第051回国会 文教委員会 第14号
昭和四十一年三月三十日(水曜日)午前十時三十一分開議
出席委員
委員長 八田貞義君
理事 上村千一郎君 理事 小澤佐重喜君
理事 谷川和穗君 理事 南好雄君
理事 八木徹雄君 理事 川崎寛治君
理事 二宮武夫君 理事 長谷川正三君
大石八治君 熊谷義雄君
床次徳二君 中村庸一郎君 落合寛茂君
高橋重信君 松原喜之次君 鈴木一君
河野密君
(1936年衆議院議員総選挙社会大衆党 以降当選12回)
(戦後、日本社会党結成に参加 1952年衆議院議員総選挙で社会党右派から政界復帰 1955年10月左右統一の日本社会党結成に参加)
出席国務大臣
文部大臣 中村梅吉君
出席政府委員
文部事務官(大臣官房長) 安嶋彌君
文部事務官(管理局長) 天城勲君
文部事務官(文化財保護委員会事務局長) 村山松雄君
委員外の出席者
文部事務官 波多江明君
専門員 田中彰君
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本日の会議に付した案件
国立劇場法案(内閣提出第五七号)
文教行政の基本施策に関する件(多摩美術大学に関する問題)
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○八田委員長 次に、文教行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の通告がありますのでこれを許します。河野密君。
○河野(密)委員 私は文教の基本的な問題、特に最近頻発しております私学の問題を中心にして、少しくお尋ねしたいと思っております。
最近私学の紛争事件が相次いで起こっておりますが、これについてどうお考えになっておるか。早稲田大学の騒動を頂点として、私学の紛争事件は、あるいは学生運動の形において、あるいは学内対立の形において至るところに火を吹いておるような状態であります。これはたいへん遺憾なことだと思うのでありますが、文部当局はこれをどう認識して、どうお考えになっておるか、この点をまず伺いたいと思います。
○中村(梅)国務大臣 お話しのとおり最近学園騒動というものがあちらこちらに起こりまして、私どももその所管として非常に苦慮をいたしておるわけでございます。これにはいろいろな要素や原因があると思われますので、一がいには言えませんが、主として問題の起こっておるのは学生会館とかあるいは寮とかいうものができますと、学生の間にそういう寮なり会館の管理は学生の自治にまかせるべきである、こういう雰囲気が一部にあるようです。しかし管理者の立場から言えば、国立学校でいえば国費でやり、あるいは私立学校にしましても、その私立大学を支持しておる人たちの寄付金とかあるいは学校の経費の一部で建設をするわけでありますし、学校というものは学問研究の府であると同時に教育の府でありますから、いかに学生の自治とはいっても、学生に一切をまかせるわけにはいかない、やはり管理の中心責任者は学校当局にあるべきである、こういう考え方との衝突が事の起こりになっておるものが多いようであります。まあ早稲田大学の場合は授業料値上げという特別の事情、それから学生会館、こういうものが混合いたしまして起こったわけでありますが、いずれにしましても学園は学問研究の府であると同時に教育の場所でありますから、できるだけ管理体制を充実して、そうしてまた学生にも誤解や不満のないようにもっと努力をして、学園紛争の起こらないように、これは関係者全体が十分に配慮をしていくべきものであろうと思うのであります。
現在文部省としましてはいろいろ制度上の問題もありますし、あるいは慣習上の問題等もありまして、あまり官僚がそういうものに深入りをしないようにしたほうがよかろうというたてまえをとっておりますが、この問題の解決については私学振興との関係もありましょうし、なかなか原因や要素が単純でありませんから、今後の対処策につきましては私学振興の問題とあわせて十分に研究をし、善処をしてまいりたいと思っております。
○河野(密)委員 残念ながらただいまの御答弁は、私は必ずしも及第点を上げることはできないと思うのです。そういう考え方が私は私学の問題を非常に混迷させておると思いますが、私学の今日の紛争というものは、私学の経営の中に何か不合理なものがあるのじゃないか、文部当局の私学監督について、文部行政のあり方に対して、何らかの欠陥があるのではないか、こういうことが感ぜられるわけであります。第一、現在早稲田大学が授業料値上げの問題であれだけの紛争を続けておりますが、おそらく文部当局をはじめとして、われわれもそうでありますが、授業料の値上げが妥当であるのか妥当でないのか、判定すべき何らの材料がないわけです。学校当局が授業料を上げなければやっていけないということを言うから、なるほどそうだろうかと思うだけであって、文部当局もおそらく御存じないと思う。何によって授業料の値上げが妥当であるか妥当でないかという判断を下すのか、判断を下すべき材料が一つもないじゃありませんか。そういう状態に学校を置いておいて、一方においては私学振興の名において低利資金を学校の要求に応じて貸し与えていく、こういうことではたして私学の運営がよろしいのかどうか、私はこの問題について文部当局はどう考えておるか、これに回答を与えない限りは回答にならぬと思いますが、いかがですか。
