光栄3DCG(三次元コンピュータ・グラフィックス)講座

 

  3DCG講座は(株)コーエーの協賛により1997年度から開催されている産学共同の教育プロジェクトである。
  この講座の特徴は、作品を制作する講座でありながら、学科の枠を越えて学生がだれでも参加できることである。デザイン系の学科ではコンピューターを使用して作品を制作する授業はみられるが、絵画、彫刻等のファインアート系の学科ではコンピューターの授業はあまりおこなわれていない。この講座は、優れた造形力を持ち、デジタル環境を利用した創造に興味を持つ学生が幅広くコンピューターに触れるきっかけづくりの役割も果たしている。現在ではインターネットやゲームに代表されるデジタルコンテンツが増加しており、それに伴ってコンテンツクリエーターの需要も増加している。つい最近まで、それらのクリエーターにはコンピューターソフトを操るオペレーターとしての能力が求められいた。しかし、コンテンツの増加により、ソフトウェア商品間の差異や付加価値が求められるようになり、オペレーションの能力よりも、創造力や表現能力を重視する傾向が強まってきている。美術大学で創造することや表現することを学ぶ学生がコンピューターの操作を学習すれば、優れたコンテンツクリエーターを育成することにつながると私達は考えている。協賛企業であるコーエーの着眼点も正にそこにあり、特に3DCGの分野におて創造力やデッサン力のあるデジタルクリエーターの教育を目標にしている。

  3DCGの学習では、基礎のオペレーションさえ理解してしまえば、制作物の質的な向上は制作者の芸術的な造形力に寄るところが大きい。参加している学生はもともと造形力に優れた学生であり、3DCGの基礎的な学習を終えたあたりからの作品の質は俄然向上する。例えば人体などを3DCGで制作する時には、デッサン力が大きく貢献するようだ。
  この講座に参加した学生は、授業で制作した作品を就職活動時のポートフォリオ作品として利用し、また、講座で学んだ技術を卒業制作に活用している。
  3DCG講座は2つのコースに分かれている。3DCG1の単位取得者が3DCG2を履修する。

1) 3DCG講座1のカリキュラム

初めてコンピューターに触れる学生でも参加できる講座である。この講座では基礎オペレーションを学習し、3DCGで静止画を制作する。平成11年度には制作した静止画をTシャツにプリントした作品をオープンキャンパスで発表した。映画、CM、ゲーム、工業デザイン等で使用されるソフトを利用して高度な3DCG作品を制作する第一歩として、基本的な3DCGソフトの操作を習得し、CG作品を制作する。作品は学内で展示を行う。
ステップ1:オリエンテーション。3DCGのソフトを体験
ステップ2:基本操作。基本操作を学習
ステップ3:エスキース。ある程度の操作が可能になった段階で、3DCGで何を制作するかを検討する。
ステップ4:モデリング。エスキースに従って3DCGで形を作っていく。この期間が最も長い。
ステップ5:シェーディング。モデリングした形に色、質感、光等を設定する。
ステップ6:アイロンプリント。完成した3DCG作品をアイロンプリント用紙に印刷してTシャツに張り付ける。
ステップ7:展示。オープンキャンパスにて展示。

2) 3DCG講座2のカリキュラム

この講座は「3DCG講座1」を履修した学生の為の上級コースで、アニメーションの制作をグループで学習ぶ。基本操作3DCG1の単位を取得した基本的な知識や技術をもつ学生が対象。アニメーション制作の技術の習得を目指し動画を制作する。オペレーションのみに止まらずコンテ作成や演出方法についてもあわせて学習する。
ステップ1:オリエンテーション。3DCG1の復習と概要説明。
ステップ2:シナリオ制作。参加者各自が自由にアニメーションのストーリーを考える。
ステップ3:チーム分け。提出されたシナリオから数点を選出してチーム分けを行う。
ステップ4:コンテ制作。チーム内でシナリオを再検討してコンテを制作。
ステップ5:モデリング。アニメーションに使用するモデルを分業して制作。
ステップ6:アニメーション設定。カットごとに担当を決めてアニメーションを設定。
ステップ7:編集。映像と音の編集作業を経て完成。

3) クラス編成
全学科、全学年を対象とした授業である為に、1週間(月火木金曜)8クラスで行なわれ、1・4年生は午前9:00-11:20、2・3年生は午後14:30-16:50のクラスを履修することになる。クラス1−12は3DCG講座1。クラスA−Dは3DCG講座2。前期 4月12日-7月17日。後期 9月20日-12月18日。

4)受講者数の推移

参加学生は各自が所属する学科の課題と平行して本講座の制作を行う為にかなりハードなスケジュールとなる。途中でブランクができると受講の継続が難しくなる為に、講座を最後まで受ける学生の割合は低くなっているが、99年度から単位を取得できるようになった為に修了者数が増加している。
1997年度の受講者数 147名。終了者数 52名。
1998年度の受講者数 102名。終了者数 41名。
1999年度の受講者数 208名。終了者数 105名。
3年間の受講者数 457名。終了者数 198名。