シャーマン
アーチスト
デザイナー
新タイプ
  環境共有化 個人所有化 複製量産化 情報遍在化
音響表現 鼓舞 演奏 音楽 メディア
綜合芸術
言語表現 碑文 写本 印刷
平面表現 壁画 絵画 写真
立体表現 彫刻 工芸 製品
空間表現 都市 住宅 建築
身体表現 祝祭 劇場 映画
  贈与 交換 貨幣 e-マネー
  合戦 競技 戦争 ゲーム

 

 音声・言語・平面・空間・身体による様々な表現芸術は、シャーマンが演ずる共感体験から始まって、アーチストによる個人所有の作品、デザイナーによる複製量産の製品を経て、現代においてはサーバーからネットに発信される遍在的な情報へと様変わりし、表現媒体の境界がシームレスに溶解しはじめている。 絵画の額縁や、美術館というフレームの中で成立してきた芸術は、今、全世界を覆うサイバースペースの中で新たな自由を獲得しつつある。 禁断と未知のサイバースペースに踏み込み、人間の知性を開放するメディア芸術の展開は、芸術文化の有り様に大きな変化をもたらし、 美的感性の対象を拡大する。

 人間は肉体の外界に、物質文明を蓄積してきたが、その負の側面が明らかとなるにつれて、地球環境を脅かす存在となりつつある。 物質文明による地球環境の破壊が反省され、サイバースペースの影響力にも批判的な検討が加えられている現在、人間の精神文化を代表する芸術文化が再認識される時代にある。 学問や芸術などの非物質な世界への探究が、物質界をリードしなくては、都市文明も、ただの自然破壊にしかすぎない。 芸術は、現実世界と非現実世界をつなげ、アトムとビットのあいだにインタラクションを起こしながら、世界を循環させる。

 芸術創造のプロセスは、多様に分化した人間活動の諸相を有機的に統合し、知性・理性・感性と肉体による表現を綜合する全人間的な営みである。芸術は人間どうしが豊かな関係性を復活させる役割を負っている。芸術の豊かな表現力が発揮され、見る側の感性に受け入れられるならば、芸術作品のメッセージは説得力を発揮して、現実社会を突き動かすこととなる。美的共感によってこそ、コミュニケーションが成立し、共同体社会が維持される。

 メディア芸術の歴史は浅く、欧米・近東・アジアともに、同じスタートラインを切ったところである。メディア芸術のの国際交流は、民族の言語や習慣、地域の垣根を越えて、人と人の感性が触れあう豊かなコミュニケーションを実現し、広く世界と交信することが出来る。軍事力や経済力などのハードパワーではなく、芸術文化のソフトパワーによってこそ、憎悪の連鎖や貧困の格差などの問題に対処できる。社会が急激に変化していく中で、豊かな共同体社会を維持していくために、メディア芸術はかつてなく重要なものとなっている。

 多摩美術大学は1935年の創立以来70年間にわたり、美術とデザインの最先端で創作的研究を実践し、量的に膨張してきたが、今日、質への課題を突きつけられている。 多摩美術大学が育ててきた豊潤な実績を基として、多彩なメディアを自在に駆使し、未来の想像力を実現してゆく新しいタイプのアーチストを育てる必要がある。