○中村(梅)国務大臣 確かに御指摘のとおりであると思います。現在の制度として、私立学校を許可いたしまするときには許可基準というものがあり、また大学については大学設置審議会というものがあって、それぞれの審議会に付議して条件の整備はいたしますが、認可後になりますと、授業料についても経理についても、監督をするとかあるいは許可をするとかいう制度になっておりませんので、授業料を上げなければならないと当局者は言いますが、その上げなければならない理由がどこにあるのか、あるいは理由があるとしても、そのよってきたる原因はどこにあるのか、それは施設を過度に膨張させたのか、あるいは借金をし過ぎたのか、あるいは人員がどうなっておるのかというようなことにつきましては、現在の制度として関与する余地のないような制度でございます。したがいまして、われわれとしましても、いま河野さんから御指摘ありましたように、ほんとうに授業料を上げねばならない要素がどういう理由であるのか、あるいはそうならなければならない経過はどうなっておるのかというような実態の把握というものがわれわれ自身もないわけでありまして、こういう点は今日ほど学園がマンモス化してきておりまする時代においてはどうすべきか、根本的に考え直してみる時期が来ておるように私も思うのであります。
それともう一つは、私立学校というものが、学校法人の制度がありますけれども、この学校法人の制度が生徒三百人しかいない学校の学校法人も、生徒何万人にもなったマンモス学校、大学等の学校法人も同じ制度であるわけであります。ここらにも問題があって、規模が一定規模以上になった場合には、その学校法人のあり方というものなどもこの辺でもう一ぺん再検討されて、規模の小さいものと非常に大きいものとは組織、運営の上においても差があってしかるべきではないかという感じを私自身持っておりますが、現状としてはそういう制度になっておりますので、これらについても、現在私学振興方策調査会で私学の振興方策について御検討をいただいておりますが、ただ援助すればよろしいというものじゃありませんので、援助するからにはどういう姿であるべきものかというようなことまでもあわせて御研究をいただきまして、われわれとしても、この段階で新しい知識を集め、あるいは知識をしぼって考え直す時期が来ておるのじゃないか、こう思っておるわけでございます。
○河野(密)委員 どういうふうにすべきかというお知恵を拝借してということの前に、文部当局としてどうすべきかという考え方が当然あるべきだと思うのでありますが、これに対してはどうなんですか。どういう方向でもってこの問題を扱おうとしておるのでしょうか。
○天城政府委員 ただいま大臣から申し上げましたように、現在の私立大学の運営のあり方につきまして、私学法人と私立大学と両方の関係がございますけれども、現在の私立学校法を中心にいたします考え方は、戦前の私学に対する監督規制に対する一つのリアクションということもあったと思いますけれども、私学の自主性ということを中心に制定されておりまして、特に私立学校法人につきましては、理事者の構成その他についてきわめて公共性を持たせるという考え方を中心にいたしまして、国からの監督規定が原則としてない形になっております。これは私学の良識あるいは自由にまつことによって私学がりっぱに成長できるのだ、こういう前提に立っておるものですから、現在の法制においては私学の経営そのものにわれわれが関与する立場でないわけでございます。
ただ、御指摘のように、私学にいわゆる学園紛争がいろいろございますが、その中で一般の大学の問題のほかに、この私学の法人のあり方として見た場合に、経理上の問題あるいは理事者の間の紛争等いろいろございます。これらにつきまして、私たち現在権限をもってこれを調停するとか、あるいは規制をするということはございませんが、特に私学の財政的な問題が今日非常に大きな問題になってまいりまして、民間からの有志の寄付を集める面も非常に多くなってまいっておりますし、また、一面いろいろな角度からの国庫助成の声も高くなってきておりますので、こういうことを考えてまいりますと、やはり適正な公のサポートが出てまいります以上は、それにこたえるだけの私学の法人の健全で、合理的運営が、同時に何らかの形で担保されていかなければならないのではないかということは考えております。ただ、具体的にどうするかということにつきましては、せっかく調査会で御審議いただいておりますので、私たちも最終的な結論をいま申し上げる段階でございませんけれども、いま申し上げたような点については、われわれも改善すべき一つの問題点だろうということは感じております。
○河野(密)委員 私は、いまの御答弁で満足はいたしませすが、今日の大学がどういう運営をされておるかという具体的な例証を上げてひとつお尋ねをしたいと思うのですが、現在多摩美術大学においていろいろな紛争が起こっておりますが、当局は御存じでございますか。
○天城政府委員 御指摘の多摩美術大学の問題につきましては、昭和四十年の六月、美術大学の卒業生四名の方が文部省においでになりまして、大学の現在の理事者の選任のいきさつ、あるいはその学校経営のやり方、あるいは特に会計経理のあり方等についていろいろ問題があるという実情の陳情がございました。したがいまして、そういう状況で問題があるということは学校の卒業生からのお話で伺ったわけでございます。それで卒業生からのお話でございますので、学校側の御意見も聞かなければならぬということで、数日して学校の理事者側からもいろいろ事情は伺っておりますが、この問題は、現在民事訴訟とそれから刑事訴訟として事件が係争中になっているわけでございます。
