芸術を生きる―四つの楽しみ

芸術学科は、現代の芸術・文化について、そのフィールドを広く見渡しながら研究する場所です。 また、本学がかかえる実技系の諸学科のエッセンスを、互いに自由に、 また総合的に結びつけるセンター的な役割をも発揮しています。

そこに入学される皆さんは、まずいろいろな芸術の創造の現場に立ち会い、 すぐれたアーティストたちと共に語り合い、美術館や劇場やコンサートに出かけることから学生生活をはじめます。 つまり、なによりも「芸術を生きること」の楽しさを、学びの出発点に置いているのです。 このことは、学内にさまざまなアトリエやギャラリーが点在し、 学外での芸術鑑賞のネットワークにも恵まれている、本学の学生ならではの特権でしょう。

そうした鑑賞の経験をさらに深めるためには、芸術の悠久の歴史をたどりなおすことや、 各自が興味をもったジャンルの基礎的な理論について研究することも必要です。 そこで芸術学科には、美術、映像、デザイン、建築、文学、音楽、演劇、舞踊など、 芸術の各領域に広く深く浸透していく講義やゼミの科目が用意されています。

こうして習得した理論は、現実の中に生かそうとして、はじめて輝きをもつものでしょう。 そのためにもう一方には、きわめて実践的なカリキュラムが豊富に設けられています。 学生みずからが、展覧会や映像上映、舞台上演、出版などを企画する、というものです。 これらは、創造の現場から発してきた芸術の楽しさを、 現代社会に向けて積極的に伝えることを学ぶものだといえるでしょう。

本学科の出身者たちは、現在、じつに多彩な分野での活動を展開しています。 各地の美術館の学芸員、自治体の文化行政担当者、ジャーナリズムにおける記者や編集者やディレクター、 生涯学習の教育者、企業のメセナ活動の担当者、広告代理店のプロデューサー、 あるいは芸術の研究者や批評家などです。 また、大学院進学や海外留学によって、より専門的な芸術の仕事をめざす人も少なくありません。

鑑賞、研究、企画、創造―芸術のその四つの楽しみの連鎖を自分のものとし、 その楽しみの連鎖を多くの人々に手渡していける人材を育成すること、 それが本学科の使命といってもよいと考えています。

教育課程

芸術学科は、本学唯一の芸術に関する総合的研究を行う学科です。美術大学の環境を最大限に生かし、知識の蓄積や理論の展開に加え、創造の現場に触れる経験や、芸術を社会へ送り出す企画の実践などを重視するカリキュラムを組んでいます。

鑑賞

美術館・博物館・劇場などへ出かけ、芸術のイベントを積極的に鑑賞します。また、それを手がけた学芸員やスタッフ、出品しているアーティストなどから話を聞き、リアルタイムで行われる「創造の現場」に立ち会うことで、第一線の方法や思考を学びます。

研究

鑑賞の経験をより深めるために、芸術の歴史や理論について研究します。美術にとどまらず、映像・デザイン・建築・文学・音楽・演劇・舞踊などの諸領域を学びます。学生は広く深く研究を進めることで、自分にとって大切な、新たなテーマを見出すことができるでしょう。

企画

芸術の魅力を社会に向けて伝えるための場所を整える、それが企画です。あらゆる芸術活動には「送り手」と「受け手」がいますが、両者をつなぐ「つなぎ手」の存在は重要です。展覧会の企画・運営をはじめ、映像や舞台や出版物の企画・実現、文化的なイベントの開催など、多様なプログラムが組まれ、実践的な経験から学びます。

創造

素材・技術・表現について、アーティストたちが経験に裏打ちされた講義を行い、今日の芸術の全体像をそこから導き出します。一方、学生自身が種々の実技を経験する講座も開設されていて、創造する喜びと意味を体感します。