大学システムの開発
1)コンセプト
学校法人における業務システムについては、パッケージという形で市販されてるものが多い。その理由として、開発期間の短縮や、コストの軽減などがあげらるが、あくまでも既製品であるため、多くの部分でカスタマイズが必要になることがほとんどで、コストも高い。
最近になってようやく、C/S型のシステムがでてきたが、まだ未完成であり、決して使い勝手がよいとは言えない。
本学でもいわゆるオフコンによる業務システムを導入し、使用してきたが、
パフォーマンスの面でもコストの面でも満足できるものではなかった。
また、システムのブラックボックス化についても問題であると考えていた。
これらの問題を解決するためには、内部開発しかなく、移行の時期に旧システムを並行使用することでリスクを回避しながら開発に踏み切った。
システム開発は決してやさしくはないが、業務システムについてはそのほとんどが、置換やファイルの読込み・書出し・併合、加減乗除の計算の繰りかえしであって、高度な数学の知識を必要としたりする処理はない。「自分たちで管理できるシステムを構築する」これがシステム開発のコンセプトである。
2)開発の経緯
開発の第一弾として機械のリース終了を期に、1996年に会計システムの開発を試みた。開発・実行環境は以下のとおりである。 ハード 。CPU:ペンティアムMMX200 。ディクス容量:2GB 。メモリ:64M 。OS:ウィンドウズ95 。データベースソフト:DBPro3.2 。DBProは同一ファイルの複数からの同時アクセスに対応はできるが、クライアント用のソフトであることには変わりがない。会計ソフトは経理部内でしか使用せず、同時に使用するとしても3台以内であるということから特に問題はなかった。 開発には6か月を要したが、データはすべて以前のオフコンのデータから移行したため、科目コードや残高の再登録は一切必要なかった。 このシステムが一応目的どおりに稼動したため、定期支払システム、個人研究費システム、学費管理システムを順次開発した。
1999年度より入試の形態が大きく変わったことから、入試システムの開発に着手した。併願者処理など複雑な処理については繰り返しテストが実行され、入試システムも目的を達成することができた。開発・実行環境は以下のとおりである。 ハード 。CPU: ペンティアムU450×2 。ディクス容量:18.2GB 。メモリ:128M 。OS:ウィンドウズNT4.0 。データベースソフト :DBPro3.2 。 また、あわせて入試助手を管理するシステムも開発した。
平成11年11月現在着手しているのは学籍・成績システムである。これはデータ量も多く、処理も非常に複雑なため、開発にはほぼ1年を要する予定である。稼動は平成12年4月を目標としている。
3)現在の状況
個別のシステムとして稼動しているものもあり、今後はこれらのシステムのデータのやりとりが重要になってくる。 もっとも重要な課題はデータの一元化であり、個々の部署のもつ重複したデータをどう整理し、管理していくかを検討中である。
(1)入試システム
稼動時期 1999年2月。入試システムは当初、ユニシスのオフコンシリーズ8が平成3年に導入された。当時としてはシステムの完成度が高く、正しい選択であったが、入力、処理スピード、出力帳票に関しては、当初から不満があった。そこで、入試方法が大きく変わったことを機に、システムの開発を行った。本学の入試の特徴として、学科得点を移行するための併願処理があり、これがもっとも複雑で重要な処理であった。その他にこれまで出力することができなかった机添付用の受験番号ポストイットや、教室掲示用ラベル等も可能となり、事務の正確性と合理化に貢献できた。
(2)学籍・成績システム
稼動予定時期 2000年4月。学籍・成績システムは現在開発中であり、2000年4月に稼動を目標としている。
成績は単位集計や履修エラーチェックなど複雑な処理があり、またデータも大量であるため、慎重なデータ移行やテストが不可欠である。
このシステムは事務システムのメインともいえるものであり、ここに格納されているデータの多くが他のシステムでも活用されるため、処理スピードもさることながら、それ以上にセキュリティが重要である。
パスワードをかけるのはもちろんのこと、安易にパスワードを他人に教えてしまうことのないよう、今後職員リテラシー教育を、導入にむけてしていかなければならない。
学籍・成績システムは現在の事務システムの中でもっともデータ量が多く、複雑である。従来のシステムではデータの有効が難しく、かつオフコン独自のプログラムで作成されており、機械内部の動きについてはいわゆるブラックボックスであった。ほとんどの学校法人がそうであるように、システム開発は外部の業者に委託するのが通常である。その理由として、
