対象新入生122名)

設問1.「情報デザイン学科をどのようにして知りましたか」予備校75名。新聞広0告名。友人10名。高校3名。進学相談会14名。ポスター1名。雑誌1名。その他14名。

設問2.「大学の専攻は他に何を考えましたか」美術系90名。工科系5名(その内美術系との併願者3人)。美術系:多摩美術大学グラフィックデザイン学科69人。生産デザイン学科プロダクトデザイン7人。生産デザイン学科テキスタイルデザイン12人、環境デザイン学科4人、工芸学科2人。武蔵野美術大学デザイン情報学科34人、視覚伝達デザイン学科52人、工芸工業デザイン学科1人、空間演出デザイン学科22人、基礎デザイン学科7人、映像学科14人、建築学科1人、彫刻学科1人。東京芸術大学先端2人、デザイン科16人。東京造形大学視覚伝達専攻31人、環境計画5人、メディア3人、デザイン1類1人。女子美術大学デザイン科環境計画4人、デザイン科造形計画8人。女子美術短期大学造形科情報デザイン専攻1人。日本大学芸術学部デザイン学科コミュニケーションデザイン1人。筑波大学芸術専門学科2人、視覚伝達学科-3人。名古屋造形芸術短期大学視覚伝達デザイン学科2人。沖縄県立芸術大学デザイン学科-1人。工科系:千葉大学工学部2人。名古屋市立大学芸術工学部視覚情報デザイン科1人。神奈川大学工学部1人。東京工科大学メディア学部1人。京都工芸繊維大学1人。立命館大学1人

設問3.「予備校に通いましたか」通った89名。通わない2名。立川美術学院。KIKUNAアトリエ。新宿美術学院-。代々木ゼミナール造形学校。すいどーばた美術学院。武蔵野美術学院。横浜美術学院。港北美術学院。河合美術研究所。長谷川デザイン研究所。画塾。高崎美術学院。静岡中央美術研究所。湘南美術学院。福岡美術研究所。大森山王美術大学。アトリエアリス。札幌美術学。アトリエアン。A-1アートスクール。東芸美術研究所。YMCA。est美術研究所。ヨコハマアートスクール。ふなばし美術学院。オルト美術学院。御茶の水美術学院。埼玉美術学院。河合塾

設問4.「情報デザイン学科の入学前のイメージを教えてください」野菜作り。授業内容が不明確。デジタルな感じがする。気持ちが熱い。コンピュータを使って何ができるのかを学ぶところ。コンピュータグラフィックやメディアアートを主としている学科 。未知の世界。コンピュータばかりの科。もっと絵を描くのかと思った。情報処理にデザインを取り入れる科。入学案内を読んでもよく意味がわからなかった。平面的な分野のみならず立体デザインにも触れられ幅が広い学科。農作業、凧上げなど変な学科。情報化社会のニーズ対応するマルチメディアの総合デザインを学ぶ場。Macの技術が取得できる。これからの未来に必要なデザインを学べる場。映像制作ができる。1年間は絵を描く授業を履修するものだと思った。工学とデザインの混合

設問5.「現在、設備等を増設中ですが、情報デザイン学科にこれから望むことがあれば教えてください」個人用ロッカー。ポスター、広告系の授業を受けたい。国内外の方の特別講議を受けたい。学科内コンペ。ビデオを鑑賞する空間ビデオライブラリー。1人1台のコンピュータ。アゴラに机が欲しい。情報デザイン学科としての指導方向を明確にしてほしい。グラフィック系の授業を増やしてほしい。1日中使用できる教室がほしい。実技系授業の増加。手を使って絵を描きたい。前期後期でひとつの学年制のカリキュラムを組んでほしい。現在の授業がデザインと関連しているのかが疑問。冷暖房設備の充実。他学科との交流。制作時間をとってほしい。講議系授業が多すぎる。開始時間に授業をはじめてほしい。工学的な角度からもコンピュータを学びたい。設備がなくてはできない部分があるかもしれないけれど。カリキュラムを充実させてほしい。絵は描かないとどんどん腕が落ちる。選別する時にデッサンが必要で以後は必要がないとはどういうことだろうか。他学科よりも設備費を多く払っているわけだから、補欠入学者を減らせるぐらい。魅力ある学科にしてほしい。環境が人をつくるという言葉があるように、ただ自由時間があるだけでは。生徒の質は決して上がらない。

