宗悦殺し |
安永2(1773)年12月20日,鍼医の皆川宗悦は,小日向服部坂に住む小普請組,深見新左衛門宅へ借金の取り立て−激昂した新左衛門,鞘ぐるみ宗悦を斬り殺す−死骸を家来の三右衛門に捨てさせる.三右衛門は故郷の羽生へ−1774年,深見,お熊を仲働きに採用,実際は妾−深見の妻が病気.12月20日,呼んだ流しの按摩が宗悦の姿に変わる.思わず斬りつけると,宗悦ではなく妻を斬り殺してしまう/1775年,深見,隣家の騒動で突き殺され,家は改易となる.お熊は産んだ子と深川へ.門番の勘蔵は,新吉を連れて下谷大門町へ |
松倉町の捕物 |
深見新五郎,谷中七面前の質屋,下総屋に奉公−女中のお園に恋情.実はお園は宗悦の次女−1776年,新五郎,お園を犯そうと押し倒すと,背中の下に押切があり,その刃でざくざくと切り殺してしまう.新五郎は仙台へ逐電/1778年,江戸に密かに戻ると,松倉町で追手の気配.あわてて隠れた家が捕り方の妻の家で,刃物を隠されてしまい,やむなく二階から飛び降りると,下に押切の刃−新五郎,捕縛され獄門にかかる |
豊志賀の死 |
1793年,根津七軒町に住む富本の師匠豊志賀は,出入りの煙草屋新吉と年が離れているがいい仲になる.実は豊志賀は宗悦の長女−1794年,弟子の若いお久との仲を邪推したせいか,豊志賀の顔に腫物.これがどんどん腫れてくる−看病に疲れた新吉が,戸外でお久と出くわす.2人で鮨屋の2階に上がると,急にお久の顔が豊志賀のようになる−びっくりしてお久を置き去りにして勘蔵の家に戻ると,重病の豊志賀が来ている.駕籠に乗せて戻そうとすると,七軒町の隣人がやって来て,豊志賀が死んだという報せ.駕籠にいるはずだと一笑に付して中をのぞくと無人−豊志賀は自害.新吉の妻を7人まで取り殺すという遺書を見つける |
お久殺し |
1794年8月,豊志賀の墓参で出会った新吉とお久,その場でお久の実家の下総羽生村へ駆け落ち−日が暮れた鬼怒川を渡ると,そこは累ヶ淵.お久,土手の草むらにあった鎌で足を怪我−介抱しながらお久を見ると豊志賀の顔.新吉,思わず鎌でお久を惨殺−それを目撃した土手の甚蔵と格闘となる.落雷の隙に逃げる−逃げ込んだ家が甚蔵の留守宅−甚蔵,新吉から金を強請ろうとするが,新吉が文無しと知り落胆 |
迷いの駕籠 |
新吉,お久が埋葬された羽生村の法蔵寺へ墓参−そこで出会ったお累が江戸育ちの新吉に恋慕.実はお累はお久の従姉妹で,父親は宗悦の死骸を捨てた三右衛門−甚蔵,お久殺しに使われた質屋三蔵の焼き印がある鎌をネタに,お累の兄の三蔵から20両強請る.その晩,お累,煮え湯で顔に大やけど−新吉をお累の婿にという縁談.甚蔵,新吉には借金があると嘘をつき,手切れがわりに金をだまし取る−婚礼の晩,お累の顔の変わりように新吉は驚く.豊志賀の因縁を感じて改心−お累妊娠/1795年,勘蔵が危篤との報せ.江戸へ向かう−勘蔵の遺言で,新吉が深見家の次男だと知る−下総への戻り道,駕籠で亀有へ向かうが,どうしても駕籠が小塚原へ向かってしまう−小塚原で兄の新五郎が現れ,ついには斬られる.とそこで夢から覚める−駕籠から出ると,そこはやはり小塚原.獄門の札に新五郎の凶状が書かれ,豊志賀の妹のお園殺しの下手人だと知る |
お累の死 |
月満ちてお累が産んだ子は,なんと獄門台の新五郎に生き写し−1796年,墓掃除する新吉は,名主惣右衛門の妾,お賤に会う.実はお賤は深見の妾であるお熊の娘−新吉,お累に嫌気がさし,お賤と密通−あきれた三蔵は30両の手切金で新吉一家と縁切り−金に困った新吉,蚊帳をお累の生爪ごと引きはがし,赤子には煮え湯をかけて殺す−その晩,お賤のところにお累の霊.戻るとお累は鎌で自害している−新吉,村の爪弾きになる
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聖天山 |
お賤の頼みで新吉は名主の惣右衛門を扼殺−湯灌を手伝った甚蔵が殺人だと気づく−甚蔵,お賤に金の無心−お賤にたきつけられ,新吉,聖天山に金を埋めたと偽り,甚蔵と2人で金を掘りに行く.隙を見て甚蔵を崖から突き落とす−手負いの甚蔵が襲いかかり,これをお賤が鉄砲で射殺
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麹屋のお隅 |
惣右衛門の息子の惣次郎,水海道の麹屋で女中のお隅と馴染み−1798年,大生郷の天神前の宇治の里で,お隅に惚れた安田一角が惣次郎に因縁をつける−相撲取りの花車が剛力を出して安田一味を追い払う/1799年,旗本の倅,山倉富五郎が作荒らし−惣次郎のところに食客.お隅を口説いたため,叱られる−富五郎,一角に取り入って,惣次郎を弘経寺の裏手で殺害.そこへ花車が通りかかる−花車,落ちていた脇差を証拠に富五郎を問いつめ,安田が犯人だと知る.富五郎逃亡−お隅,わざと愛想付かし.麹屋で飯盛となる−その噂を聞いてお隅に惚れていた富五郎が泊まる.お隅,富五郎から安田の居場所を聞きだす−富五郎殺害に成功.しかし,安田に返り討ちになる |
明神山の仇討 |
1799年(1800年か),惣吉と母,仇討ちに出発−母が腹痛のため塚崎の観音堂に休む.惣吉が薬を買いに行く隙に,母が扼殺される−惣吉,藤心村の観音寺の小僧となる/1802年,松戸の小僧弁天で,馬方作蔵から三蔵のことを聞いた新吉は,待ち伏せて三蔵を殺し,金を奪う−塚崎の観音堂に休む−そこの尼こそ,お賤の母のお熊.惣吉の母を殺した犯人−お賤と惣吉から事情を聞く.新吉とお賤が実は兄妹だと知る−新吉,お賤を鎌で殺害,自分は自害.お熊も鎌で自害−惣吉,還俗して,山賊となった安田が根城としている明神山へ−花車も加勢して怪力を発揮,ついに惣吉は兄の敵の安田一角を討つ
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