ムカルナス:回教建築の鍾乳石状装飾 English  高橋士郎

7) 近代におけるムカルナスの創作

 


図版:バルセロナのビセンス邸の喫煙室天井


図版:ハンガリーのペーチのモスク


図版:ヴィソコのモスクの現代的ムカルナス


図版:event“Islam in Sicily”2004

TOLEDO, Santa Maria Catedral
[Washington University ]
[]

 

東西世界の交渉

茶の作法

1867「ペルシア放浪記」ヴァーンベーリ

1897小説「ドラキュラ」ブラム・ストーカ

宮廷芸術騎馬軍団/唯一神教

[植民地地図]

1948小説「1984」ジョージ オーエル

大川周明と聖戦

 

中世レコンキスタの記憶をとどめる、ヨーロッパの西端、イベリア半島のアルハンブラ宮殿の壁面モザイクには、キリスト教徒とイスラム教徒の紋章が共存している。

バルセロナ市の敬虔なカトリック教徒であるアントニオ・ガウディは1885年ビセンス邸の喫煙室天井に独特のムカルナスを創作した。

1880's イングランドのカントリーハウス

ヨーロッパの東端、バルカン半島のハンガリーのペーチ市には、ローマ時代の教会を改修したモスクがあるが、そのキブラの上にはイエス像が共存している。

中世キリスト軍とイスラム軍が対峙した、ヨーロッパ東端と西端において、近代的なムカルナス創作の試みがおこなわれ、独特のムカルナス芸術がみられる事は、興味のあることである。

しかしながら、現代に創作されたムカルナスの造形は、単純なXY座標であったり、ムカルナスの造形原理とは懸け離れた表現が多い。ムカルナス芸術は、近代化に伴い、西洋的な造形原理の影響を受けて、イスラム固有の伝統的な特徴が失われつつある。

1980年に新しく完成したボスニア・ヘルツェゴビナのヴィソコ市の木製ムカルナス(建築家Zlatko Ugljen)は、現代美術を思わせる端正な造形だが、現代美術のグローバル化により、ムカルナスの造形思想が変質していく顕著な例である。

ムカルナスの崩壊は、地震などの自然災害によるだけではなく、多くのムカルナスが戦乱に遭遇して、荒廃と復興を繰り返したにちがいない。ボスニア・ヘルツェゴビナの民族紛争や、現在のイラク戦争サマッラ市での爆破は、今日の問題である。


図版:2003年 バム城塞都市跡「アルゲ・バム」の地震


図版:ボスニア・ヘルツェゴビナのポツィテリの破壊されたモスク

 

 

 おわりに

 


図版:金属線材による習作


図版:金属板の曲加工による習作


図版:金属絞り球面による習作

以上に述べたムカルナスの三つの造形原理(対称性・内面性・水平性)に基づき、著者はムカルナスの創作を試みた。本稿のおわりに、その習作図面を三点しめす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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