○河野(密)委員 いまお話しのとおりに学内紛争の問題が民事係争事件と刑事事件と、いわゆる告訴事件に発展しているわけでありますが、私の知り得たところを申し上げて、文部省当局のお調べになったところとひとつ照らし合わせてお答えが願いたいと思うのですが、私の調べたところによりますと、現在の多摩美術大学の理事長の村田理事長が成規の手続によらずして理事長に就任し、理事長の選任書を偽造して、不当にその地位を得た、かように言われておるのでありますが、この点はどうでありますか。前理事長の杉浦非水、本名杉浦朝武、それから理事の逸見梅栄の両氏から、現理事長村田晴彦氏を文書偽造、業務横領の容疑をもって告訴しているということでありますが、この点はいかがでありましょうか。
○天城政府委員 昨年の大学の卒業生からのお話によりますと、そのお話が一つ出ております。現在理事長が文書偽造をして理事長に就任をしたのだ、こういうお話でございます。これについて、学校側のお話を聞きますと、理事長の交代については、他の理事と相談の上杉浦理事長の了解を得て交代したのだ、それで変更届を行なったものであるというふうに言っておられるわけでございまして、このことが現在の村田理事長の業務執行停止、解職の申請となって東京地裁で係争中でございますので、そういう係争事件があることは存じております。
○河野(密)委員 大学の理事長というものは、どんなに大きな学校の理事長でも、何らか法人の資格を必要としないのですか。
○天城政府委員 法令上は、特に理事長の資格の規定はございません。
○河野(密)委員 そこで大臣に伺いますが、学校法人が、いま私学振興とかあるいは国家の助成とかいわれているが、膨大な十万の学徒を要する学校であっても、理事長は何らの資格を要しない、監督官庁からはこの理事長が適当であるか適当でないかという批判も加えることができない、これでよろしいか、どうですか。
○中村(梅)国務大臣 その辺のところはいろいろ問題があると思います。現在の制度では、学校法人に、寄付行為、いわゆる定款がございまして、その寄付行為によって、その学校ではどういう組織で評議員なら評議員をつくる、その評議員が理事を選挙する、あるいは理事の中から互選をして理事長をつくる、こういうような寄付行為上の定めがありまして、寄付行為をつくるときに、文部省としては、この形の寄付行為で是か否かという判断をする権能がありますだけで、寄付行為を、妥当な寄付行為の規定であるということに認定をして許可いたしますと、それから先は、一切学校法人の自主的な運営にまかされておりますので、文部省としては、おそらくどういう人が理事長になったから、それはよろしくないとか、あるとかいうようなことは言えない仕組みになっておる。これは要するに私立学校制度というものが、できるだけ自主的に運営され、自治を認めた上で、良識のある運営がされるもの、こういう信頼の上に制度ができておると思うのであります。
これがこのままで一体永遠にいいのかどうか、こういう点につきましては、いま河野委員が疑問を持たれるように、私どもも疑問がありますが、こういう制度ができた起こりは、いやしくも学校をやる者は良識があり、そして自主的に、円満な自治が行なわれるもの、こういう信頼のもとに行なわれておると思うのでありまして、いまの制度では、どうもこの理事長はよろしくないからというわけにはまいらないと思うのです。もっとも何か事務当局でないとわかりませんが、刑事上の処罰を受けた前科があるとかなんとかいう場合には、欠格条項があるのかもしれませんが、とにかく普通人であれば、その人のよしあしというものを、監督官庁である文部省がかれこれいうすべではないということになっておるのが現状であります。
○河野(密)委員 事務当局から何か補足することがありますか。
○天城政府委員 いま大臣の御説明したとおりで、特に欠格条項というようなものはございませんで、法律の規定に従った、いわば自己組識の権限を学校法人に認めておりますので、この法律の範囲内で自由に選ばれるということだけでございます。
○河野(密)委員 私はこういうところに法の盲点があると思います。なお先に進んであらためてまた伺います。
いま申し上げました告訴状の中には、経理の問題について数項目があげてあります。詳しいことは申し上げませんが、一つは昭和三十七年三月、四月の間に、新入生三百二十三名から四千九百九十七万円の寄付を受けたにかかわらず、文部省には三千四百三十六万円の寄付と届け出て、差額の千五百六十一万円の使途は不明である。昭和三十八年三、四月ごろに、同じく新入生の父兄三百十八名から四千七百八十五万円の寄付を受けながら、文部省には三千五百万円と報告して、差額千二百八十五万円は行くえがわからない。三十九年の三月、四月ごろ、新入生の父兄三百十一名から五千十万円の寄付を受領しながら、三千四百万円と文部省に届け出て、千六百十万円は行くえがわからない、こういうことが書いてあるのであります。それに対してこの説明を聞きますと、その説明は、文部省に対しては定員を少なく報告してあるから、定員外に生徒を入れておるので、それをそのまま文部省に届けることはできないから、これは文部省に少なく報告してある、こういう説明であります。
これで一つお伺いを申し上げたいのは、文部省は、定員を少なく報告しようと多くしようと、それらの問題については何ら関知しない、ただ報告を受領しつばなしである。こう見てよろしいのでありますか。
○天城政府委員 いまのいろいろなお話の中で、学校設置から拡充の過程によりまして、いろいろな段階があるのでございますけれども、全体の考え方といたしまして、学校法人の経理の問題につきましては、国に対する報告義務は、現在私立学校法では負っておらないのでございますから、学校経理の内容につきまして、私たちが直接調査をするということは法律上はできないわけでございます。
