積む

物を積む行為は、無重力の宇宙空間では不可能であり、地球表面での行為である。
積む行為は、地球の表皮に棲む人間の願望、現実から自由空間への飛躍を象徴する。
積む形態は、スケーリングに規制される。巨大な構築物、ピラミッドの巨大への挑戦は、
空間を隙間なく埋め尽くす積み型と、空ろな空間を作り出す積み型がある。
大自然の堆積は、時代の情報を記録する。
積んだ構造体は、いつか崩れて無くなる恐怖を内在する。



chris booth


carl andre


[Andrew Senior]

ケルン、五輪の塔、さいの河原、
達磨落し、積み木
積む職人芸、石垣の技術、レンガ積構造
ムカルナス、ミナレット、ジグラ 
関根、須磨公園円筒と東京画廊粘土
三沢、逆さ積み
鏡もち、菓子盛り

  さいのかわら じぞうわさん    賽の河原地蔵和讚 「順礼歌」「御詠歌」

  きみょうちょうらい よのなかの  帰命頂礼世の中の     この世の中で

  さだめがたきは むじょうなり    定め難きは無常なり    安定させるのが難しいのは生命である

  おやにさきだつ ありさまに     親に先立つ有様に     親より先に死んでしまう事は

  しょじのあわれを とどめたり    諸事の哀を止めたり    多くの悲しみを一身に受けるのだ

  ひとつやふたつや みっつやよっつ  一つや二つや三つや四つ  1〜4歳等の

  とおよりうちの おさなごが     十よりうちの幼子が    10歳にも満たない幼い子供が

  ははのちぶさを はなれては     母の乳房を放れては    母親と死に別れたのち

  さいのかわらに あつまりて     賽の河原に集まりて    賽の河原に集まって

  ひるのさんじの あいだには     昼の三時の間には     日の出から日の入りまでの間に

  おおいしはこびて つかをつく    大石運びて塚をつく    大きな石を運んできて塚を築く

  よるのさんじの あいだには     夜の三時の間には     日の入りから日の出までの間に

  こいしをひろひて とうをつむ    小石を拾ひて塔を積む   小さな石を拾って塔を築く

  ひとえつんでは ちちのため     一重積んでは父の為    1つ積み上げては父親の為と

  ふたえつんでは ははのため     二重積んでは母の為    2つ積み上げては母親の為と

  みえつんでは にしをむき      三重積んでは西を向き   3つ積み上げては西を向いて

  しきみほどなる てをあわせ     樒程なる掌を合せ     樒のような小さな手を合わせて

  きょうりのきょうだい われためと  郷里の兄弟我ためと    生まれ故郷の兄弟の為と

  あらいたはしや おさなごは     あら痛はしや幼子は    可哀想に幼い子供は

  なきなきいしを はこぶなり     泣々石を運ぶなり     泣きながら石を運ぶのである

  てあしはいしに すれただれ     手足は石に擦れだだれ   手足は石で擦られただれてしまい

  ゆびよりいづる ちのしずく     指より出づる血の滴    指から血を流し

  からだをあけに そめなして     体を朱に染めなして    体を血まみれにしながら

  ちちうえこひし ははこいしと    父上こひし母恋しと    父さんに会いたい母さんに会いたいと

  ただちちははの ことばかり     ただ父母の事ばかり    一途に父母の事だけを

  いうてはそのまま うちふして    云うては其儘打伏して   言ってそのまま倒れこんで

  さもくるしげに なげくなり     さも苦しげに歎くなり   とても苦しそうに悲しみ嘆くのである

  あらおそろしや ごくそつが     あら怖しや獄卒が     なんとも恐ろしい地獄の鬼が

  かがみてるひの まなこにて     鏡照日のまなこにて    鏡か太陽のようなギラギラした眼で

  おさなきものを にらみつけ     幼き者を睨みつけ     子供達を睨みつけて

  なんじらがつむ あららぎは    汝らがつむ塔は      お前達が積む塔は

  ゆがみがちにて みぐるしし     歪みがちにて見苦しし   歪んでいてみっともない

  こうてはこうとくに なりがたし   斯ては功徳になり難し   これではご利益も無いだろう

  そうそうこれを つみなおし     疾々是を積直し      さっさとこれを積み直して

  じょうぶつねがへと しかりつつ   成仏願へと呵りつつ    成仏を願えと叱りつつ

  てつのぼうごけを ふりあげて    鉄の榜苔を振揚げて    鉄で出来た粗末な棒を振り上げて

  とうをのこらず うちちらす     塔を残らず打散らす    塔を全て壊しまわる

  あらいたはしや おさなごは     あら痛しや幼な子は    可哀想に幼い子供は

  またうちふして なきさけび     又打伏して泣叫び     また倒れこんで泣き叫ぶ

  かしゃくにすきぞ なかりける    呵責に隙ぞ無かりける   咎めに間違いは無いのである

  つみはわれひと あるなれど     罪は我人あるなれど    罪は誰にでもあるのだが

  ことにこどもの つみとがは     ことに子供の罪科は    特に子供の犯す罪は

  ははのたいない とつきのうち    母の胎内十月のうち    母のお腹にいる10ヶ月の間

  くつうさまざま うまれいで     苦痛さまざま生まれ出で  様々な苦痛を母に与え

  さんねんごねん しちねんを    三年五年七年を      3年5年7年の

  わずかいちごに さきだって     纔か一期に先立つて    わずかな期間で先に死に

  ふぼになげきを かくること     父母に歎きをかくる事   父や母を悲しませた事は

  だいいちおもき つみぞかし     第一重き罪ぞかし     一番重い罪なのだ

