小委員会 昭和21年7月25日(第1回)
付託議案
帝国憲法改正案(政府提出)
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本小委員ハ昭和二十一年七月二十三日(火曜日)
委員長ノ指名デ次ノ通リ選定サレタ
芦田 均君 廿日出 ひろし君
江藤 夏雄君 犬養 健君
吉田 安君 鈴木 義男君
森戸 辰男君 林 平馬君
大島 多藏君 笠井 重治君
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同月二十五日委員長ニ於テ次ノ小委員ヲ追加指名
シタ
北 れい吉君 高橋 泰雄君
原 夫次郎君 西尾 末廣君
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昭和二十一年七月二十五日(木曜日)
午前十時三十七分開議
出席委員
委員長 芦田 均君
廿日出 ひろし君 江藤 夏雄君
犬養 健君 吉田 安君
鈴木 義男君 森戸 辰男君
林 平馬君 大島 多藏君
笠井 重治君 北 れい吉君
高橋 泰雄君 原 夫次郎君
出席政府委員
法制局次長 佐藤 達夫君
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本日ノ会議ニ付シタ議案
帝国憲法改正案(政府提出)
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○芦田委員長 会議ヲ開キマス、初メニ一寸申上ゲルコトガゴザイマスガ、本小委員会ニ小委員トシテ更ニ数名ノ方ノ御参加ヲ御願ヒ致シタイト思ヒマシテ、北れい吉君、高橋泰雄君、原夫次郎君及ビ西尾末廣君ノ諸君ニ特ニ御出席ヲ御願ヒ致シマシタカラ、御諒承ヲ願ヒマス、尚ホ小委員会ニハ速記ハ付ケマスガ、差当リ懇談的ニ議事ヲ進メタイト思ヒマスカラ、通信記者ノ入場及ビ議員各位ノ傍聴ハ、小委員会デ追ツテ決定スルマデ御遠慮願フコトニ致シタイト思ヒマス、御諒承ヲ願ヒマス、尚ホ傍聴ヲ許サナイ議事ノ経過ニ付テハ、小委員会ヨリ定期ニ「コミュニケ」ニ類スルモノヲ発表スルコトニ致シタイト思ヒマス、其ノ担任等ニ付テハ追ツテ御打合セヲ致シマス――傍聴ヲ許サナイ議事ノ経過ニ付テハ、委員諸君ノ御意見ニ依ツテ、毎日定期ニ委員長ヨリ簡単ナ公表文ヲ通信社ニ発表スルコトニ決定致シマシタ
尚ホココデモウ一ツ御諒承ヲ願ヒタイコトガアリマスガ、修正案ノ条文ヲ作成スル場合等ノタメニ、法制技術的ナ「アドヴァイス」ヲシテ戴カウト思ヒマシテ、政府委員佐藤達夫君ニ出席シテ戴キ、政府ノ意見ヲ代弁スルト云フノデハナク、専門的ノ立場カラ参考意見ヲ述ベテ戴カウト思ヒマス、御諒承ヲ願ヒマス
是ヨリ幾多ノ事項ニ付テ御協議ヲ御願ヒ致シタイト思ヒマスガ、先ヅ議事ノ進メ方其ノ他ニ付キマシテ御意見ガアリマシタナラバ、此ノ際之ヲ承ツテ置キタイト思ヒマス
○鈴木(義)委員 色々腹案ガアリマセウガ、一応各党ノ修正意見ノ御説明ヲ承リ、サウシテ最後ニ比較研究シテ考ヘルコトガ便宜デハナイカト思ヒマス
○芦田委員長 サウ云フ風ニ致シマセウカ
○北(れい)委員 ソレモ宜イデセウケレドモ、全条ニ亙ツテ修正意見ヲ詳シク述ベルヨリハ、前文、第一章、第二章、第三章ト云フヤウニ切ツテ、各党ノ意見ヲ交換シタラドウデセウカ
○鈴木(義)委員 ソレハドウモ難カシイノデス、此ノ憲法ニドウ云フ建前デ全体ニ筆ヲ入レルカト云フヤウナコトヲ御説明申上ゲタラ――後デハサウナルカモ知レマセヌガ、一応ハ説明ヲ承ラナイト……
○林(平)委員 此ノ小委員会ノ委員数ヲ御増シニナツタノハ、委員中ニ希望者ヲ入レルコトニナツタノデスカ、ドウ云フ意味デスカ、実ハ私ノ方デモ希望スル人モアツタガ、モウ十人ト決マツタノダカラ、サウ云フ訳ニハイカヌノダト云フコトデ諒解ヲ得テ居ル訳ナンデスガ……
○芦田委員長 要スルニヤハリ頭数ノ問題ガアリマシテ、大体三十五名程度デ一人ト云フ割合ニスレバ、二人ト一人ト云フヤウナ割当デハ均衡ガ取レナイト云フヤウナ議論モアツテ、成程考ヘテ見レバサウ云フ点モアルカラ、ハツキリハ行キマセヌガ、アナタノ方ナドハモツト多クナルカモ知レナイシ、出入リハアルガ、サリトテオ二人ト云ツテモ非常ニハミ出スカラ、其ノ程度デ我慢ヲ願ツテ、大体自由党ガ四人、社会党及ビ進歩党ガ三人、斯ウ云フコトデ行カウト云フコトニ決メタノデスガネ
○林(平)委員 全体ノ会議デ決メルノナラバ結構ダケレドモ、アノ時ニ決マツテ又後デ増員サレタノデ御尋ネスルワケデアリマス
○芦田委員長 是ハ委員長ノ数ノ観念ガ甚ダ不正確デアツテ、サウ云フ一応ノ決定ヲ願ツタ訳デスケレドモ……
○林(平)委員 ソレカラモウ一ツ、古イコトノ経験ヲ申上ゲテハ恐縮シマスガ、兎角各党派ノ主張ト云フカ、希望ト云フカ、ソレヲ主張スル為ニ、僅カノ所デモ他党ノ意見ガ良イト思ツテモ容レ兼ネルヤウナコトガ往々従来ハアツタ訳デアリマス、殊ニ今ノ委員ノ割当ノ点ナドモアリマスシ、我々少数ノ者ノ希望トシテハ、此ノ小委員会ダケハ真ニ党派ヲ超越シタ考ヘデ、良イモノデアツタナラバ、ドノ党派ノモノデモ採入レヨウヂヤナイカト云ツタヤウナ、一丸トナツタ気分ヲ原則トシテ進メテ行キタイモノダト深ク希望致シマス
○吉田(安)委員 北サンノ御意見モ御尤モト思ヒマスガ、鈴木サンノ仰シヤツタヤウニ、先ヅ各派ノ修正スル所ダケヲ先ニ発表シテ戴イテ、ソレカラ片付ケテ行ツタ方ガ早イデハナイカト思ヒマス