1.人材不足のため、内部開発ができない。2.専門の業者に委託すれば安心である。3.ハードとソフトの両方をメンテナンスしてくれる。などがあげられる。
しかしながら、システムを運用するにあたっては、システムの動きを理解しなければ正しい作業をすることができないし、導入時にいくらテストを行ってもイレギュラーなケースに対応できないことがわかるのは本番になってからであることが多い。また、担当SEが代わるとシステムの修正などのときも話がちぐはぐになることがある。
内部開発ができるかどうかは、業務の規模によるところが大きい。すなわち、本学のような4,000名規模の大学であれば、十分事務組織による内部開発が可能である。オラクルやSQLサーバーなどかなりの専門知識を要求されるレベルのデータベースをはじめから使用する必要はないと考える。あるとすれば、今後のブラウザによる履修・成績登録においてであるが、これも決して大規模とは言えず、これからの検討事項である。
以下にシステムの処理内容を簡潔に記す。
学籍情報処理:学生の個人データを入力し、管理する処理である。入力必須チェックや、マスターファイルに該当するものがない場合などは入力できないようになっている。一部外国語などの履修情報
も含まれ、他の多くのファイルとリレーションされている。入力・更新日付もデータとして残すようにしている。
学籍異動処理:休学、退学などの情報情報を入力する。これにより、現時点での学生数や、日付指定によりある時点での学生数を把握することができ、学年別・学科別も出力できる。
履修関係のマスタ登録処理:ここで登録されたデータにより、エラーチェックをかけたり、単位集計作業が行われる。
履修者処理:履修登録票の出力からOMRによる履修読込み、エラーチェック、単位集計までの一連の処理を行う。具体的には授業重複の有無などのエラー、取得済、履修中の単位の集計、卒業不足単位数の計算をし、履修登録確認票を作成する。これを学生が確認、エラーを訂正することにより、正しい履修登録をさせることができる。
(3)会計システム
稼動開始時期 1997年4月。経理部で使用しているDBProによる会計システムである。従来はIBMのSYSTEM/36を使用していたが、その柔軟性がないため、データの加工が自由にできず、また、すべての帳票が連続用紙による出力であったため、帳簿として保管するにも難があった。また、帳票の追加や仕様変更など些細なものでも10万円以上の経費が必ずかかるため、コストパフォーマンスもよくなかった。このシステムにより、日々の会計伝票の入力を行い、月次で資金収支計算書、消費収支計算書、貸借対照表、残高資産表、各種元帳を出力できる。特徴として、入力のしやすさ、オペレータの誤入力防止のためのさまざなエラーチェック、計算書類とほぼ同じスタイルの出力帳票、A4サイズの見やすい元帳などがある。完成度は70%程度と考えており、今後は、同時入力時のパフォーマンスの向上や予算管理部分なども充実させていく予定である。
日次処理
:会計伝票の入力、訂正を中心に行う処理である。伝票入力のエラーチェックとして、科目・補助科目のマスター登録されているかどうかの有無、貸借の金額合致、同一伝票の二重登録確認などができる。市販のソフトでは1枚の伝票に100件までという制限のあるものが多いが、このシステムでは無制限である。本学のように毎月1回まとめて業者に支払をするような場合には件数が100件を大幅に上回るため、有効な処理である。
月次処理
:月の仮締処理、各種帳票出力、翌月残高繰越しの一連の処理を行う。仮締処理により当月の実績を算出する。
(4)学費システム
稼動開始時期 1998年10月。経理部で使用しているDBProによるシステムである。このシステムについてもSYSTEM/36を使用していたが、帳票が見づらく、銀行からのデータチェックもあいまいでシステムの不完全さは深刻な問題であった。その後ユニシスのシリーズ8に乗り換え、改善された。しかし、データの有効利用についてはやはり不便さがあり、学籍・成績システムに先駆けて
システム開発を行った。 開発にあたっての留意事項は、1.銀行のデータが取り込めること
2.確実に納入消し込みが行えること 3.学費振込用紙の出力に柔軟性をもたせること
であった。これらの事項はほぼ解決し、現在では順調に稼動している。ただ、完成度としては80%程度とみており、今後は出力帳票を増やし、学費管理を万全にしていきたいと考えている。
4)今後の開発予定
(1)学生証のデジタルカード化:大講義室の出席チェック。図書の貸出業務。各研究室の研究機器備品の貸出業務。教務部の在学証明書、成績証明書などの申請と発行業務。2001年4月稼動予定
(2)就職システム:2001年4月稼動予定
(3)予算管理システム:未定
(4)人事管理システム:未定
(5)備品管理システム:未定
(安楽康彦)