ただ、学校法人につきましては、従前の民法の財団法人と違いまして、監事の指揮下にいたしておりまして、監事は、理事または学校法人の職員でない者から選任して、監事が学校の経理を監査するという自主監査の規定が私立学校法にございまして、それを前提に健全な運営をするという形になっております。国が直接学校経理を監督したり調査するということになっておらないものでございますから、私たちいろいうお話を伺いましても、実際に数字にわたってこの学校の経理がどうであるかということをお答えすることが現在のところできないのでございます。
それから定員の問題でございますけれども、定員につきましては、御指摘のように、これは設置認可のときに、学校の基準として学校の定員を認可いたします。またその後学校の増設その他の段階においても認可いたしますが、ただ学生数をふやすというのは組織上の変更ではなく、学生数をふやす場合には届け出で済んでおるわけでございます。これも実際に学校が学生をこれだけふやすということをきめられるわけでございまして、これは特に認可という形をとっておりませんので、それ以上の、実態を監査したり、調査をしたりする権限もないシステムになっております。
○河野(密)委員 いまの御答弁ははなはだ私は理解に苦しむものでありますが、私立学校法の第六条に「所轄庁は、私立学校に対して、教育の調査、統計その他に関し必要な報告書の提出を求めることができる。」こう書いてありますが、これは空文ですか。
○天城政府委員 御指摘のとおり、私立学校法六条の規定はございます。これは教育上の調査、統計、たとえば学校基本調査とか、もろもろの学校教育関係の調査をいたしております。
○河野(密)委員 定員は教育の問題と違うんですか。
○天城政府委員 これは調査はできます。御回答をいただくことはできるのでございますが、先ほど申した法令上の立場で申しますと、許認可という関係では、定員は認可事項ではございません。
○河野(密)委員 認可事項でなくとも教育の問題について報告を求めることができるのなら、定員に対して調査報告を求めることはできるじゃないですか。
○天城政府委員 これは毎年指定統計でも、学生の数というのは学校に調査を依頼して調査をいたして集めております。
○河野(密)委員 父兄から寄付金を徴収することについてはあとからお尋ねしますが、父兄から寄付金を徴収したその寄付金と文部省に対する報告の額と非常な差がある。それを追及した場合において、これは定員を文部省には少なく報告しているから、寄付金をよけい出すことはできないから定員の額だけにとどめてあるのだ、そういう言いわけなんです。それに対して定員を少なくするか多くするかということは学校の恣意、学校の考え一つでできるのかできないのか、文部当局はそれらの問題については何らの調査もしないのか、それを伺っているのです。
○天城政府委員 定員は届け出事項でございますから、現在の自分の学校の定員は何名ということは届け出されているわけでございます。
それから実数につきましてはこの六条を根拠にし、あるいは指定統計上毎年学校の学生の実員というものは調べてあります。ただその定員がどうであるかということをつき詰めて、それ以上調べる権根は私たちにはございません。
それから寄付金が文部省の報告云々ということがございましたけれども、ちょっと私その辺が十分理解しかねるのでございますけれども、寄付金を集めた場合に文部省に報告しなければならないという規定も現在ございませんので、いろんな大学がいろんな寄付を集められますけれども、私どものほうで、一々それを承知するようなすべは持っておらないのでございます。
○河野(密)委員 そうするとこれは、私立学校の実態について寄付を幾らとろうと、定員が幾ら、生徒の実数が幾らになろうと文部省は関知するところじゃない、こういうことなんですか。
○天城政府委員 いろいろお話がございますけれども、現在の私立学校法がとにかく私学の公共性と自主性を尊重するという前提でもって、これは法律立法のいきさつがございますけれども、極力国の、あるいは監督庁の介入を排除するという形でできておりまして、いわば私学を全面的に信頼してやるという制度がたてまえでございますものですから、疑いを持っていろんな点を調査するという構想になっておりません。ただ日本の教育上非常に重要な使命を持っております私学でございますから、私たちも個々の私学のあり方についてとやかく申すわけじゃございませんけれども、ただいまのお話のように学生の数、これらにつきましては、少なくとも実員がどうであるかということは最大の関心事でございまして、別の指定統計に基づきます学校基本調査でもって学生数は調べております。
○河野(密)委員 実員、実数をお調べになった結果はどうなんですか。
○天城政府委員 個々の学校については覚えておりませんが、おおざっぱに申しまして、われわれに届け出されております実数は大体、正確には覚えておりませんけれども、定員を五割ほどオーバーしていると思います。
○河野(密)委員 この問題が新聞に発表されましたときに、文部省の事務官が新聞に意見を述べて、これは私学にありがちのことである、事情を調べて発表するという意見を述べておりますが、私、要求しておりましたが、その調べに行った事務官の方からひとつ御説明を願いたいと思います。
○天城政府委員 実は、そういうお話でございましたので、その当時のことを調べたのでございますけれども、当時実地監査云々ということは、文部省の担当の事務官も言っておりませんし、また事実法律上会計経理について立ち入りして検査するという権限もございませんし、それから当時そういうことを言われたということが新聞に報ぜられたということでございますけれども、そういう事実はないわけでございます。
○河野(密)委員 私は波多江事務官の出席を要求しておりまして、この前ちょうど時間の都合で私が質問できなかったときに来ておられたということを聞いておりますが、波多江事務官にひとつ答弁させてください。