○芦田委員長 北君ドウデスカ、時間ノ点カラ言フトドウセ同ジコトニナルカモ知レナイカラ、大体今日ノ午前中ニ各派ノ修正案ノ説明ヲ終リ得ルト思ヒマスカラ、ソレカラ始メタラドウデスカ
○北(れい)委員 私ノ便宜論デ唯言ウタダケデ、若シ社会党アタリノ希望ノヤウニ戦争抛棄ノ第二章ハ他ヘ持ツテ行クトカ、章ノ順序ヲ変更ノ御意見ガアルナラバ、私ノ審議方法ハ成立タナイ、章ヲ変更シナイデ行クト云フナラバ、各章カラ審議シテ行ク方ガ極メテ簡単デ、第一章ニ付テハ自由党案ハドウ、進歩党案ハドウ、社会党案ハドウト云フ方ガ便宜デ、確カニ早イト思ヒマスケレドモ、章ノ順序ヲ変ヘヨウト云フ希望ガアルナラバ、鈴木君ノ提案ノ通リニヤルヨリ外ハナイト思ヒマス
○鈴木(義)委員 別ニ異議ハナイノデスケレドモ、社会党トシテハドウシテサウ云フ修正案ヲ提議スルカト云フコトヲ御聴キ願ハヌト拙イト思フ
○北(れい)委員 ソレナラ結構デス
○廿日出委員 分リマシタ、実ハ小委員ニ推サレテ、委員トシテノ精神的ナ態度ニ付テ一言私ノ心境ヲ申上ゲタイト思ヒマス、昨日食堂ニ於テ北君ガ偶然私ノ前ヘ御見エニナツテ、是ガ十年経ツタラ、現在憲法改正委員会ニ関係シテ居ル役員連中ハ、翼賛会ノ幹部連中ノ運命ト同ジヤウニキツトナル時ガアルダラウ、斯ウ云フコトヲ仰シヤイマシタ、実ハ私平生カラ真剣ニ考ヘテ居ル問題デモアルシ、心ヲ躍ラセナガラ御聴キシタ、サウシテソレニ対シテ、我々ハ十年経ツテモマダピンピン生キテ居ル、其ノ場合ニハ責任ハ全部負フ、斯ウ言ツテ居ル間ニ所用ガアツテ私ハ其ノ席ヲ立ツタノデスガ、ソレガ後デドウ云フヤウナ話ガアツタカ能ク知リマセヌガ、此ノ言葉ガ一ツ、其ノ後又引続イテ控室ヘ来ルト、現憲法ノ第三条マデハ洵ニ立派ニ出来テ居ルガ、何レアノ第三条マデヲ覆ヘス時ガ来ルダラウト、相当政治ニ経験ノアル方ガ仰シヤツテ居ツタ、是ハ併シ大シタ問題デハアリマセヌガ、兎ニ角一般ノ人々ガ此ノ小委員会ニ対シテ持ツテ居ル所ノ感ジハ、余程深刻ナモノガアルヤウニ私ハ感ジテ居リマス、全ク我々ハ命懸ケデナケレバナラナイト、総テノ憲法ニ関スル会議並ニ自分等ノ運命ニ付テモ考ヘテ居ルノデアリマス、要スルニ結論トシテ、此ノ小委員会ハ超党派的ニ、兎ニ角此処ヘオイデニナツテ居ル方ガ自己ヲ取巻ク一切ヲ投出シテ、命懸ケデヤツテ戴クヨリ外ハナイ、実ハ斯ウ云フヤウニ思ツタ次第デアリマス、委員トシテノ精神的ナ態度ヲ一寸一言申上ゲテ置キマス
○北(れい)委員 私ハ只今ノ委員ノ発言ニ一寸私ノコトニ触レタカラ申上ゲマスガ、先程林君モ話サレタ通リ、斯ウ云フ問題ハ多数デアルトカ少数デアルトカ云フ問題デハナク、私ハ成ベク政党的色彩ハ除キタイト云フ意識デス、我々ガ原案トシテ出シタコトデモ、修正案トシテ出シタコトデモ、諸君ノ中デ正シイ議論ガアレバ、何時デモソレニ承服スル、他ノ法案デモ其ノ態度デナクテハナラヌト思ヒマスガ、殊ニ憲法ノ場合ハ、全国民ノ運命デアリ、又将来ノ国民ノ運命デモアリマス、更ニ我々ハ戦争中世界ニ非常ニ憎悪サレテ居ツタガ、今平和時代ニナツテモ、余リ卑屈ニナツテ、自主的ナ態度ヲ失ヘバ軽蔑サレル、我々ハ有名ナ英国ノ「スイックス」ノ言葉ヲ思ヒ出ス、会テ彼ガ総理大臣デ議会ニ臨ンダ時ニ非常ニ野次ガ出タ、其ノ時ニ彼ハ、我ハ憎悪ノ敵ヲ有シテ軽蔑ノ敵ヲ有セザルコトヲ心トスト言ツタ、戦争中ノ戦争ノ責任者ハ今世界ノ憎悪ノ中心トナツテ居リ、又国民ノ憎悪ノ中心ニナツテ居ルガ、我々ハ軽蔑ノ中心トナツテハナラナイ、其ノ意味デ私ハ、十年後ノ我々ノ子孫ニ嗤ハレルヤウナコトニナツテハナラナイ、直チニ反動勢力ヲ作ツテ我々ノヤツテ居ルコトヲ攻撃スルト云フ意味デハ少シモナイ、殊ニ我々頭デ考ヘテ居ツタコトハ、兎ニ角世界ノ大勢ハ英米流ノ「デモクラシー」ガ非常ニ強ク支配シテ居ル、日本モ国際情勢ニ鑑ミルト云フコトハ、結局戦勝国ノ態度、「ロシヤ」ノ態度、支那ノ態度スラ参照シナケレバナラヌ、殊ニ小委員会ノ秘密ヲ要スルコトハ、此ノ憲法ト連合国ノ意向ナドノ問題ニ触レル時ニハ、公開シニクイ場合ガアル、サウ云フ場合ニハ秘密ニスル必要ガアル、憲法ヲ審議スル用意トシテハ、戦敗国トシテ日本ヲ建直スノ必要ト云フコトガ勿論第一義ニ置カレネバナラヌガ、憲法ノ文章マデモ翻訳的ニ日本文ラシカラザルモノヲ残シテ置クト将来恥ニナル、思想ノ良イ所ガアレバ採入レテモ宜イ、制度ノ良イ所ガアレバ採入レテモ宜イ、採長補短ハ我国ノ過去ノ歴史ノ長所デアル、洵ニ虚心坦懐デ宜イケレドモ、言葉ノ末マデモ直訳的ノモノヲ残スノハ我々忍ビヌ、ソコデ将来嗤ハレナイヤウニ、ココダケハ皆サンモ御考ヘ願ヒマシテ、私等モ其ノ気持デアリマスカラ、御協力ヲ願ヒタイ、此ノ憲法ニハ、斯ウ云フヤウニ考ヘテ、政府ノ草案ノ中ニハ直訳調ノ所ガ相当多イカラ、之ヲ残サナイヤウニシナケレバナラヌト思フ、私ノ考ヘハサウ云フ考ヘデアリマスカラ、ドウカ誤解ノナイヤウニ願ヒタイ
○笠井委員 只今ノ北君ノ御説ニハ至極賛成デゴザイマス、今北君モ仰シヤルヤウニ、直訳ノ点ガ沢山アリマスシ、殊ニ前文ノ如キハ、品位ノ高イ、日本人トシテ肺肝ヲ貫クダケノ文章デ書カレナケレバナラヌノデアリマスガ、寧ロ英文ノ方ガ非常ニ宜ク出来テ居ツテ、ソレヲ翻訳スルノニ、ダラダラ牛ノ涎ミタイナ間違ツタ翻訳ガアルノデアリマスカラ、此ノ場合ニ於テ、後世ノ日本国民カラ嗤ハレズ、又世界カラ失笑ヲ招クコトノナイヤウニ、小委員会ニ於テ十分練リニ練ツテ立派ナモノヲ拵ヘタイ、是ガ私ノ念願トスル所デアリマス
