高橋士郎   →空気膜造形

風船について

 

2) 人工の風船  →1)自然の風船 丈夫な風船素材の開発
   
紙の風船
熱気球
天灯 コーム・ローイ飛ばし
1783年「熱気球」モンゴルフィエ兄弟
紙で裏打ちした直径33mの絹布製熱気球、26分、8kmを浮遊
気温10度の空気密度は1.25kg/m3
気温80度の空気密度は1.00kg/m3
その差0.25kg/m3が熱気球の浮力
直径15m球で浮力500kg
紙風船の気密コーティング
1877年「偵察気球」築地海軍省練兵所
奉書紙にゴム引き 16.2m高9m幅、上昇198m 石炭ガス
1944年 「風船爆弾」旧日本陸軍
楮和紙に苛性ソーダ液とコンニャク糊で5層貼り合わせ 直径10mの紙風船。当時発見された偏西風に乗り、アメリカ大陸に向けて放ったは、9000発を放流した中の一割がアメリカ大陸に到達した。
ゴムの風船
1844年にチャールズ・グッドイヤーは天然のゴムを熱加硫して柔らかくする特許を開発した。
天然ゴムに硫黄を添加すると、ゴムの高分子は滑って大きく伸びるようになる。エントロピ弾性
しかし、ゴム膜は気体を若干透過するので、ゴム製の風船は1日経つと萎んでしまう。
ゴム風船の補強
1887年「バイアスタイヤ」獣医のダンロップ
ゴムタイヤを綿布で補強する特許、二層の糸を交差させて使用することにより、 クッションとしての衝撃吸収力と、繰り返し変形するタイヤの耐磨耗性を両立させている。
1946年「ラジアルタイヤ」ミシュラン社
タイヤの真円が変形しないように、回転方向に鉄の帯を並べ補強する
ゴム引布
1823年[ゴム引き雨具]チャールズ・マッキントッシュ
布の風船
1783年 「シャリエール号」シャルルとロベール
亜麻布にゴムコーティング 直径8m 水素気球で 飛行2時間
1883年[軽気球の縫製工房]アンリ・ラシャンブル
1901「飛行船6号機」サントス
1909 パリ航空ショー グランパレ
1956年「ゴム膜の空気住宅」フランク・ロイド・ライト
科学技術の発展を背景に、新しい美術表現を展開した1960年代のアーチストにとって、風船はてごろな素材でした。
1960 Piero Manzoni
1961ZERO party
ビニールの風船
アドバルーン
膜厚0.2mmの塩ビフィルムを張り合わせ ヘリウムガス 比重0.1381
1立法mのヘリウムガスは大気中で約1kgの揚力を発生します。直径が2mより小さいと、ヘリウムガスの浮力よりも、塩ビフィルムの自重が重くなるために浮上できません。
1931年 「東京の空」鈴木信太郎
1936年「226事件」
1966年「銀の雲」アンディ・ウオーホール
ナイロンとポリエステルの膜にメタリック蒸着、直径36cm、3日
ポリ塩化ビニ-ル膜 室内2か月、屋外で1か月
ポリエチレン膜、室内で1か月以上、屋外で1か月
ナイロン膜、40cmのものは室内で5~10日
ポリウレタン膜、合成皮革セシーナ
[ゴムの気体透過性]
1966年「物理的な物」EATグループのスティーブ・バクストン
1967年「5600立方メートルの梱包」クリスト・ヤバシェフ
1969年「熱気彫刻 雪の中の火」オットー・ピーネ
1968年「充気構造展」パリ市立近代美術館
1992年「ファンタジー号」鈴木嘉和 琵琶湖畔発
ビニール風船 直径6m6個、直径3m20個 ヘリウムガス
焼酎バラスト 酸素ボンベとマスク パラシュート
 
北朝鮮向けのビラ撒き
2006「4頭の馬」マックス・シュトライヒャー
ナイロン帆膜
2008「地下鉄アート」ジョシュア・アレン・ハリス
レジのポリ袋
高分子化学が発達すると、人工膜が様々な分野で応用されるようになりました。
イベントなどで大量のゴム風船が放出されるようになると、環境問題がおこり、紙にパラフィンコーティングした水溶性の風船が開発されました。

ビニール膜の補強
1944年「ビニール製の管輪と網」ウイリアム・ミラー

農業フィルムと魚網
農業温室用のポリ塩化ビニ-ルシートと、漁業用の漁網を複合利用すると、巨大な風船の建築物がつくれる。

[雨水による倒壊事故]

