積む 物を積む行為は、無重力の宇宙空間では不可能であり、地球表面での行為である。
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[Andrew Senior] |
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ケルン、五輪の塔、さいの河原、 |
さいのかわら じぞうわさん 賽の河原地蔵和讚 「順礼歌」「御詠歌」
きみょうちょうらい よのなかの 帰命頂礼世の中の この世の中で
さだめがたきは むじょうなり 定め難きは無常なり 安定させるのが難しいのは生命である
おやにさきだつ ありさまに 親に先立つ有様に 親より先に死んでしまう事は
しょじのあわれを とどめたり 諸事の哀を止めたり 多くの悲しみを一身に受けるのだ
ひとつやふたつや みっつやよっつ 一つや二つや三つや四つ 1〜4歳等の
とおよりうちの おさなごが 十よりうちの幼子が 10歳にも満たない幼い子供が
ははのちぶさを はなれては 母の乳房を放れては 母親と死に別れたのち
さいのかわらに あつまりて 賽の河原に集まりて 賽の河原に集まって
ひるのさんじの あいだには 昼の三時の間には 日の出から日の入りまでの間に
おおいしはこびて つかをつく 大石運びて塚をつく 大きな石を運んできて塚を築く
よるのさんじの あいだには 夜の三時の間には 日の入りから日の出までの間に
こいしをひろひて とうをつむ 小石を拾ひて塔を積む 小さな石を拾って塔を築く
ひとえつんでは ちちのため 一重積んでは父の為 1つ積み上げては父親の為と
ふたえつんでは ははのため 二重積んでは母の為 2つ積み上げては母親の為と
みえつんでは にしをむき 三重積んでは西を向き 3つ積み上げては西を向いて
しきみほどなる てをあわせ 樒程なる掌を合せ 樒のような小さな手を合わせて
きょうりのきょうだい われためと 郷里の兄弟我ためと 生まれ故郷の兄弟の為と
あらいたはしや おさなごは あら痛はしや幼子は 可哀想に幼い子供は
なきなきいしを はこぶなり 泣々石を運ぶなり 泣きながら石を運ぶのである
てあしはいしに すれただれ 手足は石に擦れだだれ 手足は石で擦られただれてしまい
ゆびよりいづる ちのしずく 指より出づる血の滴 指から血を流し
からだをあけに そめなして 体を朱に染めなして 体を血まみれにしながら
ちちうえこひし ははこいしと 父上こひし母恋しと 父さんに会いたい母さんに会いたいと
ただちちははの ことばかり ただ父母の事ばかり 一途に父母の事だけを
いうてはそのまま うちふして 云うては其儘打伏して 言ってそのまま倒れこんで
さもくるしげに なげくなり さも苦しげに歎くなり とても苦しそうに悲しみ嘆くのである
あらおそろしや ごくそつが あら怖しや獄卒が なんとも恐ろしい地獄の鬼が
かがみてるひの まなこにて 鏡照日のまなこにて 鏡か太陽のようなギラギラした眼で
おさなきものを にらみつけ 幼き者を睨みつけ 子供達を睨みつけて
なんじらがつむ あららぎは 汝らがつむ塔は お前達が積む塔は
ゆがみがちにて みぐるしし 歪みがちにて見苦しし 歪んでいてみっともない
こうてはこうとくに なりがたし 斯ては功徳になり難し これではご利益も無いだろう
そうそうこれを つみなおし 疾々是を積直し さっさとこれを積み直して
じょうぶつねがへと しかりつつ 成仏願へと呵りつつ 成仏を願えと叱りつつ
てつのぼうごけを ふりあげて 鉄の榜苔を振揚げて 鉄で出来た粗末な棒を振り上げて
とうをのこらず うちちらす 塔を残らず打散らす 塔を全て壊しまわる
あらいたはしや おさなごは あら痛しや幼な子は 可哀想に幼い子供は
またうちふして なきさけび 又打伏して泣叫び また倒れこんで泣き叫ぶ
かしゃくにすきぞ なかりける 呵責に隙ぞ無かりける 咎めに間違いは無いのである
つみはわれひと あるなれど 罪は我人あるなれど 罪は誰にでもあるのだが
ことにこどもの つみとがは ことに子供の罪科は 特に子供の犯す罪は
ははのたいない とつきのうち 母の胎内十月のうち 母のお腹にいる10ヶ月の間
くつうさまざま うまれいで 苦痛さまざま生まれ出で 様々な苦痛を母に与え
さんねんごねん しちねんを 三年五年七年を 3年5年7年の
わずかいちごに さきだって 纔か一期に先立つて わずかな期間で先に死に
ふぼになげきを かくること 父母に歎きをかくる事 父や母を悲しませた事は
だいいちおもき つみぞかし 第一重き罪ぞかし 一番重い罪なのだ
ははのちぶさに とりついて 母の乳房に取りついて 母の胸にしがみついて
