ルーセル考:自由芸術の発明 高橋士郎 (多摩美術大学紀要24号) →English →

巨匠ジュール・ベルヌのような人気小説家をめざしたレーモン・ルーセルの奇想天外な小説は、当時の文壇や大衆の支持を得ることが出来なかったが、第一次世界大戦直前の若い前衛芸術家デュシャンブルトンに大きなインスピレーションをあたえた。
ルーセルの小説は、豊かな人間的感覚が成立する根底にある地球大気と地球重力に基づくリアリティを繰り返し表現して「自然界・人工界・想念界」を三つ巴に連結する。
ルーセルは、科学技術をカント的に、精神化した。

  小説:アフリカの印象


アフリカ沖で漂流座礁したブエノスアイレス行きの快速船リュンケウス号の乗員40名が、タルー七世の聖別式の祝祭に特別参加して、次から次へと近代科学によるヨーロッパの「人工芸術」を披露し、アフリカの「自然芸術」と競演する物語である。小説の後半で、同じ物語を合理的な記述でくり返えすことにより、あの世の想念世界と、この世の現実世界とが連続し納得するという仕掛けである。
第1章

戦利品広場
ズアーブの墓石
株式取引所
4つの動く彫刻
光学実験小屋
護謨の木
大理石塗装の祭壇
椰子の木
自動回転式の絵巻物
緋色の芝居小屋
木製台座
留置所
第2章
死刑執行(エジェル国)
無血斬首の刑
焼印の刑
黄金ピンの刑
落雷の刑
入場行進と聖別式
第3章
祝祭の演目 "重力磁力熱力"
サーカス団の軽業藝
弾車式剣術機
空中飛行(エジェル国)
感熱式自動演奏機
磁宝石と消磁板実験
蚯蚓のチター演奏
第4章
"音声言語"
タルー7世の独唱(エジェル国)
フランス歴史学講演
アメリカ生物学講演
サーカス団の音曲芸
ブリキの拡声笛
タッソー悲嘆劇朗読
第5章
"音声言語"
六つの活人画
老踊子の踊り
武勲歌(エジェル国)
第6章
平原にて "非線形科学"
人間エコー(エジェル国)
河にて
視力治療(エジェル国)
流水式自動織機
波紋絵画
花火絵画
第7章
祝祭の共演 "メタ認識"
映像治療
シェイクスピア黙示劇

葡萄のバイオアート
第8章
フィナーレ "大自然の造形"
海中生物(エジェル国)
録画植物(エジェル国)

表彰式
第9章
翌朝 "自動絵画"
自動絵画機械

第9-26章

合理的記述
難破事故
帰国

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→登場人物  

  小説:ロクス・ソルス


科学者カントレルがパリ郊外Montignyに建設した自由芸術の殿堂に、自分の発明品を展示し、それらの発明の証人として観客を招待する物語である。美術館や画廊などの芸術を担保する既存の枠組みを外れて、個人のパビリオンで自由意志による個展が開催される。展示作品の主題は、土・風・水・火の四元素と、生と死のテーマ作品を経て、自由創作に至る。

"固相”


急な坂道
アフリカとヨーロッパの合体
トンブクトウの薬草土偶
ブルターニュの王冠金属
"気相"


広場
気球式自動作画機
ドゥモアゼル
水球物語
"液相"


光る水槽
ダイヤモンド水槽
帯電音響
裸のシャム猫
浮力式人形劇
ダントンの首
アポロンの馬車
"記憶"
ガラスの檻
死体劇場
八つの脚本
a.詩人ジレット
b.マオ夫婦
c.俳優ロレス
d.幼児セロス
e.彫刻家ジェルジュク
f.作家ルカルヴェ
g.伯爵夫人
h.文筆家ジュール
"励起"


石小屋
狂人と盗賊団
幼児ジレット
熱風浮力人形劇
ロケット式縫製針
励起式あ音生成蝋板
"生命"
岩の小川
占い巫女フェリシテ
イリセールの孵化選別
キュロス王の超親水性金杯
炎症解毒の刺草
エムローのタロット
生体懇願物質

"自由芸術"

林間の空地
放浪の星占師ノエル
鶏モプサス
モンシャル伯爵


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→ルーセルの日本旅行
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2016年 愛知トリエンナーレ

2016年 ケ・ブランリ美術館