流動比率:流動負債に対する流動資産の比率であり高い値が良いとされる。一年以内に償還または支払う流動負債に対して、現金預金などの流動資産がどの程度準備されてるかという、短期的支払能力を判断する指標である。本学は、240.7%(平成10年度)と芸術系部門平均203.8%と比べて36.9%高い比率である。ただし、最近は資金運用上有利な長期有価証券等への資金移動があり、単に判断できない面もある。
総負債比率:固定資産と流動負債を合計した負債総額の総資産に対する比率であり低い値が良いとされる。この比率は総資産に対する他人資金の比重を評価する重要な関係比率であり、50%を超えると負債総額が自己資金(基本金+消費収支差額)を上回り、さらに100%を超えると負債総額が資産総額を超える債務超過となる。 本学は、28.1%(平成10年度)と芸術系部門平均17.3%と比べて10.8%高い比率である。 この指標からも負債額の大きさが窺える。
(3)財務分析からみた結果 表5財務比率表より
◎消費収支計算書関係
本学が勝っている指標
:人件費比率、人件費依存率、教育研究経費比率、管理経費比率、補助金比率、基本金組入比率
ほぼ同水準の指標:消費支出比率、学生生徒等納付金比率
本学が劣っている指標:借入金等利息比率、消費収支比率
◎貸借対照表関係
本学が勝っている指標:固定資産構成比率、流動比率
ほぼ同水準の指標:固定比率、基本金比率
本学が劣っている指標:固定負債構成比率、流動負債構成比率、自己資金構成比率、総負債比率、負債比率、前受金保有率
以上の結果から
◎帰属収入のうち消費支出額の割合は芸術系他校と同水準であるが、その使途は人件費や管理経費の割合が少なく教育研究活動にまわす資金が多く、消費支出構成としては優れている。
◎学生生徒等納付金は帰属収入の比率上では他校と同水準であるが、実額では高い部類である。
◎入学定員に対する学生数割合、学納金に対する教育研究支出割合などの調整係数にかかる配点が高いことなどにより、経常費補助金交付額「一般補助」は増額しているが、「特別補助」は外国人留学生の受入れ、大学院の基盤整備などが低く前年度より減額している。
◎施設拡充にかかる支出をまかなうため多額の借入が実行され、借入金等利息比率、負債比率が上昇
し、自己資金構成比率が低下した。
◎施設拡充にかかる多額の支出で流動資産(支払資金)の急激な減少をもたらしている。
◎今後の課題として、短期間で教育施設設備への資金投下がなされたため、急速に膨らんだ有形固定資産の維持管理にかかる経常費および取替更新時における資金の確保に向け、中長期財務計画に基づく運営が重要になる。
(経理課長 中島和彦)