○天城政府委員 波多江事務官が来ておりますから……。
○波多江説明員 ただいま河野委員からの御質問でございますが、昭和四十年の六月二日に多摩美術の卒業生の四名の方が私のところにおいでになりまして、先ほど河野委員から御説明がございました趣旨のことの陳情がございました。私は、その陳情を承りまして、これは学校当局のほうからもその事情をお尋ねしなければ真偽のほどはわかりませんから、学校のほうの責任者に来ていただいて事情を聞いてみますと答えたわけでございまして、実地について監査をしますということを申し上げたことはございません。四、五日たちまして、学校のほうへ連絡をとりまして、村田理事長に来ていただきました。そうして公文書偽造云々の点につきましては、杉浦理事長が当時高齢でございまして、すでに病床にあるために、他の理事と相談の上、理事長に対しては理事長の養女の方を通じて理事長交代の件の了解をお話していただいて、三十六年の二月二十五日に交代をしたということでございまして、その間四年の間何らその間のことについては異論もなく今日に至っておるし、確かに杉浦理事長個人に対して理事長交代の御意思はいただけなかったけれども、他の理事の方も、それは了解の上で村田理事長に交代をしたという事情の御説明がるるございました。
それから学校の会計の横領の問題につきましても、これは学校側の御説明によりますと、卒業生の四人の方が申し出られたことと理事長の御説明になったこととは相反しておりまして、学校の経理の着服といったような事情は何らないので、学校としては経理は明確にし、そうして学校のほうで会計その他の帳簿はきれいに整理をいたしております。四人の方が言ってくる背後にはいろいろな事情があるのだということで、その背後関係のことにつきましても若干の説明がございました。その後八月の十七日に先ほどの卒業生のうち三人の方がまた見えまして、学校当局のほうの意見を聞かれるということになっていたがどのようになっておりますかということをお尋ねになりましたので、村田理事長から事情を聞きましたことを先ほどの卒業生の万に本省において御説明をいたしました。そうすると、それはうそです。私どもはいろいろ証拠を持っております。それでは私どもは文部省はそれ以上のことを立ち入って御調査できなければ裁判に訴えて背任横領、公文書偽造で争います、こう言ってお帰りになって、その後今日まで何ら連絡はございません。
以上のような事情でございます。
○河野(密)委員 あなたは新聞に、こういうことは私学には珍しくないことだ、こういうふうに発表になったと新聞の記事に載っておるのですが、そういう私学には珍しくないこういうことというのは、どういうことなんですか。
○波多江説明員 私学には珍しくないことだと言った記憶はございませんが、そのようなことを申し出られましたことで、あるいはそういう内部事情が学校の中で紛争にされるような問題は幾らも――幾らもではありませんが、間々聞きますので、そういう趣旨で、内部で意見の対立がある学校は幾らか聞いておりますので、そういう趣旨であるいは申し上げたかと思います。
○河野(密)委員 私が承りたいのはその点でなくて、その金の食い違いは、説明として内部に対しては、これは文部省に定員を定員どおりに報告してあるから、定員をオーバーした額を報告するわけにいかないから、実質は定員より生徒の数はオーバーしておる、はるかにふえておるのだけれども、それを報告するわけにはいかないから、少なく出してあるのです、こういう説明をしておるが、あなたに対しては全然そういうことは報告してないとすれば、そうすれば、あなたは一体そういう事実についてどう判定されたのか、何を調査されたのか承りたいのです。
○波多江説明員 四人の方がお見えになりましたときには、その寄付金について何千万の横領があるというふうな具体的な数字は……。
○河野(密)委員 横領とかなんとか言っているのではないのですよ。食い違いがあるから、その食い違いは文部省にはこういうふうに報告しておる、こう言っておるが、文部省はそれをどう考えておるのだ、これを聞いているのです。横領か横領でないかなどということは、裁判所が判定すべきことであります。
○波多江説明員 当時四名の卒業生の方が見えましたときには、文部省のほうへ報告してある書類に間違いがあるといった具体的な指摘ではございませんで、村田理事長は非常に専断であって、理事会を開かないでいろいろなことを独断的にやる、そういう専断的な行為によって、職員の人も何名かの人が首を切られておりますとかいったようなことでございまして、文部省に提出されているものの中にうそがあるから調べてほしいといった陳情ではございませんでした。
○河野(密)委員 あとでも一ぺん尋ねますが、それでは私は主として文部当局にお尋ねしますが、そういう最中に三十八年十一月に多摩美術大学は大学院の設置認可申請書を文部省に出しております。これは許可になっております。美術大学の大学院設置ということは、私は相当の検討を要する問題だと思うが、その最中においてこれを許可しております。この申請書の中に虚偽の記載があったらどうしますか。文部省はどういう責任をおとりになりますか。
○天城政府委員 一般に設置認可、新しい学部ないしは大学院の設置が行なわれます場合には、設置基準に基づきました認可申請書が出てまいりまして、大学設置審議会で、いまの大学院のケースでございますが、書類審査をいたしますし、また学校に参りまして、この申請の事情と実態とがどう違っているかあるいは合っているかという実地審査をいたしまして、その結果に基づきましてこの設置審議会が可否を文部大臣に答申する手続を踏んでおります。したがいまして、当時のことで私もいまよくわかりませんけれども、同じプロセスでもって設置審議会からの答申に基づいて文部大臣が認可したことと思うのでございます。