○芦田委員長 何カ笠井君、アナタノ案ハアリマセヌカ、ソレヲ出シテ戴クト、非常ニサウ云フ所ヲ修正スルニモ容易ナンデス
○笠井委員 是ハ私出シマス
○芦田委員長 成ベク至急ニ御出シヲ願ヒタイト思ヒマス
○原(夫)委員 今日私ガ委員ニナルコトヲ御知ラセニ接シテ居ナイモノデスカラ、公報ヲ拝見シタノデスケレドモ……
○芦田委員長 先刻此処デ発表致シマシタ、御諒承ヲ得テカラ私カラ御話ヲスベキダト思フノデスケレドモ、今マデハ党ノ方カラノ通知デ承ツテ居ツタノデスガ、今此処デ新シク小委員会ニ御集マリヲ願フ方四名ヲ一番初メニ決定シテ……
○原(夫)委員 我々ニモ今日出テ来イト云フ御話ガアツタノデスカ
○芦田委員長 ソレハマダ申上ゲマセヌガ……
○原(夫)委員 ソレガナクチヤ出ラレマセヌ
○芦田委員長 所ガ此処ニ御出デニナツタト云フコトハ、党ノ方カラアナタガ御出デニナルト云フ通知ヲ受ケタノデスケレドモ、此処デ私ガ発表シテ此ノ席デ御諒承ヲ願ヒマシタカラ、其ノ内ニ御見エ下サルコトトシテ御待チシテ居ツタノデス
○原(夫)委員 イヤ、私此処ヘ出ルト云フコトハ申サナイ、寧ロ反対ニ私ハ小委員デナイカラ、ソレデ今日ハ遠慮シタ方ガ宜イダラウ、芦田委員長カラドウセ通知ガアルカラ……
○芦田委員長 ソレハ今御通知申上ゲマシタ、先程小委員会デ其ノ点ハ御諒承ヲ得マシタカラ、モウアナタニ御通知スベキ権限ヲ持ツテ居ル訳ナンデス、ドウゾ御出席ヲ……
○原(天)委員 了承致シマシタ、ソレデ成ベク彼此レ理窟ヲ申スヤウナ事態デハナイカラ――事柄ガ重大ナモノデスカラ、成ベク御遠慮申上ゲタイト思ヒマスガ、了承致シマシタ
○芦田委員長 ソレデハ大体ノ御意向ハ、各党ノ修正意見ヲ一応説明スル順序デ行キタイト云フヤウニ了解シマシタカラ、自由党ノ修正案ヲ北君カラ一ツ御話ヲ願ヒマセウ、御手許ニ出シテアル自由党ノ刷物ガ二枚アリマスガ、是ハ必ズシモ完璧デアリマセヌカラ、此ノ印刷物ヲ訂正スルコトヲ、廿日出君或ハ江藤君カラ一寸前以テ御話シテ戴イタラドウデセウ、差上ゲテアル印刷物ノ訂正スベキ所ヲ……
○江藤委員 前文ノ所デ少シ落チタリ、ソレカラ修正漏レノ所ガゴザイマスカラ、前文ノ所ヲ一寸御修正ヲ御願ヒシタイト思ヒマス、四行目ノ中頃カラ「ここに國民の總意が至高なものであることを宣言し、」トアリマスノヲ、「ここに主權が國民に存することを宣言し、」ト致シマス、ソレカラ九行目ノ中頃ノ「我らは、この憲法に反する一切の法令と詔勅を廢止する」トアリマスノヲ、「我らは、この原理に反する一切の憲法、法令及び詔勅はこれを廢除する」ト致シマス、ソレダケデス
○北(れい)委員 私カラ、自由党、進歩党トモ話合ヒマシタ前文ノ修正意見ヲココニ申上ゲマス、尚ホ各条ノコトニ付テハ、憲法審議会ノ委員会ニ長ク出テ居ツタ江藤君ニ御願ヒシテ、足ラザル所ヲ私カラ補足致シマス、ソレカラ進歩党ノ説明ノ時ニ、吉田君カラ御願ヒシタイト思ヒマス、是ハ自由党ト進歩党ノ共同案ト同ジヤウデアリマスガ、前文ノ修正点ニ付テ御説明申上ゲタイト思ヒマス、是ハ率直ニ言ヒマシテ、本会議ヤ委員会ノヤウナ公開ノ席デハ申シニクイノデアリマス、ト云フノハ、是ハ私共英文ト日本文ト両方一緒ニ並行的ニ起草シタモノデアルト云フ前提カラ言ツテ、日本文ノ不正確ナ所ガ大分アリマス、併シ英文ハ、先程笠井君カラ御話ガアツタ通リ、非常ニ疑義ガアルト思ヒマスガ、其ノ疑義ハ、十分ニ出来ナクテモ、意味ダケデモ日本文デハモツト正確ニ致シタイト云フ気持カラ修正致シタノデアリマス、第一カラ一寸読ンデ参リマスト、「日本國民は正當に選擧された國會議員を通じて行動」スルモノデアツテ、是ハ英文ヲ御参照下サレバ非常ニ結構ダト思フノデス、「現在及び將來のために、諸國民との平和的協力の成果と、日本國全土にわたる自由の惠澤とを確保し、政府の行動によつて再び戰爭の慘禍を發生させまいと決意し」ノ「させまいと」ハ、元ノ方ヲ生カシテ「しないやうにすることを」トシ、「しないやうにすることを決意し、ここに主權が國民に存することを宣言し、この憲法を確定する」、先ヅ是ダケニ付テ修正ノ理由ヲ御説明申上ゲマス、英文ノ方カラ行キマスト、「ウイー・ザ・ジャパニーズ・ピープル・アクティング・スルー」ト、英文デハ唯「スルー」トアルノヲ、「通じて」トナツテ居リマスガ、此ノ「アクティング・スルー」ノ「スルー」ハ、英語ヲオヤリニナツタ方ハ御存知デセウガ、「プレポジティヴ・パーティシプル」デ「フー」ニ相当スルモノデアリマス、ソコデ日本国民ト云フモノノ解釈デアリマスガ、「日本國民は正當に選擧された國會議員を通じて行動」スルモノデアル、詰リ日本国民ハ大体ニ於テ国会議員ヲ通ジテ議会主義ヲ奉ジツツ活動スルモノデアル、何故国会ニ於ケル選挙セラレタ議員ヲ通ジテ、トヤツタカト云フト、「國會における正當に選擧された」ト直訳流ノ言葉ヲ用ヒマスト、国会デ選挙シタヤウナ印象ガ与ヘラレマス、所ガ「リプリゼンタティヴ・ダイエト」ト云フノハ国会ニ於ケル代表者、即チ「リプリゼンタティヴ」デ、「アメリカ」デハ下院ノコトヲ「ハウス・オブ・リプリゼンタティヴ」ト言ヒマス、「リプリゼンタティヴ・オブ・ダイエト」ト云フノハ明カニ広イ意味ノモノデス、ソレカラ「イン・ザ・ダイエト」デスガ、日本デハ「パーラメント」トカ「コングレス」トカ使ヒマスガ、是ハ大体「ダイエト」ト「ドイツ」流ニ用ヒテ居リマス、ソコデ思切ツテ日本流ニ意味ヲ分リ易ク「日本國民は正當に選擧された國會議員を通じて行動し」ト斯ウ致シタノデアリマス、本当ハ「正當に」ナドモ、「デューリー」デアリマスカラ、「正當に」トスルト俗語的ニナルカラ、「公正に」ト云フヤウナ言葉ヲ用ヒタラ宜カラウト云フ考ヘモアリマシタケレドモ、成ベクハ政府提案ノ草案ヲ尊重スルト云フ意味デ、大シテ不当デナイ所ハ生カシタイ、社会党ノ前文全部ヲ書キ直スト云フ気持ハ我々ニモ分リマス、貴族院モ全体ニサウ云フ空気ガ強イノデアリマス、ケレドモ之ヲ全部書キ直スト云フコトニナリマスト、国際関係モアリマスシ、非常ニ是ハマチマチニナツテ、全部ノ承認ヲ得ルト云フ成案ハ中々得ニクイト思ヒマス、成ベク政府提出ノ草案ヲ尊重シマシテ、ソレニ即シテヨリ正シイモノヲ得タイト云フ考ヘデアリマス
