クヨイ kuy-oy 動物の膀胱で作った水入れ袋 熊か鹿の膀胱 縦204 横110

「クヨイというのは「クイ=小便、オ=入る、ヒ=ところ(小便の入るところ)」がなまったもので、動物の膀胱のことです。昔、アイヌは鹿の膀胱を取ってそれをきれいに水洗いし、風船のようにふくらませて乾燥させたものを、氷のうや水筒がわりにして使いました

「鹿の膀胱をこのようにふくらませるには、よく水洗いした膀胱の中に水を入れて揉みます。揉んで柔らかくしては、水を足しながら少しずつふくらませていきます。だんだん大きくなり透きとおって見えるくらいになると中の水を捨てて、髄のある沼がやを口にさして空気を吹きこみます。いっぱいにふくらませて口をしばって干しておきます。皮の厚さはその用途によって加減します。水筒や氷のうのように水を入れて使うものは、あまりふくらませすぎると穴があく心配があるので、あまり薄くしませんが、イパプケニ(鹿笛)を作るときは、良い音色を出すためにできるだけ薄くします。鹿の膀胱は、水が一升五合(二・七リットル)くらい入るほど大きくふくらますことができますが、熊の膀胱は小さいのであまり使いません。ちなみに熊は冬眠する動物だけあり、腹の中の大部分は胃袋になっています。

イパプケニ i-papke-ni 鹿呼び笛 鹿猟/鹿の膀胱・木製,萱野茂 横115 縦80 厚22

貝沢留治が少しは使ったものではないだろうか。▼「山でこの笛を吹くときは、張った皮の部分を湿らせて、穴の両側を指で押さえて音を調節します。アイヌには鹿の鳴き声が「ワイョー、ワイョー」と聞こえるので、そのように吹きならすと、鹿は警戒しながら一歩一歩と近づいてきます。弓の射程距離まできたら、矢を一本だけ打ちこみます。毒矢なので必ず倒すことができます。ちなみに「ワイョー」と声を出すのは雌鹿、雄鹿の声は「ワイー」と聞こえるもの

横長の方が使いやすい。▼「縦八センチ、横十二センチ、厚さ三センチくらいの木を削って作ります。図のように吹き口から斜めに空気穴を開けるのですが、吹き口は直径約一センチ、空気の出口は約五ミリ(吹き口の約半分くらい)になるように、しだいに細くしながら削ります。この穴に透きとおるくらい薄くのばして乾燥させたクヨイ(鹿の膀胱)を適当な大きさに切り当てて、その両端をしなの木の皮で編んだ糸でしばります。吹くとそれが振動して、鹿の鳴き声によく似た音を出します