新しい多摩美術大学上野毛キャンパスと学部の姿

加納豊美ム試案/私案

2004/7/11現状認識

1、多摩美術大学上野毛キャンパス

■大学は社会的な役割として研究・教育があり、更に美術大学としては、教育研究機関にとどまらない芸術文化の創造・発信の能力を持つものであると考えます。
■ここ上野毛キャンパスは、都心に近くかつ文化の薫り高い世田谷に位置し、創造と発信のセンターとしてもこの上ない立地条件を持ち合わせています。
多摩美術大学の歴史は、優れた人材を送りだすことで、すでに社会的認知を獲得していることも、今後の活動の力強いバックボーンであることは間違いありません。
■生涯学習センターの取り組みによるユニークな講座の展開や、その定着など
上野毛キャンパスは大きな可能性を持っていると思います。
■開設から16年目を迎えて、新たな、多摩美上野毛キャンパスにしか出来ない活動を学部として計画し実施していく時期なのだと思います。

2、映像演劇学科

■映像演劇学科は、カリキュラム作成や、共同共同研究の企画において、教育・研究と創造・発信を車の両輪として強く意識しています。
■「表現」活動は、創造とその公開迄を含みます。カリキュラムにおいては、「Field Trial(表現活動)」の授業群において年間200本をこえる企画制作が行われ、全学年合わせて年間6回の公開発表を行っています。斬新な表現が生まれる場です。この現場に居合わせることはとても刺激的です。
 数年前からはこの活動を通じて、映像演劇学科の姿をキャッチし、受験の動機とする受験生が増えてきました。
■共同研究企画では、映像演劇学科研究室がプロデュースセンターとして、学科及び在学生、卒業生の垣根を超えた座組を作り活動の場を創出しています。その中で世田谷文化芸術振興財団(世田谷パブリックシアター)との関係も生まれてきました。
■18歳人口減少の中、今年度の入試で、受験率が昨年度の89、8%に踏み止まれたことは、表現活動の場を創出して、学生個々の活動にフォーカスをそそいできたことが外側にしみ出してきた結果だと思います。
■いきいきと表現に向かう活発な学生の多さは映像演劇学科教員の大きな喜びです。しかしながら、意欲に答えるべき空間や時間が充分で無いこと、(もちろんあればすむことではありません)卒業後の活動に対しての継続支援の方法など課題はたくさんあります。
■さて、創造の仕事は継続性が重要です。この大学で「表現活動」の魅力にとりつかれ、それを仕事にしようと決断する学生は大学の宝です。生まれ立ての宝が社会の中で輝く為には活動の継続が必要です。しかしながら、創造や表現の仕事は単純に金銭に置き換わりません。ですから継続が難しい。
だからこそ「支援者」としての大学研究室のありかたを見つけたいと思います。
■受験生の獲得も課題です。自己推薦入試を導入していただくことになりましたが、入試のシステムの工夫だけでは、受験生は増えません。学生自身が主体的に挑戦し輝ける魅力あるカリキュラムを創出し、その中身を外側に露出させていくことが重要であると考えます。広報戦略が必要です。広報については、教務を抱えながらの日常において充分な活動とはいえないと感じています。また、単学科の活動と法人企画広報部との連係を深める必要性を痛感しています。

将来に向けての意欲
 以上の様なことを考えたり、感じたりする中で、映像演劇学科のより活発で魅力的な姿を模索してきましたので、今回の高橋学長のプランに対して大いに興味を持ちました。

1、 学部の綜合共通化

■表現を手段よってカテゴライズすることは、創造の本質においてあまり意味を成さないことと思います。ですから「綜合共通化」の方針に興味をひかれました。
■従来の「言葉」、たとえば「演劇」「映画」といったことばではしっくりしない、いいあてられていないような表現がたくさん生まれています。また一方、たとえば観客と出会い方に生の双方向な時間性がある表現ならなんでも「演劇」と言い切ることで、「演劇」の意味合いを広げ深めることができると考えます。ですから、「綜合共通化」の考え方に創造の世界の本質を感じるのです。
■わたしは、「綜合共通化」をイメージするとき、現在の映像演劇学科が大きく貢献できるのではと感じます。「演劇」も「映像」もそれこそ多元的なメディアを内包しているからです。
■美術大学が「演劇」「映像」の領域もフォーカスする意味合いは深いと思います。取り分け「演劇」の領域が多摩美にあることが、多摩美の特徴の一つになるよう育ちたい。
■表現者がそのまなざしを表現として具現化する時には、多様な方法を駆使するわけですから、「綜合表現」の中身と関係性を作表したのが、学部の構成なのだと受け止めました。また、その専門的な分野が各々のプロジェクトとしてあって、プロジェクトが様々に組み合わさる可能性を示唆されたものだと受け止めました。
■表現者には、世界や社会、歴史にたいする独自まなざしが不可欠だと思います。まなざしを見つける、その必要性を感受する、それを刺激する綜合研究コースと創作表現コースのリンクが面白いと思います。

2、 キャンパス大改造

■パブリックゾーンを設ける考え方が魅力的です。大学の社会に対する開かれた姿勢のあらわれであると思います。地域の文化芸術センターとしての役割です。これは、地域に対する貢献になるだけでなく、学生や、卒業生の表現活動を露出させていく力に繋がると思います。
■徒歩圏である二子玉川エリアは、すでにおしゃれで文化的で自然環境もよいといったイメージが定着しています。ニコタマとのアクセスも、西武が公園通りを仕掛けたみたいにできたらと思います。

3、 劇団タマビ

■芸術監督を有し、創造・発信の拠点として活動したい。
現在、文化庁の劇場助成はその対象条件に「芸術監督の配置」があります。
建物には助成を行なわないということです。劇団活動の展開に劇場は不可欠ですが、もちろん単なる空間としてだけでなく、中身を創造することが重要なのです。
■表現の喜びや達成感は、商品購入や消費だけの生活では決して満たされることがない人間本来の本能に根ざすのもだと思います。
劇団の活動は、大学の枠を超えて、地域の人たちや世界の演劇人とのクロスポイントにできると思います。
■美術大学が劇団を持つことは話題性にもことかきません。劇場を有し、公演活動を日常化していけば、大学そのものの広報にも繋がります。
<活動内容>
A/上演活動の企画制作
 *年間5本の主催公演
   @地域参加型企画 (大人版)
   A地域参加型企画 (子供版) 
   B卒業生支援企画1
   C卒業生支援企画2
   Dプロデュース企画
 *演劇祭の企画 
B/提携公演の実施
B/研究と広報  
 *研究機関紙のシリーズ化
<施設としては>
稽古場
作業場(工作スタジオ(大道具、小道具)/衣裳スタジオ/
倉庫(大道具、衣裳))等
事務室/資料室
劇場*中規模劇場500席、小規模劇場100席
<運営組織>
■芸術監督を中心とした制作部によるプロデュース組織として立ち上げたい。
 
ひとまずのまとめ

●自分自身の興味の範疇に限られていることを承知しつつ、新しい展開を見つけたいと願っています。
●教育・研究と創造・発信を両輪にした展開ができる組織つくりに興味がありますし、様々なタレント(才能)をかかえる大学ですから、組織の横断による
斬新な運営も可能なのではないでしょうか?