「現在及び將來」ト云フ言葉ヲ入レタノハ、「我ら自身」ト云フノガ、今マデノ日本ノ法律ノ用語ニハサウアリマセヌ、明治天皇ノ憲法発布ノ詔勅ノ中ニモ、「現在及將來ノ臣民ハ」「現在及將來ニ」ト云フヤウナ言葉ガチヨイチヨイ見受ケラレルノデアリマスカラ、「現在及び將來のために」トシテモ、現在ノ国民ト将来ノ国民、即チ我々ノ子孫ノコトニ当ルト考ヘマシタノデ、「現在及び將來のために」ト、成ベク日本人ニ親シミ易イ言葉ヲ用ヒタ
「諸國民との平和的協力の成果と、日本國全土にわたる自由の惠澤とを確保し」、是ハ翻訳トスレバ大分違ツテ居ルヤウデアリマスガ、政府ガ初メテ公ニシタ案文ニハ、「成果」ト云フ言葉ガ載ツテ居ル、此処ニ私ハ改正憲法ノ時事通信ガ書イタノヲ持ツテ来テ居リマスガ、此ノ中ニハ「平和的協力の成果」トナツテ居ル、ナゼ之ヲ生カシタカト云フト、此ノ憲法ノ性質ハ、一ツハ諸国民トノ間ノ平和主義、国際的平和主義デアリ、国内的ニハ自由主義デアル、「デモクラシー」ノ意味デモ同ジコトデス、此ノ二ツガ特徴デアルカラ、「諸國民との平和的協力の成果」、此ノ「成果」ト云フ言葉ヲドウシテモ生カシタイト思フノハ、成果ト恵沢トノ二ツヲ確保スル、「成果」ト云フコトガナイト、唯「協力」ダケデハイカヌ、ト云フノハ、国際的平和協力ガ出来レバ、日本ノ絹ハ南米ニモ行ケバ、濠洲ニモ行ク、濠洲ノ羊毛モ来ル、「アルゼンチン」ノ肉モ来レバ、「ブラジル」ノ「コーヒー」モ来ル、是ガ成果デアル、「成果」ト云フ言葉ハ一寸固イヤウニ考ヘラレマスガ、今度アタリノ農林省ノ法案ノ中ニ沢山用ヒラレテ居ル言葉デアリマス、日本ノ国民ニトツテ必ズシモ固苦シイ言葉デナイト思ツテ居リマス、「平和的協力の成果と、日本國全土にわたる自由の惠澤とを確保」スル、「自由の福祉」トシタト云フコトハ私ハ非常ニ不服デアル、是ハ「ザ・ブレッシングス・オブ・リバーティ」ヲ「セキュアー」スルト云フコトハ、「アメリカ」ノ現行憲法ノ中ニ出テ居ル、是ハ思ヒ切ツテ「惠澤」ト云フヤウナ言葉ヲ用ヒテ、自由ト云フモノガ与ヘル恵沢――実際ノ意味ハ自由ハ「サブゼクト」デ、恵沢ハ「オブゼクト」ニナツテ居ル、文法的ニ言フト、此ノ「オブ」ハ「サブゼクティヴ・オブ」ト云フ文法的ナ「オブ」デ、自由ガ恵沢トナツテ、恵沢ヲ生ズル、斉藤ノ辞書ニモ「オブ」ニ関シテ色々アリマス、言論ノ自由、出版ノ自由、凡ユル自由カラ恵ミガアル、之ヲ「福祉」ト書クト、「ウェルフェア」ニ当ル、公共ノ福祉トカ、福祉ト云フ言葉ガ度々用ヒラレマスガ、サウ云フ「ウェルフェア」ヂヤナイ、「ゴッド・ブレス」、非常ナ恵ミガ自由カラ生ズル、余程是ハ大キイ意味ガアル、「フルーツ」ト「ブレッシングス・オブ・リバーティ」ノ二ツヲ日本国民ガ確保スル
「政府の行爲」ト云フノヲ「行動」トシタノハ、「アクション」ト云フノハ大抵行動ト訳スルカラ、行為デハピント来ナイ、倫理学デハ行為ト訳スノハ、大概「アクティヴ」ヲ行為ト訳シマス、多少静的意味デス
ソレカラ、「日本國民は正當に選擧された國會議員を通じて行動」スルモノデアツテ、「アクティング・スルー」、此ノ「アクティング」ト相呼応スル意味デ、「行爲」スルモノデアルト言ツテハ工合ガ悪イ、ソコデ「政府の行動によつて再び戰爭の慘禍が發生しないやうにすることを決意」スル、私ハ是ハ非常ニ意味ガ深イト思フ、今度ノ戦争ガ議会ノ協賛ヲ俟タズシテ、天皇ノ大権デ――輔弼ノ責任ハアツタガ、天皇ノ大権ニ依ツテ生ジタ、ト云ヘバ非常ニ露骨ニナルガ、「アメリカ」デスラ成ベクソレヲ避ケテ居ルヤウナ状態デアリマスガ、政府独断ノ行動デ戦争ガ起キタ、国会ト云フモノガソレ以上ノ権威者デアレバ、政府ノ行動デ戦争ガ起キル筈ハナイ、国民ノ参与、議会ノ協賛ガナケレバナラヌカラ、「國會議員を通じて行動」スルモノデアルト云フコトガ此処デハ非常ニ大切デアル、政府ノ行動デ戦争ノ参禍ガ将来発生シナイコトヲ決意シテ、「ここに主權が國民に存することを宣言」スル、ドウシテ「主權が國民に存する」ト思切ツテ訳シタカト云フト、英文ノ方デハ可ナリ国民ノ意思ノ主権性ト云フモノガ書イテアリマス、是ハ議会デモ、社会党、共産党方面カラ、主権論ガハツキリシナイ、国民主権ト云フコトガハツキリ出テ居ラヌヂヤナイカト云フ主張ガアツタ、御尤モデ、此ノ場合ニ「國民の總意」ト云フト、唯国民ノ多数決ト云フ意味ニ取ラレルカラ、思切ツテ「主權が國民に存する」、是ハ社会党、共産党ハ絶エズ主張ヲシテ、非常ニ賛成シテ居ル、我々ハ斯ウ云フ問題ニ付テハ全国民ガ一致シテ支持シテ貰ヒタイ、唯人民主権ト云フ言葉ヲ避ケタノハ、人民ト云フト、共産党ナドノ人民ト云フノハ、支配階級ニ対スル人民、単ニ天皇ニ対スル一般国民ノ意味デナクテ、人民戦線ナント云フ言葉ハ、「ガヴァメント」、「ルーラー」ニ対シテ、「ザ・ルールド」、支配サレタ人々ト云フ意味ガ含マレルカラ、人民ヲ避ケテ、天皇ヲ含ンダ国民全体ニ主権ガ存スル、之ヲハツキリ此処デ述ベタ方ガ宜カラウ、「主權が國民に存することを宣言」スル、斯ウスレバ連合国ナドモ相当ニ納得シハシナイカ、政府モ国民主権ハ認メテ居ル、国家主権ト国民主権ハ実質ニ於テサウ違ヒハナイ