それに関連しまして虚偽の申請ということがあったらどうなるかということでございますけれども、一応いままでのケースで見ましても、申請書と実態が食い違っておったりあるいは申請書に記載されておる事項がまだ実現されていないというような事態が間々あるわけでございますけれども、そういう問題につきましては、すべて現地調査の過程を経て学校側に訂正をさせまして、実態に即したまた実現可能な状態を前提として可否を決定するような手続をとっております。それ以上については、現在の法令上処罰規定とかあるいはこれを強制する規定はございませんので、そのプロセスをそのとおりに、かつ私学側を信頼して大学院の設置を許可するというたてまえでございます。
○河野(密)委員 それでは具体的に。この多摩美術大学院設置を許可するについて、そういう実地に調査した経過をひとつ説明してください。
○天城政府委員 たいへん恐縮でございますけれども、当時私も所管しておりませんし、それから手元に資料がございませんので、ただいまそのいきさつについて御説明する用意がございません。
〔委員長退席、八木(徹)委員長代理着席〕
○二宮委員 関連して。大学院設置について、これは私も同様の問題を持っておりますので金曜日に質問いたしますが、文部省の中に私立大学審議会という文部大臣が任命をする機関がある。その私立大学審議会の皆さん方が、こういう私立学校法第五条に基づく大学院設置に対する基準、そのほかの審議をされるわけなんです。そこでいま管理局長は、これに対して文部省は何ら責任もなければ調査の権限もないというようなことを言われますけれども、文部大臣が任命をされたところの大学設置審議会の諸君がこの大学院の設置についての審議をするのですから、当然私は任命をした文部大臣に責任があると思う。そういう逃げ方をして、全く野放し的な私立大学の教育の実施というようなことを所轄庁として見のがしておるということは私は許せぬと思う。なお先ほど、学校法人の理事長そのほかについては、これも私のほうでは何ら規制することはないと言いますけれども、学校法人の認可については、これも申請書に基づいて文部大臣が認可をしておる、その認可の項目の中には、私立学校法人の役員があるいは会計、資産、目的そのほかについて、すべてを全部内容として出して、その内容を検討の上で大臣が認可しておるじゃないですか。認可事項であり、諮問機関をつくっており、そういうものがきちんとある以上、この学校法人がどういう役員を選ぶかというようなことについては、私のほうではそういうものに対して何ら規制がございませんとかあるいは私のほうではこれに対しては関与いたしませんとか、そういうような言い方で私立大学というものは――私はいい意味において私立大学を援助するという方向については、これは了解するのですけれども、いま言ったような野放し的な、法文で明確に調査権がないとかあるいはいろいろなものが明瞭に書いてないとか言うが、そういう中間機関を通して大臣が責任を持っておりながら、認可をし、任命をしておりながら、そういう人々に全部の責任をおっかぶせておいて、文部省は知らぬ顔をしておるという、そういう態度は許せぬと思う。大臣も当然責任があると思う。したがって所轄の管理局長にも、それは責任があるはずです。いま河野委員から質問のあったことに対していまのような管理局長の答弁であれば、これは日本国の大学なのかどうかわからぬじゃないですか。あなたが当時おられなかったということは承知しておるけれども、おるおらぬの問題じゃない。自分の所管をしておるところの管理局の仕事あるいは文部省の所轄庁としての仕事、そういう仕事の内容というものを御存じなければ管理局長というものはやめなさい。意味ないじゃないですか。大臣も管理局長もその点については直接法文にないから云々というようなことではなくて、いまいったような中間機関をもって審査し、あるいは認可をする。その認可のときには綿密に資産そのほかについては項目として出させるようになっておるだから、それらについて少しも責任のないような言いのがれをするということは、私は許せる問題ではないと思うのです。河野委員がせっかくまじめに真剣に質問していることに対して、一体どこをとらえてあなたは逃げるのです。そのような明文がなければ、私のほうには責任がないというのですか。もう少し私立学校法の内容を読んで、第五条の委託をされたところの権限については、その内容について私立大学審議会にまかしておる。その大学の審議会の委員は大臣が任命をしておる、明瞭にあるじゃありませんか。学校法人についても認可制があるじゃないですか。認可についてはこうこうというものが目的の中に明瞭に書いてあるじゃないですか。責任がないとは言わせない。
○天城政府委員 御指摘のとおり、設置認可のときに、先ほどもそのことは申しておりますが、設置基準がございまして、設置基準に基づいて綿密に認可申請を検討いたしまして、同時に現場についても審査をいたします。この設置審議会は御指摘のとおり法令上の機関でございまして、文部大臣が任命する機関でございますし、最終は文部大臣が認可いたしますので、この点について私たち何も否定をいたしておりませんし、おことばでございますけれども、逃げたような意味を申し上げたことは毛頭ございません。