布の気密加工 防水布
英語の[tarpaulin]はタール (tar) を塗ったキャンバス生地の覆い布 (pall) が語源で、もともと船の上の物を覆うための防水布。
Conestoga wagon

防水ラミネート加工 ターポリン
1946年「軟式レーダードーム」ウォルター・バード
布にプラスチックシートをラミネート加工した複合素材
フレデリック・ウイリアム・ランチェスタ

 

ターポリン防水布
今日では、高分子長繊維の織物に高分子樹脂フィルムを積層したターポリン防水布が、インフレータブル遊具、エアアーチ、仮設建築物などの空気膜構造の素材として様々な分野で広く使用されている。
1970年 「浮遊都市インスタント-シティ」建築家集団アーキグラム
1970年「パフォーマンス」 テオ & ジェフリ
Theo Botschuiver & Jeffrey Shaw
1972「空気膜造形」高橋士郎
コンピュータグラフィックスのワイヤーフレームから空気膜造形を創作
ポリ塩化ビニールや合成ゴムを何層にも貼り合わせて製造されている丈夫な重布は、充気式ボートやエアージャッキなどにも使用されます。
金属の風船
LPGは、風船のような球形タンクの中で液化して貯蔵します。
液化するのに必要な圧力は、20℃の場合、ブタンで0.21MPa(2.1気圧)、プロパンで0.86MPa(8.5気圧)です。
ジャンボジェット機の胴体構造は内側が正圧であることを前提に作られています。
気圧の低い高高度を飛行するジャンボジェット機の機内は0.8気圧程度に余圧され、機内と機外との間に生ずる圧力差により機体が風船状態となり剛性を保ちます。
1985年「JAL123便」巣鷹山では、圧力隔壁が破損して墜落した。
反対に、着陸時などに機内が0.8気圧のまま着陸すると、地上の大気圧に対して負圧となり、強度維持に支障が生じます。
ガラス布とテフロン膜と鉄ワイヤ
1979年 メトロドームは、340トンのテフロンコーティングしたガラス繊維布の膜体を空気圧で持ち上げた。
空気圧力20mmAqとは、水面下2cmの所の水圧と同じ圧力で、膜の上に2cmの水が貯まった状態の重力を支ることができる。
膜体は鉄製ワイヤーで補強され、内部空気圧が発生する大きな張力を分散させている。
積雪時には、積雪の重量に見合う空気圧力を加え、膜体が沈む込むのを防具必要がある。
ナイロン布に撥水加工
1960年「スポーツ熱気球」エド・ヨスト
ナイロン布にアクリルコーティング 
1973「空気膜造形」高橋士郎
ナイロン布にポリウレタンコーティング 


充気膜機構 軟らかい機械
   
浮遊への本能
地球の重力に捕われて、地球の表面で生活する人類は、無重力への浮遊を夢見てきました。
神や天使は自由に空を跳びます
1505年『聖アントウスの誘惑』イェロニムス・ボスの瞑想の場面には、魚に乗って優雅に空を行く男女が描かれています。
軽気球の制御 浮遊論
初期の気球は、砂袋の投下や係留ロープの自重で浮力を調整するので、自由な浮遊制御ができません。
1901年サントス・デュモンは、気球を操縦して、エッフェル塔の周りをまわる飛行に成功しました。
水素ガス室の内部に配置した空気室の大きさを変化させて飛行船の浮力を調整します。空気室を縮小させると、飛行船の浮力は大きくなり浮上します。
この浮力調整の方法は、魚が気嚢の大きさを制御して昇降するのと同じ原理で、潜水艦の浮上にも利用されています
開閉機構 
風に任せて飛んでいく熱気球を、安全に降下させるためには、大口径の排気弁が必要です。
リップバルブ parachute vent[] エンベロール Ripstop nylon

駆動機構
ハンドリング機構
防水機構
一体成形した風船のロボット

エアパイロン
高さ25m、底面の直径5m チャック交換
空気膜機構 バボット US Pat.
 