ソレカラ、「この憲法を確定する」、実ハ何故「制定」スルト云フ言葉ヲ用ヒナイカト云フト、政府ノ意見モ質シテ見タガ、「制定」ト云フト新タナ憲法ヲ作ルコトニナル、ソコデ現行憲法第七十三条ノ改正規定ニ依ツテ出タモノデアルカラ「確定する」トシテ、其ノ苦心ガアルカラ之ヲ生カシタ、併シ英文ノ方デ見ルト「ドゥ・オーデン・エンド・エスタブリッシュ」トナツテ居ル、是ハ非常ニ意味ガ強イ、神ノ御旨ニ従ツテ――日本デ言フト誓ツテト云フ意味ガアルガ、ソレヲ簡単ナ言葉デ現ハセナイカラ、涙ヲ呑ンデ平凡ナ言葉ニシテアル、本当ハ「ドゥ・オーデン」デスカラ、原語ナラ「コノ憲法ヲ確定スルナレ」ト云フコトニナルガ、日本語デハソコマデ出ナイカラ「確定する」ト云フコトヲ生カシタ
其ノ次ハ「そもそも國政は」、ソコデ「ガヴァメント」ノ説明ニナツテ来ル、「そもそも國政は、國民の崇高な信託によるものであり、その權威は國民に由來し、その權力は國民の代表者がこれを行使し」、「行ひ」ト云フノヲ「行使し」トシタノハ大シタコトハアリマセヌガ、「由來し」ト云フ二字ヲ用ヒタ以上ハ、「行使」、今マデデモ権力ヲ「行フ」ト云フヨリ「行使」ヲ余計ニ用ヒテ居ル、初メテ政府ガ発表シタ案文ニモ行使ト書イテアル、ソレヲ参照シテ「行使」トシタ
ソレカラ「その便益は」、是ハ非常ニ問題ニナツタノデスガ、「ベニフィッツ」トナツテ居ルガ、初メ政府ノ案ハ「利益」トナツテ居リマスガ、是ハ「インタレスト」、政府ガ勘定デモヤツテ金ヲ儲ケタト云フ意味ノ「利益」ト考ヘラレル、此ノ「ベニフィッツ」ハ、政府ガ国民ニ与ヘタ「利益」「ベニフィッツ」、此ノ言葉ヲ用ヒタノハ満足スベキモノデハアリマセヌカラ、皆様方ノ御批判ニ依ツテ訂正シヨウト言ハレレバ訂正シマス、此ノ憲法ノ八十五条ニ、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは團體の使用、便益」ト云フ言葉ガアル、其ノ時ニ「ベニフィッツ」ニ当ル言葉ヲ用ヒテアル、之ヲ「稗益」トシヨウト思ツタノデスガ、「稗益」トスルト文字ガ少シ面倒ニナルノト、人心ニ稗益スルト云フヤウニ、名詞ニ用ヒテ居ル例ガ少イ、ソコデ此ノ憲法ニ「便益」ト用ヒタノデアリマス、モウ一ツハ、憲法発布ノ場合ニ於ケル明治天皇ノ御詔勅ニ、憲法ガ国民ニ与ヘル幸福ノコトヲ、慶福ト云フ言葉ヲ用ヒテアル、是ナラピツタリスルカト思ヒマシタガ、此ノ憲法ノ政府提出ノ原案ノ終ヒノ方ノ便益ト云フ言葉ハ一寸俗ツポクテ面白クナイ、併シ仮名文字ニスルト云フコトハ、山本有三サンガ当時ノ内務大臣ノ三土サンニ勧メテ、初メハ文語体デ来テ居ツタノヲ急ニ直スコトニナツタラシイ、三土サントモ先達テ二度バカリ会ツタ時ニ、初メハ「自由の惠澤」トシ、此処ハ「慶福」トシタラ一番宜イナト言ハレマシタ、私モ其ノ方ガ宜クハナイカト思フガ、併シ憲法ノ草案ニ便益ト用ヒテアリマスノデ私ハ便益ト云フ言葉ヲ用ヒマシタ、「その便益は國民がこれを享受するものである」、是モ「受ける」トナツテ居リマスガ、「由來し」ト斯ウシタ以上ハ、「享受するものである」トシタ方ガ宜カラウ、第一ニ政府ガ草案ヲ発表シタ時ニハ、ヤハリ「享有」ト云フ言葉ニナツテ居リマス、是ハ単ニ文章ノ綾デアリマスガ、多少「デフィニット」スルコトニナリハシナイカト思ヒマス、「これは人類普遍の原理であつて、この憲法は、この原理に基くものである」、文章ノ綾カラ言フト「この憲法は實にこの原理に基くものである」ト云フヤウニ、「實に」ト云フ言葉デモ入レタラ一応ハ宜クナルト思ヒマスケレドモ、成ベク政府草案ニ依ツテ行クト云フナラ訂正ノ用意ハアリマス、「我らは、この憲法に反する」ト云フノハ間違ヒデス、「ヒヤーウイズ」ト云フノハ人類普遍ノ原理デアツテ、「この原理に反する一切の憲法」ト云フノデアリマス、実ハ自由党デ審議シタ時ニ、ナゼ憲法ト云フ言葉ヲ用ヒナイカト言ツタノデアリマスガ、英文ノ上デハ「オール・コンスティチューション」トアリマス、此処デハ「一切の憲法」ト云フト、現行憲法一ツシカナイヂヤナイカト云フ考ヘガアルカモ知レマセヌガ、私ハ聖徳太子ノ十七条憲法、或ハ大宝令ト云フヤウナ既往法ニナルヤウナモノヲココニ「オール・コンスティチューション」ト言ツタモノヂヤナイカト思ヒマス、「この人類普遍の原理に反する一切の憲法、法令及び詔勅を廢除する」、「廢止する」デハ工合ガ悪イノデ、是ハ「リヂェクト・エンド・リヴォーク」トナツテ居リマス、「リヂェクト」ト云フノハ、寄セ付ケナイ、強制スレバ反抗スルト云フ意味デ、ソコデ「廢除する」ト云フ方ガ強クナルノヂヤナイカト思ヒマス
○森戸委員 議事進行ノコトデアリマスガ、大体各党ノ修正ノ根本ノ問題ヲ御話戴イテ、詳シイコトハ其ノ箇所其ノ箇所デ御説明ニナツテ戴ク方ガ議事ノ進行上宜イノヂヤナイカ、ソレデ今ノ御話ハ大変結構デアリマスケレドモ、斯ウ云フ方針デ、例ヘバ大体誤訳ヲ改メ、文章ヲ直スト云フ所デ前文ヲ改メタト云フヤウナ方針ヲ御説明願ツテ行ツテ戴イタ方ガ少シ早ク進ムノヂヤナイカト思ヒマス
