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  小説「瓢人先生」
  1947年 八田尚之

  序 尾崎士郎

  第一話 困った男

  第二話 破門

  第三話 凧を上げる由来

  第四話 龍巻教授頓死事件

  第五話 女供養

  あとがき

  鈴木信太郎:装幀

絵をかく為に酒を飲むのか、酒を飲む為に絵をかくのか判らないが、兎に角、絵をかきながら酒を飲み、酒を飲みながら絵をかく瓢人先生のモデルが我が少年期の悪友、喧嘩の虎ちゃん、後年の牧野虎雄画伯であるならそもそも、モデルと肖像との何れが存在で、何れが実存なのか、而もモデルと肖像との間では、絶えず書筆と酒と舌とが生の飛躍 <エラン・ ヴィタ-ル "e´lan vital" を営んでいる、と云ったような小説が即ちこれなのである。 →辰野隆

第一話 困った男 
瓢人先生  在野美術団の会長 画家数十名の統帥(牧野虎雄)

菊正夫人
大山大灌 天心先生(横山大観 岡倉天心)
徳さん   寿司徳
寿司徳の神さん
 

第二話 破門
水酉瓢人  瓢人先生 1925-30年フランスイギリスで絵を学び、フランス画壇で受賞
馬骨坊主  (今東光)
柿成鉱吉  画塾の最高弟 柿成瓢人 破門 対立する新制作会に加盟 戦争画(鈴木誠

南原豊   鬼っ子門下 生行方不明 (太宰治 白百合忌)
  1929 小山初代  1930 田部シメ子   1948 山崎富栄   太田静子

春陽会風
小杉放庵
岸田劉生
構成派
ロトチェンコ

表現派
ゴッホ
青騎士
プロレタリア流
岡本唐貴
(白土三平の父)

第三話 凧を上げる由来
瓢人先生  Z美術学院洋画部主任教授 (帝国美術学校 多摩帝国美術学校)
椋谷厚平  Z美術学院校長 文学博士 元中学校教師 元仙台小学校校長(杉浦非水)
M翁    Z美術学院創立者 富裕な貴族 瓢人先生が在学中に帝展初入選したときから買い上げ(北れい吉)
         瓢人に美術学校設立および校主を依頼
         瓢人先生の学校計画 美術面の生粋名匠 学術面の学会権威 柿成鉱吉が洋画部助教授 
龍巻端午  小学校時代からの親友 文学博士 帝大教授 学士院会員 美術学院の美術史講師(辰野隆)
笹山孫太  仙台市の助役 
田西麥太  40歳 万年落選画家
青貝美砂  モデル
田西丈平  5歳
 

第四話 龍巻教授頓死事件
龍巻端午  飛鳥天平の文化研究で学位(辰野隆)
龍巻清美夫人
楓虹代   赤坂の待合清元の女将 美人画の名匠宗像芳仙画伯のモデル
銅牛伝五郎 土工あがりの請負師 業界の元締格(木村荘平)
雁牧郎博士 龍巻の助手
秋丘重信  門下生 秋鯊六段 柔道六段剣道四段 W大学の武道師範(浅岡信夫 藤原繁太郎)
狸穴吉平  元吉原の三助
馬骨坊主 
  

第五話 女供養
水酉瓢人
虚元会同人幹事役 鶴井長太郎 芒銀介 鯉沼一風 田西麦太 
虎張少佐   ( )
飛騨甚兵太郎次 墓碑石工75歳 
狸穴吉平   小料理ふくべ主人 ひさご亭 川柳名は光三
秋丘重信   大海原洋太郎の画塾に通う用心棒
南原豊    21歳の時に汽船の火夫となり渡仏 パリで水酉瓢人に弟子入り申し込み 自虐証 爆風で死亡
大海原洋太郎 先端的美術団体閃光会の主宰(光風会 太平洋画会 白馬会)
大石蔵吉   戦時中は神戸の警察署の巡査部長特高係 現在は代書業

    戦時中   現在

渚蟹江

酒場カトランの女給
大海原洋太郎のモデル

タイピスト


熱海のダンスホール

牝鹿小鈴

酒場カトランの女給
(酒場ルパン)

   

エドモンド・ブランシュ
Edmond Boulange

セントルイズ舞踏場
ダンサ

街の女

熱海の海岸近くで
渚蟹江と同居

絹川笛子

グロリア舞踏場
ダンサ

機密130号
第18班
工員


 

白萩つゆ子

アリゾナダンスホール
No.1ダンサ
さる伯爵がパトロン

 

三流板前のおでん屋

谷山さぎり

酒場の女給
人気小説家が求婚

帰郷
兄の谷山猪之吉は
八路軍の捕虜


会津磐梯山麓
福島県U郡T村百姓
南原の子3歳

孫金鳳

松ケ枝の私娼25歳
浅草区千足町5番地

瓢人の絵の売却金で
自由廃業し帰国


 

蛍みずえ

同棲中に死亡

 

舟虫精児「寝そべった娘」好色作家
北原白秋


1948年 映画[生きている画像] 千葉泰樹監督 八田尚之脚本 .
洋画壇の大家、瓢人先生は奇行奇癖を持って六十年の年月を、ただ酒を好伴りょとして暮らしてきた。数十名の門下生は天才、鈍才多士済々である。田西麦太の絵は先生に認められずその秋の帝展に十四回目の落選を宣告された。麦太は悲観するよりも、モデルになってくれた青貝美砂子に対する済まない気持ちで胸が一杯だった。だが、彼女は「また来年よ」と麦太を励ますのだ。南原豊は俊才として特選画家となったが、なぜか彼は自己けん悪に陥入りデカタンになって不貞くされていた。彼は鈍才といわれる麦太が怖ろしいのである。ある時、瓢人先生がすし徳で常連と楽しく語り、家に帰ると田西麦太が待っていた。「青貝美砂子と結婚したいから仲人になってくれ」という。瓢人先生はじっと麦太を見つめていたが冷たく「女と一緒になるなら破門する」と答えた。麦太は奮激して「破門する先生はばかだ」といって飛び出した。だが瓢人先生は彼を見捨てなかった。親友の龍巻博士に無理に仲人を頼んで二人を夫婦にしてやった。やっと、愛の巣を得た麦太は貧しいながらも生活を楽しんでいた。こんなふんいきの中で瓢人先生は相変わらずひょう逸な人生を続けていた。美砂子を画いていた麦太は彼女の顔が変わったことに気がついた。にんしんしたのだ。ところが、産後の肥立ちが悪く美砂子は麦太の手を握り「立派な画を……」といって死んで行った。瓢人先生は赤ン坊の産衣に画いてやった自筆の絵を見つめていたが、その眼に一條の涙が光った。だが、瓢人先生も、麦太も、崇高な美砂子の死の表情を見逃さなかった。十五回目に入選した亡き美砂子の肖像しかも特選になった麦太の絵の不思議な魅力の前に南原は泣きふせた。