自然環境の保全

 

1)センサー制御による省エネ照明システム

  デザイン棟には、センサによりその場の明るさに応じて調光できる照明システムを備えています。昼光を積極的に利用することで、あかりの無駄使いをなくし省エネとコスト削減に効果があります。また自動的に照度を調節することで、快適な視環境をつくることができます。その概要と効果:デザイン棟の各教室の窓側一列目照明には、あかりセンサが取り付けられています。このセンサは周囲の明るさを検知し、照明器具へ信号を送ります。照明器具は、その信号により調光を制御します。このため昼光の変化にかかわらず,室内の机上面照度を一定の明るさに保つことができます。また、調光していることが、見た目ではわからないように設計されているため、心理的影響が、ほとんどありません。また、実際に調査した結果をみてみると、昼光利用できる時間帯において、北側,南側教室共1列目の照明器具は、連続的に25%調光で運用できることが判り、常に設計照度である約1,000lx以上(初期値)は確保されていた事が、わかりました。また、昼光利用できなくなる時間(夕方)でも一定照度制御がおこなわれており、教室利用者に対して心理的な影響は、ほとんどないと考えられる事がわかりました。この調査結果を元に、年間の電力量と二酸化炭素排出量比較を行ったところ従来の照明器具に比べて,年間で約33%の電力を削減することができ、また二酸化炭素排出量も、112(kgC)削減できるという結果が報告されています。照明学会照明普及賞(優秀施設賞)受賞1998年

 

2)太陽熱の利用による温水シャワー設備

  多目的ホールと彫刻棟には、太陽熱の利用による温水シャワー設備を備えています。通常の作業後の使用はもちろん、その他に、緊急災害時の緊急避難場所して機能することを考慮し、設置しています。

 

3)太陽光の利用による発電設備

  多目的ホールの屋上には、太陽光による発電設備を備えています。これは、多目的ホールが緊急災害時の緊急避難場所としても使えるよう考慮し、停電になった場合でも、多目的ホール内に最低限の電気を供給できるよう計画されています。

 

4)雨水利用による便所排水設備

  絵画北棟、工芸陶棟、デザイン棟、工作工房、テキスタイル棟、食堂棟、メディアセンターには、に雨水利用による便所排水設備を設置しています。これは、屋上に降った雨水を地下の雨水槽にためておき、棟内の便所排水を雨水から製造される中水によってまかなうというものです。この設備の導入により、自然エネルギーである雨水を積極的に利用することで、上水の利用を少なくし、コストの削減を行っています。また、常時地下に水を貯めているということは、非常事態発生時(大震災等)における水の確保にもなります。実際に調査した結果をみると、例えば、デザイン棟では、便所はほぼ雨水だけでまかなえることが、明らかになっています。

 

5)氷蓄熱システムによる冷房設備

  メディアセンターには、一部氷蓄熱システムによる冷房設備の導入を予定しています。蓄熱とは、熱を蓄えることです。様々なエネルギーを熱に換えて、蓄え再利用します。これを利用したものが蓄熱式空調システムです。電気は,貯めておくことができませんが、熱エネルギーに変換することにより効率的な利用ができます。この場合は、夜間電力を利用し,蓄熱槽に氷を作ります。昼間にその氷を使い、冷房を行います。夜間の電力は、昼間に比べ割安なので、コストが削減でき、また発電所のピークを避けることができるため、CO2の排出量の削減につながります。

 

6)修景池

  テキスタイル棟と芸術学科棟にはさまれた池は、周辺の雨水の調整池でもあり、また八王子キャンパスの憩いの場でもあります。調整池としては最大1000tまでの貯水能力を持ち、下方の大栗川へ流れ込む水量の調節をしています。また、修景池周辺の植栽は、もともと八王子校舎内に植えられていた木も移植されており、多種多様な植物は、四季折々の変化が感じられるよう配置されています。緑豊かな外部空間の創造、水辺空間に依る憩いの場、昆虫・水鳥・魚が棲める環境を目指しています。

 

7)排水の監視

  八王子キャンパスの大規模なキャンパス建設計画の推移と伴に、竣工した建物は、専門業者による全量回収(動植物油、鉱物油、有材溶剤、重金属などを含む溶液、その他有害物質を含む排水)を除いて、全て公共下水道へ放流されている。環境問題に関心がたかまっている時に、大学として環境の保全、排水の監視に配慮するのは当然のことである。
  その対策を講ずるため、研究室ごとに使用薬品の種類・量、及びその使用方法・処置方法の確認を行い、研究室で使用している対象物質毎の「製品安全データシート(MSDS)」ファイルを作成し、各アトリエからの排水について、専門業者による実際の測定を実施した。
  排水の改善策の一環として、油画のアトリエ(絵画北棟、絵画東棟)の約100教室に、油彩の制作時に絵筆を専用の缶の中で洗えるよう「筆洗缶」なるものの配置を行った。この筆洗缶は、他の美術系の大学で使用されているものを参考にして、本学で制作したものである。この缶は、20リットル位の市販されているぺール缶に細工し、下部に水を張り、絵筆を洗う部分に網を設け上部に灯油を張ったものである。今後は、年2回〜3回程度、処理資格をもった専門の許可業者に引き取り回収を依頼していく計画である。
  その他のアトリエにおいても、有害物質排出の疑いのある建物については、中継升等を設置して、定期的に専門の許可業者による汚泥の回収を行っていく計画である。教職員、学生、取引業者に有害物質及び広く環境問題に関する意識の高揚をはかり、全学あげて環境の保全、排水の監視に取り組んでいる。

 

8)廃棄物の処理

  キャンパスの各建物には、@燃えるゴミA燃えないゴミ(缶・ビン・ペットボトル)の専用ゴミ缶を配置している。燃えるゴミは、現在は焼却時に800度以上で焼却可能な焼却炉で焼却を行っている。缶、ビンについては、専用のコンテナを設け、リサイクル業者に引き取りを依頼している。
  美術大学なので、制作時に出る陶、ガラス、石膏、金属、プラスチック等については、産業廃棄物として専用コンテナを設け専門の業者に回収を依頼している。木彫の作品制作に使用した木片の残りは、冬期にアトリエ内のストーブで薪として利用している。石の破材は、一時ストックしておき専門の業者に回収を依頼している。
  年間を通して、学部入学試験の前後、芸術祭終了後のゴミは、膨大な量になり、その処置に苦慮している。現在は、業者に依頼して持出し処理を行っている。
  東京都や国のダイオキシン等環境基準にあわせて、焼却炉の改修、存続を含めて、廃棄物の処理に対して前向きに取り組んでいる。

(八王子校舎建設整備室長 渡辺清光、八王子校舎総務課長 甲斐重守)