○北(れい)委員 大体其ノ趣意ニ副ウテ後半ハ極ク簡単ニ申上ゲマス、修正理由トシテハ少シ長イカモ知レマセヌガ、前文ハ非常ニ大事ダト思ヒマシタカラ特ニ詳シク申上ゲマシタ、「日本國民は、常に平和を念願し、人間相互の關係を支配する」、此ノ後ハ原文ト政府原案ト余リ違ツテ居リマセヌ、「高遠な理想を深く自覺するものであつて、我らの安全と生存をあげて、平和を愛する世界の諸國民の公正と信義に委ねようと決意した。我らは、平和を維持し、專制と隷從と」ト、「隷從」ノ次ニ「と」ガ入ツテ居リマスガ、之ヲ抜イタ、ナゼカト云フト、「專制と隷從」ト「壓迫と偏狹」ト云フノハ対句ニナツテ居リマス、四ツハ対等ノ比較ヂヤナイ、一方ハ専制ガアリ、隷従ガアル、偏狭カラ圧迫ヲ加ヘルコトニナルカラ、是ハ対句デアル、「地上から永遠に拂拭」ノ「拂拭」ト云フノハ少シ難カシ過ギルシ、漢字制限モ喧シク言ハレテ居ル時代デアルカラ「除去する」トシタ、「國際社會に伍して、名譽ある地位を占めたいものと思ふ。我らは、すべての國の國民が、ひとしく恐怖と缺乏から解放され」、是ハ余リ直訳ニ過ギル、「恐怖も缺乏もなく、平和のうちに生存する權利を有することを確認する。我らは、いづれの國家も、自國のことのみに專念してはならないのであつて」他国ノコトハ顧ミズト云フコトハ註釈トシテ掲ゲタモノデアツテ、無用デアリマスカラ除キマシタ、「自國のことのみに專念してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであると信ずる。この法則に從ふことは、自國の主權を維持し、他國と對等關係に立たうとする各國の責務であると信ずる。」、是ハ元通リデス、「日本國民は、國家の名譽に懸け、全力をあげてこの高遠な主義」、此ノ「主義」ト云フ言葉ハ、前ノ「原理」ヲ承ケテ来テ居ル、「この高遠な原理と目的を達成することを誓ふ。」、是ハ「主義」ヲ「原理」ト変ヘタダケデアリマス、前文ニ付テノ我々ノ修正箇所並ニ修正ノ理由ハ是ダケニ致シマス
○芦田委員長 江藤君、各条ニ対スル修正ヲ一寸説明願ヒマス――其ノ前ニ、是ハマダ党デ全部ノ打合セガ済ンデ居ナイノデスケレドモ、第四条ノ一行目「天皇は、この憲法の定める國務のみを行ひ、政治」ト云フ字ノ代リニ「その他の國政」ト云フ風ニ変ヘル、ソレカラ第二項ノ「その權能」ト云フ四字ヲ取ツテ「前項の國務」ト云フ風ニ直シタイ、是ガ御手許ニ出シタ修正案ニ載ツテ居リマセヌカラ――ソレカラ第九条ノ「國の主權の發動たる」ト云フ字ガアリマスガ、ソレヲ「國權の發動たる」ト云フ風ニ訂正スルト云フノガ、御手許ヘ御配リシタノニ載ツテ居リマセヌカラ、一寸ソレダケ付加ヘテ申上ゲテ置キマス――ソレデハ江藤君ドウゾ
○大島(多)委員 議事ノ進行ニ付テデゴザイマスガ、各党派前以テ修正ノ説明ヲスルト云フコトハ非常ニ時間ガ長ク掛ルト思ヒマス、ソレデ是ハ各党派デ之ニ出シテ戴イタナラバ、私ハソレヲ諄々説明セヌデモ分ルト思ヒマス、ソレデ例ヘバ社会党ノ方針ノヤウナ特別ノモノダケ御説明戴イテ、各党派ヤル必要ハナカラウト思ヒマス、其ノ前ニ各党派カラ斯ウ云フ風ニ「プリント」シテ戴クコトガ必要デハナイカト思ヒマス
○芦田委員長 如何デスカ、皆サンノ御意見ハ……
○鈴木(義)委員 ソレハ誤解ガアルノデ、余リ各論ニ入ツテシマツタノデ是デハ迚モ進マナイト云フ御考ヘデセウガ、是ナドヲ拝見スレバ分ルノデ、特ニ何カ注意スル所ガアツタラ仰シヤツテ戴キタイ
○大島(多)委員 之ヲ見レバ別ニ説明下サラヌデモ、前文ノ所ハ北先生ノ御説明ガ必要デアツタカモ知レヌガ、後ノ方ハ大体分ルト思ヒマス
○鈴木(義)委員 ソレデハ自由党ノハ略シテ、次ノ党ニ移ツテ戴イテハ……
○芦田委員長 ソレデハ進歩党ノ提案ヲ……
○原(夫)委員 進歩党ハ「プリント」シテ居マスガ、ゴタゴタシテ居マスカラ……
○芦田委員長 一寸申残シマシタ、第二十二条第二項ノ終ヒノ所ニ「法律は、個人の權威と兩性の本質的」云々ト云フ文字ガアリマスガ、「個人の權威」ト云フノハドウモ少シ訳語トシテ――官聴ノ「オーソリティ」ト云フノハ宜イケレドモ――ソコデ「インディヴィデュアル・ディグニティ」、個人ノ尊厳ト両性ノ本質、サウ云フ案ヲ付加ヘテ置イテ戴キタイト思ヒマス、ソレデハ社会党ニ願ヒマス
○鈴木(義)委員 社会党ノハ、是ハ党内デ使ツタモノヲ、印刷ガ中々難カシイモノデスカラ流用サセテ戴キマス、最初ノ一頁ハ鉛筆デ捧ガ引イテアル一ダケ生カシテ「前文の簡潔化」、各条ニ対スル「字句の修正」、是ハ北サンノ言ハレタ案ニ賛成デスカラ別ニ協議シテ戴キマス、一頁ノ裏ノ「即位に當つては」ト云フ前ニ、「皇位繼承の順位を變更するとき竝に」ヲ入レテ戴キタイ、ソレカラ二頁ノ裏ニ九条ガアルノデスガ、ソコニ国権ト直シテ貰ヒタイト云フコトヲ主張シヨウト思ツタノデスガ、既ニ自由党カラ出マシタカラ是ハ書イテ戴カヌデモ宜イ訳デアリマス、ソレカラ六枚目ノ表ノ最後ノ所ニ「草案第二十三條第一項」ト書イテアリマスガ、「總て國民は健康にして」ノ次ノ「最小限度の」ト云フ五字ヲ削リマス、其ノ裏ニ来テ、「文化的水準」ヲ「文化的水準に適する最小限度の生活を營む權利を有する」ニシテ戴キタイ、ソレカラ八枚目ノ表ノ前カラ四行目、「保證される」ノ「證」ノ字ハ「障」ト云フ字ヲ書イタ「保障」、ソレカラ九枚目ノ裏、「國會」ノ所ニ「備考」トシテ、「參議院に就ては」――「備考」ヲ取リマシテ、「職能代表の構成を認めざるに於ては參議院はむしろ不必要」、ソレダケ訂正シテ貰ヒマス