風船の固有振動数 バネ機構
空気バネは、金属のばねでは吸収しきれない、微細な振動を減衰できる。
摺動部分が無いので、保守や給油の必要がない。
空気の量を変えることで、ばねレートや車高を設定できる。

Bellows Bourdon-tube
金属を構成する結晶の粒子を細かく均一にすると、融点よりはるかに低い温度で金属を伸ばしたり、曲げたりできるようになります。
超塑性合金を袋状に加工した金属の風船は、破れにく繰り返し膨らませことができます。
論理素子
bicuspid aortic valve

膜の論理回路

膜状の電子回路
極薄フィルム型有機トランジスタ集積回路は、厚さ19ナノメートルのシート状の回路で、折り曲げたり丸めたりしても機能し、2倍程度までなら伸ばすこともでき、風船膜に貼付けて活用できます。

人工皮膚

人体と風船
 
   
柔らかな文化
石や金属など作られた堅牢な剛体造形物が、権威の象徴や永遠の記念碑として、造形芸術の主流をしめてきたのに比べて、毛皮・藁・布・竹・瓢箪・泥などの柔らかい素材は、亡びやすく、価値が低いと考えられています。
しかしながら人類は、硬くて冷たい、価値のある文化よりも、柔らかくて温かな、はかない文化のほうに、より身近に親しんで来たに違いありません。
機械文明を代表する自動車でさえ、その内装は柔らかいクッションで被われています。
衝撃防止
「自動車のエアーバッグ」
ハンドル中央部に装置し、自動車が衝突した瞬間に膨らませて、運転者がハンドルで頭を打つのを防ぐナイロン製の風船。
衝突センサーが働らくと火薬が点火し、その熱と圧力により窒化ナトリウムが化学反応をおこし、窒素ガスが発生する。 発生した400度以上の高温窒素ガスは、スクリーンを通すことにより断熱膨張の原理で冷却される。
衝突してからエアーバッグが膨張し、しぼむまでの時間は0.125秒。
「旅客機常備の救命胴衣」
ウレタンでコーティングされたナイロン布
緊急時には、小さなボンベに入っている20g程のドライアイスを気化させて救命胴衣を膨張させる。
血圧の循環調整
「耐Gカバーオール」
高性能なジェット戦闘機のパイロットは、機体が急旋回する時の慣性力で、脳内の血圧が低下し、意識の低下や視力喪失を起こす恐れがあります。パイロットは風船状カバーオールのを装着し、脚部を圧迫することによって、体内の血液量を均一に保つ。
疑似的な低地気圧
「ガモウバッグ」可搬式気圧室 登山遠征隊
重さ7kg 高山病の登山者を内部に収納し、足踏みポンプで内部圧を富士山頂程度の気圧まで高めた状態にして、患者の回復を待つ。
血圧計
1896年「上腕血圧測定装置 」Riva-Rocci
1914年「pat.」Samuel Siegfried Karl von Basch
化学防御服
ガスマスク
装着する住機能
1968年「住むための機能を身体に装着して持ち歩くことのできる服」アーキグラムのマイク・ウエブ
個人のライフスタイルや生活思想を、建築に表現するのではなくて、身体に装着する膜体に表現した。
[Michael Webb]

宇宙の風船 
 
   
真空での膜構造
「アポロ船外宇宙服」内外の気圧差が非常に大きいために、関節部分を折り曲げる時に大きな腕力を必要とする。そのため、初期の宇宙服は、内圧を0.3気圧に下げ、純酸素を充填した
内側と外側はテフロンコートされたグラスファイバ布 中にアルミニウム膜7層 耐火シリカ布6層 ネオプレーンがコートされたナイロン布2層
船外活動
「宇宙服手袋」
「宇宙居住船」NASA BEAM
「宇宙緊急救命袋」ナサ
耐熱繊維製の外被膜は内部圧力を維持、放射線、太陽光線、微少流星から人体を守る。直径86cm
人が入って密閉し、故障した宇宙船から脱出して、真空の宇宙空間に漂い、救助を待つ。袋の中には酸素吸入器、電波信号装置、膨張用の二酸化炭素が装備されている。
1960年「サテルーン」初の通信衛星
表面の金属コーティングで、電波を反射
マイラーポリエステルフィルム製 直径30.5m、膜厚0.0127 mm
「成層圏観測用の超長時間飛翔気球」ナサ計画
高張力ポリエステル布にポリエステルフィルムをラミネート加工
ヘリウムガス 直径140m 高度52km
1997年「火星探査車ソジャーナ」
12個のポリエステル布風船 炭酸ガス
高度300mまでパラシュートで降下後に膨張 火星大地に3回バウンドして軟着陸
 
   
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