  ははのちぶさに とりついて     母の乳房に取りついて   母の胸にしがみついて

  ちちのいでざる そのときは     乳の出でざる其の時は   お乳が出ない時は

  せまりてむねを うちたたく     せまりて胸を打叩く    出るように胸をきつく叩く

  はははこれを しのべども      母はこれを忍べども    母はこれにじっと耐えるけれども

  などてむくいの なかるべき     などて報の無かるべき   それでどうしてお乳がでてこようか

  むねをたたく そのおとは      胸を叩くその音は     胸を叩くその音は

  ならくのそこに なりひびく     奈落の底に鳴響く     地獄の底で鳴り響く

  しゅらのつづみと きこゆるなり   修羅の鼓と聞ゆるなり   阿修羅の打ち鳴らす鼓の音に聞こえるのだ

  ちちのなみだは ひのあめと     父の涙は火の雨と     父の涙は火の雨に

  なりてそのみに ふりかかり     なりて其身に降懸り    なってその体に降り懸かり

  ははのなみだは こおりとなりて   母の涙は氷となりて    母の涙は氷になって

  そのみをとづる なげきこそ     其身を閉づる歎きこそ   その体を閉ざす嘆きこそ

  こゆえのやみの かしゃくなり    子故の闇の呵責なり    子供こその煩悩の責め苦である

  かかるざいかの あるゆえに     斯る罪科のある故に    このような罪がある為に

  さいのかわらに まよいきて     賽の河原に迷来て     賽の河原に成仏できずに来て

  ながきくげんを うくるとよ     長き苦患を受くるとよ   長い苦しみを受けるのだ

  かわらのなかに ながれあり     河原の中に流れあり    河原には流れがあって

  しゃばにてなげく ちちははの    娑婆にて嘆く父母の    現世で嘆いている父母の

  いちねんとどきて かげうつれば   一念とどきて影写れば   思いが届いてその影が映れば

  なうなつかしの ちちははや     なう懐しの父母や     懐かしい父さん母さん

  うえをすくひて たびたまへと    飢を救ひてたび給へと   飢えを救ってくださいと

  ちぶさをしたふて はいよれば    乳房を慕ふて這寄れば   お乳が恋しくて這い寄ると

  かげはたちまち きえうせて     影は忽ち消え失せて    影は瞬く間に消えてなくなり

  みずはほのおと もえあがり     水は炎と燃えあがり    水は炎となって燃えあがり

  そのみをこがして たおれつつ    其身を焦して倒れつつ   体を焦して倒れながら

  たえいることは かずしらず     絶入る事は数知らず    死んでしまうことは数え切れない

  なかにもかしこき こどもは     中にも賢き子供は     その中でも賢い子供は

  いろよきはなを ておりきて     色能き花を手折きて    色鮮やかな花を折り取って

  じぞうぼさつに たてまつり     地蔵菩薩に奉り      地蔵菩薩にささげ

  ざんじかしゃくを まぬがれんと   暫時呵責を免れんと    すこしの間責め苦を逃れようと

  さきみだれたる たいぼくに     咲き乱れたる大木に    花がたくさん咲いている大きな木に

  のぼるとすれど なさけなや     登るとすれど情なや    登ろうとするが可哀想に

  おさなきものの ことなれば     幼き者のことなれば    幼い子供であるから

  ふみながしては かれこれの     踏み流しては彼此の    足を踏み外しては辺りの

  おどろのとげに みをさされ     荊棘の棘に身を刺され   いばらの棘に体を刺され

  すべてせんけつに そまりつつ    凡て鮮血に染まりつつ   全身血まみれになりながら

  ようやくはなを ておりきて     漸く花を手折り来て    ようやく花を折り取って

  ほとけのまえに たてまつる     仏の前に奉る       仏の前にささげるのである

  なかにはいでる こどもらは     中に這出る子供等は    その中でも這って歩く子供達は

  えなをあたまに かぶりつつ     胞衣を頭に被りつつ    胞衣を頭に被ったままで

  はなおることも かなはねば     花折ることも叶はねば   花を折る事も出来ないので

  かわらにすてたる かればなを    河原に捨てたる枯花を   河原に捨てられている枯れた花を

  くちにくはへて いたはしや     口にくはへて痛はしや   口に咥える姿は不憫である

  ほとけのまえに はいゆきて     仏の前に這行きて     仏の前に這って行き

  じぞうぼさつに たてまつり     地蔵菩薩に奉り      地蔵菩薩にささげ

  しゃくじょうほうえに とりついて  錫杖法衣に取付いて    錫杖や法衣にすがり付いて

  たすけたまへと ねがふなり     助け給へと願ふなり    助けて下さいと請い求めるのである

  しょうじるてんを はなれなば    生死流転を離れなば    生死硫転を逃れたとしても

  ろくしゅりんねの くるしみは    六趣輪回の苦みは     六道輪廻の苦しみは

  ただこれのみに かぎらねど     唯是のみに限らねど    これだけとは限らない

  ちょうやのねむり ふかければ    長夜の眠り深ければ    煩悩の闇が深ければ

  ゆめのおどろく こともなし     夢の驚くこともなし    迷いから覚める事も無いのである

  ただねがはくば じぞうそん    唯ねがはくば地蔵尊    ただ願うのは地蔵菩薩様

  まよひをみちびき たまへかし    迷ひを導き給へかし    心の迷いからお救い下さい

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