ソコデ斯ウ云フ提案ヲシタ理由ヲ簡単ニ御説明申上ゲマス、政府提出ノ草案ハ、私共ノ立場カラ見テモ中々良ク出来テ居ルト思フノデアリマシテ、基礎案トシテ之ヲ採択スルコトニハ吝カデナイ、唯冗漫ナ、又難解ト思ハレル字句ハ適当ニ修正ヲ致シ、ソレカラ憲法ヲ以テ国政運用ノ技術的ナ規範ダケ――議会ガドウ云フ風ナコトヲスル、裁判所ガドウ云フ風ナコトヲスル、技術的ナ規範ダケヲ規定スルモノトスル、考ヘ方ニ於テハ既ニ政府草案デモ冗漫ニ過ギルト云フ非難ガアリ得ルノデアリマスガ、我ガ党ハ、近代ノ各国ノ民主的憲法ノ傾向ニ鑑ミマシテ、憲法ヲ以テ国民生活ノ一ツノ教科書トシタイト云フコトガ適当デアルト信ジマス為ニ、将来ハ斯ウ云フ法律ヲ作レト云フ立法指針並ニ道徳的ナ意義ノアル規定ヲモ採入レテ、サウシテ之ヲ一ツノ完璧体トシテ、憲法一巻ヲ学ブコトニ依ツテ健全ナ国民ニナリ得ルト云フヤウナ風ニシタイト云フノガ、私共ノ理想ナノデアリマス、サウ云フ立場カラ是ハ修正ヲ試ミタノデアリマス、此ノ点ヲ御諒承願ヒタイ
ソコデ我ガ党ノ草案修正ノ方法ハ、曩ニ発表致シマシタ我ガ党ノ改正要綱ノ趣旨ニ副フノデアリマシテ、アノ要綱ハ非常ニ抽象的、包括的デアツタノデアリマス、ソレヲ一層具体化シテ稠密化シテ御手許ニ差上ゲタ訳デアリマス、要約シテ申シマスト、第一ハ国民主権ノ建前上、天皇ノ御即位、皇位ノ継承順位ノ変更、退位、譲位、摂政ノ就任ト云フヤウナコトニモ国会ガ参与スルコトトシタイ、スベキデアル、斯ウ考ヘルノデアリマス、ソレカラ第二ハ、ヤハリ国民主権ノ民主的ナ憲法ニ於テハ、天皇ノ大権ガ草案デモ尚ホ多過ギル、之ヲ更ニ縮減シタイ、ソレカラ第三ニ、参議院ノ構成ニ付テハ特ニ慎重ナ御考慮ヲ煩ハシタイ、ソレカラ第四ニ、国会ノ任務ハ非常ニ今度ハ重要ニナリマスルカラ、会期ヲ出来ルダケ長クシタイ、原則トシテハ無休ト云フコトニシタイト云フ気持デアリマス、ソレカラ第五ニハ、草案ニハ、身体、生命、言論、宗教、通信ト云フヤウナ政治的自由ノ保障ガ非常ニ詳シイケレドモ、家庭生活、家族生活、共同生活ノヤウナモノノ保障、保護、助長ニ関スル規定ガ不十分デアルカラ、之ヲ補充シタイ、第六ニハ、経済生活ノ保護保障ガ不十分デアル、此ノ点ハ、社会主義政党デアル我ガ党デハ強ク要望セザルヲ得ナイノデアル、我ガ党ハ曩ニ発表致シマシタ要綱ニ於テハ、国民ノ生存権ヲ保障スルト云フ概括的規定ニ致シテ置イタノデアリマスガ、之ヲ大幅ニ具体化シ、条文化シテ、ソレニ依リマシテ将来ノ立法ノ指針タラシムルト共ニ、国民生活ノ指標タラシメタイ、斯ウ云フ気持ヲ持ツテ居ル、第七番目ニハ、国民平等ノ原則ニ鑑ミマシテ、華族ノ名称ノ如キハ即時廃止スルコトガ適当デアル、ソレカラ第八ハ、之ヲ一ツノ国民経典タラシメル建前上、草案ノ規定ニハ解釈上含マレテ居ル、斯ウ思ハレルモノデモ、明瞭ニスル為ニ特ニ規定ヲ致シタイ、行政訴訟ヲ許ストカ、公ノ不法行為ニ対スル損害賠償ガ取レル、寃罪者ニ賠償ヲ与ヘルト云フヤウナコトモ、実ハ解釈カラ言ヒ得ルト思フノデアリマス、併シ一般国民ニ分ラセルヤウニ規定シテ置キタイ、斯ウ云フ建前デ、御手許ニ上ゲタヤウナ修正案ヲ提出シタ次第デアリマス、其ノ各条ニ付テハ、後デ其ノ所ガ来マシタラ御説明申上ゲマス、サウ云フ根本方針デアルト云フコトヲ御諒承願ヒタイ
○芦田委員長 林君ハ何カ修正ガ……
○林(平)委員 私ノ方ハマダ「プリント」ガ出来テ居リマセヌノデ……
○芦田委員長 ソレデハ大島君カラ先ニ……
○大島(多)委員 私ノ方ハ其処ヘ「プリント」ヲ差上ゲテ置キマシタノデスガ、別ニ説明スル所ハアリマセヌ、唯「プリント」ガ間違ツテ居ル所ダケ申上ゲマス、第九十四条ノ所ニ「最高法規であり」ヲ削ル、ト書イテアリマスガ、此ノ所ハ「國の最高法規とし」ト云フノヲ削ル、サウシテ「條約の條規に反する法律」、斯ウスルノデアリマス、九十四条ヲ全文読ンデ見マスト、「この憲法竝びにこれに基いて制定された法律及び條約」其ノ次ニ「は」ト書イテアリマスガ、「は」カラ「國の最高法規とし、その」マデ削ツテ、「條約の條規に反する法律」、斯ウナツテ来ル
○芦田委員長 是ハ私ノ方デ九十四条ノ修正ヲシタ理由ハ、私ハ余リ深ク研究シナイガ、此ノ文章ハ「アメリカ」合衆国憲法第六条ノ第二項ヲ直接其ノ侭ココニ入レテアル、所ガ日本デハ、「アメリカ」ノヤウニ合衆国ノ法律トカ各州ノ法律トカ云フ区別ガナイ、「アメリカ」ノヤウナ国デハ、各州トソレカラ連邦トノ立法ガアルカラ、サウ云フモノヲ入レル必要ガアルガ、日本ニハ其ノ必要ガナイ、ソレヲ取纏メテ斯ウ云フ風ニシタ訳デス、ソコデ自由党ノ修正デ、「竝びにこれに基いて制定された法律及び條約」ト云フノヲ削ツタノハ、サウ云フ理由デ削ツタ訳デス、ソレデスカラ、アナタノ修正ハ此ノ「最高法規」ト云フ字ヲ取ラウト云フノダガ、是ガ一番此ノ章ノ眼目デアル、残シテ置クトスレバ憲法ガ国ノ最高法規デアルト云フ点デス、ソレニ反スルモノハ効力ガナイ、斯ウ云フ規定ナノデス
○鈴木(義)委員 私共ノ方ハ原案ノ通リ是デ宜シイト思ツテ居リマス、「アメリカ」トハ立場ガ違フケレドモ、ヤハリ法理上斯ウアルベキダ、其ノ条文ニ来タ時ニ……
○芦田委員長 ソレデハ其ノ時ニ是ハ何シマセウ、サウスルト笠井君ノ方ハ何カ準備ハ出来テ居リマスカ
○笠井委員 後デ何シマセウ
○芦田委員長 サウスルト明日デモ進歩党ノ方ノ説明ヲ……
○吉田(安)委員 明日間ニ合フヤウニ今準備ヲシテ居リマス