そのときに先ほどのお話で、認可があったときに、この理事はこれは不適当だからだめだというような、そういう規定はございませんということを申しておるわけでありまして、また設置認可をいたしますときには、大学にいたしますれば四年間の学年進行でできてまいりますので、これは従来からいろいろいきさつがございますけれども、本来ならば四年間の全体の構成が現実にできてみなければ大学として必要な施設や経費というものはわからないわけでございますけれども、それでは非常に過重な負担になるということで学年進行制度を認めておりますものですから、最初の認可のときには、第一学年の発足に必要な施設とか教員数というものを現実に押える。なお、学年進行についての四年間の計画、これは教員の充実も施設の整備も全部計画としてとりまして、それに必要な経費はどういうところから入ってくるかということを全部出して検討いたします。その財源の取得について非常に疑問があれば、これは確実に入るか、あるいは財産があるというならばその財産はどういう財産だということまで全部審査をいたすわけでございまして、その点では、先ほど来おことばでございますけれども、決して何も責任がないとか権限がないということを申し上げているわけではございません。そうやって一応設置基準に合ったものについて認可をいたしました以上は、あとは私学の良識によって、その計画に従って実施していただいて、その後の問題については一々干渉しないという現在の私学に対する法のたてまえであるということを申し上げているわけでございまして、私たち法律上規定されております権限につきましては、十全にやっているつもりでございます。
ただ、全体といたしまして、たとえば先ほど御指摘のございました六条の調査の問題にいたしましても、必要な場合には調査いたします。しかし、調査に協力していただかなければそれではどうやるんだという次の法律上の疑問もございます。調査が強行できるかというような問題も出てくるのでございますけれども、現在の法律はそういうたてまえになっておらないのでありまして、できるだけ御協力を得ながら必要な報告もいただきたい、調査にも応じていただきたいという形でこの私学行政をやるような仕組みになっているものですから、いわゆる行政上の権限として最後にどこまで押えができるかという点で申しますと、私たち私学の協力、私学の良識的な運営と、それからわれわれの許されております行政上の任務については御協力を得てやっていただかなければできないんだということを申し上げているわけでございます。
○河野(密)委員 いま責任がないようにおっしゃいますから、私は具体的なことを聞きますが、多摩美術大学の大学院設置の請書はここにございます。もう一つここにその多摩美術大学からの報告書がある。この報告書と申請書とは、課なり局が違うか私は存じませんが、同時に出されたのであります。並行して文部省に提出されたものであります。この大学院設置申請書に記載していることと報告書に記載していることは全然違っておる。一体文部省はこういうことに対してどういう態度をおとりになりますか。これは申請書は申請書として調べるので、報告書は報告書でかってに出したんだ。課が違えばそんなものは横の連絡はないんだ、こういう大学行政なんですか。その具体的な事実は、大学院の先生――大学院の審査をするときには教授その他の顔ぶれをずっと並べなければなりません。それで、あなた方のほうは十分御調査になるわけでありますが、それに対して俸給が載っております。現実に報告書に載っておる俸給表と、それから申請書に載っておる俸給表とは全然別個で、現実の報告書に載っておるものは半分であります。これは同時に文部省に出されたもので、これだけの食い違いがあって、文部省はこれに対して何も調査もしなければ、めくら判で許可するとかしないとかいうことをなさっておるのですが、これは一体どういうのですか。同じ文部省に同時刻に並行して提出されたものに、両方にそれだけの食い違いがあっても、文部省は知らぬ顔して許可をするべきものは許可する、そういう大学の管理をなさっていて、一体文部省の役目がつとまるのでしょうか。大臣、どうです。
○中村(梅)国務大臣 その申請書と報告書の食い違いがあるということでございますが、もし事実であるとすれば、幾ら所管の部局が違いましても粗漏であったと思いますが、申請書が大学院の設置等について出ますと、この申請書が、まず書面で見まして大学の設置基準に合致しているかどうかを審査をし、そして審議会は御承知のとおり大学設置審議会と私立大学審議会と二つございまして、この二つの審議会に諮問をいたします。審議会の委員は、私ども学識経験等から見て、また情熱から見て十分な人であると思いまして審議会の委員を人選して、この審議会の方々に役所の官僚的な立場でなしに、その申請と取り組んで審査をしていただくわけであります。現状を見ておりますと、この二つの審議会はそれぞれ財政の面とかあるいは設備の面とかあるいは大学の教授陣営の実情、あるいは履歴――最近では特に大学が方々に急増されますので、ひとつ人が二重籍で申請に使われたりいたしますから、そういう二重があるかないか、こういうことにまでわたりましてかなり慎重に審査をし、しかも最近では審議会の委員は二、三人ずつ組をつくりまして、わざわざ現地に出かけまして、設備は申請どおりであるかどうか。それから経理状態なりその大学院を設置するにふさわしいだけの経済状況になっておるかどうか、そういうことも現地で調査をし、あらゆる角度からそういう調査をされて、そしてこの二つの審議会が慎重審議をした結果、この申請は許可すべきものである、こういう答申が大臣に出ますと、大臣はこれを一々自分でさらに目を通すわけにはいきませんので、大体審議会の答申どおり拒否を決定しておる。したがって、今年あたりもずいぶんたくさん新設やあるいは大学院申請等がございましたが、かなり不合格で、予定よりもかなり不合格が多かった。これはこの二つの大学設置審議会及び私立大学審議会の両審議会が実情調査をされました結果、申請書では一応規格に合うように整っておるけれども、実態が合致していない。したがってこれは不許可にすべきであるというような不許可答申もございまして、許可しなかったものも相当出ておるというようなぐあいで、かなり実際には慎重審議をやっておるのでありますが、人間でありますから、相手がごまかすつもりでやられますとひっかかる場合もあり得ると思いますが、できるだけそういうことのないように、二つの審議会の委員の方々も、みなそれぞれの職務を持って忙しい人たちですが、忙しい中をさいて、それぞれ現地調査を最近はやっていただいておるようなわけでございますので、それでも欠陥が絶無とはいえないかもしれませんが、われわれとしましては、慎重を期して事を運んでおるような次第でございます。