ちちのいでざる そのときは 乳の出でざる其の時は お乳が出ない時は
せまりてむねを うちたたく せまりて胸を打叩く 出るように胸をきつく叩く
はははこれを しのべども 母はこれを忍べども 母はこれにじっと耐えるけれども
などてむくいの なかるべき などて報の無かるべき それでどうしてお乳がでてこようか
むねをたたく そのおとは 胸を叩くその音は 胸を叩くその音は
ならくのそこに なりひびく 奈落の底に鳴響く 地獄の底で鳴り響く
しゅらのつづみと きこゆるなり 修羅の鼓と聞ゆるなり 阿修羅の打ち鳴らす鼓の音に聞こえるのだ
ちちのなみだは ひのあめと 父の涙は火の雨と 父の涙は火の雨に
なりてそのみに ふりかかり なりて其身に降懸り なってその体に降り懸かり
ははのなみだは こおりとなりて 母の涙は氷となりて 母の涙は氷になって
そのみをとづる なげきこそ 其身を閉づる歎きこそ その体を閉ざす嘆きこそ
こゆえのやみの かしゃくなり 子故の闇の呵責なり 子供こその煩悩の責め苦である
かかるざいかの あるゆえに 斯る罪科のある故に このような罪がある為に
さいのかわらに まよいきて 賽の河原に迷来て 賽の河原に成仏できずに来て
ながきくげんを うくるとよ 長き苦患を受くるとよ 長い苦しみを受けるのだ
かわらのなかに ながれあり 河原の中に流れあり 河原には流れがあって
しゃばにてなげく ちちははの 娑婆にて嘆く父母の 現世で嘆いている父母の
いちねんとどきて かげうつれば 一念とどきて影写れば 思いが届いてその影が映れば
なうなつかしの ちちははや なう懐しの父母や 懐かしい父さん母さん
うえをすくひて たびたまへと 飢を救ひてたび給へと 飢えを救ってくださいと
ちぶさをしたふて はいよれば 乳房を慕ふて這寄れば お乳が恋しくて這い寄ると
かげはたちまち きえうせて 影は忽ち消え失せて 影は瞬く間に消えてなくなり
みずはほのおと もえあがり 水は炎と燃えあがり 水は炎となって燃えあがり
そのみをこがして たおれつつ 其身を焦して倒れつつ 体を焦して倒れながら
たえいることは かずしらず 絶入る事は数知らず 死んでしまうことは数え切れない
なかにもかしこき こどもは 中にも賢き子供は その中でも賢い子供は
いろよきはなを ておりきて 色能き花を手折きて 色鮮やかな花を折り取って
じぞうぼさつに たてまつり 地蔵菩薩に奉り 地蔵菩薩にささげ
ざんじかしゃくを まぬがれんと 暫時呵責を免れんと すこしの間責め苦を逃れようと
さきみだれたる たいぼくに 咲き乱れたる大木に 花がたくさん咲いている大きな木に
のぼるとすれど なさけなや 登るとすれど情なや 登ろうとするが可哀想に
おさなきものの ことなれば 幼き者のことなれば 幼い子供であるから
ふみながしては かれこれの 踏み流しては彼此の 足を踏み外しては辺りの
おどろのとげに みをさされ 荊棘の棘に身を刺され いばらの棘に体を刺され
すべてせんけつに そまりつつ 凡て鮮血に染まりつつ 全身血まみれになりながら
ようやくはなを ておりきて 漸く花を手折り来て ようやく花を折り取って
ほとけのまえに たてまつる 仏の前に奉る 仏の前にささげるのである
なかにはいでる こどもらは 中に這出る子供等は その中でも這って歩く子供達は
えなをあたまに かぶりつつ 胞衣を頭に被りつつ 胞衣を頭に被ったままで
はなおることも かなはねば 花折ることも叶はねば 花を折る事も出来ないので
かわらにすてたる かればなを 河原に捨てたる枯花を 河原に捨てられている枯れた花を
くちにくはへて いたはしや 口にくはへて痛はしや 口に咥える姿は不憫である
ほとけのまえに はいゆきて 仏の前に這行きて 仏の前に這って行き
じぞうぼさつに たてまつり 地蔵菩薩に奉り 地蔵菩薩にささげ
しゃくじょうほうえに とりついて 錫杖法衣に取付いて 錫杖や法衣にすがり付いて
たすけたまへと ねがふなり 助け給へと願ふなり 助けて下さいと請い求めるのである
しょうじるてんを はなれなば 生死流転を離れなば 生死硫転を逃れたとしても
ろくしゅりんねの くるしみは 六趣輪回の苦みは 六道輪廻の苦しみは
ただこれのみに かぎらねど 唯是のみに限らねど これだけとは限らない
ちょうやのねむり ふかければ 長夜の眠り深ければ 煩悩の闇が深ければ
ゆめのおどろく こともなし 夢の驚くこともなし 迷いから覚める事も無いのである
ただねがはくば じぞうそん 唯ねがはくば地蔵尊 ただ願うのは地蔵菩薩様
まよひをみちびき たまへかし 迷ひを導き給へかし 心の迷いからお救い下さい