○芦田委員長 今日午後ハ予算ノ提案理由ノ説明ガアツテ、之ニ関連スル質問ガ出マスカラ、本会議ニ出席シタ方ガ適当デハナイカト云フ意見ガアルノデスガ、ドウシマセウカ
〔「賛成」ト呼ブ者アリ〕
○芦田委員長 ソレデハ今日ダケハ本会議ノ為ニ之ヲ休ンデ、サウシテ明朝十時カラ開クコトニシテ宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○鈴木(義)委員 成タケ明日ハ修正案ガ出揃フヤウニ御願ヒシタイ
○大島(多)委員 サツキ廿日出サンカラモ、笠井サンカラモ、御意見ガ出マシタケレドモ、成ベク立派ナ憲法ヲ作リ上ゲタイ為ニ、少クトモヤハリ文章ナンカガドウモヲカシイト云フヤウナモノヲ作リ上ゲタラ困ルデセウカラ、其ノ方面ノ権威者ノ方ガ此ノ委員ノ中ニイラツシヤイマセウカ
○芦田委員長 ソレハ修辞、文法其ノ他ノコトカ、或ハ条文ヲ作ル法制的ノ専門家ト云フノデスカ
○大島(多)委員 イイエ、法制的デハナクテ全ク国文的ノ方デス、実ハ文部省ノ教科書編纂ヲシテ居ラレタ人デ、新政会ノ方ニ井上赳ト云フ人ガ居ラレマスガ、此ノ人ハ其ノ方面ニ非常ニ詳シイ方デアリマシテ、現在ノ草案ヲ見テミルト、文語ト口語トガ入リ混ツテ滅茶々々ニナツテ居ル、ダカラソレダケハ何トカ修正シタイモノダ、ソレデ自分ハ別ニ委員トシテ参加サセテ貰フト云フコトハ望マナイケレドモ、「オブザーヴァー」トシテデモサウ云フモノノ御訂正ノ御手伝ヒヲシタイト云フヤウナ御話ガゴザイマス、斯ウ云フ人ガ此処ニイラツシヤイマシタラ、勿論サウ云フ必要ハナイ訳デアリマスガ……
○芦田委員長 私ハサウ云フ同志ノ方ノ案ヲ一寸拝見シタノデス、ソレデ自由党ノ修正案ヲ作ル時ニ、一応其ノ御意見ノ現ハレテ居ルモノヲ拝見シテ、多少漢字制限ノ中ニ触レテ居ルモノ、其ノ他ヲ採入レテ修正案ヲ作ツタノデスガ、又一方カラ考ヘルト、文法ヤ文句バカリヲ考ヘテ居ル為ニ、実際問題トシテ今ノ憲法ニ、ソレヲ其ノ侭漢字制限ナドヲ受入レテ宜イカドウカト云フコトモ尚ホ研究ノ余地ガアルヂヤナイカ、例ヘバ漢字制限ニハ現在引掛ツテ居ツテモ、憲法トシテハ之ヲ使ツテ、寧ロ漢字制限ノ方ヲ修正シテ貰ヒタイト云フヤウナ点モアルノデス、ソレデスカラドウモ其ノ人ノオイデヲ願ツテ、其ノ人ノ御意見ノミニ依ツテ修正ヲスルト云フコトモドウカト思ヒマス、其ノ方ノ修正シタ御意見ヲアナタデモ持ツテオイデ下スツテ、サウシテ委員会デ参考ニスルト云フ程度ノコトニ止メタラドウデスカ、其ノ方ノ御意見ヲ聴イテ一々委員会デ直スト云フコトモ、是ハ極メテ煩雑ナコトデスカラ……
○北(れい)委員 之ニ付テハ私モ少シ交渉ヲ受ケタノデス、実ハ常用漢字ノ委員長ヲシテ居ル山本有三君ガ数回来ラレテ、憲法ニ難カシイ言葉ハ成ベク除イテ貰ヒタイ、払拭ナント云フ言葉ハ除去トシタイ、戦争ノ抛棄ナドモ否認トシタラ意味モ能ク出ルデハナイカ、併シ常用漢字ノ制限内デヤルト、憲法ノ憲ノ字モナクナル、ソコデ成ベク難カシイ字ヲ用ヒナイト云フ趣旨ハ尊重スルケレドモ、常用漢字ト云フ具体的ノ規定ニ囚ハレナイデ――六十何字アルサウデス、如何ニ簡単ナ物ヲ用ヒテモ、三十字ヤソコラ残ルト思フ、ソレデ齋藤国務大臣、植原国務大臣ニモ相談シマシタガ、今度法制審議会ガ出来マシテ、色々法律ヲ作リマスガ、難カシイ字ヲ簡単ナ字ニ代ヘルト云フ趣旨ハ宜イケレドモ、常用漢字ニ縛ラレタラ、迚モ新シイ法律ハ出来ナイト云フ、ソコデ参考ニアナタガ十分承リマシテ、言葉遣ヒノ悪イ所ハ、アナタノ修正意見トシテ持ツテ来ラレタラ宜イデセウ
○鈴木(義)委員 此ノ前文及ビ字句ノ修正ハ、恐ラク御列席ノ方ハ原則トシテ皆御賛成デアル、是ハ又此ノ中デ担任者ヲ決メテ、サウシテ練ル必要ガアル、此処デ一ツ一ツ字句ノ議論ヲシテ居タラ限リガナイト思ヒマス
○芦田委員長 今ノ鈴木サンノ案ハ至極実際的ダト思ヒマスノデ、サウ云フコトニ追々適当ナ方ヲ御願ヒスルコトニシタラ宜イデセウ
○鈴木(義)委員 ソレ等ノ人ガ又誰ト御相談ナサルカ、ソレハ別問題デアル、山本サンノハ私モ拝見シタガ、大抵改悪デアル、唯字ダケヲ考ヘテ、精神ノ方ヲ考ヘテ居ナイ
○林(平)委員 只今大島君ノ言ハレタコトハ、漢字制限云々ト云フコトデハナイ、文章ト云フカ、日本文ト云フヤウナ所ニ重点ガアルト思ヒマスカラ、是ハ大イニ傾聴ニ値スルモノト思ヒマス、大島君、如何デアリマスカ、特ニ此ノ方面ノ材料ヲココニ御持込ミ下サツタラ非常ニ宜イト思ヒマスガ……
○芦田委員長 私モソレニハ賛成デス
○大島(多)委員 私ガ材料ダケ持ツテ来タ所デ、シツカリシタ説明ハ出来ナイ
○林(平)委員 其ノ点ハ今鈴木君モ言ハレタヤウニ、文章ヲ練リ直スヤウナ時ニ、参考ニ其ノ人ニ書イテ貰フトカ、意見ヲ聴クト云フコトニシテ、一応此ノ方ヲ進メテ……
○笠井委員 此ノ小委員ノ中ニハ相当其ノ方ニ詳シイ方モオアリト思ヒマスカラ、ドウデセウ、外部カラト云フコトハ……
○芦田委員長 詰リ大島君ノ御話ノ専門ノ方ハ、愈々最後ノ此ノ字句ヲ練リ上ゲル時ニ是非御協力ヲ願ツテ、其ノ意見ヲ参考ニスルコトハ非常ニ有益ナコトダト思ヒマス、併シ御覧ノ通リノ会議ヲ続ケテ居ルノデアリマスカラ、ソレニ終始御列席ヲ願フト云フ程ノ必要ハ今ノ所ナイヤウニ思フ、デスカラアナタカラ一ツ其ノ辺ノコトヲ其ノ専門ノ方ニ能ク御話置キヲ願ヒタイト思ヒマス
○大島(多)委員 分リマシタ、ソレナラバ私ノ方カラ能ク申上ゲテ置キマス
○芦田委員長 ソレデハ明日午前十時ニ会議ヲ開キマス、本日ハ是デ散会致シマス
午前十一時五十九分散会