「夢・わくわく化学展2001」実験DVD
 時間と空間のリズム反応
 

空間振動するベローゾフ・ジャボチンスキー反応

試薬
@濃硫酸 17 ml
A臭素酸ナトリウム 12.5 g
Bマロン酸 2.5 g
C臭化ナトリウム 2.5 g
D1,10-フェナントロリン 1.35 g
E硫酸第一鉄 0.7 g
F蒸留水 500 ml

最初に次の溶液をあらかじめ調整する。
A溶液:300mlビーカーに蒸留水100mlをとり、臭素酸ナトリウム12.5 gを溶かす。
B溶液:300mlビーカーに蒸留水100mlをとり、臭化ナトリウム2.5 gを溶かす。
C溶液:300mlビーカーに蒸留水100mlをとり、マロン酸2.5 gを溶かす。
D溶液:300mlビーカーに蒸留水50mlをとり、濃硫酸17mlを加え、さらに蒸留水で薄めて100mlとする(3 mol/l硫酸溶液)。
E溶液:300mlビーカーに蒸留水100mlをとり、1,10-フェナントロリン1.35 gと硫酸第一鉄 0.7gを溶かす(フェロイン溶液)。

実験
@シャーレにA溶液2ml、B溶液1ml、C溶液2ml、D溶液1mlを順に加える。
A混合物は生成した臭素のため黄色になるので、黄色が完全に消えるまでシャーレをゆすって待つ。
B黄色が消えたらE溶液1mlを加える。溶液が青に変色しはじめるので、シャーレをゆすって液を混ぜ、溶液全体が青色になるようにして放置する。

現象
赤紫色となった溶液に一つまたは複数の青色の点が現れる。この点はゆっくりと成長し、しばらくすると青色の点の中心が赤?オレンジ色となり、青色の環ができる。青色の環は次第に大きくなり、内側の赤-オレンジ色の部分が成長し、もう一つの青色の点が中心に現れる。青色の環と赤-オレンジ色の環が交互に同心円状に成長する。同心円のパターンをガラス棒で壊したり、ストローで息を吹きかけてやると、その後にらせん状のパターンができ、成長していく。また、ろ紙を小さな三角形の形に切り取り、液面に浮かべると、三角形状のパターンが次々と発生する。このような非常に簡単な操作で面白い現象を見ることができるので、是非、自らいろいろな実験を試みて下さい。何か新しい発見をするかも知れませんよ。
液面が様々なパターンでごちゃごちゃしてきたら、シャーレをゆっくりと揺すって溶液を混合すると、全体が赤?オレンジ色になり、再度新しいパターンを作ることができます。ある時間経過すると、二酸化炭素の泡が出現して図形が見にくくなります。




蛍光を発しながら時間振動するベローゾフ・ジャボチンスキー反応

試薬
@濃硫酸 17 ml
A臭素酸カリウム 4.3 g
Bマロン酸 5.3 g
C臭化カリウム 0.1 g
D硝酸セリウム(IV)アンモニウム 0.13 g
Eトリス(2,2'-ビピリジル)ルテニウム二塩化物六水塩 0.0015 g
F蒸留水 500 ml

実験
@500ml三角フラスコに蒸留水を230ml入れ、撹拌子を入れてマグネチックスターラーで撹拌する。
Aこれに所定量の濃硫酸、マロン酸、臭化カリウム、臭素酸カリウム、トリス(2,2'-ビピリジル)ルテニウム二塩化物六水塩、硝酸セリウム(IV)アンモニウムを順次溶かす。一つの薬品が完全に溶けてから次を加えること。

現象
しばらく誘導期間があったのち、溶液の色はオレンジ色と緑色の間で振動する。部屋を暗くして、ブラックライトで紫外線を照射すると、オレンジ色の蛍光を発する状態と暗い状態の間で振動する。



光感受性ベローゾフ・ジャボチンスキー反応

実験
(A)で用意した反応溶液にエタノールを微量添加すると光感受性を有するようになります。添加量によって、光に対する応答性がかわります。ここでは、ミッキーマウスのマスクを通した光を、シャーレ中の反応溶液に照射することによって、光照射部分と未照射部分が交互に振動する様子を観察することができます。これは光照射された部分の反応が一時的に抑制され、未照射部分との振動反応のリズムにずれができるからです。




リズム反応 (ベルソフ-ジャボチンスキー反応)のメカニズム

 マロン酸と臭素酸カリウムを用いたセリウム(Ce)3価、4価の酸化還元反応は、AーCのようになっていると考えられています。

 反応AにおいてはBrO3-がBr-を酸化してBr2が生成します。この反応が進行するとBr-の濃度は減少し、BrO2-の濃度が増加します。すると、Aの反応の速度は減少し、BrO2-を使う反応Bの速度が上昇します。

 反応Bではセリウムが3価から4価に酸化され、溶液の色は赤から青へと変化します。この反応は触媒サイクルで、一旦反応が始まると反応速度は急激に上昇します。3価のセリウムイオンが減少し4価のセリウムイオンが増加すると、反応の速度は減少し、反応Cの速度が上昇します。

 反応Cではマロン酸が消費されながらセリウムが4価から3価に還元されて、溶液の色は青から赤へと変化し、同時にBr-が再生します。4価のセリウムイオンが減少して3価のセリウムイオンが増加し、かつBr-が再生されることにより、反応Cの速度は減少し、再びBの反応が支配的となります。

 以上の結果、マロン酸が消費されるまで、反応Bと反応Cが交互に繰り返され、溶液の色は赤と青の間を往復します。