2)消費収支計算書
消費収支計算の目的は毎会計年度の消費収入と消費支出の内容および財政均衡の状態を明らかにするためのものである。
消費収入は帰属収入 (学生生徒等納付金などの負債とならない収入)から当該会計年度に基本金組
入額(施設、設備等の固定資産の取得 <計画を含む>
に充てられた額や、基金および支払資金として保持する額)を控除した額である。
この消費収入から消費支出 (人件費、 教育研究経費、
管理経費、
借入金利息等の当該会計年度で消費する資産の取得価額および用役の対価の額)
を対照し、
均衡の状態をみることにより教育研究活動の維持発展と永続化をめざすものである。
(1)消費収入の部
学生生徒等納付金:平成6年度の学費収入額を100%とした場合の平成10年度の増加率は 33.0%で帰属収入の増加率 15.8%と比較して17.2%高くなっている(表1)。うち、平成9年度までの3か年間の平均増加率は7.4%で授業料 ・ 実習費のスライド制学費によるもの。平成10年度の増加率 10.7%は主に美術学部情報デザイン学科(定員120名)の増設によるものである。平成11年度入学者の学費を芸術系他大学と比較すると 2百万円を超えているのは、首都圏芸術系5大学では本学を含めて2校であり、本学の学費水準は高い部類に属している(表2)。平成12年度の学費は、スライド制による学費改訂を実施したが改訂するに至らず平成11年度に据置きとした。今後もスライド制学費を継続するが、現在の他校比較の現状から大幅な増額は難しいであろう。
手数料:入学検定料が大部分であるが、平成6年度の収入額に比較して平成11年度は 18.7%の増加率である(表1)。平成10年度の1学科当たり入学検定料 35千円は平成2年度から据置かれた額である。18歳人口の減少、一人当たり志願数の減、私学離れなど志願者の確保に苦慮している中で平成10年度は過去最多の 10,857名(大学院 ・美術学部 ・造形表現学部)の志願者があり、一応の評価はされるが今後もこの水準を維持するためにはより一層の努力が必要であろう。
補助金:補助金は帰属収入のうち、学生生徒等納付金につぐ財源で平成6年度の収入額に比較して平成10年度は 26.0%の増加率であり、その主なものは国庫補助金(私立大学等経常費補助金)である(表1)。その推移は、平成7年度に補助対象となる専任教職員の人数が前年比15名増加した結果、増加率は14.2%となった。その後平成9年度まで一般補助の減額は、特別補助の増額でほぼ相殺され支給額には大差なく、平成10年度で一般補助が前年比15.6%(63百万円)の増加となった(表3)。これは、平成9年度に教育研究経費支出割合の増加と消費収入超過額から基本金未組入額を控除した額が 5億円未満となった結果、調整係数が改善されたものである。一方、特別補助は平成9年度に比べて△12.5%(9百万円)の減少となり、今後特別補助獲得に向けた努力が必要であろう。
資産運用収入:資産運用収入は、国債、金融債、社債などの有価証券および預貯金からの受取利息が大部分であるが、 八王子校舎の大整備、 学部 ・学科の増設にかかる設備支出等による運用資金の減少、および実勢金利の低下により平成6年度の収入額に対して、平成10年度は△66.6%の大幅な減少となった。増収を図るためには、預貯金から有価証券へ短期運用から中長期運用へと資金をシフトさせ、その運用内容もリスクの存在を充分認識し、かつ運用基準に沿ったものでの運用に努めている(表1)。現在の運用基準は株式、株式投資信託、株価指数連動商品、為替リスクの存在するものなどを運用対象外としている。
(2) 消費支出の部
人件費:平成7年度の人件費が前年より21.8%増加しているが、これは退職給与引当金繰入額の計上基準の変更によるもので、従前の期末要支給額の80%(自己都合退職の場合)を乗じた額から100%計上にしたものである。平成6年度の人件費を100%とした場合の、平成10年度までの4年間の増加率は16.9%で年平均4.2%の増加である。その間、教職員数の変化を見ると教員が151名から169名へ18名増、職員が132名(うち事務系職員74名)から150名(うち事務系職員78名)へ18名増(うち事務系職員4名増)合計36名増加していることを勘案しても人件費は抑えているといえよう。さらに、平成11年4月から定年退職規程(職員68歳から63歳に引下げ)の変更、 新たに教職員選択定年規程、職員役職定年規程が施行されるなど人件費抑制の努力もされている。また、人件費は専任数が多いほど膨らむことになるので人件費の総量抑制の方策として、ある程度の業務を非常勤へ依存することも考えられる。
教育研究経費:平成6年度の教育研究経費を100%とした場合の、平成9年度の増加率は44.8%、平成10年度では105.3%と倍増している(表1)。これは新学科、新学部開設のため校具 ・教具 ・備品の取得が平成9年度から始まり、資産計上基準額に満たないものが経費処理されたものや八王子校舎建設整備等の減価償却費である。
資産処分差額:八王子校舎建設整備の一環でテキスタイル棟、メディアセンターを建設するために取り壊された実習棟の残存簿価がほとんどである。
(3) 消費収支差額の部
次年度繰越消費収入超過額:平成6年度の次年度繰越消費収入超過額 6,113百万円をピークに八王子建設整備および新学科・ 新学部増設にかかる資産取得分の基本金組入額の大幅増加により平成10年度では△102百万円になった(表1)。平成1年度から八王子校舎建設整備計画に基づいて、第2号基本金組入れを行ってきたがその計画が本学の第二次新生ともいうべき規模で実施中で、第2号基本金組入額でおぎないきれず支出超過額 となったもの。さらに、平成10年度末の基本金未組入額が 2,500百万円あり実質は 2,602百万円の消費支出超過である。 今後も教育研究活動を永続的に維持発展させるためには、長期財務計画に基づきこの消費支出超過額の解消に努めなければならない。