○河野(密)委員 私は、いまの中村さんの答弁では、それは言いわけになるかもしれないけれども、問題の解決には一つもならないと思います。
もうだいぶ時間が経過しましたから、私は最後に一つお尋ねいたしますが、私立大学振興法というのができて、いろいろ私立大学に対する助成措置等がとられておりますが、これは助成すべきものは助成してもいいと思います。思いますが、その実態に対して何らかの規制がなされなければ、これはますます悪を助長するような結果になるのじゃないか。先ほど私は寄付金の問題を申しましたが、寄付金の問題について、私はこの学校だとは申しませんが、現在寄付金で最高どのくらい取られておりますか。学問を金で買うという弊害が露骨に出ていると思うのですが、文部省でもおそらくそういう点はお調べになっていると思うのですが、最高はどのくらい取られるのですか。入学ができるかできないかということは全く寄付金の額によってきまるというような実態をどうお考えになりますか。そういうことは野放しである。しかも学校の経営というものは、いまお話しのように、監督があるようでないようで、学校経理については会計検査院の検査はないのでしょう。学校に寄付したということによって免税になる、これも野放しじゃありませんか。そういうように特権を付与しておきながら、その運営については、いま私がほんとうの片鱗をお尋ねしたのですが、それによっても文部省は何にもわかってはおらないじゃありませんか。私のところへ多摩美術の問題を、これは正義の立場から、私はこれはどちらでも、理事長派でもなければほかの反対派でもない、公平な中立の立場ですがといって――あえて名前をあげてもいい。絵かきの郷倉さんが見えまして話をするのに、私は疑いを持ったのは、美術大学であれば美術を教えるために設備をどれだけふやすとかいうことを考えれば私は満足しますけれども、美術大学が土地ばかりを方々に買いあさって、土地を買うことに狂奔をしている、これはおかしいじゃないかというのが私のこれに対する第一の疑いですと、率直に言っておる。私はその直観を信じるわけです。私は今日のすべての大学がそうだとは申しませんが、多くの大学が、あるいは先ほど冒頭に学生寮の話が出ましたが、学生寮という名前によって、あるいはレクリェーションのセンターをつくるという名前によって、各地に土地を求め、あるいは建物をつくり、そういうところにばく大な金を費しておる。それをみんな少しも怪しまない。学問のために大学があるのではなくて、レクリェーションだとかそういうことのために施設をすることが学校の仕事であるかのような、そういう態度がとられておって、文部省はこれに対して何の監督もしなければ、何にもしておらぬじゃないですか。これで一体いいのか。きゅうきゅうとして責任をのがれることにこれつとめておる。そんなばかな話はないと私は思うのであります。これで私学に問題が起こらない、多くの学校に騒動が起こらなければ、起こらないほうがふしぎだと思います。こういうあり方について根本的に考え直さねばならぬのじゃないか。問題はまだありますから、他日また伺うことにいたしまして、これに対する大臣、当局の責任ある御答弁を願って、私の質問を終わりたいと思います。
○中村(梅)国務大臣 実際、河野さんのように正義感に燃えてものを考えますと、いまの私学についてはいろいろ問題があると思います。私ども決して責任のがれを言っておるわけではございませんが、事実責任が持てないような制度になっておるわけであります。従来は私学振興会を通しまして融資の道を講じておりましたわけで、融資の段階ならば、あるいはまだ従来どおりの制度でよろしいのかもしれませんが、さらにこれを融資以外の税金の金を使って援助をするということになれば、私はどうしても私学のあり方というものについては何か新しい制度を考えなければならぬのじゃないかというような気もするのでありますが、とにかく従来は私学の制度は良識に待つというたてまえできておりますから、文部省としては最初の認可をいたしますときの権限はございますが、認可をしてから先については、先ほど管理局長がお答えを申し上げましたように、実際その報告を求めるにいたしましても、六条の規定があるだけで、これは統計をとったりするための資料の収集でありまして、この資料といえども、うそを書かれたらしからばどうするか、出さないものがあったらどうするかというような問題まで突き詰めてまいりますと、実際処置がないというのが現状でございますから、いま河野委員のお話のような点については、あまり文部省が差し出がましくまいりますと、いまの時世でございますから、いろいろまた非難を受ける面があろうか思いますが、世論の動向ともにらみ合わせまして、私どもとしましては私学問題は今後十分に慎重に検討いたしたい、こう思っておる次第でございます。
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