ムカルナス:回教建築の鍾乳石状装飾 English 高橋士郎
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正方形様式の修復の事例 煉瓦造のムカルナスは、年を経て、重力負荷の大きい頂上部分から崩壊する。 ナタンズのアル・サマド廟のムカルナスは、正方形様式の上部が崩落した状態であったが、その崩落を近年に極座標様式で補完された。さらに、この誤って復原されたムカルナスの複製が、別の場所のバドラドのアリ・アブスにそのまま再現して新築されている。ムカルナスの永い歴史のなかで、同一の意匠が複製建築されることも稀なことである。 このように崩落した正方形様式の上部を,応急的に極座標様式で補完する方法は、ビスタムのマスジド・イ・バヤジッドや、サマルカンドのシャー・イ・ジンダなどの随所に見られる。近年では観光目的もあって、各地でムカルナスの復元作業がおこなわれているが、その全てが、ムカルナスの造形原理を理解して、オリジナルの復原を目指しているわけでは無い。 ムカルナスの文化遺産を復原する場合には、ムカルナスの造形原理を理解して、本来あるべき姿を復原するべきである。
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| 極座標様式の修復の事例 イスファファンのマスジド・イ・ジョメ中庭東側のイーワーンの古い写真を見ると、上部が崩壊していて、現存するムカルナスの頂点11分割の上半部分は現代に復原したものであることがわかる。 頂点11分割のムカルナスは他には存在せず、極めて不可解な復元である。 また、ヤズドのマスジド・イ・ジョメの頂点10分割の極座標様式も、上部と下部の整合性が悪く、現代の復元である。121a-.gif カラマン1730a-.gif |
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石造様式の修復の事例 煉瓦積層式やパネル懸垂式のムカルナスが風化や地震による崩壊のため、現存する数が少ないのに較べて、石造建築のムカルナスの場合、その風化は表面の劣化程度に止まり、創建当時の姿を多く留めているとおもわれる。 しかしながら、カラマンのハトニエ・マドラサのムカルナスの場合、一見、問題のない石造のように見えるのだが、下部の整然とした正方形様式と三角形格子の組合せに比べて、その上部は実に曖昧な形態であることから、図面化することが困難であり、上部は後世の補完と思われる。795a-.gif |