設問6.「卒業後のあなたの進路のイメージを教えてください」広告関係の仕事に就きたい。漫画家。玩具のデザイナ。イベント企画。教員。映画関係の仕事に就きたい。テレビ関係の仕事に就きたい。グラフィックデザイナ。イラストレータ。映像関係の仕事に就きたい。クレイアニメーション制作。絵本制作。アーティスト。インダストリアルデザイナ。映像作家。ファッションデザイナ。エディトリアルデザイナ。音楽関係の仕事に就きたい。プロダクトデザイナ。ソフトウエア関係の仕事。漫画家。玩具のデザイナ。イベント企画。教員。

 

1999.10.26 アンケート調査「情報デザイン学科 3年プロジェクト履修」有効96名(対象125名)複数回答

分野

関心がある

やや関心

合計

映像 54名 27名 81名
サウンド、音楽 37名 33名 70名
出版、コミュニケーション、メディア 31名 37名 68名
ウェブデザイン 15名 39名 54名
インターフェイス、インタラクション 19名 25名 44名
マネージメント、プランニング、社会調査、起業 7名 32名 39名
インターネット、サイバースペース 6名 30名 36名
プログラミング 10名 26名 36名
デザイン理論、デザイン史 8名 23名 31名
生命、身体、都市 7名 21名 28名
ハードウェア製作、センサー技術 3名 15名 18 名
ロボット、エージェント、人工知能 4名 12名 16名
芸術理論、芸術批評 3名 13名 16名
アーカイブ、データベース 2名 14名 16名
政治・経済・社会情勢 3名 11名 14名
教育、人間 3名 10名 13名
数学/科学、言語 2名 11名 13名

その他学生の方からあげられた分野:異分野交流 、ワークショップ 、写真、インスタレーション、空間デザイン、メディアアート、広告、イラストレーション、3D、アニメーション 、言葉を使った表現、エディトリアルデザイン

 

4)造形表現学部デザイン学科の進展

造形表現学部デザイン学科 では、1989年からコンピュータを使用したデザイン教育にどこよりも早く取り組んできました。その流れは、パーソナルコンピュータがデザインをするのに適した道具になっていく過程と平行しています。

当初の教育内容は、アプリケーションレベルでどう使っていくかが主でした。現在では、コミュニケーションデザインツールとして、いかに平面表現から抜け出た立体的な、3次元プラス時間軸を付加したデザイン表現をするかが中心になりつつあります。今まではこういったデザインをするのは困難、あるいはとても大きな代価が必要でした。それが、コンピュータの進化によって簡単に創作できる ようになり、その結果としてインターアクティブなコミュニケーションデザインが 容易にできるようになったのです。

もちろん、その道具を使いこなすためのデザイン要素としては、旧来のエディトリアルデザインスキルやグラフィックデザインスキル、レイアウト手法が必要になります。ユーザが成果物をいかにストレスなく使えるようにするかというユーザビリティも大切です。しかも、技術や表現手法に埋没するのではなく、想定相手を正しく設定し、メッセージを的確に伝えるための判断ができるという要素が重要になったのです。

またここ数年、いや数カ月単位のうねりでネットワークコミュニケーションが脚光を浴びています。もちろん「インターネット」が中心です。これはまだ世の中に生まれて間がありませんが、それこそアメーバのように繁殖しています。これからのコミュニケーションとは何なのかを十分に考えさせてくれるメディアでしょう。同時に、デザインとは本来何かという根本的な問いに対する答えをも求めるものです。産業革命以来、いや紙によるコミュニケーションが発明されて以来の新たなメディアの出現により、社会構造自体が組み変えられようとしています。

造形表現学部デザイン学科 は、この未開の領域でさえもビジュアライズできるコミュニケーションの形として捉え、1995年から積極的に取り組んできました。まず学内のコンピュータ同士をつなぐLANが構築され、続いて全世界との窓口となる、サーバ機が設置されて物理的な環境は整いました。次に必要なのは、そこに入る「内容」です。その内容こそが重要なのです。そこで何ができるのかを 学ぶために、世界中のインターネットの内容を閲覧することから始まりました。学生だけでなく、教員側でも学習する必要がありました。これは情報の学習でありますし、メディアの学習でもあります。また、自らのメッセージをどのようにビジュアライズするかの大胆な実験と実行でもあります。

まだまだこの電子メディアは創生期にあります。試行錯誤が繰り返される実験場の時代でしょう。しかし、だからこそ新しいデザインとコミュニケーションへのチャレンジとして意義ある取り組みができる「時」に遭遇しているといえるのです。

(猪俣裕一教授)